仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
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バダン最後の日
「さて、ライダー達よ」
サザンクロスはライダー達と対峙しつつ言った。
「来ないのか。まさかわしに臆したわけではあるまい」
「何ッ」
これにはストロンガーやアマゾンがまず反応した。だがそれをダブルライダーが止めた。
「待て、これは挑発だ」
「しかし」
「むざむざ相手の挑発に乗る必要はない。いいな」
「クッ・・・・・・。わかりました」
彼等は渋々ながらもそれに従った。そして矛を収めた。
「フフフ、チームワークは変わってはおらんな」
サザンクロスはそれを見て満足そうに笑った。
「だがそれではわしに勝つことはできんぞ」
「それはどうかな」
しかしライダー達も怯んではいなかった。
「それを今から証明してみせようか」
そしてこう言った。サザンクロスはそれを受けてもやはり笑っていた。
「面白いことを言うな、やはり」
その周りにいる戦闘員達が前に出て来た。
「どのみち貴様等をここで止めなくてはならん。覚悟はできているな」
「それはこちらの台詞だ」
やはりライダー達は強気にこう返してきた。両者の間合いが詰められていく。
「行くぞ」
「来い」
互いにそう言い合った。遂にサザンクロスとライダー達との戦いの幕が切って落とされた。
まずは戦闘員達が前に出る。それには立花達が向かって行った。
「こいつ等はいつも通りわし等に任せろ!」
「御前達はサザンクロスをやれ!」
そして彼等は戦闘員達の前に立ちはだかった。ライダー達はそれを受けて頷いた。
「済まない!」
「おやっさん達、頼みます!」
「おう、任せとけ」
彼等はニヤリと笑ってこう言った。
「そのかわり、頼むぞ」
「はい」
ライダー達はそのまま前に進む。そこにはサザンクロスが仁王立ちしていた。
「来たか、ライダー達よ」
彼は自信に満ちた顔で悠然と立っていた。
「今こそ見せようぞ、復活したサザンクロスの力」
そう言いながら右手の鞭を振りかざしてきた。そしてそれを動かした。
「ムン!」
それでライダー達を撃たんとする。だが彼等はそれより前に動いていた。
「甘いっ!」
一斉に上に跳んでそれをかわした。それぞれサザンクロスを取り囲むようにして着地する。
「囲んできたか」
サザンクロスはそれを見渡した後でそう言った。
「さて、次はどうするつもりだ」
「それは決まっている」
ライダー達はすぐにそう答えた。
「行くぞ!」
「これがライダーの真の力だ!」
そして一斉に動いた。サザンクロスめがけて総攻撃を仕掛けてきたのだ。それでもサザンクロスの余裕は変わりはしなかった。
「面白い」
彼はそう呟いた。
「こうでなくては面白くとも何ともないわ」
「まだ言うか!」
まずはⅤ3がパンチを仕掛けてきた。サザンクロスはそれを左手の鍵爪で受けた。
「言える、わしのこの力を以ってしたならな」
その爪でⅤ3に反撃を加える。Ⅴ3は後ろに跳び退きそれをかわす。入れ替わりにⅩが来た。
「ムン!」
ライドルでその脳天を砕かんとする。そしてそれはサザンクロスの脳天を直撃した。
「やったか!」
Ⅹは確かな手応えを感じ見た。だがサザンクロスは相変わらず余裕に満ちた顔で仁王立ちを続けていた。
「所詮その程度か!?」
彼はその返礼に鞭を放って来た。Ⅹはライドルでそれを払い難を避けた。
「ならば!」
今度はストロンガーが攻撃にかかった。拳で地面を撃つ。
「エレクトロサンダー!」
電流が地面を伝い襲い掛かる。そしてそれはサザンクロスを撃った。
激しい電流がその全身を包む。これは流石に効果があるかと思われた。
しかしサザンクロスは立っていた。そして悠然とした物腰でストロンガーに対して言った。
「甘く見てもらっては困る。わしは戦闘員などとは違うぞ」
「クッ・・・・・・」
「さて、どうしたライダー達よ」
彼は電流を打ち消すと周りに散るライダー達を見回して問うてきた。
「この程度か!?貴様等ライダーの力とはその程度ではないだろう」
そう言って彼等を挑発にかかった。
「見せてみろ、貴様等の力を。このわしにな」
「見せろだと」
「そうだ、わしは今までの者とは違う。貴様等一人一人では相手にもならんわ」
「戯れ言を。まだ言うか」
「ほう、戯れ言か」
サザンクロスはそれを受けてまた笑った。
「ではわしの言葉がまやかしなどではないということを見せてやろうぞ」
彼はそう言うと両腕をクロスさせ力を溜めた。そして全身の穴という穴に黒い光を宿らせた。
「まさか・・・・・・」
それを見たライダー達は思わず呟いた。
「そう、そのまさかだ」
彼はそれに答えた。するとその黒い光が一斉に放たれた。
「ウワッ!」
無数の黒い光が蛇となってライダー達い襲い掛かる。それはのたうち回りながら飛び掛って来た。
「させんっ!」
しかしライダー達はその驚異的な反射神経でそれをかわした。だが細部には無数の傷を受けてしまっていた。
「ほう、急所はかわしたか」
サザンクロスは攻撃を終えライダー達の状況を見てこう言った。
「だがダメージは少なからず受けたようだな」
「クッ・・・・・・」
それは否定できなかった。ライダー達は所々から血を流していた。
「まさかあのサザンクロスの力をそのまま使っているというのか」
「その通り」
彼はニヤリと笑ってそう答えた。
「他の怪人達とは比べ物にならぬ。それはこれでわかっただろう」
「クッ、確かに」
ライダー達は苦渋の顔でそれを認めざるを得なかった。
「だが貴様を倒すということに変わりはない」
「ほう」
サザンクロスはそれを受けて目を細めた。
「ではどうするのだ?やってみせるがいい。そして見事わしを倒してみよ」
「言われずとも!」
「貴様を倒す!」
ライダー達は再び動きはじめた。サザンクロスの周りを走りだす。
サザンクロスは微動だにしなかった。ただ彼等が来るのを待っていた。
「ククク」
笑っていた。笑いながらライダー達の動きを見ているのだ。
鞭を振るってきた。それでライダー達を撃ちにかかる。
「トォッ!」
ライダー達はそれをかわす。しかしダメージのせいか動きが鈍かった。
「どうした、動きが遅くなっているぞ」
それはサザンクロスにもわかっていた。そしてそれを受けて挑発するように言う。
「おのれ・・・・・・」
それを受けて憤るライダーもいる。Ⅴ3やストロンガーだ。だがそれを他のライダー達が止める。これはダブルライダーであった。
「焦るな、焦ったら奴の思う壺だ」
「しかし・・・・・・」
「わかったるだろう、いいな」
「クッ、わかりました」
彼等はそして落ち着きを取り戻した。そして再び動きはじめた。
「それがチームワークというものか」
サザンクロスはライダー達のやりとりを見て興味深げにそう言った。
「中々面白いものだ。だがな」
その声も目もやはり笑っていた。
「それだけでは勝てはせぬ。わかっているな」
「それはどうかな」
だが一号がそれに反論した。
「何!?」
「仮面ライダーの本当の力は全員が揃った時に発揮されるということだ」
今度は二号がそう言った。
「そう、そうやって俺達は今まで死地を乗り越えてきた」
Ⅴ3はサザンクロスから目を離さない。
「そして貴様等に勝ってきたのを忘れたとは言わせない」
ライダーマンがそれに続く。
「そして今も」
Ⅹがサザンクロスを見据えながら言う。
「勝つ!」
アマゾンが吠えた。
「この命ある限り」
ストロンガーの身体に超電子の力がみなぎっている。
「貴様等の野望が適うことはない!」
スカイライダーも駆けていた。
「今からそれを証明してやる!」
スーパー1の銀の拳が光った。
「行くぞサザンクロス!」
ゼクロスがその正面にやって来る。
「もう一度貴様を倒す!」
ライダー達が跳んだ。回転しながら彼等は光となる。そして空中で十の光が交差した。
「何ッ!」
サザンクロスはその光に目が眩んだ。だがすぐに態勢を立て直し身体中から黒い光を発する。
しかしそれは全く通用しなかった。光と化したライダー達はその黒い光をことごとく弾き返してしまったのだ。
「喰らえ・・・・・・」
ライダー達の声が木霊する。
「ライダァーーーーーライトニングアタァーーーーーーーック!」
一斉に体当たりを敢行する。サザンクロスに向けて一直線に突き進む。
「おのれ!」
避けようとするが避けられない。十に光がサザンクロスを直撃した。
「グフッ!」
今度はサザンクロスがダメージを受ける番であった。全身に激しいダメージを受け吹き飛ぶ。天に舞い上がった時全身から黒い光を放出した。だがそれは攻撃の光ではなかった。
黒い光を放ちながら暗闇大使の姿に戻っていく。そして大地に落ちていく。
「やったか!?」
着地し、態勢を戻したライダー達は暗闇大使を見た。大使は大きな地響きを立て落ちた。
しかしそれでも彼は生きていた。全身に激しいダメージを負いながらも立ち上がってきた。
「おのれ・・・・・・」
身体中から血を吹き出している。それでも生きていた。
「それが貴様等の力だというのか」
「そうだ」
ライダー達はそれに答えた。
「貴様が侮っていた力だ。どうだ」
「クッ・・・・・・」
彼はそれを聞いて歯噛みした。しかしそれはすぐに微笑みに変わった。
「見事なものだ。ダモンが敗れただけはある」
「ダモン・・・・・・地獄大使のことか」
「そうだ。フッ、あ奴と同じく貴様等に敗れるとはな。これも因果か」
「因果ではない、宿命だ」
「宿命!?」
彼はライダー達に言われ目をしかめさせた。
「バダンが敗れるのは宿命だ。ならば貴様が倒されることも宿命なのだ」
「そう言うか。だがそれはどうかな」
「何!?」
「暗闇大使が滅びようとバダンは滅びぬということだ。首領がおられる限りはな」
そして後ろを振り向いた。それから言った。
「首領、あちらで覇業を見守っております。どうか志を果たして下さい」
そう言い終えると頭を垂れた。それからライダー達に向き直った。
「さらばだ、ライダー達よ。そしてダモン」
彼はまた従兄弟の名を呼んだ。
「再び貴様のところへ行く。共に地獄を席巻しようぞ!」
それが最後の言葉であった。彼は爆発の中に消えていった。
「死んだか」
ゼクロスはその爆風を見て呟いた。
「敵ながら見事な男だった」
「ああ」
他のライダー達もそれに同意した。
「それが敵というものだ。三影だってそうだっただろう」
「ええ」
「その敵に勝ったんだ。誇りを持て」
「わかりました」
彼は答えた。爆発が消えるとライダー達に向き直った。
「では行きましょう、首領の下へ」
「おう」
「わかった」
ライダー達は答えた。戦闘員達を倒し終えた立花達もだ。
「しかしわし等はこれまでだな」
だがここで立花がこう言った。
「わし等もかなり傷を負った。悪いが待たせてもらうぞ」
「わかりました」
心は同じといえどその身体は違う。無理はできなかった。
「夫婦岩のところで待っている。いいな」
「はい」
「じゃあ行って来い。帰ったら派手に宴会をやるからな」
「おやっさんの奢りで」
「当然だ。何でも頼め!」
「はい!」
ライダー達は大声で答えた。そして彼等に別れの挨拶をして駆けて行った。
「頼むぞ」
立花は彼等の背を見送って呟いた。それから他の者に対して言った。
「行こうか」
「はい」
皆それに頷いた。そして彼等は戦士達の帰る場所に向かうのであった。
「ここだな」
「ええ」
入口を見つけた。ゼクロスは他のライダー達の問いに頷いた。
「じゃあ行くぞ」
「おう」
彼等は頷いた。そして入口をこじ開け中へ入った。
内部は巨大な迷路となっていた。通路は狭く、暗かった。だがライダー達は順調にその中を進んでいった。彼等にはわかっていたのである。
首領が何処にいるか、彼等は直感でわかっていた。そして中を進んで行った。
遂に最深部に到達した。そこは暗闇に包まれていた。
「ここだな」
彼等はわかっていた。ここにあの男がいると。
「その通りだ、ライダー諸君」
それを証明するかのようにあの声が響いてきた。
「出たな!」
「フフフフフ」
首領は笑っていた。その声はこの暗闇の中から聞こえてきた。
「よくぞここまで来た」
「戯れ言を。何処にいるのだ」
「ほう、私の姿を見たいか」
首領はそれを聞いて楽しそうに声をあげた。
「私の姿は諸君等にはそれぞれ見せてきたが」
「馬鹿を言え。あれは全て貴様の分身だったのではないのか」
一号がそれを受けてそう問うた。
「ショッカー、そしてゲルショッカーの時もそうだったな」
二号はあの時の戦いを思い出していた。その時は一つ目の化け物であった。
「そして俺の前に姿を現わした時はドクロだったな」
「そういうこともあったかな」
首領はⅤ3の言葉を聞いてそううそぶいた。
「今となっては覚えていない話だ」
「だが貴様はその時は中にいなかったのではないのか」
ライダーマンはもうあの時のライダーマンではなかった。あくまで首領と戦う心ができていた。
「あのテープレコーダーか」
首領はそれについて言った。
「あれは私の仮の姿の一つ。声は出せなかったのでな」
「何!?」
「私の分身はあの心臓だったのだ。あの死神の姿もまた私だ。だがな」
彼は言葉を続けた。
「私は分身を操ることができるのだよ。ショッカーの時も姿もデストロンの時も姿も分身の一つ。あの死神の時はテープを通して言葉を送っていたのだ」
「そうだったのか・・・・・・」
ライダー達はそれを聞いて長い間の謎を解いた。
「では呪博士は何だったのだ」
「あの時か」
Ⅹの問いにも答えてきた。
「呪博士もまた私の分身の一つだったのだ。彼はそれに全く気付いてはいなかったようだがな」
呪博士はこうした時に備えた首領の分身であったのだ。そして首領は彼を、彼自身をコントロールしていたのだ。
「それはガランダーの時も同じだ」
「やっぱり。では十面鬼も御前が」
「その通り」
首領はアマゾンの問いを肯定してみせた。
「あの男は面白いように私の言葉に乗ってくれたな。だが所詮はあの程度であった」
「クッ、ではアマゾンの皆は御前のせいで」
「それがどうしたというのだ?」
首領にとっては他の者の命などどうでもよいのだ。だからこそこう言えた。
「世界制覇の邪魔になる、それだけだ」
「おのれ」
「それはブラックサタンでも同じだったな」
ここでストロンガーが問うた。
「ご名答」
「やはりな」
「あのサタン虫は私が作り出したもの。そしてあの首領もまた私の分身であったのだ」
「では何故デルザーを怖れた!?あれもまた貴様の組織ではないか」
「私の分身はあくまで分身だということだ」
彼はそう答えた。
「私の真意を知りはしない。分身が不要になっただけだ」
「ではデルザーがあの時の貴様の真の組織だったのか」
「そういうわけでもない」
しかし首領はそれを否定した。
「どういうことだ」
「ブラックサタンもデルザーも互いに私の細胞から生まれ出たもの。だがブラックサタンは私の脳ではない。あくまで分身だっただけだ」
「では岩石の首領の中にいた貴様は」
「そう、あれは私の脳の一部だ」
首領は声に笑みをたたえてそう言った。
「恐竜に複数の脳があったのは知っているな」
「無論」
「だからあの姿だったのか」
岩石の首領の中にいたのは巨大な一つ目の頭脳であったのだ。一度見たら忘れられぬ無気味な姿であった。
「あれは私の脳の一部。デルザーの様な組織を操るにはそれしかなかったのでな」
デルザーは強力な改造魔人によって構成されている。その個々の力は他の組織とは比較にならないものであったのだ。それを陰から操るにはそれなりのものが必要だったのである。
「だがそれが敗れた。私は今度は諸君等に正面から当たろうと考えた」
「それがネオショッカーか」
スカイライダーが声をあげた。
「そうだ。かってのショッカーの様にせんとな。それは成功した」
「何を言うか」
しかしライダー達はそれに反論した。
「威勢がいいな」
だが首領は動じてはいなかった。平然とそう返した。
「だからこそ私も真の姿で乗り込んだのだ」
「あの怪獣が貴様の正体だったというのだな」
「そう、あれが私の実体だった。本来は暗黒星雲にいたのだがな」
「暗黒星雲」
「私の故郷だ。今となっては懐かしい」
「それでは貴様はそこから地球への侵略を目論んでいたのか、ショッカーの頃から」
「そうだ。だがネオショッカーも潰えた。諸君等の手によってな」
ライダー達はあの時のことを思い出していた。彼等はスカイライダーを中心として決死の覚悟で首領に立ち向かいそれに勝利したのであった。
「あの時は誰もが全てが終わったと思っただろう」
「・・・・・・・・・」
彼等はそれに答えなかった。その通りであったからだ。
「だが私の分身は故郷にも残っていたのだよ」
「テラーマクロと悪魔元帥か」
「そうだ」
スーパー1の問いに答えた。
「彼等もまた私の分身だったのだ。いざという時の為に残しておいてよかった」
「そして再び地球に」
「途中でテラーマクロと悪魔元帥が対立したのは予想外だったがな。所詮分身は分身ということか」
「クッ・・・・・・」
「だが実体をなくした私には仕方のないことだった」
「実体か」
「そうだ」
「では聞こう。今の貴様は何だ」
ライダー達はそれに気付いた。そして問うた。
「今俺達に話しかけている貴様は一体何だ!?実体がないのなら貴様は・・・・・・」
「知りたいか」
首領はライダー達の反応を楽しむ様に問うてきた。
「この場合は知りたくないと言ったら貴様も納得しないだろう」
「フフフ、わかっているではないか」
「ごたくはいい。早く今の姿を現わせ」
「よかろう」
首領はそれに答えた。
「ではライダー諸君、見るがいい。今の私の姿を」
何か得体の知れぬ影が動いた。
「これがこの世を支配する神の姿だ!」
影が姿を現わした。そう、それは影であった。
「な・・・・・・」
ライダー達はその姿を見て絶句した。その影は普通の影ではなかったのである。
身体は確かに黒い巨大な影であった。だがその頭はドクロであった。
しかも普通のドクロではない。額にもう一つ禍々しい目を持つドクロであった。
「フフフ、どうだライダー諸君、今の私の姿は。素晴らしいだろう」
「何と・・・・・・」
これにはライダー達も呆然としていた。実体ではないのは勘付いていた。しかしこの様な姿であるとは思いもしなかったからである。
「ネオショッカー崩壊の時私は実体を失った。だがこの魂までは死んではいなかったのだ」
「どういうことだ」
「そのままだ。今私が言ったままだ」
首領は嬉しそうに答えた。その黒いドクロの歯が無気味に動く。
「私は一度故郷に帰った。そしてテラーマクロと悪魔元帥を送り込んだのだ」
「それはさっき聞いた」
「まあ聞くがいい。諸君等とは長い付き合いだ。是非聞いてもらいたいのだ」
首領は彼等に対してそう言った。
「その間私は何もしなかったわけではない。そう、力を集めていたのだ」
「力を」
「そうだ。宇宙にある負の気。地球にもふんだんにあるだろう」
「憎しみや悲しみか。貴様が最も好きなものだな」
「フフフ、流石に察しがいいな」
「言うな、貴様はそれを取り込んだというのか」
ライダー達はその黒い姿に臆することなくそう問うた。首領を見上げ指差して問い詰める。
「宇宙にある負の力、美味であったぞ」
首領は答えるかわりにこう言った。やはり楽しむ様な声であった。
「その力を蓄えた私は地球に戻ったのだ。そしてかっての部下達をこの力で甦らせ再び部下とした」
「それがあの大幹部や改造魔人達か」
「手強かっただろう。諸君等の相手をさせ、我が世界征服の手足とするべくわざわざ呼び戻したのだからな」
「言うな。それがバダンだったというのか」
「それは言うまでもないことだと思うがな」
「クッ・・・・・・!」
ライダー達はそれを聞いて吐き捨てる様にして呟いた。
「何処までも諦めの悪い奴だ」
「私は諦めたりはしない。野望を実現させるまではな」
首領はこれに対してもこう答えた。
「それももうわかっていることだと思っていたがな」
「フン」
だがライダー達はそれに対して首を横に振った。
「そしてその負の力を集めたのが今の貴様だと言うのか」
「その通り」
首領は得意気にそう答えた。
「この影は全て負の力だ。どうだ、素晴らしいだろう」
「そうなってもまだ諦めないとはな」
だがライダー達はそれを認めようとはしなかった。
「だが首領よ、わかっているな」
そして彼を指差してこう言った。
「無論」
首領もそれに応える。
「貴様が、この世に悪がある限り俺達は、ライダーは戦う。そして貴様を倒す!」
「できるかな」
だが首領は鼻で笑ってこう返した。
「諸君等に今の私を倒すことが」
「出来る。いや」
彼等はここで言葉を変えた。
「必ずやる!行くぞ首領」
「ここで貴様を完全に倒す!」
「よかろう」
首領は笑いながらそれに応える。
「では来るがいいライダー諸君よ。今ここで諸君等を完全に滅ぼし我が野望の糧としてくれよう!」
「滅びるのは首領・・・・・・」
彼等はそう言いながら一斉に身構えた。
「貴様だ!」
そして跳んだ。こうして最後の戦いがはじまった。
ライダー達は跳び、それぞれ決しの攻撃を仕掛ける。だが首領は実体を持たない。その攻撃は全てすり抜けてしまう。
「おのれっ!」
首領はそれを見ながら笑っている。そして彼はゆっくりと構えた。
「今度はこちらの番だ」
全身からその黒い影を放ってきた。それでライダー達を貫かんとする。
「ヌッ!」
「ウォッ!」
彼等は左右に散った。そしてその黒い影をかわした。それはあの黒い光とはまた違っていた。
「これは一体・・・・・・」
「これこそが負の力だ」
首領はその言葉に対してこう答えた。
「宇宙にある負の気、これがそうなのだ」
「これが・・・・・・」
「そうだ。確かに私は実体を持たない。だがな」
首領は言葉を続ける。
「諸君等を攻撃することはできるのだ。この言葉の意味はわかるな」
「ヌウウ・・・・・・」
「さあ覚悟するがいいライダー諸君。そして我が生け贄となるのだ!」
首領はさらに攻撃を強めた。ライダー達はそれに対してその攻撃を避けるだけで手が一杯であった。
「どうすれば・・・・・・」
ライダー達は考えた。だがこちらの攻撃は通用しないのだ。打つ手がないと思われた。
しかし諦めるわけにはいかなかった。彼等がここで倒れては世界はどうなるのか。それは言うまでもないことであるからだ。
その間も攻撃は続く。やはりどうすることもできない。そう思われたその時であった。
「こうなったら・・・・・・」
ゼクロスが首領の前に出て来た。
「ゼクロス」
他のライダー達は彼を見据えてその名を呼んだ。
「ほう、貴様か」
首領も彼を見下ろしていた。その三つの目が無気味に動く。
「裏切りここまで来るとはな。やはりこうなったか」
「答えるつもりはない」
だがゼクロスはそれには答えない。
「行くぞ」
ただこれだけを言った。そして身構える。
「戯れ言を」
首領はそれを聞いてこう言った。
「何もできないというのがまだわからないようだな」
「それはどうかな」
しかしゼクロスは諦めてはいなかった。
「この世に存在するもので決して死なないもの、滅びないものは存在しない。それは首領、貴様もだ」
「ほお」
首領はそれを聞き面白そうに声をあげた。
「ではどうやって私を倒すつもりだ。攻撃が効かないというのに」
「それを今から見せよう」
ゼクロスはそう言うと構えた。そして全身に力を溜める。
その全身を赤い光が覆っていく。そして彼は跳んだ。
「喰らえ・・・・・・」
今赤い矢となった。そのまま首領に突き進む。
「ゼクロスキィーーーーーーック!」
そして蹴りを放った。それは首領の黒い胸に向かう。
「フフフ」
しかし首領はそれを見ても微動だにしなかった。
「それがどうしたのだ。先程から言っておろう」
彼は絶対の自信があった。
「攻撃が通用しないということをな」
そうであった。彼はライダーの攻撃など全く恐れてはいなかったのだ。
それでもゼクロスは突き進む。今彼は赤い流星となっていた。
「効かないかどうかは」
飛びながら彼は言う。
「これでわかることだ!」
そして叫んだ。それと同時にその蹴りが首領の胸に突き刺さった。
「無駄だと言って・・・・・・」
首領は言おうとする。だがその言葉が止まった。
「ムゥッ!」
何とその蹴りが胸に突き刺さったのだ。そして首領の胸に深くめり込む。
「ググ・・・・・・」
呻き声が漏れる。首領の動きが止まった。
ゼクロスはその反動で後ろに跳ぶ。そして着地した。
「やはりな。思った通りだ」
「どういうことだ!?」
他のライダー達は彼に問うた。
「はい、俺のこの赤い光のことは知っていますね」
「ああ」
彼等はゼクロスの説明を聞き頷いた。
「これは気なんです。俺の身体から発せられる気」
「気」
「そうです。これは実体じゃない。だから首領にダメージを与えることが出来たんです」
「そうだったのか」
ライダー達はそれを聞いて首領が苦しむのを理解した。
「そしてこれは俺だけじゃない。皆持っているんですよ」
「俺達も」
「そうです。それこそ」
ここで彼は仲間達の腰のベルトを指差した。
「そのベルトにある力です。その力を使えば首領を倒すことが出来ます」
「サザンクロスを破った時のようにか」
「はい。ですがそれは同時に行わなければなりません」
「同時に」
そう言いながら首領を見上げる。
「ええ。やりますか」
「無論」
彼等に反対する理由はなかった。
「方法があるのならそれに賭ける。例えその可能性が限り無くゼロに近くとも」
「それを必ず成功させる。それがライダーだ」
「はい」
ゼクロスは彼等の言葉に頷いた。
「ではやりましょう。そして今度こそあいつを」
「おう」
「わかった」
ライダー達はそれに頷いた。そして力を溜めはじめる。
その間に首領は態勢を整えていた。ライダー達を見下ろす。
「よくもやってくれたな」
その声は怒りに満ちたものとなっていた。
「最早容赦はせぬ。これで始末してやろう」
再び全身から闇を放つ。それはライダー達に襲い掛かる。
「来たな」
ライダー達はその闇を見ていた。しかし怯んではいなかった。
「行くぞ」
「ああ」
そして互いに顔を見合わせ頷き合う。その身体をそれぞれのベルトから発せられる光が包んでいた。今彼等はそれぞれの色の光に包まれていた。
「よし・・・・・・」
一斉に跳んだ。そのままキックの態勢に入る。
「ライダァーーーーーーーー・・・・・・」
闇が迫る。しかし彼等はその闇さえも切り裂いた。
「何ッ!」
それを見た首領は思わず叫んだ。その間にもライダー達は矢となって彼に向かって来ていた。
「キィーーーーーーーーーーッ!」
そしてその全身を蹴りが貫いた。額の第三の目にはゼクロスの蹴りがあった。
額が貫かれる。貫いたゼクロスはそのまま突き抜けて行く。
着地した。他のライダー達も同時に着地する。皆首領のその黒い身体を貫いていた。
「やったか!?」
彼等は振り向き首領を見やった。そこには漆黒の巨人がまだ立っていた。
「グオオオオ・・・・・・」
しかしその闇は次第に弱くなっていた。額は貫かれ第三の目は完全に潰れていた。
「み、見事だライダー諸君。まさか実体を持たぬ私を倒すとは」
「言った筈だ、首領」
彼等は立ち上がり首領を見上げてこう言った。
「例えどの様な姿だろうと貴様を倒すと。俺達は貴様を倒しこの世に平和を取り戻す為に戦っているのだからな」
「フフフ、そうか」
首領はそれを聞き笑いながら言った。
「そうだったな。迂闊だったわ。実体を持たぬからといって油断していたわ」
彼は己に言い聞かすようにしてそう言葉を続ける。
「私の負けだ。私はまたしても諸君等に敗れたのだ」
「・・・・・・・・・」
ライダー達は何も語らない。首領の姿が次第に薄くなっているのを見守っているだけであった。
「だがな」
しかしここで首領の声の色が変わった。
「私は死なぬ。また諸君等の前に姿を現わすだろ。そして」
残された二つの眼がギラリ、と光った。
「今のこの姿が滅びようとも諸君等をこのまま生かして返すわけにはいかぬ。覚悟しろ!」
「ムッ!」
その瞬間首領の全身が闇となった。そして爆発を起こした。黒い闇の爆発であった。
「諸君等も道連れにしてやる。覚悟しろ!」
「クッ、逃げろ!」
「おう!」
その瞬間基地は爆発に包まれた。黒い闇に包まれてバダンは完全に崩壊した。
「おやっさん、あれは」
それを夫婦岩のところから見た滝はその黒い闇を指差して立花に言った。
「おう、わかっている」
立花はそれを見て答えた。
「やってくれたよ、あいつ等。遂にバダンを倒したんだ」
彼はそれを見て感慨深げにそう呟いた。
「遂にな。首領もとりあえずはこれで最後だ」
「ええ。しかし」
志度はそれを見ながら前に出て来た。
「彼等は無事でしょうか。あの爆発の中にいては」
「それは・・・・・・」
誰もがそれを受けて不安な顔になった。だがここで役が言った。
「大丈夫ですよ。心配いりません」
「何故ですか!?」
皆それを受けて役に顔を向けた。
「彼等はそう簡単には死んだりしませんよ。それは貴方達が最もよく御存知の筈です」
「しかし・・・・・・」
それはよくわかっているつもりであった。しかし今回ばかりは。彼等は不安を隠せなかった。
「嘘だと思われるなら」
「はい」
まるで彼に誘われるようにして声をあげる。
「あれを御覧下さい、ほら」
役は前を指差した。皆それにつられ前に顔を向ける。
「おお・・・・・・」
皆そこを見て声を漏らした。そこに彼等がいたのだ。
「彼等は決して死にはしませんよ」
役は微笑んでそう言った。
「この世に正義がある限り。そして」
ライダー達はそれぞれのマシンに乗っていた。横一列に並んでこちらにやって来る。
「私達がいる限りね。ですから私達は彼等を安心して迎えればいいんですよ」
「ああ、その通りだ」
立花はそれを受けてこう言った。
「それが一番わかっている筈なんだがな。どうしても心配になっちます」
「俺もですよ。何でかなあ、いつも帰ってくるのに」
滝もであった。他の者も二人と同じ顔をしていた。
「それはですね」
役はそんな彼等に対して語った。
「皆ライダーが好きだからですよ。だから心配するのです。そう、それは」
彼は話を続ける。
「私達も心はライダーであるからでしょうね。だからこそ彼等が好きなんですよ」
しかしそれは誰も聞いてはいなかった。彼等は皆役を置いてライダー達の下へ向かっていた。
「おやおや」
役はそれを見て苦笑した。
「しょうがない人達ですね。人が折角話しているのに」
だがその顔は怒ってはいなかった。
「けれどこれでいいのでしょうね。私が言うまでもない」
怒るどころかその顔は微笑んでいた。そして彼も歩きはじめた。ライダー達のところへ。
ライダー達は立花達の出迎えを受けていた。その顔も声も明るく、戦いに勝った男達のそれであった。
バダン最後の日 完
2004・12・30
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