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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  百三話 誘いの乱入者

 
前書き
はいどうも鳩麦です!

さて、今回は前回の続き、つまりVSアイリ戦からです!

では、どうぞ! 

 
「やぁっ!」
「ふっ!」
アイリが左から一閃、振るった光剣と、リョウが振るった二本のナイフが激突し、空中にビリビリと火花が散る。そのまましばらくつばぜり合いをする二人だが……

「琉ァッ!」
流石に筋力型を自称するリョウである。光建と比べ力の掛かりにくいナイフであってもその優位は揺らがず、アイリを吹き飛ばし、距離を取ると……

「はっ!」
「わっ!?」
体を低空飛びで飛び出させ、一気にアイリまでの距離を詰める。このまま一気にナイフを突き出し、アイリを突き刺す構えだ。が……

「三、式……!」」
「っ」
またしてもアイリの構えが変わる。光剣を持った右手を横に構えると、その上に重ねるように左腕を交差させ……

「やあァッ!」
「おぉっ!?」
リョウのナイフがアイリを捕えるより前に、光剣のリーチを利用してそれを思い切り振るう。ヒュンッ!と高い音を立て、凄まじいスピードで振るわれた剣を、、リョウは慌てて右のナイフで受ける。
しかし、空中である為地面に踏ん張る事が出来ず、なおかつ振るわれたアイリの剣がALOでも滅多に見る事の出来ないレベルのスピードまで達しており、リョウは真横へと吹っ飛ばされた。

「っち!」
「せぇぇっ!」
空中で体勢を立てなし、土煙を上げつつも床を磨って着地したリョウにアイリ一気に突っ込んでくる。ちなみに今の彼女、初めから光剣で一気にケリを付ける気だったのか、邪魔になるMP7を持っていない。対しリョウはXMを落としたとは言え腰にはDEが有るのだが……

『抜かせてくれねぇし……!』
アイリ少しでも此方が銃を抜こうとする動きを見せるとその瞬間に突撃してくるので、撃った際に少しでも硬直する事を考えると銃を抜く余裕が無い。

とにかく、接近してくるアイリの光剣が降られれば受け止めつつ、もう片方でカウンター気味にナイフで切ろうと、左右のナイフを逆手に持ち、右を首の前で、左の柄を腰だめに当てて構える。そうして接近してきたアイリが右手の剣を首に回すように左上に向かって振りあげ、間合いに踏みこむ寸前、此方から一歩踏み込む。こうすることで、アイリが間合いに入っ……

「一式……」
「なっ!?」
た。と思った瞬間にナイフを振った。にもかかわらず、ナイフは彼女のほんの数ミリ前を通過する。

『目算を狂わされた!?』
踏み込む寸前までは、確かにあの足の位置なら間違いなく自分が一歩踏み込めば此方の間合いだったはずだ、それが、何らかの理由によって目算を狂わされ、まだ彼女が間合いの園に居る段階でナイフを振って……否、“振らされて”しまった。

『ってやべ!?』
此方はナイフを振った体勢、つまり左腕を右に向かって振り切った状態だ。対し、アイリは右腕を振り上げた状態で止まっている。つまり……

アイリがにんまりと笑う。

次の瞬間には攻撃が来る……!

「逝っちゃええェェッ!!」
『怖っ!?』
銀髪の奥の紅い瞳がギラリと輝き、光剣による斬撃が飛んでくる。迫力が尋常ではない。
しかし、襲い来る蒼色の斬撃を前にして、リョウはこの上無く冷静な頭が働くのを感じていた。斬撃は、先程ほどではないにせよ確かに速い。だが……

「アスナより……遅せぇなっ!!」
「っ!?」
胸のあたりをバッサリと行きそうな勢いで振り切られた斬撃に対し、リョウは足から力を一気に抜く。
ガクンっ!と目線が一気に下がり、アイリの斬撃が頭の上を通過する。と同時に、足が曲がったことで上半身が自然と前に出る。先程狂わされた目算分は、これで埋まった。左腕は振り切った状態のまま、左手はリョウ自身の右側に有る。逆手に持っていたナイフをクルリと一回転させて順手に持ち帰ると、そのまま一気に……

「疾ィッ!!」
「うぁっ!?」
突き出す!アイリの腹にナイフの刃が深々と食い込み、凄まじい勢いによって押された事で、そのままアイリの体が後ろに吹っ飛ぶ。
そのままリョウは踏み込んだままの左足に力を込め立ちあがりつつ右足から踏み出し……

「おっ!」
右のナイフを腰だめに構えたままアイリに突っ込む。対し、アイリは中途半端に吹き飛ばされた事でたたらを踏むように数歩下がると、リョウが突っ込んでくる事に気づき、慌てたように剣を構える。今度は先程のようなミスを犯すつもりはない。二本ある優位性を生かして……

『体術とナイフのラッシュ……!』
そのまま一気にアイリの間合いにふみこもうとした……その時だった。

──ゾッ!──

『!?』
突然、首筋に悪寒が走る。先程の比では無い。ここ最近、全く感じていなかった圧倒的な……体を一瞬で普段とは全く違う戦闘モードに持っていくこれは……!!

「っ、伏せろっ!!」
「え?きゃあっ!?」
それが自分の狙っていたのか、あるいはアイリを狙ったものか咄嗟に分からず、リョウは反射的に目的を変更した。ナイフを棄ててアイリの体に飛び付き、訳も分からず悲鳴を上げる彼女を強制的に伏せさせる。
勢いに押され、アイリの光剣が地面に転がった。直後……

バギャァッ!!

と、壁が砕け散る音が響き、アイリが先程まで居た場所を、リョウの背中僅か数センチの位置を、巨大な弾丸が通過した。

「!?」
「やろっ!」
右側の壁から飛んできた弾丸に対し、リョウはアイリの体を即座に離すとごろごろと数度転がり壁際に付く。一応DEを抜くが……

『予測線無かった……っつーことはスナイパーか!』
「アイリっ!窓から見える位置に出るな!」
「え、え!?」
「早くしろっ!」
「っ……」
リョウの意味不明な発言に一瞬戸惑う表情を見せるアイリだったが、リョウの凄まじい剣幕に押され、慌てたように壁際に隠れる。
それを確認することも無く、リョウは聞き耳を発動させる。

ザッ……ザッ……

「……っ」
土を踏む小さな音が、リョウの耳に入りこんだ。徐々に離れて行く……

『くそ……』
リョウは慌てたように外を見た。窓から見えた景色の先には広い田園と森が広がっている。おそらくは森の中から撃ったのだろうが、深い木々により何処から相手を確認することが出来ない……

「……ったくよ……」
それでもしばらく、リョウは森を見つめていた。
先程感じた殺気。あれは、アイリのそれとはまったく性質を別にする物だ。最後に感じたのは、恐らくSAOの中……否、質だけで言うなら、須郷と最後に会ったあの駐車場で、彼が纏っていた雰囲気も同じものだったかもしれない。

本当の意味で……相手を殺す事を目的とする物が放つ、相手を凍りつかせようとするような、独特の雰囲気……SAO(あの世界)では、何度も味わった事のある、殺し合いの空気……

『けどなぁ……』
しかし先程感じたそれは、その中でも最上位のものだ。あれほどの物を発するとなると……

『いずれにせよ、ラフコフって線は当りっぽいなぁ、こりゃあ……』
溜息を付きたくなりつつ、リョウは頭を掻く。そんな彼の左ほお横を……

「……あのねリョウ、私は別に良いんだけど……」
「…………Oh」
蒼色の光剣が、貫いた。

「私との戦闘の途中だって、忘れてるよね?」
「あー、いや、そのだな……」
拗ねたように言うアイリに、リョウは頬を冷や汗が伝うのを感じつつ、両手を上げて答える。

「で、出来れば仕切り直しなんか……」
「すると思うのかな?」
「ですよねー……」
アイリの呆れたような声が聞こえ、リョウは溜息を付きながら頭をガクリと下げた。先程の事が有った以上出来ればここでゲームオーバーはごめんこうむりたかったのだが……
アーメン、詰んだ。済まぬ弟よ、後はお前が何とかしろ。

そんな事を思い、仕方なくリョウは死刑執行の時を待つ。しかし……

「……はぁ……」
そんな思考を、アイリの溜息が遮った。
シュウン。と小さな音が鳴り、リョウの隣からエネルギーのブレードが消える。

「……ありゃ?」
「あのね、リョウ」
首を捻ったリョウに、アイリの声がかかった。

「私はね、今、リョウと正面から戦って勝ちたいって思ってる。だから……今みたいなのは取っても不本意なの」
「お、おう……」
何となく、残念そうに語るアイリの声を聞き、リョウはゆっくり振り返る。そこに、予想通り、少しばかり不満げな顔のアイリが居た。

「……さっき私に怒鳴った時のリョウの顔、とっても怖かった」
「あー、いや、すまん、必死だったと言うか……」
「……なら、再戦はその後にしよ?」
「……は?」
リョウが再び首をかしげる。と、アイリはどういう訳か二コリと笑う。

「それがずっとあったのか、それとも今出来たのかは分からないけど……さっきのリョウの顔見たら、嫌でも今のリョウに何か事情が有るってわかるよ……ねぇ、それを抱えてても、今のリョウは私と必死になって戦ってくれる?」
「いや、それは……」
正直、無理だと思えた。あれだけの殺気を持つ、ラフコフの人間がもし死銃本人なのだとしたら、間違いなく、何らかの方法で他のプレイヤーを殺す事にも納得が出来てしまう。
だとしたら……自分はそれをどうしても考えてしまうだろう。そうなると、アイリの事だけに集中すると言うのは、無理だと思う。

「なら、私は先に、リョウの抱えてるその事情を何とかしてほしい……出来ないかな?」
「……いや、なんとかなるかもしれん」
ようは、原因を取り除く……つまり、死銃を倒してしまえばいいのだ。それならば、アイリを倒す前に死銃を倒せばいいだけの話。それなら……

「分かった!んじゃさっさと片付けて来るから、それまで生き残って「違うよ」あ?」
リョウが言おうとした言葉を、アイリが遮る。その顔は相変わらず笑顔だ。

「私も手伝います」
「……あぁ!?」
「だって私とリョウが戦うためだもん、それに、良い所で水さされちゃって、私だって黙ってられないのです」
「ないのですって……」
リョウは唖然としつつアイリを見るが、対してアイリはあくまで笑顔だ。

「とにかく!私に何か出来る事無いかな!?」
「いや、無いかなってお前……」
そこで、リョウはふと考える。確かに、頭数が増えれば奴の事も倒しやすくはなるかもしれない。もしリョウの予想通りなら、相手はかなり手練れと見た方が良い。アイリは少しバトルスタイルは変わっている物の、かなり強い。戦力にはなる筈。だが……

『せめて、な……』
しかし、これは人死にが関わっている事件である。簡単に彼女を巻き込む訳にもいかない。

『あー』
と、リョウはそこで思い付いた。ならばこの場で、アイリに事情を話して見るのも一手かもしれない。もしそれでアイリがビビるなりあるいは妙な事を言う自分に興味を無くしてくれたなら、こちらとしてはめっけもの。ふざけるなとぶち切れられてしまったら、それはもう戦うしかない。

「じゃあとりあえず、事情を話すぞ……」
そうして、リョウは話し始めた。今回の、死銃事件について、今彼が知っている事を……

────

「って訳だ」
「…………」
リョウがあっけらかんとした様子で話すと、アイリは思案顔のまま黙り込んでしまった。
そうして数秒間その表情を続け、リョウに問う。

「それ、本当?」
「(ま、そうなるわな)勿論」
これで多分呆れるか怒るかのどちらかだろう。そうして、リョウが黙っていると、突如アイリがガバッと顔を上げた。

「……止めないと!!」
「……は?」
言うが早いがアイリはメニューウィンドウを操作し出す。

「リョウ!速く準備しようよ!一刻も早く止めないと!」
「え、は?いやちょ……」
いやまぁ確かに止めないといけないのはその通りなのだが……

「いや、お前、信じるのか?今の突拍子もない殺人事件の話を?」
「嘘なの?」
「いや嘘じゃねぇけどよ!普通もうちょい疑わねぇか?お前……」
少し驚きつつ、リョウが言うと、アイリは少しだけ前を向き、俯いた。

「他の事ならまだ私も冷静だったかも……けど、もしそうやって迷ってる内に誰かが殺されちゃったら、それが私の友達だったら……それだけは……それだけは絶対、嘘でも本当でも嫌なの……」
「あ?」
後半の言葉が、呟くように小さく良く聞こえなかった。
そのためリョウは聞き返すがアイリはハッとしたように首を振る。

「あ……う、ううん!だって殺人事件なんでしょ!?なら早く止めなきゃ!迷ってる時間がもったいないよ!」
「あ、あぁ。まぁそうか……」
アイリに押され、リョウは曖昧に頷く。

「そんじゃまぁ……目標は死銃、目的は、そいつを倒す事……OK?」
「うん!倒そう……!一緒に……!」
妙な二人が、動き出していた。

BoB開始より 38分経過
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

少しアイリ参加までのプロセスが不自然だったかな……

と、とにかく、これで今回の相棒が成立しました!アイリさんです!
さて、原作に居ないキャラであるのにもかかわらずかなり目立ってます彼女ですが……正直、まだまだ目立つ予定ですw

シノンは、もう少し!もう少し待ってください!

ではっ! 
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