エターナルトラベラー
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第六十九話
前書き
今回はオリ主が関わる以上起こるだろう弊害についてです。
ご都合主義的展開が乱舞しますがご了承いただけますよう。
オフ会も宴もたけなわと言う時、俺は聞きたいことがあると、深板とファートを呼んで、少し席を奥へとズラした。
丁度彼らの喧騒でこちらの会話も聞き取れないだろう。
「それで、俺達に聞きたいことって?」
そう深板が問いかけた。
「『リリカルなのは』について少し聞きたいことがあってね。あの作品っていくつタイトルがあったっけ?」
二人は何をバカな事を聞いているのかと言う表情を浮かべたあとにファートが答えた。
「無印、A’s、stsにVivid、後はForceだろ?」
うわぁ…結構作られていたんだな。
て言うかstsってなんの略だろう?
「そんなにあるんだ…」
「獅子座さんはどこまで知っているんです?」
深板が俺に聞いた。
「A’sまでだな」
「え?以前シリカ嬢にキャロのバリアジャケット型の防具をプレゼントした時、元ネタを知っていましたよね?」
「ああ、その事か…すこし長い話になるが、聞いてくれるか?俺が関わったことで変更された過去と、今までに経験した事を」
真摯な顔つきでコクリと頷いた二人を見て俺は話し始めた。
まず来るはずのユーノが現れず、エル…えーっと、エルグランドと言う恐らく転生者であろう介入があった事。
もろもろの事情が重なってフェイトは記憶喪失のまま家が引き取った事、結局プレシアさんは救わずに原作どおり虚数空間に落ちていった事。
その後現れたエルグランドの暴走で平行世界の未来へと飛ばされた事と、そこで知り合った人たちの中にキャロが居た事。
何とか帰還した後、エルグランドとの再戦、及び相手の逃走。
闇の書事件は穏便に解決し、その結果ツヴァイは生まれていないが、八神一家は今はミッドチルダでグレアム提督のやっかいになっている。
なのは達は管理局員にはならず、嘱託資格すら持っていない事等。
そう言えば俺が昏睡から覚めた後にソラから、はやてが管理局入りしたと聞いたとも彼らに話した。
「取りあえず、これだけは最初に言わせろ」
そう言った深板はファートと呼吸を合わせたように絶叫する。
「「オリ主爆発しろっ!」」
ごめんなさい…
しばらくして落ち着いた二人は、俺になのは達の年齢を聞き、なにやら二人だけでぼそぼそと話し合った後、要点を纏めたようで、話しだす。
「取りあえず獅子座さんは誰を救いたいの?」
その深板の言葉はとても思慮深い響きだった。
「俺が危惧しているのはヴィヴィオの事だ。なのは達があの未来をたどらないと言う事はヴィヴィオはどうなる?」
誰かが助けるのか、それともゆりかごとともに蒸発するか。
違う未来だが関わってしまった彼女を救えないのは心にシコリを残す。
…まあ、リオの事も有るけれどね。
「…事はヴィヴィオだけの問題じゃないんだ」
え?
「獅子座さんが体験した未来はストライカーズと言われている作品だ。リリカルなのはの3作目だね」
ストライカーズ。つまりstsとはこれか。
「知っての通り、舞台は無印から10年後のミッドチルダだ」
その後かいつまんで流れを聞くとスカリエッティのテロやら管理局の闇(脳ミソ)とか、なんか無印とA’sのほのぼのとした印象からかけ離れて行く。
「始まりは十年後からだったのだが、それまでの十年も所々触れている」
それまでの十年。つまり今か。
「物語としてはありがちだが、エリオやキャロ、スバルやギンガを偶然にせよ救ったのはなのはとフェイトだ」
「救う?」
「ああ、エリオとキャロは特殊な環境で、彼らを保護したのが執務官になっていたフェイトだ」
そんな事があったのか。
「…時期を見るとエリオについてはすでに手遅れだろう」
エリオはどうやら不正なクローン魔導師だったようで、それを発見した管理局が親元から引き離したらしい。
どうやら事の顛末はプレシアのようなものか。
亡くした子供のクローンを製造して育てていた。
確かに違法では有ったのだが、親元から引き離されるほどの家庭環境だったのかは分からないと深板は続ける。
その後管理局で保護されたエリオの心をほぐし、親身になって保護責任者になったのがフェイトと言うわけだ。
「キャロはまだ時間的猶予が有るが…これもなぁ」
幼い身で一族を追い出されたキャロはその身に危険が迫ると、彼女の使役竜が覚醒して彼女を守ろうと大暴れしていたらしい。
使い道はキャロを単騎で戦線に放り込んでの殲滅戦くらいしかないと管理局員が言っていた、と。
「あの殲滅兵器の如く扱う管理局員の言葉はアニメだったけれど聴いていて気持ちのいいものではなかったな」
とはファートの感想だ。
「それを何とか取りやめさせて、平穏な生活を与えたのもフェイトだ」
まあ、結局機動六課に出向させられたけどね、と深板。
「しかし、一番差し迫ってやばいのはスバルとギンガだ」
「何かあるのか?」
「空港火災に巻き込まれて、大きな落石にあわやと言う時に駆け付けたのがなのはだった。つまり…」
「なのはが関わらない今、そのまま死んでしまうと?」
「…その可能性が高い」
くっ…
「しかもその事件が起こるのは確か六年後の春…つまり」
「あと二ヶ月ほどと言うわけか…」
「ああ」
さらに二人はそのくらいに起こる事は覚えているが、日付までは覚えていないとの事。
…それは、まぁしかなたい。それでも十分覚えている方だろう。
「回避するだけならば中島家に接触すれば良いのかも知れないが、こちらの情報は未来視に近い。そんな事を説明するのは難しいし、近未来の情報を持っていることが露見するとすこぶる嫌な予感しかしない」
拉致監禁フラグだと深板が笑う。
「そして、結構重要なことだが、スバルはその事件に巻き込まれたからこそストライクアーツを真面目に始めたし、魔導師としての自分を考えたはずだ」
なのはに鮮烈に助けられたと言う思い出補正もあるかもしれないがな、とファート。
「火災の方を止められない以上、事件が起こってから助け出すのがこの場合の妥協点だ」
その場合、事件がいつ起きるかまでは分からないから最悪一月ほど張り込むことになるけれど、と言った後、確実性を求めるのなら中島家に接触するのが一番確かだけど、と。
「そして最大の不確定要素はその転生者の事だな」
「エルグランド?」
どういう事だろうか。
「なのはやフェイト、さらには八神一家まであんたに取られたんだ。後考えるとすれば…」
ファートの言葉を深板が引き継ぐ。
「ティーダさんを助けてランスター家ルート、今度の火災でスバルを助けて中島家ルート…いや、もしかしたらクイントさんを助けているかもしれない」
誰だよ…ティーダさんとクイントさんって。
「しかし、指名手配という話で一番可能性が高くなるのが、数の子ハーレムルートだろう」
数の子?
聞けば12人いる戦闘機人の名前が数字なんだとか。
前回彼女達と間見えたときは個別名なんて知らなかったからねぇ。
「そうなると、もはや原作トレースすら意味を成さない…最悪ヴィヴィオを保護できるチャンスも無いかもしれん」
そうして語られたsts編の話は…それは…よくもまぁ、危うい偶然の上で成り立っていると痛感させられた。
ヴィヴィオとの最初の邂逅なぞたまたま新人達が休みの時にたまたま通りかかったエリオとキャロに保護されるとかは、少しでも介入しようものならズレる事請け合い。
「だな。よくオリ主が六課介入のち、戦技教官として付くのとか有るけれど、それって絶対休みがズレるよな。普通に考えればヴィヴィオとの邂逅フラグは自然消滅だ」
それでも誰かが見つけて保護するだろうけれど、と続けた深板。
「話を戻すけれど、その転生者の魔力ランクは?」
「ざっとみてSSSは有るよ」
彼の魔力保有量だけ見れば他の追随を許さない物があった。
「SSS…最強オリ主フラグか。それで獅子座さんは?」
「AAA+」
俺の言葉に表情を硬くする深板とファート。
何だよっ!これでも頑張って伸ばしたんだよっ!
普通なら十分な魔力量なんだよっ!
「魔力量だけなら天と地ほどの差が有るな…以前勝てたのは経験の差か」
たぶんね。
「もしそのオリ主野郎が凶行に走ったら獅子座さんが止めないとな…原作を見るにSSSを止めれる魔導師がミッドチルダ地上本部勤務に居るか微妙だ」
そうなるか…だけど。
「ごめっ…それ無理」
以前エルグランドとの縁を『縁切り鋏』で切っちゃったから、二度と会うことは無い…はず。
「「なん…だと?」」
かいつまんで説明すると再度二人がキレた。
「「あほーーーーっ!」」
きーん
鼓膜が破れるかと思うほどの絶叫を耐え、こちらを向いた他のメンバーになんでもないとアピールしてから二人に向き直る。
「だめだ…これは詰んだ」
「お疲れ様でした」
「ちょっ!」
俺があわてると二人は表情を再び真剣な物に切り替えた。
「…最大の抑止力である獅子座さんが参戦できんとはかなり面倒な事になるぞ」
「…いや待て深板。逆に考えればアオさんが居れば六課やその周りに被害が及ばないと言う事ではないか?」
「なるほど、そうとも考えられる…が、しかし、絶対にブッキングしないと言う事は一体どちらが道を曲げる事になるんだ?」
む、それは知らないな。
「現場に向かおうとしたアオさんの方がたどり着けないと言う事態もありうるだろう」
「…かもしれん」
うーむ。確かのそうかもしれない。
しかし、彼らは凄いな。
正直ここまで頭が回るとは思わなかった。
彼らの事態を考察する力は中々の物だ、と場違いな考えが浮かんだ。
「結論を纏めると、ヴィヴィオを助けて全て円満解決を目指すのはとても難しいと言う事だな」
取りあえず先ずはスバル達の事をどうするか。
この場では結論は出ないだろうから、結論が出たら再度連絡をくれれば相談くらいは乗ってやれると二人の力強い言葉を最後にオフ会は終了する。
結局彼らはVividはほのぼの日常物だから気にするなと言っただけで、最後までForceの事は話さなかった。
…最後になのはとフェイトの出演を依頼する要望を念を押してはいたのだが。
そんな感じでオフ会は終了する。
◇
オフ会も終わり、海鳴温泉に宿を取っていたSOS団のメンバーはひとっ風呂を浴びた後、リクライニングソファにすわり、旅の疲れを癒していた。
「なあ、Forceの事を話さなかった事は正しかったと思うか?」
そう、リクライニングに座りソフトドリンクでのどを潤した後に深板がファートに問いかけた。
「…どうだろうな」
隣に居たファートが金髪のくせになぜか似合っている浴衣を着崩しながらリクライニングに深く背を預けて答える。
「ただ、自業自得と言う言葉では片付けられない事だと思う。アオさんも話を聞く限りじゃどちらかと言えば巻き込まれ系だ」
「だな」
「だから、責任を取ってForceまでの十年を管理局に従事して過ごせと言うのも違うだろ?」
stsを知らなければ改変されたA’sまではそんなに悪い話じゃないしな、とファート。
「確かに。
やったことの責任を取るってどういう事だろうな?大体俺らが知っていることも、物語として取り上げられた一部でしかない訳だ」
「そ。つまり、語られていないがフェイトやなのはが管理局にあのタイミングで入局したからこそ助けられた人もいるはずだ」
「そうだな。この世界の彼女達も獅子座さんが関わったとは言え、自分の意思でその未来を選んでいる。俺達がこの先に起こることをある程度知っているとは言え、その未来を彼女達に選ばせる権利は無いよ」
確かにな、と深板。
「だから俺はForceを教えなかった事は正しかったと思いたいね。アオさんに責任の全てが取れるわけじゃない…と言うか、厳密にはそんな責任は無いはずだしね」
そうファートが纏める。
「起こるはずだった未来から外れてしまったからと言って、責任を取れと言われたら、未来は自分の手で掴む物だと言う希望すら無い世界になってしまうからな」
そう納得する深板。
「まぁ俺らが出来ることは獅子座さんの相談に乗ってやることくらいだな。…っとそれよりも」
「なんだ?深板」
「なんだか獅子座さんから話を聞くとかなり面倒な事になっているし、俺達はオリ主でなくて本当に良かったな」
「ああ…それは俺もそう思う」
さて、十分に休んだ所で団長から声が掛かった。
「おーい、深板にファート、向こうに卓球台があるんだが一緒にやろうぜ」
「行くか」
「ああ、行こうか」
そう言った二人はリクライニングから立ち上がり、卓球台へと駆けて行った。
◇
シリカを現在間借りしている家まで送り届け、家に帰るといつもの家族会議。
議題はついさっき判明したもろもろの事情についてだ。
もちろんソースは適当に誤魔化したがソラだけは誤魔化せなかった。
他の転生者からの情報だと念話で返事をして家族会議を続ける。
全てを話し終えてから母さんが言った一言。
「あーちゃんはどうしたいの?」
…俺がどうしたいか?
「そうだよ、まずはお兄ちゃんがどうしたいか。わたしたちの事はそれからだよね」
「そうだね、なのは。アオがどうしたいのか、わたしも聞きたい」
なのはとフェイトが母さんに同調した。
「そうだね。アオは誰を助けたいの?」
そう最後にソラが問う。
誰を助ける?
だが、俺はこの世界の彼らには会ったことがある訳ではない。
関係ないと言ってしまえば何も関係は無いのかも知れない。
さらに、ヴィヴィオに至ってはまだ生まれてすら居ないかもしれない。
だけど、とも思う。
別人であるとしても俺はあの子を見殺しに出来るのだろうか?
あの時俺にすがってきた小さな手を振り払う事が出来るのだろうか?
「…俺は…多分…ヴィヴィオを助けたい…と、思う。それと未来で知り合った人たちにはやっぱり死んで欲しくない…かもしれない」
自分の事なのに自分でもよく分からない。
普段の俺なら知らない他人なら放っておくのだ。
だが、今回は状況が微妙だ。
だけど、以前俺はその選択でリィンフォース・ツヴァイを消している。
あの時はどちらかしか選べなかった。
いや、想像になるが、俺達が関わってしまった以上、あのリィンフォースは生まれないだろう。
もっと別の存在になるはずだ。
結果、助けたのは今のリィンフォースであり、ツヴァイは誕生していない。
俺の知っている、まったく知らない彼女達の事をどう扱えばいいのか自分の心がよく分からない。
「そう…」
母さんが何かを言おうとした所に俺は声をかぶせる。
「だけどっ!…だけど、俺はこの海鳴での生活が大好きで…それを壊したくは無いんだ」
いつかは皆それぞれの道を行くとしても、今のこの生活がとても幸せだって思うから。
「だったら話は簡単ね」
え?
「どちらも手放さない答えを探しましょう」
そう母さんは何でも無い事のように宣言したのだった。
四月二十九日
何度かの検討の後、深板達の意見もあり、結局火災が起こるであろうミッドチルダ臨海第八空港へとおもむく事にした俺と久遠、後はフェイトから了承を経て同行してもらったアルフの三人。
なのは達が居れば心強いのだが、彼らは中学三年生で義務教育真っ只中。休学させるわけにも行くまい。
そう言えばシリカはどうやら一家で海鳴に引っ越してきたようで、なのは達と一緒の学校に春から通うことになった。
三人と一緒のクラスになったよとの連絡は残念ながらシリカよりもソラ達からの方が早かったのだが、まあそれは仕方ないよね?
さて、中島家とははっきり言って何の接点も無いので俺達は連絡のつけようが無い。
クロノやはやてに頼めば探してくれるだろうが、その理由を話す事は躊躇われるし、連絡が付けたとて知らない人の忠告を素直に聞くだろうか?
それと深板が何度も『それは拉致監禁フラグ』と言っていたので慎重になったというのも有る。
彼らの話では管理局は結構暗い、組織の裏の部分があるらしい。
…らしいと言うのは俺が知り合った管理局員は結構ひとの良い人間ばかりだったからだ。
とは言え、大きな組織になればこう言った事も有り得るだろうと言うのはもはや常識だろうか。
特に未来の情報となればなおさらか。
取りあえず俺は大検を取る事にしたためにSAOサバイバーの救済処置である学校への勧誘を断り、クロノに連絡を取って彼の好意で今、正攻法でミッドチルダに滞在している。
密入国など面倒極まりないからちゃんとした手段を講じたと言うわけだ。
彼らの記憶と一致するような空港を探すのに一週間。
これだと思う空港に狙いを絞ってから一月。
ある意味運が良かったとしか言いようが無い要素も多々有った。
その一つが彼らの覚えていた広いロビーにある羽の生えたギリシャ彫刻のような石造の存在だ。
これは他の空港を探してみても置いていなかったのは幸いだ。
これを発見した俺は、ミッドチルダ臨海第八空港に目処を立てる事ができた。
しかし、流石に日時は後はいつ事件が起きるかまではおぼえていなかったらしかく、日がな一日空港のロビーで待機中。
暇な事この上ない。
仕方が無いので高校の教科書なんかを開いて時間をつぶしている。
「おにいちゃーん」
遠くからなのはがこちらに向かって掛けてくるのが見える。
その横にフェイトが居て、その後ろにソラ、最後に母さんが歩いてこちらにやってきた。
「久しぶりだな、なのは、フェイト、ソラ、母さんも」
「うん」
今日はどうやら大型連休で休みが重なったために皆で俺の所に来る事に決めたらしい。
それとせっかくミッドチルダに来たのだからと、この後にはやてと会う約束もあるのだとか。
しかし、ソラ達との久しぶりの再会を堪能させてくれる時間はどうやら無い様だった。
ドゴーン
爆発音の後に警報が鳴り響く。
「こ、これってっ!」
なのはがあわててあたりを確認している。
他の皆も同様にこれがテロ?とその表情に緊張が走る。
「このタイミングでか」
すでに人々はパニックに陥り、我先にと出口へと急ぐ。
「ソルっ!」
『スタンバイレディ・セットアップ』
俺がソルを起動した事を確認すると彼女達が続き、皆がバリアジャケットを展開する。
「ソラ、なのは、フェイト、悪いが予定通りだ。スバルとギンガを探してくれ」
「うん」
「わかった」
「はいっ!」
「久遠は俺とこのまま、母さんはこの建物からでるついでに誰か居たらそのまま連れ出して。アルフは母さんをお願い」
母さんも風を操れるので飛べるし、能力的には申し分ないのだけれど、魔導師では無いので、追求されると厄介だ。
俺たちならば、ほんの少し露見したとしても魔導師という事で難を逃れることはできるだろう。
「了解さね」
「くぅん」
「ええ、分かったわ。皆、絶対無理はしないでね」
「それじゃ、皆行くよっ!」
俺のその言葉で皆がそれぞれ影分身を使いながら散っていく。
混乱のさなかならば誰も気づきはしまい。
オーラ、魔力を均等に割り振ってしまうこの術は、今の状況を考えると二体が限界か。
影分身を広場から散開させて、本体の俺はこの石造のある広間でスバルが来るのを待つ。
これはあの二人から聞いた話だ。
スバルはこのロビーに迷い込んでくる確率が高い。
円を広げて周りに誰かいないかを確かめる。
ソルの力を借りてキロにも及んだ範囲にはいくつものオーラを感じるが、消化、救命活動をしているのか、団体でこちらへと向かっている集団がまず感じ取れるが、火の回りが速いのかその速度は遅い。
「久遠、向こうの奥に瓦礫に挟まれている人がいるみたいだから助け出したらここまで戻ってきて」
「くぅん」
崩壊した建物の下敷きになっている人たちを救出したのも今ので5人目だろうか。
周りの空気は魔法で操っているので多少の事では酸欠になることも無いし、ラウンドシールドも張っているんで落石などからも守れている。
パニックを起こして今すぐに外へとわめいた大人の意識を刈り取って転がしてはいるが、そこは責めてくれるな。
俺の目的はスバルの救護であって、目的を達成されるまではこの場を動けないのだから。
万華鏡写輪眼『志那都比古』でも使えれば良いのだろうが、円を広域に展開する事で手一杯。
所々ソラの張った円にぶつかっているので、彼女が広げた円も含めればおおよそこの空港全てを覆えているだろう。
さて、円の内部をさらに集中して気配を探る。
すると、他の人間よりもオーラの質とでもいうか、それが薄い人間の反応を感じ取った。
すぐさまサーチャーを送ると、青いショートの髪の小さな女の子が泣きながら歩いている。
どうやらビンゴのようだった。
「久遠、ここをお願い。この人たちを守ってあげて」
「くぅん。アオも気をつけて」
誰に向かって言っているっ!
俺は飛行魔法を起動させるとスバルが居るであろう所へと翔けた。
side スバル
銀色の竜を思わせるバリアジャケットを纏った騎士の姿。
あたしはその時の事を一生忘れないだろう。
突然あたりが轟音が鳴り響いたかと思うと、所々で崩落と、火の手が上がり、パニックを起こした群集に攫われる様にあたしはお姉ちゃんとはぐれてしまった。
周りの大人たちは我先にと逃げ惑い、あたしはついに取り残される。
あたしは恐怖に取り付かれてどこかわからないところを駆け回った。
しかし、行く手は炎に遮られ、どこをどう行けば安全なところに出られるかもわからない。
もう駄目だと、そう思って泣き出していたとき、その言葉は掛けられた。
「よかった、無事で」
へ?と見上げるとそこには銀色の甲冑を着た魔導師のお兄さんが居た。
「助けに来たんだ」
「本当?あたし、助かるの?」
「ああ、大丈夫。俺が助けるから」
その力強い言葉と、抱き上げられた力強さに安心したあたしは、そこで意識を手放した。
次に意識が覚醒したときにはすでにその人の姿は無く、あたしの中にはその人への憧れだけが残った。
side out
無事スバルを回収して久遠の所に戻ると、一番近くまで来ている救助隊の所へと翔けた。
道中、意識のある人には自力で走ってもらい、意識の無い人は浮かせて引っ張っていく。
その途中ソラが無事にギンガを確保したと念話が入りひと安心。
「おーい、誰か居ないかっ!」
炎の先で懸命にこちらに向かって叫ぶ声が聞こえる。
「ここです、ここに居ますっ!」
俺は炎を隔てて答える。
「くそっ!要救助者が居るのに、炎の勢いが弱まらない」
彼らもその手に持った消火装置で懸命に消火にあたるが、焼け石に水のようだった。
「すみません、砲撃魔法で炎をぶち抜きます。退避してくださいっ!」
「魔導師の方か、すまない。任せる」
そう言った彼らは少し戻ると左右に分かれて十字路を曲がった。
「こっちは大丈夫だっ!」
「分かりました。…ソルっ!」
『ディバインバスター』
「シュートっ!」
ゴウっと一直線に通路を駆け抜け、その勢いで炎を消し飛ばした。
とは言え、ほんの十数秒持てばいい方だが。
「今のうちです」
「あ、ああ…」
俺と久遠が救助した人たちが通路を掛ける。
スバルを抱いた俺が最後にそこを通り抜けると、ロビーはさらに強い炎に飲まれ、完全に崩落した。
シールドを張りつつ、救助隊に合流、救助者を引き渡す。
「協力、感謝する。この先には他に誰か居たか?」
隊員の一人が俺に話しかけた。
「おそらく他は居ないと思います…絶対とは言えませんが」
とは言え、この先はもはや普通の人なら侵入は不可能なくらい燃え盛っている。
「そうか…我々は救助者を連れて帰還する。君にはその子を連れて行ってほしいのだが…」
スバルを入れて俺と久遠が救助したのが5人。
けが人の介添えと先頭と殿に隊員を裂かなければならず、手が足りないのだろう。
「構いませんよ」
「助かる」
脱出し、スバルを駆けつけた医療班に預けると、ようやく一息をつく。
ソラ達もそれぞれ脱出済みのようだ。
さて、今日の所は俺が取っていたホテルに皆も部屋を取り、休むことにする。
コンコン
ベッドに腰掛け休んでいると扉をたたく音が聞こえる。
「どちら様?」
「私やー」
聞き覚えのある声に扉を開けると、そこにははやてが立っていた。
「お久しぶりです。アオさん」
「ああ、はやてか。久しぶり」
お邪魔させていただきますとはやては部屋の中へと入ってきた。
はやてには備え付けの椅子を進め、俺はソファに腰掛けた。
「その制服…管理局に入ったのか」
「はい、結構前になるんやけれど、アオさんも大変だったみたいですね」
「まあね」
SAOの事か。…確かに大変だったけれど、気のいいやつら(SOS団)と知り合えたのは、まぁ…よかった事としてもいいかな。
「私もな、今日の事件には参加してたんよ」
氷結魔法で最後に鎮火させたのは私や、とはやては言った。
「だから、ありがとう。偶然だったにしても一般人を助けてくれて」
そう言ってはやては頭を下げた。
と言うか、俺も一般人…と言うか旅行者のはずだけど…
「いや、いいよ。俺には俺の事情があっただけだから」
「そうなん?でも、助かったのは本当のことや。…本当はもっと早く沈静化出来るはずやったんけど、やっぱり組織が大きくなると駄目やね」
指令が回ってくるまでにどれだけ時間がかかったことかと憤慨するはやて。
「私はグレアムおじさんやシグナム達と一緒に過ごせるこの世界が結構気に入っている。私たちを受け入れてくれたこの世界に少しでも役に立ちたいとおもうて管理局に入ったんやけど…」
何とかしなければいけない事がいっぱいあるわ、と愚痴るはやて。
「まあ、そうだね…」
少し暗い話しになったので話題を変えようと声の調子を変えてはやてが言う。
「そう言えばな、私に弟が出来たんよ」
「弟?」
「グレアムおじさんが引き取った子でね、エリオって言うやけどね」
本当は去年から一緒に住んでいたのだが、俺が昏睡状態でなのは達ともあまりプライベートの事は話さなかったらしい。
最初はとっつきにくかったようだけど、時間を掛けて仲良くなったらしい。
ってエリオ!?
世の中何が作用するか分からないものだ。
本来ならば自主退職して地球に引きこもっているはずのグレアム提督が管理局に居残り、そのつてでエリオを引き取るとは…
いったいその過程には何があったのやら。
しかし、幸せに暮らしているようだからよかった。
「エリオもな、最近は魔法戦闘に興味があるみたいで、アオさんに機会があったらエリオの事みてもらえないかなぁ思うて」
「まあ、かまわないよ。…ただ直ぐにとは言えないな。この後も少し用事があるし」
「ほんまか?そんなすぐじゃなくてもかまわへんよ」
その後、弟自慢と管理局に対するエスカレートする愚痴を聞き流し、鬱憤が晴れるのを待つと、どうやら正気に戻ったようで、仕事に戻ると席を立つはやて。
「ああ、はやて、ちょっとまった」
「何?」
「どうしても俺たちの手が必要になったら呼ぶといい。一回だけ君の願いを叶えてあげる」
「なんや?それ」
そう、はやては笑って部屋を出て行った。
何だと言われれば、はやてにコネを作っておきたかったんだ。
もしかしたら機動六課が設立するかもしれないし、そうなれば正攻法でヴィヴィオを助けられるかもしれない。
さっきの言葉ははやてを思いやっての言葉ではない。ほぼ打算だった。
その事がすこし心に重く圧し掛かったが、ヴィヴィオのためと言い訳をして忘れるのだった。
五月初頭。
地球の日本的にはゴールデンウィークである連休を利用して、俺達家族はなのはも一緒に第六世界へと来ている。
とは言え、ほぼミッドチルダから直行だったが…
なんでそんな所に来ているかと言えば、キャロに会うためと言うのが理由に挙がる。
スバル、ギンガはあの空港火災さえ何とかすれば、愛してくれる親が居るので問題は無い。
しかし、キャロは事情が異なった。
彼女はどうやら部族をその身一つで追い出されて天涯孤独の身になるらしい。
どうやら管理局には拾われるので、命の危機と言う状況でもない訳だが…
そんな彼女を傲慢にも助けると言う事は、どう言う事だろうか。
深板たちの話に寄ればキャロは殲滅兵器扱いになる可能性があると言う話しだが、俺は以前にその人生を救えないからとプレシアを見殺しにしているし、リィンフォース・ツヴァイの誕生すら無かったことにしている。
それでもキャロの人生に関わると言う事は、彼女のその後の人生に責任を持つと言うことだ。
「それで、どうするの?」
あの家族会議の時に聞かれた母さんの言葉だ。
「fateの出演料が意外と…と言うか、しゃれにならないほどあるからね。これを使えばキャロが成人するまでの学費は地球でなら払える」
なんかこの前口座を見たらもう少しで億に届きそうだったよ…シリカにも入金されているだろうが、彼女の親がシリカが成人するまでは手をつけずにおくらしいと言っていた。
確かに子供が手にするには多すぎる額だ。
「管理世界内に居たいのならばクロノを頼ることになるが…彼ならば悪いようにはしないだろう」
そう母さんに答えた記憶がある。
そして今は、キャロとの面識を得るためにこうして管理第六世界まで来ているのだ。
キャロに関しての情報は大雑把だか、在住世界と民族名、住んでいる地域と意外と多かったので、キャロが暮らしているであろう部族の住居を特定するのはそんなに難しいことではなかった。
…クロノの助けを得て、管理局のデータベースを使わせてもらってこそだったけれど。
そんなこんなでキャロが居るであろうキャラバンへと到着する。
言葉は事前にソラの『アンリミテッドディクショナリー』でインストール済みなので現地でコミュニケーションに困る事は無い。
それにしても…
「なんかかなり排他的な雰囲気を感じるね」
そうソラが周りを見てつぶやいた。
「そうねぇ。皆こちらが気になるようだけれど、隠れているみたいね」
母さんがそう言った様に、周りからの視線は感じるのだが、誰一人として家から出てくる気配は無い。
「恥ずかしがり屋さんなのかな?」
「なのは、そんな訳無いよ。皆少し警戒している感じだし」
なのはのボケにフェイトが突っ込む。
「きゅるー」
うーむ、どうしたものかと思案していると、通りの角から一匹の子竜がきゅるきゅる鳴きながらこちらへと飛んできた。
子竜はそのまま俺とソラの間をくるくる回ったかと思うと俺の肩へととまる。
「あ、フリード」
そのつぶやきは誰だったか、確認するよりも早く道の角からピンクブロンドの髪の五歳くらいの幼児が駆けてきた。
「フリーード、駄目だよっ!あっ…」
勢いよく駆けてきたその女の子は、俺達を目の前居にして萎縮したのか身を縮こまらせて立ち止まった。
「フっ…フリード…こっちにおいで?」
「きゅるーる」
イヤっとでも言っているのだろう。
ぷいっと顔をそらせたフリード。
この状況には覚えがあります。
どうやら俺とソラは竜種に好かれる傾向にあるらしい。
「フリード…って事は、この子がキャロちゃん?」
「うん、そうじゃないかな」
なのはとフェイトがアイコンタクトの後、一気にキャロに詰め寄った。
「え?ええ!?な、何ですか?」
「うにゅう、かわいいっ!」
「うん、すごいぷにぷに」
「え?ちょっ!フリードっ!助けて…」
わーっとなのはとフェイトに抱きつかれ、もみくちゃにされるキャロ。
フリードは我関せずと俺に擦り寄っている。
「フェイト、なのは。ほどほどにね」
「「はーい」」
ソラよ、そこは止める所だろう。
「この子がキャロちゃん?」
そう母さんが前でもみくちゃにされている本人に聞こえないような声で俺に問いかけた。
「ああ、たぶん」
フリードも居たからね。
「かわいい子ね」
「そうだね」
しばらくキャロがもみくちゃにされているにもかかわらず、他の人間は誰一人として出てこない。
うーむ。
さて、どうしようと考えていると、キャロのぷにぷにを堪能したのか、どうにか拘束から開放されたキャロがふらふらしながら恨めしそうにフリードを見ている。
その目は「この、裏切り者」とでも言っているようだった。
若干なみだ目になっているキャロを落ち着かせると、母さんが優しい声でキャロに問いかけた。
「あの、私達旅行者なんだけど、どこか泊まるところは無いかしら」
「え?こんな何も無いところに旅行ですか?」
「そうなのよ」
その答えを聞いてキャロは少し困ったような表情を浮かべた。
「ここは、わたしの部族の集落で、部族以外の方がお泊り出来る様なところは無いんです…ごめんなさい」
「あら、そうなの。困ったわね…」
とは言え、ちゃんとそのくらいは予想していたので、キャンプセットは『勇者の道具袋』の中に常備されている。
いざとなったらこれもグリード・アイランドで手に入れた一つ、『神々の箱庭』も入っているから困る事は無い。
この『神々の箱庭』であるが、俺達が居ない間に機能拡張され、グリード・アイランド内のカードを使うことで機能拡張が出来るようになっていた。
俺はそれをみてもしかしたらと『モンスターハンター』や『支配者の祝福』、『豊作の木』などの設置系アイテムを使い拡張後、レイザーさんからもらった『パーフェクトリサイクル』で再カード化、持ち出して実体化させると拡張されたままだったので、今の『神々の箱庭』の中は別荘や避暑地と言っていいほどの機能を有している。
…まあ、エリアによればモンスターも居るのだけれど。
だから、そんなに宿の心配はしていなかったのだが、何かを考えたキャロからお誘いの言葉がかかる。
「…あのっ!…なにもおもてなし出来ませんが、わたしの家に来ますか?」
「良いのかしら?結構な大人数なのだけれど…」
「床でザコ寝になってしまいますが、家はわたし一人なので、多分大丈夫だと思います」
キャロの一人だと言う言葉に母さんは少しショックを受けてから、
「そう。それじゃあお邪魔させていただくわね」
と言った。
「はいっ!」
何が楽しい事があったかのようにキャロは了承の返事を返した。
そして今、目の前では、釜戸を前に横並びで楽しそうに料理するキャロと母さんの姿があった。
その様子は仲のよい親子のようだ。
ただで泊まるわけには行かないと、夕ご飯は母さんが振るう事になったのだが、キャロもお客さまにそんなことはさせられないと反対、結局妥協案で一緒にと言うことになったようだ。
料理の材料はこの第六世界であらかじめ買っておいた物を使用している。
どうやら世界は変われど食べ物はそう変わらないらしく、にんじんやピーマン、ジャガイモなど、そう言ったものの類似品は多くあったので、料理には困らない。
一応調味料なんかも『勇者の道具袋』に入れておいたので、醤油など手に入らなそうなものもそろっている。
皆が囲めるテーブルを道具袋から出し、出来上がった料理を並べると皆そろって席に着いたのを確認してフォークをとる。
『いただきまーす』
「あ、これけっこう美味しい」
手前に配膳されたパスタを一口食べたソラがそうもらす。
「あ、本当だ」
「うん、食べたこと無い味だけど、美味しい」
なのはとフェイトもそう感嘆した。
「本当ですか?よかった」
キャロがどこか安心したように言った。
「本当に、キャロちゃんはその年でけっこう料理上手なのね」
そう母さんが褒めると、少し照れたようにキャロが返した。
「…一人暮らしですし、パスタだけですけどね」
「それでもたいしたものよ」
「ありがとうございます」
食事も終えると就寝だ。
パジャマに着替えたキャロが枕を持ってどこか所在無さそうに立っている。
それを見た母さんが手招きした。
「おいで、キャロちゃん。一緒に寝ましょう」
「い、いいんですか?」
「私なんかでよかったらね」
その言葉でキャロはおずおずと母さんの隣に歩いていった。
皆で川の字…むしろ鯉のぼりのような感じで横になると、明かりを消した。
side 紫
明かりを消して皆で川の字で横になる。
私の隣にはこの家の家主のキャロちゃんが私に抱きつくように眠っている。
この子が寝る前に言っていた言葉がかなり痛々しく、私の抱き返す腕に少し力がこもってしまった。
「こんなにいっぱいの人とお話しするのって初めてで、とっても緊張しました」
「皆で食事するのって楽しいですね」
「家族が居たらこんな感じなのかな?」
「わたし、誰かと一緒に寝ることなんて、初めてかも知れません」
それはとてもありふれていて些細なこと。
だけど彼女にはどれも与えられなかったもの。
彼女の持つ強すぎる力を皆が恐れているんだってあーちゃんは言っていた。
だけど、それでも…もう少し彼女に与えても良いのではないだろうか。
「うにゅっ」
腕の中のキャロちゃんが私が抱きしめる力が少し強すぎたようで、苦しそうにもがいた。
それをみて直ぐに力を緩めた私。
こんな状況は決して彼女にいい環境ではない。
直ぐにでも何とかしてやりたい衝動に駆られてしまうが、物事にはタイミングと言うものもある。
あーちゃんの話しだと、もうしばらくするとキャロちゃんはこの部族をおわれる事になるらしい。
それ自体は彼女にある種のトラウマを植え付けてしまうかもしれない…けれど、その後ならば私はいっぱい彼女に与えてあげることが出来るだろう。
今、この状況でキャロちゃんを引き取るとか言う話しを出しても周囲の同意は得られず、ただ混乱を招くだけだ。
だから、キャロちゃん。
もうしばらくだけ我慢してね。
side out
数日、キャロの家に厄介になりつつ、キャロの案内で近くの草原やら湖に行って一緒に遊んだ。
その内にキャロとの距離も段々近づいて、帰る日が来たときは寂しさを覚えるほどだった。
「世話になったね」
「いいえ、わたしも楽しかったです」
俺の感謝の言葉にそう返したキャロ。
「キャロちゃん、泊めてもらったお礼にこれを上げるわ」
「なんですか?」
母さんがキャロに手渡したのは一つの巻物だ。
「この先の生活で困った事が起こったらその巻物を開いて。きっと私達の所まで来れるから」
「え?」
「困ったときは頼ってもいいのよ。少しは周りに甘えることも覚えなさい」
そう言って押し付けるように巻物を渡した。
キャロに渡した巻物は逆口寄せの術式が書き込んである。
開けば一瞬にして御神家のリビングに転送されるはずだ。
「それじゃ、キャロも元気で」
「はい、ソラさんも。この数日すごく楽しかったです」
ソラが別れの挨拶を口にする。
それを皮切りにフェイト、なのはと続き、別れの挨拶を終えると、俺達は第六世界を後にした。
後書き
アオは関係の無い人を助けるような考え方はしていません。…しかし、今回は状況が複雑です。
自分は知っているが、この世界では別人。これをどう捉えればよいのか。
それも自分が介入したために死んでしまう運命が分かっているとすれば…とは言え、以前にツヴァイを消す事をアオ自身も納得してしまっているのですが…
深板達の管理局への印象は数々の二次SSを読んだ記憶により真っ黒という風に認識されています。
脳みそが牛耳っていたりするから違わなくは無いのでしょうが…しきりに深板が拉致監禁を話題に出しているのはそのためです。
今回はアオが力強い味方を得たと言う事ですかね。
空港火災もなのは達の事を抜いてそのほかの事象はそのままと考えれば確実にスバルは死にますね。…実際はどうなるか分かりませんが。
キャロに関しては想像です。キャロの両親とかってどうなっているのでしょうね?もし生きていたのなら年端も行かない娘を放り出す鬼畜と言う事に…
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