仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
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戦士達の旅立ち
バダンは遂に滅び首領も消え去った。世界には再び平和が戻ろうとしていた。だが戦士達に休息はないのだ。
「行くのか」
成田空港で立花達は戦士達を前にしていた。
「ええ」
彼等は答えた。そして立花達を見た。
「まだまだ世界には裏で企む奴等がいますから」
「それにあの首領のことです。また出て来るかも知れませんから」
「そうだな」
立花はそれを受けて頷いた。
「御前達らしいな。戦いが終わってもそうして次の戦場に向かう。そして新たな悪と戦うんだな」
「ええ」
ライダー達はその言葉に頷いた。
「それがライダーの宿命と言えばそれまでだが。辛いことだと思う」
「いえ」
だが彼等はその言葉には首を横に振った。
「それが俺達の使命ですから。今更何とも思わないですよ」
「そうですよ。だから気にしないで下さい。俺達はそれが当然だと思っていますから」
「そうか、そうだったな」
今度は逆に立花が頷いた。
「じゃあわしはこれ以上はあまり言うことはない。ただ御前達を見送るだけだ」
「はい」
「行って来い。そしてたまには帰って来いよ」
「わかってますよ」
彼等はそれには笑顔で答えた。
「おやっさんのコーヒーが飲みたくなったら何時でもね」
「おう、何時でも来い」
立花はそれを受けて笑顔でこう返した。
「とびきり上等のやつを御馳走してやるからな」
「楽しみにしてますよ。では」
「おう、行って来い」
まずは本郷が向かった。
「今度は何処だ」
「イランです」
彼は答えた。
「そこでルリ子さんと待ち合わせてるんです。あそこでテロリストの動きが活発化しているらしいですから」
「そうか。ルリ子のことを頼むぞ」
「はい、任せて下さい」
彼はそう言うと空港の奥に消えていった。次には一文字が発った。
「御前は何処だ」
「中国に行きます。西安の辺りで人を襲う怪物が出たと聞きましたんで」
「怪物がか」
「バダンの残党かも知れませんしね。調べて来ます」
「気をつけてな」
「後から俺も行くからな」
ここで滝も言った。
「楽しみにしているぜ。待っているからな」
「おう」
一文字も消えた。そして風見が足を進めた。
「俺はタンザニアに行きます」
「俺もです」
佐久間も言った。
「タンザニアには何があるんだ」
「あそこでカルト宗教の団体が蠢いているということなので。奴等を調べて対処する為に」
「そういえばあそこには得体の知れない化け物もいたな」
「ええ」
風見はそれに応えた。かってタンザニアにはムングワというネコ科の猛獣に似た怪物が夜な夜な人を襲っていたことがあるのだ。
「それの可能性もあります。ですから俺が行きます」
「よし、行って来い」
「はい」
風見も行った。結城も進みはじめた。
「俺は東南アジア、フィリピンに行きます」
「この前地震があったな」
「はい、それの救助に向かいます」
これもライダーの仕事の一つであった。
「俺達のこの力はそういった時の為にもありますから」
「その通りだ」
立花はそれを聞き頷いた。
「わかっているのならいい。思う存分やって来い。そして一人でも多くの人を救うんだ」
「はい」
結城もそれに返すようにして頷いた。
「行って来ます」
「私もすぐに行きますよ」
竜が結城に対して言った。
「貴方も」
「はい。お一人じゃ何かと厳しいでしょう。人は多い方がいい。違いますか」
「確かに」
結城はそれを受けて微笑んだ。
「じゃあお待ちしていますよ。是非ともお願いします」
「はい、期待していて下さい。それでは」
「ええ」
結城も別れた。神も。
「御前が次に行くのは何処だ」
「キューバです」
彼は答えた。
「あの海で海難事故が相次いでいますから。原因を突き止めてそれを収めて来ます」
「海か。御前にはおあつらえ向きのところだな」
「ええ。それが何なのかはわかりませんがね」
彼は笑顔でそう答えた。
「何が出ようと恐れはしませんよ。それは安心して下さい」
「馬鹿野郎、しみったれたことを言うな」
立花はその言葉を笑い飛ばした。
「御前にはいつも心配させられてきたんだ。今更何を言ってやがる」
「あれっ、そうだったんですか」
「そうだよ。だから今更そんなことを言う必要はない。わかったな」
「はい」
「それに私も行くからな」
ここで志度が出て来た。
「博士」
「君一人じゃ何かと辛いだろう。それに」
「それに?」
「あの辺りの生態系にも興味があるんだ。科学者としてもお願いしたいのだが」
「ええ、いいですよ」
神はそれを快諾した。
「では行きましょう。確かに一人より二人の方が何かと都合がいいですし」
「うむ」
こうして神も去った。次はアマゾンであった。
「御前はやっぱりアマゾンか」
「違う」
だが彼は立花の問いに首を横に振った。
「アマゾン今度はアメリカに行く」
「アメリカ!?また意外だな」
「アメリカと言っても色々ある。アマゾン今度はロッキーに行く」
「ロッキーにか」
「うん。あそこで何かトカゲと人の合の子みたいなのが出ている。そして人襲っているらしい。アマゾンそれ本当なら許せない」
「そうだな」
それは立花も聞いていた。アメリカではチュチェカブラという謎の生物が蠢いているという噂があるのだ。
「それ調べる。そしてもしそれ本当ならアマゾンそいつやっつける」
「そうか、わかった。だが御前一人じゃないだろう」
「おう、俺らが行くよ」
ここでモグラ獣人が前に出た。
「アマゾン、行こうぜ」
「モグラ」
「俺ら達は何処でも一緒だろ。これからも」
「うん」
アマゾンはその言葉に頷いた。
「だからな。行こうぜ、一緒に」
「わかった。モグラ、頼む」
「こっちこそな」
二人は手を握り合った。そして彼等も発った。次は城であった。
「俺はロシアに行きます」
「ロシアの何処だ?」
「カフカスです」
「あそこか」
ロシアとイラン、トルコの国境である。山脈であり多くの民族がモザイク状に入り混じっている。ソ連の独裁者スターリンもベリアもカフカスの中の国グルジアの生まれである。彼等の行動や性格からもわかる通り過酷な歴史を歩んできている。今も深刻な民族闘争が繰り広げられている。
「ええ、やることはわかっています」
「そうか。ならばいい」
彼はその紛争を止めるつもりなのだ。
「幸い俺は銃や爆弾では死にはしませんからね。丁度いいかと」
「だがあそこは辛いぞ」
「わかってますよ。けれど逃げるつもりもありません」
彼はそう言いながらニカッと笑ってみせた。
「あいつだって逃げなかったんですから」
「そうだったな」
立花はここであの女戦士のことを思い出した。
「しかし一人では辛いだろう」
「何、心配する必要はない」
ここで海堂博士が出て来た。
「私も行くからな」
「博士」
城と立花はそれを見て同時に声をあげた。
「一人で行くつもりかい?幾ら何でもそれは格好つけ過ぎだよ」
「けれど」
「けれども何もないさ。君みたいな無茶する人間を放ってはおけない。それに」
「それに・・・・・・!?」
「私もライダーになりたいんだ。いいかね」
「ええ」
城はその言葉を受けて微笑んだ。
「ではお願いします。宜しく」
「ああ。これからもな」
そして城も新たな場所に向かった。今度は筑波が出た。
「俺はポーランドに行きます」
「わいも」
がんがんじいも名乗り出た。
「あそこで地震がありましたさかい。行って来ますわ」
「そうか」
立花と谷がそれを受けて頷いた。
「洋、張り切って行って来い」
「はい」
彼は谷に言われ快い返事を返した。
「がんがんじい」
「はいな」
「洋の足を引っ張るなよ。日本人の恥を晒すなよ」
「何で洋はんとわいでこんなに違うんかなあ」
がんがんじいはその言葉を受け思わずぼやいてしまった。
「洋、こいつを頼むぞ」
「え、ええ」
筑波も思わず苦笑していた。
「がんがんじい」
そしてそれを受けた形でがんがんじいに顔を向けた。
「はい」
彼の方はいささかふてくされていた。
「頼むよ。二人で頑張ろう」
「それでしたら」
その優しい声を受けて彼も機嫌を直した。そして二人は快く次に戦場に向かった。沖が次に出る。
「御前は何処に行くんだ」
「タヒチに行きます。今あそこも大変ですから」
彼は答えた。
「津波があったらしいな」
「ええ、それで。この腕が何かの役に立つでしょう」
彼はそう言いながら自らの腕を見た。
「人々の為に役立てるなら」
「そうだな。御前の腕は本来その為にあるからな」
谷はそれを見てこう言った。
「一也」
「はい」
「御前の本来の仕事をしてこい。そして多くの人を救ってくるんだ。いいな」
「わかりました」
彼はそれに答えた。
「それじゃあ俺も」
ここでチョロが出て来た。
「そうだな。一也だけじゃ何かと大変だろう。頼めるか」
「勿論ですよ、その為にここへ来たんですから」
彼はにこやかに笑ってそう答えた。
「俺一人じゃちっぽけなもんですけれどね」
「いや、それは違うよ」
だが沖はその言葉を否定した。
「確かに一人一人の力は小さい。けれどそれが集まって大きな力となるんだ」
「そうだ、一也の言う通りだ」
これには谷も賛同した。
「確かに俺達はちっぽけなものさ。けどな、それが集まって凄い力となるんだろうが」
「そういうものですか」
「そうだ。だからバダンも倒せたんじゃないのか。違うか」
「そう言われてみるとそうですね」
彼は戸惑った顔から明るい顔に変わっていった。
「じゃあ俺もその力の一部になってみせますよ。一也さん、それでいいですね」
「ああ、勿論」
「ではまた」
「おう、何時でも戻って来い」
沖も去った。こうして九人のライダー達は皆次の戦場へ向かって行った。
「行ったな、皆」
立花達は彼等が消えた道を見ながら感慨深げに呟いた。
「いえ、まだいますよ」
ここで声がした。
「おう、そうだったな。すまん」
彼等はそれを受けて声がした方を見た。そこに彼がいた。
「俺がいますから」
「御前はどうするんだ」
立花が問うた。
「そうですね」
村雨は考えながら言葉を出した。
「俺も先輩達と一緒ですよ。バダンは倒しました。しかし」
「しかし」
「まだ俺の仕事は終わってはいません。いえ、永遠に終わらないかも知れませんね」
そう話す彼の顔は澄んだいいものであった。
「この世界にはまだまだ俺達の力を必要としている人達がいます。それは今までの戦いと今の先輩達を見てよくわかりました」
「そうか、わかったか」
「はい。そしてあの首領も何時復活するかわかりません。いえ」
彼の目が鋭いものになった。
「何時の日か復活するでしょうね。そして俺達の前に姿を現わすでしょう」
「死んだわけじゃないのか」
「確かにあの時死にました。けれどあの首領はおそらく」
彼は言葉を続ける。
「この世に悪の心がある限り何度でも甦るのでしょう。そしてまたこの世界を掌中に収めんとする筈です」
「だろうな。今までもそうだったからな」
「だからです。俺も行きます。そして世界を守りますよ。ライダーとして」
「ライダーとしてか」
立花はその言葉を受けてライダーという言葉を自分も口にした。
「ええ、ライダーとして」
村雨は答えた。
「これからも戦います。この世に生きる全ての人の為に」
「自分を捨てて」
役が問う。
「ええ、勿論です。それがライダーですから」
それにも答えた。その声には最早迷いはなかった。
「なら問題はありません。仮面ライダーゼクロス、いえ村雨良」
ここで彼は村雨を言い直した。
「これからの貴方の活躍を期待していますよ」
「有り難うございます」
「私は長野の戻りますがね。何かあったら遊びに来て下さい」
「はい」
「蕎麦と林檎ならふんだんにありますから」
「わかりました、楽しみにしています」
蕎麦と林檎を聞いた村雨の顔がほころんだ。そして笑顔で答えた。
「良君」
今度は伊藤が出て来た。
「立派になったな。本当に」
「いえ、それ程でも」
「あの時のことは覚えているな」
「勿論です」
彼等はバダンを二人で脱出した時のことを思い出していた。長いようで短い旅であった。
「全てはあの時からはじまりましたね」
「そうだ。何か遙か遠い昔のようだな」
「それでいてついこの間のことのようです。不思議ですね」
「ああ」
伊藤はそれに頷いた。
「本当にな。あの時はどうなるか本当にわからなかった」
「はい」
「だが必ず何とかなると思っていた。それは何故かわかるな」
「ええ、希望がありましたから」
「そうだ、希望だ」
伊藤はそれを聞いて満足したように頷いた。
「希望があった。私は常にそれと一緒にいた。だから君と一緒に行けたんだ」
「その希望とは」
「決まってるじゃないか」
伊藤はそう言ってにこりと笑った。
「君だよ」
そして村雨を指差してこう言った。
「俺が」
「そうだ、君自身がだ」
彼は村雨を見上げて微笑んでいた。
「君は希望だったんだ。バダンを倒しこの世に平和を取り戻す希望だ。そう、光だったんだ」
「光」
「そうだ。君はこの世を照らす光なんだ。仮面ライダーはね」
「大袈裟ですよ」
村雨は苦笑せずにいられなかった。
「俺一人じゃここまで出来ませんでしたから」
そしてこう語った。
「それは違うな」
しかし伊藤はその言葉を否定した。
「君達があればこそ、だ。だからこそバダンを滅ぼすことができたのだ」
「その通りだ」
立花もそれに同意した。
「御前達がいなければここまではとてもいけなかっただろう。世界はバダン、いやもうショッカーに征服されていただろうな」
「おやっさん」
立花ならではの言葉の重みがあった。多くの組織を向こうに回して戦ってきた男の言葉は重かった。
「良、御前はわし等を導いてくれた光だ。御前達全員がな」
「そうだぞ、それは誇りに思ってくれ」
「はい」
「ライダーの誇りとしてな。世界を守る戦士としての誇りだ」
「この機械の身体にそれがある」
彼は自らの左手の平を見てそう呟いた。
「そう、その身体にだ。辛い宿命だと思ったこともあるだろう」
「ええ。それは認めます」
ライダー達は身体は人間のものではない。それに苦しんだ者もいた。
村雨も同じである。だが今彼はそれを苦しみとは思っていなかった。
「自らのこの運命を呪ったこともあります。しかし今は」
「違うのだな」
「はい、これは先輩達も同じだと思います」
彼はそれに答えた。
「今は誇りに思っています。この身体だからこそ戦ってこられたのですから」
「そうか」
伊藤はその言葉を温かい目で受けていた。
「君を改造したのは私だ。君には済まないことをしたと思っているのだが」
「いえ、博士が悩まれる必要はありません」
村雨はここでそう言った。
「それどころか今は博士に感謝しています」
「有り難う」
伊藤の目はその言葉でもう潤んでいた。
「君にそう言ってもらえるとは」
「ライダーだからこそ、ゼクロスだからこそバダンを滅ぼすことができましたから。そして人々を救う力を手に入れることができた。感謝してもし足りませんよ」
「済まない、本当に済まない」
彼は泣いていた。泣きながら村雨の両肩を持っていた。
「博士・・・・・・」
「バダンに協力し、君の身体を機械にした私を許してくれるなんて・・・・・・」
「許すも何も」
しかし村雨の声は温かいままであった。
「博士が、そして皆がいたからこそ俺は戦えたんです。許すだなんて」
「そうか、有り難う」
伊藤はそれ以上は言えなかった。ただ泣くだけであった。
「良さん」
今度は少女の声がした。
「ルミちゃん」
見ればルミが微笑んでいた。
「今度は何処へ行くんですか」
「そうだなあ」
彼は言われて考え込んだ。
「アイルランドに行って来る」
「アイルランドに」
「そう、それも北にね。あそこもまだ物騒だから」
言わずと知れた北アイルランド問題であった。まだ完全に解決はしていないのである。
「そう、気をつけて下さいね」
「ああ」
村雨は笑顔で答えた。
「ルミちゃんもな。今度会う時は何時になるかわからないけれど必ず会おう」
「ええ」
「そして・・・・・・今度は」
「今度は?」
「笑顔で再会しよう。最初会った時みたいに無表情なやつじゃなくて」
「ええ、わかったわ」
ルミはそれを受けて微笑んだ。
「楽しみにしてますえ、良さんの笑顔」
「ああ、是非待っていてくれ。その時を」
村雨は言った。
「笑顔で」
そして微笑んだ。人間の、優しい微笑みであった。
「はい!」
ルミも笑顔で頷いた。そして村雨は彼等に別れを告げ背を向けて彼を必要とする場所に向かって行った。
「行ったか、皆」
立花は完全に消えた村雨の背をまだその目に見ながら呟いた。
「はい、行っちまいましたね」
隣にいる谷がそれに応える。二人の目も潤んでいた。
「次に会えるのは何時かわかりませんがここはあいつ等の活躍を温かく見守りましょう」
「ええ」
立花は彼に言葉に頷いた。
「御前達」
彼は窓に見える今まさに旅立とうとしている飛行機を見た。十機ある。
「行って来い、そして何時でも帰って来い。ずっと待ってるからな」
一機ずつ飛び立っていく。そして十機全てが飛び立った。瞬く間に消えていく。
戦士達は新たな戦場に向かう。戦いは終わることはない。だが彼等はそれでも戦い続ける、平和の為に、人々の為に。それは何故か。彼等が仮面ライダーであるからだ。
戦士達の旅立ち 完
仮面ライダー 完
2005・1・4
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