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仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜

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竹林の戦い

「さて、中国だが」
 幽霊博士が口を開いた。ジンドグマの四幹部はまた集まっていた。
「今は誰もいなかったな」
「ええ、ドクロ少佐が仮面ライダーⅤ3に敗れたしね」
 妖怪王女が答えた。
「うむ、惜しい男であった」
 鬼火司令がそれを聞いて腕組みをしながら言った。彼は元軍人であったので彼に対して共感する部分も多かったのだ。
「それだけではないわ。ドクターケイトもモンゴルで仮面ライダーⅩに敗れている」
 魔女参謀は付け足すように言った。
「日本支部はあの有様。今東アジアに我がバダンの勢力はない有様じゃな」
 幽霊博士はそれを聞いて顔を顰めた。
「東南アジアも同じ状況ね。北米も中南米もかなりの痛手を受けているわよ」
 妖怪王女の情報網は健在であった。彼女は常に的確な情報を手に入れていた。
「まずいのう。このままではアジア太平洋地域の我等の活動が崩壊してしまう」
「鬼火司令、そう考えるのは早いのではないかしら」
 魔女参謀は彼に対して言った。
「そうは言うが現実ではこうじゃ。それをどうするかが問題だが」
「わしに考えがあるぞ」
 ここで幽霊博士が他の三人の顔を見回しながら言った。
「お主がか?どうせろくな考えではあるまい」
「そうよね。幽霊博士っていつもとぼけてるんだもの」
 鬼火司令と妖怪王女が馬鹿にしたように笑った。
「そんな言い方はないじゃろ」
「あら、じゃあどういう考えなの?」
 妖怪王女は尚も態度を変えない。
「わしが中国に向かう。そしてここでの活動を再び行なう」
 彼は珍しく強い声で言った。
「おういえばお主は中国出身だったな」
 鬼火司令が思い出したように言った。
「そうじゃ。思えば懐かしいのう」
 彼は懐かしげに笑った。
「その故国に戻るのも何かの縁じゃ。思う存分暴れてやるわ」
「では私も同行していいかしら」
 ここで魔女参謀が口を開いた。
「お主がか?」
 博士は一瞬不思議な顔をした。
「そうよ。いけないかしら」
「い、いや」
 彼は首を横に振った。
「大歓迎じゃ。助っ人に来てくれるのならこれ程心強いものはない」
 彼は笑みを浮かべて言った。
「ではこれで決まりね」
 魔女参謀もニヤリと笑った。
「うむ、では早速行くとしよう」
「ええ」
 二人は席を立った。
「気をつけてな」
「私達もすぐに動くわ」
 残る二人も声をかけた。
「うむ、期待しておれ」
「そちらも頼んだわよ」
 こうして彼等は二手に分かれた。そして部屋をあとにした。

 白帝城は日本人もよく知っている場所の一つである。唐代の詩人李白が謡い三国志の主人公の一人劉備がこの世を去った場所でもある。険しい四川省の中でも特に険しい場所にある。
「ここまで来るのは一苦労だったな」
 そこに彼はいた。風見志郎である。彼はドクロ少佐との戦いの後中国各地を回っていた。
「確かに中国は広いな。何度回っても飽きない」
 彼は世界中を回って戦ってきた。その為中国でも戦ってきていた。
「しかしこの城に来たのははじめてだったな」
 だが戦いがない時はこれといって来る理由がない。従って行っていない場所もある。
 今彼は珍しく観光で来ている。こうして戦いがない時の旅もいいものだと思った。
「まあ束の間の休息だな」
 そうであった。バダンはまだ世界各地で暗躍している。彼の戦いはバダンがこの世から消え去るまで続くのだ。
 だが今は旅を楽しみたい。戦士にもそうした心の余裕は必要であった。
 城の中には多くの像が置かれている。全て三国志の英雄達である。
「そういえば学生の頃に読んだな」
 ふと彼は学生の頃を思い出した。
 その像を見て回る。その時像の一つがピクリ、と動いた。
「ムッ!?」
 次の瞬間全ての像が動き出した。そして風見を取り囲んだ。
「バダンか!?」
 像は何も言わない。ただ風見に襲い掛かって来た。
 風見はその像達を倒していく。倒された像は次々と戦闘員の姿になり横たわる。
「やはりな」
 部屋を出る。戦闘員達は最早像にすら化けずそのまま追って来た。
「ギッ!?」
 彼等は風見を見失ってしまった。慌てて周囲を見回す。
「俺はここだ!」
 上の方から声がした。慌てて顔を上げる。
 彼は壁の上に立っていた。赤い仮面の戦士がそこにいた。
「トゥッ!」
 掛け声と共に跳び降りた。その周りを戦闘員達が取り囲む。
 だが彼等はやはり敵ではなかった。忽ちⅤ3に倒されていく。
「チャカァーーーーーー」
 そこに怪人が出て来た。デストロンの熱線怪人レンズアリである。
「やはり来たか」
 Ⅴ3も怪人が出て来ることは予想していた。すぐに身構える。
 怪人は目から熱線を放ってきた。Ⅴ3はそれを上に跳びかわした。
「どうした、俺はここだぞ」
 そして壁の上から挑発する」
 怪人はそれに対し感情を露わにした。そして熱線を乱射する。
「フンッ!」
 だがそれは当たらない。Ⅴ3は上に跳び今度は怪人の背中についた。
「喰らえっ!」
 そして怪人の背中を掴んだ。
「Ⅴ3回転投げーーーーーっ!」
 そして空中に舞い上がり激しく回転する。その遠心力を利用して思いきり投げた。
「チャカーーーーーッ!」
 怪人は断末魔の叫びをあげた。そして地面に叩き付けられ爆死した。
 そこにもう一体来た。ショッカーの毒液怪人毒トカゲ男である。
「ゥオオオオオオーーーーーッ!」
 怪人は叫び声をあげながらこちらにやって来た。
「また来たな」
 Ⅴ3は着地して身構えた。怪人はそこを狙って赤い毒液を放ってきた。
「おっと」
 それを横に身を捻りかわす。怪人はそこに今度は舌を放ってきた。
 しかしそれもⅤ3はかわした。そして一気に間合いを詰めた。
 拳が繰り出される。二つの拳が撃ち合った。
 だがそれはⅤ3の勝利に終わった。怪人は拳を押さえ怯んだ。
「今だっ!」
 Ⅴ3は跳んだ。そして怪人を今度は天高く放り投げた。
「トゥッ!」
 そして自身も跳んだ。急降下し毒トカゲ男の背中に向かう。
「Ⅴ3ダブルアターーーーーーーック!」
 蹴りが怪人の背を撃った。毒トカゲ男は空中で爆死した。
「あとはいないか」
 Oシグナルにも反応はなかった。Ⅴ3は変身を解いた。
「こんなところにも姿を現わすとはな。どうやら俺には片時の休息も許されないらしい」
 彼は顔を顰めてそう言った。そして白帝城を出るとそのまま長江を登っていった。

 神敬介はこの時成都にいた。四川省でもかなり大きな都市である。
「ここが成都か」
 やはりここも三国志ゆかりの地である。それだけでなく長い間この地域の中心都市でもあった。
「一度来てみたいと思っていたけれど」
 街の中は人でごったがえしていた。今は三国時代の面影は流石に少ないがそのかわり人の活気で満ちている。
 動物園に行った。そこでは中国の珍獣であるパンダがいた。
「そういえばこの四川省にいるんだったな」
 よく竹を食べると言われるがその他のものも食べたりする。そして大柄で怒らせると怖い。
「見れば爪も牙もあるや」
 そうなのである。中国語で大熊猫という。可愛らしい外見に惑わされては怪我をする怖れもある。
「パパ、意外と怖そうだね」
「ああ、ああ見えてもとっても強いんだぞ」
 後ろでは親子連れがそんな話をしている。神はそれを見てクスリと笑った。
 その時彼は何かを感じた。
「!?」 
 殺気だった。彼はそれを確認すると黙って動物園をあとにした。
 そして彼は街中を出た。街の外れに向かった。。
「ここら辺りでいいだろ」
 彼は人気のない場所に着くと言った。するとそこに黒服の男達が姿を現わした。
「わかっている。さっさとその服をとれ」
「そうか、流石は神敬介だな」
 彼等はそう言うと服を剥ぎ取った。中から怪人と戦闘員達が姿を現わした。
「アワワワワワワワ」
 ゴッド悪人軍団の一人サソリジェロニモであった。怪人は服を剥ぎ取ると同時に斧を投げてきた。
「ムッ!」
 神はそれをかわした。そしてそのすぐ側の竹薮に飛び込んだ。
「追えっ!」
 怪人はすぐに戦闘員達に命令を下した。だがそれには及ばなかった。
「その必要はないっ!」
 神の声と共に彼が姿を現わした。銀の仮面を持つカイゾーグ、仮面ライダーⅩである。
「俺はここにいる」
 彼は怪人達を一瞥してそう言った。
「さあ、何処からでも来いっ!」
「望むところだ!」
 サソリジェロニモの声が響いた。戦闘員達が斧を手に一斉に襲い掛かる。
「斧か」
 Ⅹライダーは戦闘員達の手に光るそれを落ち着いて見ていた。
「ならば俺も武器を出そう」
 そう言うと腰からライドルを引き抜いた。
「行くぞっ!」
 そしてそのライドルで打ちかかった。
 左右から襲い来る戦闘員達を次々に薙ぎ倒す。ライドルが風車の様に回転する。
 戦闘員達は忽ち蹴散らされた。怪人はそれを見て今度は自分が向かった。
「俺が相手だっ!」
「来い、返り討ちにしてやる!」
 ライドルと斧がぶつかり合った。銀の火花が辺りに飛び散る。
「ムムム」
 両者は鍔迫り合いをはじめた。最初は互角であった。
 だが次第にⅩライダーの力が勝ってきた。サソリジェロニモは押されてきていた。
「そうはさせんっ!」
 怪人は反撃に出た。間合いを離し斧を投げ付けて来た。
「トゥッ!」
 Ⅹライダーは跳躍してそれをかわした。そして空中で一回転した。
「ライドル脳天割りーーーーーーっ!」
 そしてそのライドルを怪人の頭部に振り下ろした。それは見事に決まった。
「ウオオオオオオ・・・・・・」
 サソリジェロニモは呻いた。頭蓋骨だけでなく脳まで潰された。怪人は脳天から鮮血をほとぼしらせながら倒れた。
 そして爆死した。Ⅹライダーは着地してその爆発を見送った。
 だが勝利の余韻に浸っている暇はなかった。そこに新たなる怪人が襲い掛かって来た。
「グルゥゥゥゥゥーーーーーーーーーッ!」
 ゲドンの針怪人獣人ヤマアラシである。怪人は全身の針を揺らせつつⅩライダーに向かって来た。
「今度はゲドンの獣人か」
 Ⅹライダーは怪人の姿を認めて身構えた。
 怪人はいきなり身体を丸めた。そして飛んで来た。
「ムッ!」
 Ⅹライダーはそれを横にかわした。怪人は今度はバウンドして向かって来た。
「今度は跳ねてきたか」
 今度の攻撃もかわした。しかし怪人は執拗に攻撃を繰り返す。
「まずな、このままでは」
 Ⅹライダーは呟いた。
「だからといってこちらから攻撃を仕掛けることは・・・・・・」
 見れば全身が針の山である。おいそれと攻撃を仕掛けられそうもない。
 しかし。Ⅹライダーはあることを閃いた。
「そうだ、俺にはこれがある!」
 手に持つライドルのスイッチを入れた。そこに怪人ば襲い掛かって来る。真正面からとんで来た。
「ロングポールッ!」
 そしてライドルを思いきり引き伸ばした。それで怪人を突いた。
「ウオォッ!」
 動きが止まった。そして奇声を発しながら元の姿に戻った。
「今だっ!」
 Ⅹライダーは勝機を見た。そしてライドルのスイッチを入れ前に突進した。
「これでも食らえっ!」
 それはライドルホイップだった。怪人の柔らかな胸を切り裂いた。
「ウオオオオオオオーーーーーーッ!」
 怪人は胸から鮮血をほとぼしらせながら叫んだ。そして前から倒れ伏し爆死して果てた。
「もういないようだな」
 Ⅹライダーは回りを見回して確認した。そして変身を解いた。
 爆炎が消え去った。そしてそこには何も残らなかった。神敬介は一人成都へと戻って行った。

「Ⅴ3とⅩライダーへの襲撃は失敗したわ」
 重慶の地下に設けられた基地の中で魔女参謀は幽霊博士に対して言った。
 指令室であった。赤い光が点滅し辺りにはコンピューター等が置かれている。そして戦闘員達が動き回っていた。
「そうか、やはりのう」
 幽霊博士は顎鬚をしごきながらそれを聞いていた。
「怪人ではライダー達を倒せぬか」
「そう言っている余裕なんてあるの?」
 魔女参謀は彼があまりにも暢気な口調なので少し口を尖らせた。
「焦っても仕方あるまい。結局はライダー打倒はここでは主な作戦ではない」
「それはそうだけれど」
「のう」
 ここで彼は傍らにいる戦闘員に対して問うた。
「準備は進んでおろうな」
「ハッ、既に特別チームを編成しております」
 戦闘員は敬礼をして答えた。
「ならばよい」
 彼はそれを聞くと顔を崩して笑った。
「簡単な作戦じゃがそれが案外効果のあるものなのじゃ」
「それはそうだけれど」
 魔女参謀はまだ口を尖らせている。
「だけれどこんなことをしていてもらちが明かないわよ」
「魔女参謀、お主は少し派手過ぎる」
 博士はそんな魔女参謀に対して窘めるように言った。
「線路を破壊するのは充分な破壊工作になるのじゃ。そしてこれにより多くの人が死に交通が麻痺する。経済も混乱する」
「それはそうだけれど」
「考えてもみよ。鉄道が人々の生活にどれだけ必要か」
 それは言うまでもなかった。この中国においても鉄道は極めて重要な交通手段であった。
「そんなことはわかっているわ。けれど」
 だが彼女はまだ不満であった。
「案ずることはない。地道な作戦も時には必要じゃ」
「確かにな。幽霊博士の言うことにも一理ある」
 ここで何者かが入って来た。
「ム」
 魔女参謀は彼の姿を見て目を光らせた。
「ホッホッホ、お主も賛成してくれるか」
 そこには白スーツの青年がいた。アポロガイストである。
「かってゲルショッカーもラッシュ時に破壊工作を仕掛けようとしたことがある。鉄道を狙うのは非常に効果があるものだ」
 クラゲウルフが新宿を狙ったことを言っているのである。
「俺も機会があればやってみたいな。期待しているぞ」
「その言葉謹んで受けよう」
「だがな」
 アポロガイストはここで目を光らせた。
「Ⅹライダーを倒すのは俺に譲って欲しい」
「何故じゃ!?」
「俺とあの男の関係を知っていれば話すまでもないと思うが」
 彼のその目の光はまるで猛禽のようであった。
「確かに。けれど私達も今回の作戦を失敗させるあけにはいかないわ」
「そう、そして彼奴がその課程で死ぬようなことがあっても」
「責任は持てないと言いたいのか」
「そういうことになるわね」
 魔女参謀は突き放すようにして言った。
「そうか。では俺が独自で倒しても問題はないな」
「うむ。それは好きにするがいい」
 幽霊博士はそれを認めた。
「しかしお主は今ギリシアで何か作戦行動があるのではなかったのか?」
「そういえば。何か作っているようね」
「・・・・・・そのことについてはいずれ話そう。今は話すことはできない」
 彼はニヤリともせずそう言った。明らかに何か隠している。
「だがそれなら話が早い。早速動かさせてもらうか」
「うむ、好きにするがいい」
「ではな」
 アポロガイストはそう言うと踵を返した。そして指令室をあとにした。
「何かと口うるさい男ね」
「ゴッドの第一室長だったからのう」
 彼等はアポロガイストがいなくなったのを見計らって話をはじめた。
「だけれどこれでライダー達の相手はしなくていいわね」
「うむ。心置きなくやらせてもらおう」
 二人はそう言うと会議室に向かった。それを一匹の虫が聞いていた。
「ふむ、そういうことか」
 その虫は虫ではなかった。虫に姿を似せた盗聴器であった。その先にはアポロガイストがいた。
 彼は黒いマシンに乗っていた。そして耳にその盗聴器を当てて聴いていた。
「いい考えだ。若しもの時はこちらも考えがあったが」
 彼にはあまり仲間意識というものがない。ゴッドにいた時でも怪人達を挑発したりすることが多かった。彼は怪人を監督し必要とあらば総司令に意見を具申したり怪人を処刑したいする権限まで与えられていたので怪人達には怖れ嫌われていたのだ。
「それでは早速やらせてもらおう」
 彼はそう言うとマシンのスピードを速めた。
 マシンは風になった。そして姿が見えなくなった。
 同時にアポロガイストも変身していた。白いスーツの青年から赤い仮面を被った姿に変身していた。
「見ていろⅩライダー、この四川省が貴様の墓場だ」
 彼はそう言うと重慶に向かってマシンを走らせた。

 重慶で神敬介は一人市場を回っていた。
「ここは辛い料理で有名だけれど」
 中華料理といっても色々ある。四川料理は辛い味付けで知られている。
「何を食べようかな。そういえば四川料理は本格的に食べたことはなかったな」
 彼は商店街に向かった。そこでは一つ大きなレストランが目立っていた。
「百酒飯店か」
 店の看板はかなり巨大なものであった。そして文字が筆で書かれている。
「どれ、ここにしようか」
 そして彼はその店に入って行った。
 暫くして神は店から出て来た。その顔は満ち足りたものであった。
「ふう、美味かったな」
 彼は満足した顔でそう言った。
「思ったより辛くないな。唐辛子のせいかな」
 実は日本の唐辛子と四川省の唐辛子は違う。日本のものはかなり辛めなのだ。
「俺は日本の唐辛子の方がいいなあ。けれど四川料理には確かにここの唐辛子が合っているや」
 料理とはその地域の風土と密着している。従って素材もその地域のものが一番合うのだ。
「さて、と。市場に戻るか」
 彼は市場に戻って行った。
 その時風見志郎も重慶にいた。
「ようやく着いたか」
 彼は重慶駅から降り立ってまずは口を開いた。
「途中で線路が破壊されているとはな。誰がやったかは知らないが」
 彼は考えながら道を進む。
「この辺りで不穏な動きは聞かないな。やはりバダンか」
 駅のすぐ側は市場である。ふとそこが目に入った。
「市場で情報を仕入れるか。何かわかるかも知れない」
 そしてふらりと市場に向かおうとした。その時であった。
「おのれ、バダン!」
 市場が突如喧騒に包まれた。そして誰かが前に出て来た。
「あれは・・・・・・」
 風見は彼の姿を認めて目を見張った。
 Ⅹライダーはライドルを手にしていた。そして戦闘員達を相手に戦っている。
「ここにまでいるとはなっ!」
 ライドルを振るい戦闘員達を倒していく。そこに怪人が姿を現わした。
 無気味な赤い怪人である。ブラックサタンの憑依怪人サソリ奇械人である。
「ショエーーーーーーッ!」
 怪人は奇声と共にⅩライダーに向かって来た。
「やはり来たかっ!」
 Ⅹライダーはライドルを手に怪人に向かって行く。だがそこにもう一体来た。ネオショッカーの剣豪怪人マダラカジンであった。
「クッ、もう一体いたのか・・・・・・」
 前後から挟み撃ちを受けた。それは何とかかわした。だが怪人達はジリジリと追い詰めてきた。
「ムムム・・・・・・」
 Ⅹライダーはライドルをホイップに変えた。そして斬り合いに持ち込もうとする。その時だった。
「待てっ、加勢するぞっ!」
 そこに赤い仮面の男が現われた。
「Ⅴ3!」
「Ⅹライダー、助けに来たぞっ!」
 Ⅴ3はそう言うとⅩライダーの前に出た。そしてサソリ奇械人の前に向かった。
「こいつは俺に任せろっ!」
「はい!」
 Ⅹライダーはそれに対して頷くとマダラカジンに向かっていった。
 二人のライダーは駅前でそれぞれ怪人達を相手に戦いをはじめた。やはり一対一ではライダー達に分があった。
「トォッ!」
 Ⅴ3が拳を振るった。それによりサソリ奇械人の顎が砕けた。
 Ⅴ3の攻撃は終わらない。続けて蹴りが入る。そして次には跳躍した。
「Ⅴ3ドリルアターーーーーック!」
 そして頭から回転しながら急降下する。それは怪人の腹を直撃した。
「ショエエエエエエーーーーーーッ!」
 怪人は断末魔の叫びをあげた。そして地に倒れ伏しその場で爆発した。
 しかし戦いはまだ終わってはいない。Ⅹライダーとマダラカジンの死闘が続いていた。
「マダラーーーーーッ!」
 怪人は右腕のサーベルを振るう。Ⅹライダーはそれをライドルホイップで受け流す。
「どうした、その程度かっ!」
 そのサーベルがライドルにより叩き割られた。怪人はそれを見て間合いを離した。
「チィッ!」
 そして今度は口からマシンガンを放ってきた。しかしそれは見切られていた。
「無駄だっ!」
 Ⅹライダーは空中に跳んだ。そして空中で身体全体でⅩの文字を作った。
「Ⅹキィーーーーーーーック!」
 そして蹴りを放った。それは怪人の胸を撃った。
「ガオオオオオーーーーーーッ!」
 マダラカジンも倒れた。そして彼もまた爆死した。
「見事だな、相変わらず」
 Ⅴ3は鮮やかな勝利を収めたⅩライダーに対し声をかけた。
「いえ、Ⅴ3のおかげですよ」
 彼はそれに対し謙遜して答えた。二人の戦士は歩み寄ると手を握り合った。
 それを遠くの丘の上から苦々しく見る男がいた。
「ぬうう、Ⅴ3もここに来たか」
 アポロガイストであった。彼は二人が手を握り合うのを顔を顰めて見ていた。
「ライダーが二人いると厄介だな」
 彼は考え込んだ。そして後ろを見た。
「あれを使うか」
 その時だった。不意に戦闘員がやって来た。
「アポロガイスト様」
「どうした!?」
 彼は不機嫌そのものの声で戦闘員の方を振り向いた。
「ギリシアにブラック将軍が来ておられますが」
「帰ってもらえ」
 彼は吐き捨てるように言った。
「それが・・・・・・。何か火急の用件があると言われるのですが」
「火急の用件!?」
「はい。何でもアポロガイスト様が今開発中の怪人のことでお話があるとか」
「開発中!?俺は怪人は・・・・・・」
 彼はここまで言ったところでハッとした。
「まさか・・・・・・」
 心当たりは一つしかなかった。
「如何なさいますか?」
「・・・・・・すぐに行こう」
 彼は口調を変えた。
「すぐに全員ギリシアに戻るぞ。Ⅹライダーを倒すのは次の機会だ」
「わかりました」
 戦闘員は敬礼した。そしてその場をあとにする。
 アポロガイストも踵を返した。そして後ろを振り返った。
「Ⅹライダーよ」 
 彼は眼下にいるⅩライダーを見た。
「貴様は俺が必ず倒す。その時を楽しみにしておれ」
 彼はそう言い残すとその場をあとにした。

 敵を退けた風見と神は再会を懐かしむ間もなくホテルの一室で話し合いの場を持った。話の内容は決まっていた。
「そうですか、ここに来るまでにそんなことが」
「ああ、まさか像に化けているとは思わなかったがな」
 風見は白帝城での戦いのことを神に話した。
「俺も同じですよ。成都で奴等と一戦交えました」
「そうか、やはりな」
 それを聞いた風見の目が光った。
「だとするとバダンは間違いなくこの地で例によって何かを企んでいるな」
「でしょうね。そうでなくては怪人までは出て来ません」
「ああ。奴等の今までの行動からしてな」
「けれどここで何を企んでいるかが問題ですね」
 神はここで考える目をした。
「俺達を狙っているんでしょうか」
「それも充分考えられるが」
 風見は直感でそうではないと思っていた。
「何か他に策を企んでいるかも知れないぞ」
「では何を」
「そうだな」
 彼は考えた。そしてあることが脳裏に浮かんだ。
「実は俺は重慶には鉄道で来たんだが」
「鉄道でですか」
「ああ。その時事故でかなり遅れた。何でも線路が爆破されていたらしい」
「線路が・・・・・・」
 それを聞いて神も感づいた。
「流石だな。敬介も察したか」
「ええ。おそらくそれはバダンの仕業ですね」
 経験がそれを二人に伝えていた。歴代の組織と戦ってきた彼等はその潜り抜けてきた修羅場によりその直感を身に着けていたのだ。
「連中にしてはえらく地味な作戦に思えますけれどね」
「地味だからこそ効果があるものもあるしな。とくに鉄道は線路を潰せばいいだけだから楽だ」
「はい」
「それに交通や経済に及ぼす影響も大きい。死傷者も多い」
「ですね」
「奴等にとってはやり易い作戦だ。おそらくこの四川省の経済を完全に破壊するつもりだ」
 四川省の人口は約一億人、それなりの経済規模がある。特にこの重慶は中国でも屈指の重工業都市である。それを狙ってのことであろう。
「敬介、こうしている時間はない。すぐに奴等の計画を阻止しよう」
「はい、まずは何処から行きますか?」
「奴等が狙う場所はわかっている」
 風見は答えた。
「今までは地道に小さな線路を潰してきている。おそらく今度は大物を狙ってくるだろう」
「というと・・・・・・」
「そうだ、ここと成都を結ぶ線だ」
 風見は顔を引き締めて言った。
「おそらく既にそこへ向かっているだろう、一刻の猶予もない」
「ですね、行きましょう」
 神も決断は早い。二人は同時に席を立った。
「行くぞ、ここでこの地の奴等を倒す」
「ええ、そしてこの地に平和を」
 二人はホテルを出た。やがて遠くからマシンの音が聞こえてきた。

 幽霊博士と魔女参謀はその時風見の予想通り重慶と成都の間の線にいた。そして線路の側に何かを埋め込もうとしていた。
「急ぐのじゃぞ。さもないと電車が来てしまうからの」
 幽霊博士は作業にあたる戦闘員達に指示を出していた。
「魔女参謀、怪しい者は来てはおらんな」
 そしてその護衛と見張りにあたる魔女参謀に対して問うた。
「ええ、今の所は」
 魔女参謀は答えた。左右は竹林である。あまり見晴らしがいいとは言えない。その為は戦闘員はいつもより多いようだ。
「気をつけてくれよ。今ライダー達に来られては元も子もないからのう」
「残念だがその心配は無用だ」
 そこで竹薮から一人の男が姿を現わした。
「貴様は・・・・・・!」
 それは風見志郎であった。
「生憎だったな、貴様等の計画は全てお見通しだ」
「クッ、何故ここがわかった」
「愚問だな」 
 風見はそれに対し口の両端で自信に満ちた笑みをとった。
「貴様等の考えることがわからないと思ったか。貴様等のいるところライダーは必ず現われるのだ」
「クッ、こうなったら・・・・・・」
 幽霊博士と魔女参謀はすぐに手を振り下した。戦闘員達が風見の周りを取り囲む。
「フッ、俺だけだと思うか!?」
 ここで彼は身構えながら笑った。
「まさか・・・・・・」
 魔女参謀はこの言葉を聞き辺りを見回した。
「そうだ、もう一人いるということを忘れるな!」
 ここで線路から一台のマシンがやって来た。
 その上には彼がいた。神敬介がいた。
「ぬうう、奴も・・・・・・」
 幽霊博士は神の姿を見て歯軋りした。
「役者は揃ったな。行くぞっ!」
 風見のその言葉が合図となった。二人は同時に変身に入った。

 変・・・・・・身
 風見は両手を肩の高さで右に垂直に置いた。そしてその両手を右から左斜め上にゆっくりと旋回させる。
 それと共に身体が変わっていく。緑の身体に白い手袋、赤いブーツ。胸は銀と赤である。
 ブイ・・・・・・スリャアアアーーーーーーーーッ!
 右手を拳にし一瞬右脇に入れる。そしてそれをすぐに突き出し逆に左腕を拳にし左脇に入れる。
 顔の右半分が赤い仮面に覆われる。すぐに左半分も。

 大変身
 神はマシンの上で両腕を垂直に上に突き出した。そしてそれをゆっくりと開いていく。
 身体が白くなっていく。胸が赤くなり手袋とブーツが黒くなる。
 エーーーーーックス!
 左手を脇に入れる。右手を左斜め上に突き出す。
 銀の仮面が顔の右半分を覆いすぐに左半分も覆う。

 二つの光がその場を支配した。そしてその中から二人のライダーが姿を現わした。
「トォッ!」
 Ⅹライダーはマシンから跳んだ。Ⅴ3も跳躍した。
 そして同時に着地する。二人は並んで立った。
「さあ来い、バダン!」
 二人は身構えた。戦闘員達を前に臆するところはない。
「ヌウウ、変身しおったな、やはり」
 幽霊博士はそれを見て悔しさで顔を歪めさせた。
「さあ来い、幽霊博士、魔女参謀!」
 Ⅴ3が叫んだ。
「怪人達は何処だっ!」
 Ⅹライダーもそれに続く。
「怪人だと!?」
 魔女参謀はここで口の端を歪め嘲笑した。
「愚かな、貴様等の目は節穴か」
「何!?」
 二人のライダーはそれを聞いて少しいきり立った。
「そうよのう、今までの我等との戦いから何も学んでおらんと見える」
 幽霊博士も笑いながら前に出て来た。
「まさか・・・・・・」
 ライダー達はその只ならぬ気配に何かを悟った。
「やっと思い出したようね。そう、私達もまた」
 魔女参謀はベールを剥ぎ取った。そこで巨大なピンク色の蝶が飛んで来た。
「来たわね」
 魔女参謀は跳んだ。そしてその蝶と合体した。
「何!」
「見よ、これが私の正体だ!」
 するとその顔が見る見るうちに変わっていった。まるで蛾の様な顔になり髪はピンクになったかと思うと蝶の羽根のように変化した。
「ヌウウ、その姿は・・・・・・」
「フフフフフ、どうかしら。美しいでしょう」
 魔女参謀の声だった。その怪人はその蛾に似た顔でライダー達を見た。
「ほう、本当の姿をあらわしおったな」
 幽霊博士は正体をあらわした同僚を横目に見て目を細めた。
「ええ。やっぱりこのマジョリンガの姿を方が落ち着くわね」
「そうじゃろそうじゃろ。やはりわし等はその姿が一番似合っておるからのう」
「ということは幽霊博士、貴様も・・・・・・」
 Ⅴ3は彼を指差した。
「当然じゃ。まさか知らぬわけでもあるまい」
「・・・・・・・・・」
 知らない筈がなかった。何故ならそれはもうわかっていることなのだから。
「ショッカーの時以来わし等の正体は決まっておる。そう、このようにな」
 そう言うと背中のマントを被った。服が白から黒に変わっていく。
「ムッ!」
 マントを元に戻すとそこには別の者がいた。
「やはりな。それが貴様の正体か」
「フォフォフォ」
 彼は得意気に笑った。その顔は黄金色に輝く機械の髑髏であった。
「その通り、これがわしの真の姿じゃ」
 彼はその剥き出しの歯でカラカラと笑った。
「ゴールドゴースト、よく覚えておくがいい」
「ゴールドゴースト・・・・・・」
「ただしじゃ」
 ゴールドゴーストはここで口調を陰惨なものに変えた。
「この姿を見て生きている者はそうはおらぬがのう」
「それはこのマジョリンガについても言えるわね」
 マジョリンガも前に出て来た。
「さあ行くぞライダー達よ、せめて苦しまずに死なせてやろうぞ!」
「何を、倒れるのは貴様の方だっ!」
 Ⅹライダーのその言葉が角笛となった。彼等は互いに前に突進した。
「行くぞっ!」
 Ⅴ3はゴールドゴーストに、Ⅹライダーはマジョリンガに向かって行った。そして互いに撃ち合った。
 彼等は竹林に飛び込んだ。そしてそこで戦いを開始した。
「さあ、何処から来る!?」
 竹林に入ったⅤ3はゴールドゴーストの隙を窺う。そこにロケット弾が飛んで来た。
「ムッ!」
 Ⅴ3は身を捻ってそれをかわした。見れば前の竹の陰からゴールドゴーストが右手から煙を放っていた。
「よくぞかわした」
「生憎今は褒められても嬉しくはないな」
 彼は少し皮肉を込めて言った。
「言ってくれるのう、その口は相変わらずか」
 ゴールドゴーストは笑いながら言うと再びロケット弾を放ってきた。
「そう二度三度と同じ手をくらうかっ!」
 Ⅴ3はそれを見事な身のこなしでかわした。そして竹に隠れるようにして間合いを詰めていく。
 ロケット弾は休むことなく放たれる。しかしⅤ3はそれを何なくかわす。
「どうした、その程度かっ!」
「まだまだ青いのう」
 ゴールドゴーストはⅤ3のその言葉を聞いてせせら笑った。
「笑うか、ならばこれでどうだっ!」
 間合いを一気に詰めた。そして拳を繰り出した。
「それが甘いというのじゃ」
 怪人は左手でそれを受けた。機械の三本指の腕である。
「クッ!」
 そしてⅤ3の拳を握り潰そうとする。しかしⅤ3はその左手に右の拳を入れ何とかそれから逃れた。
「ならばっ!」
 今度は左の蹴りを入れる。しかしそれも彼の左手に防がれる。
「その程度の動きならばどうということはない」
 彼は余裕をもってそう言った。
「この俺の攻撃をこうも見事にかわすとは・・・・・・」
 流石にⅤ3も動揺を禁じ得なかった。
「さて、今度はこちらから行くぞ」
 彼はそう言うとその左腕を振るってきた。
「危ないっ!」
 慌ててその腕をかわす。竹がまるで空気の様に両断されていく。
「何と・・・・・・」
 竹が音を立てて倒れていく。Ⅴ3は後ろに跳びそれをかわした。
「フォフォフォ、まだまだこれからじゃ」
 彼は無気味な笑い声を出した。そしてまたその腕を振るった。
 Ⅹライダーはマジョリンガと対峙していた。彼等もまた竹林の中にいた。
「さあ来い、マジョリンガ!」
 彼はライドルを抜いていた。竹を切り易いようにだろうか。ホイップである。
「言われなくとも殺してあげるわ」
 彼女はそう言うと両手をゆっくりと上げた。
「ム!?」
 その両手には何かしらの力が宿っていた。そしてそこからその何かを放った。
 そしてⅩライダーの周りにある倒れた竹林が一斉に動きだした。
「何っ、これは!?」
 Ⅹライダーは咄嗟に身構えた。そこに竹が一斉に襲い掛かって来た。
「クッ!」
 彼はライドルでそれを切った。だが竹は切ったそのすぐ側から再び襲い掛かって来る。
「無駄よ。切れば切る程竹は増えるわ」
「クッ・・・・・・」
 その通りであった。そして切られた竹の先が槍となり彼を襲う。彼はすぐにライドルをスティックに変えた。
「考えたわね」
 マジョリンガはそれを見て言った。
「けれど何処までそれが続くかしら」
 必死にライドルで竹を叩き潰す彼を嘲笑していた。Ⅹライダーはマジョリンガを攻撃するどころではなかった。迫り来る無数の竹の相手をするだけで必死であった。
「クッ、このままでは・・・・・・」
 潰しても潰してもきりがなかった。竹は次から次に抜かれ襲い掛かって来る。Ⅹライダーは次第に疲れてきた。
「マジョリンガを倒さなければ・・・・・・」
 だが隙がなかった。彼女は自身の周りにも竹を旋回させていたのだ。
「竹さえなければ・・・・・・」
 そう考えている間にも竹が襲って来る。Ⅹライダーはライドルでそれを叩き潰した。
「このままでは拉致があかない。一体どうすれば・・・・・・」
 ライドルを振るう。竹が落ちる。その時ライドルの先が目に入った。
「ムッ!?」
 高速で振り回した結果であろう。ライドルに炎が宿っていた。
「ドクターケイトの時と同じか」
 彼はそれを見て長江流域でのドクターケイトとの戦いを思い出した。あの時はライドルに炎を宿らせ炎に弱い彼女を退けたのだ。
「待てよ」
 彼はここで気付いた。
「ドクターケイトはケイトウの花の化身だった、そして竹は・・・・・・」
 そう、同じ植物だ。
「そうか、ならばやり方がある!」
 彼は目の前に迫る竹を全て叩き落とすとライドルを身体の前で風車のように大きく旋回させはじめた。
「ムッ、Ⅹライダーよ血迷ったか!」
「それは地獄で言うんだな!」
 ライドルに炎が宿っていく。そしてそれから手を離す直前彼はライドルのスイッチを入れた。
「ロングポールッ!」
 放たれたライドルは空中で大きく回転しつつ伸びた。そして大きく回転しながらマジョリンガに向かって行った。
「ムッ!」
 それは竹などものともしなかった。燃え盛るライドルは竹を全て燃やしていく。そしてマジョリンガの周りを護る竹も燃え落ちて
いく。
「クッ!」
 彼女はたまらず上に跳んだ。だがⅩライダーもそれに動きを合わせていた。
「そこだっ!」
 Ⅹライダーは思わず叫んだ。そしてマジョリンガを見据えた。
「受けてみろ」
 そう言うと手を伸ばした。そこにライドルが戻って来る。
 そしてそれで大車輪をする。まるで風車の様に回転をはじめた。
「Ⅹキィーーーーーック!」
 そして跳ぶとそこでⅩの文字を作った。そしてそこから蹴りを放つ。
「グオオッ!」
 蹴りはマジョリンガの胸を直撃した。怪人は思わず叫び声をあげた。
「マジョリンガッ!」
 それを見たゴールドゴーストは思わず叫んだ。そこに一瞬隙が生じた。
「もらった!」
 Ⅴ3はそこに絶好の機会を見た。ゴールドゴーストを掴み投げ飛ばした。
「ウオッ!」
 怪人は思わず叫んだ。だがかろうじて受け身をとりダメージを最小限に抑えた。
「やるな、だがっ!」
 それはⅤ3の計算通りであった。そして空中に跳んだ。
「Ⅴ3・・・・・・」
 空中で反転する。そして加速をつけた。
「スカイキィーーーーーーック!」
 そこから両足で蹴りを放った。蹴りはゴールドゴーストの腹を撃った。
「グウオオオオオオッ!」
 ゴールドゴーストは叫び声をあげ後ろに吹き飛ばされた。そしてそこにマジョリンガも落ちてきた。
「勝負あったな」
 Ⅴ3はその倒れた二体の怪人を見て言った。そこにⅩライダーも着地してきた。
「ウググ・・・・・・」
 彼等はそれでも立ち上がった。そして変身を解き人間態に戻った。
「見事じゃ、我等を破るとはな」
「これで中国での作戦は失敗ね」
 二人共口から血を流している。だがそれでも言葉を続ける。
「最初から貴様等を始末するべきであった。戦力を分散させたのが失敗だったか」
 幽霊博士は身体を震わせながら言った。
「今言っても仕方がないことだけれどね」
 魔女参謀もであった。彼等は死期が迫っていようともまだその目は光っていた。
「これでわし等は終いじゃ。だがな」
 そして最後の力を振り絞って目を光らせた。
「私達の仲間はこうはいかないわよ」 
 魔女参謀もであった。
「わしはただ消えいくのみじゃ。バダンの心は永遠に残る」
「そう、バダンに栄光あれーーーーーっ!」
 彼等はそう言うとその場にタ倒れ伏した。そしてそのまま爆死した。
「・・・・・・これでまた二人バダンの最高幹部が倒れた」
「はい、いつもながら敵とはいえ見事な連中です」
 二人のライダーはその爆発を見届けながら言った。それは敵への礼儀であった。

「・・・・・・あの二人が死んだか」
 鬼火指令はそれを自身の基地内で聞いていた。
「ハッ、お二人共見事な最後だったそうです」
 戦闘員が敬礼して報告した。
「・・・・・・ならば良いがな」
 彼は苦渋に満ちた声でそう言った。
「・・・・・・下がれ」
 そして戦闘員に対して言った。
「わかりました」
 戦闘員はそう答えるとその部屋をあとにした。
「・・・・・・逝ってしまったか、遂に」
 彼は一人になると沈んだ声でそう呟いた。
「色々とあったがの。思えば長い付き合いだった」
 彼等は口では何かと言い争っていた。だがそれは仲間内のことであり互いにドグマ、そしてジンドグマの者として信頼し合っていたのだ。
 そこに来客が来た。あの女である。
「鬼火指令、話は聞いているかしら」
 妖怪王女であった。彼女は仮面の下からでもわかる険しい表情で彼に尋ねてきた。
「無論だ」
 彼は憮然とした顔で答えた。
「ならわかっているわね。ジンドグマの掟を」
「ああ」
 ジンドグマは独特の憲法があった。破壊と殺戮を奨励するのがその根幹であったがそれと共にもう一つジンドグマを
ジンドグマたらしめているものがあった。
「仲間を倒した者は最後まで追い詰め仇をとる」
 妖怪王女は凄みのある声でそう言った。
「わかっておる、早速行くとするか」
「何処へ!?」
「オーストラリアじゃ。そこにライダーマンがいるという」
「ライダーマン!?何を言っているのよ」
 妖怪王女はそれを聞いて言葉を荒くした。
「私達の仇は仮面ライダーⅤ3と仮面ライダーⅩよ」
「その二人を倒す前にまず奴だ」
 彼は怒りを必死に抑えて言った。彼とて仲間を討たれその心中は穏やかではない。
「あの男のアタッチメントを奪う。そしてそれを使わせてもらう」 
「あの二人を倒す為に・・・・・・」
「そうだ、それなら話はわかるだろう」
「ええ」
 彼女は険しい顔をとどめたままだが頷いた。
「ライダー達は残らず倒す、ジンドグマの絆に従ってな」
「そうね、私達の手で」
 二人は頷き合った。
「ならば行くぞ、そして手始めにライダーマンを血祭りにあげる」
「わかったわ」
 二人はそう言うと部屋をあとにした。そして皆その基地から出撃していった。

 戦いを終えた風見と神は四川省をあとにしていた。そして今は西安にいた。
 ここはかって漢、そして唐の都であった。特に唐代は世界の中心地の一つであり百万の人口を擁し栄華を極めていた。
「そういえば風見さんは万里の長城で戦っていたんですよね」
「ああ、ドクロ少佐とな」
 彼等はその古い街並みを見渡しながら歩いていた。
「手強い奴だったがな。それでも何とか倒した」
「俺はドクターケイトとですよ。長江で戦って次はモンゴルで思いの他手強い奴でした」
「そうだろうな。デルザーの改造魔人も手強い」
 風見は頷きながら言った。
「ここまで戦って勝ってこれたのが不思議な位だ」
 彼もまたドクロ少佐とはシンガポール、そして万里の長城において幾度となく死闘を繰り返したのだ。
「よくストロンガーは勝ってこれたと思う。それは尊敬に値するよ」
「それを本人に言ったらまた図に乗りますけれどね」
 神は口の両端と目元を細めた。
「そうだがな。まああいつも超電子を身に着けてから優位に立ったそうだが」
「逆に言えば超電子がなければ危なかったということでしょうか」
「それはどうかな、と思うが。奴の勝利にかける執念は凄まじい」
 風見はストロンガーの戦いを思い出しながら言った。
「ところで奴は今何処にいる!?」
「茂ですか?」
「ああ。確かインドネシアに一也と一緒にいた筈だが」
「何でもオーストラリアにいるそうですよ」
「オーストラリアか」
 風見はそれを聞いてまた考える顔をした。
「確か今あそこには結城もいたな。奴に迷惑をかけなければいいが」
 彼は結城の生真面目な性格を知っていた。だから城が一緒にいると気苦労が絶えないのではないか、と危惧した。
「あいつはガサツですからね」
 それは神もわかっているようだ。
「けれど大丈夫だとおもいますよ」
「何でだ?」
「風見さんと付き合ってこれたんですから」
「おい、そりゃどういう意味だ」
 風見は苦笑して抗議した。
「いえ、冗談なんですけれどね」
「そうは聞こえないが」
 風見は少しを目を剣呑なものにしていた。
「まあまあ落ち着いて」
 神はそんな風見をあしらった。
「ううむ」
 風見はまだ不満そうである。だが次第にその目も元に戻した。
「まあいいか。ところでだ」
「何ですか?」
「御前さんは今度は何処へ向かうんだ?俺はまだ決めていないが」
「そうですね」
 彼はふと宿敵のことを思い出した。
「ギリシアにも行ってみます。あそこで気にあることがありますので」
「そうか、気をつけろよ」
「はい」
 二人の戦士はそれで違う道に進んだ。そして次の戦場に向かうのであった。


 竹林の戦い    完



                                  2004・5・30

 
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