仮面ライダーZX 〜十人の光の戦士達〜
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知の戦士
「またしても戦死者が出たというのか」
ドクトル=ゲーは北欧にいるメガール将軍と会っていた。そして幽霊博士と魔女参謀の戦死の報告を聞いて思わず声を漏らした。
「そうだ、中国でな」
将軍は顔を俯けて答えた。彼にとっては袂を分かったとはいえかっての仲間であった。
「惜しい者達をなくしたな。相手は誰だ?」
「仮面ライダーⅤ3と仮面ライダーⅩだ」
「ほう、奴だったか」
ゲーはそれを聞いてその暗い目に光を宿した。
「やはりそうそう簡単には倒れぬか」
笑みを浮かべた。ゾッとする笑みだった。
「楽しそうだな」
将軍は彼のそんな様子を見て言った。
「うむ、そうでなくては張り合いがない」
どうやら彼と戦う事を楽しみにしているようだ。
「仮面ラァーーーーイダⅤ3を倒すことは我が悲願だ。私がデストロンにいた時からな」
彼は凄みのある笑みに変えた。
「この斧が叫んでおる。奴の血を飲ませろと」
「それはお主自身の心ではないのか?」
メガール将軍はそんな彼を見て言った。
「そうかも知れぬな。だがそれでもよい」
彼はその陰惨な笑みを崩さない。
「私はあの男を倒すことだけで今までこのバダンにいるのだからな」
「そうか。それは私と似ているな」
彼はそれを聞いて顔に陰を作った。
「スーパー1とか」
「うむ」
小さな声を出して頷いた。
「その為に今もこの姿でいる」
彼の声は沈んだものになっていった。
「そうか」
ゲーもそれ以上は聞こうとしなかった。そして踵を返した。
「帰るのか」
「うむ、こちらも何かとあってな」
彼は振り向いて答えた。
「あの男と戦う時が近付いているしな」
「そうか、期待しているぞ」
「お主もな、必ずやあの男を倒すがいい」
「わかった」
ドクトル=ゲーは言葉を送ってその場をあとにした。そして彼等はそれぞれの作戦行動に入った。
城茂はインドネシアでの戦いのあとオーストラリアに来ていた。そして今中央部をバイクで走っていた。
「凄いところだな。見渡す限りの草原か」
そしてその中を羊達が歩いている。のどかな光景であった。
「そういえば最近は砂漠とかバリ島とかで戦っていてこうしたところとは無縁だったな。たまにはこんな所でのんびりとしたいもんだ」
「だがそうは上手くいかないぞ」
ここで後ろから声がした。
「?」
城はその声に対し振り向いた。そこには彼と同じ戦士がいた。
「あれ、結城さんもここに来たんですか!?」
彼は結城の姿を認めて言った。
「ああ、アメリカからな。あの地には村雨君がいるし彼に任せることにした」
「へえ、アメリカにはあいつがいるんですか」
彼はそれを聞いて意外そうな顔をした。
「ああ、シアトルで早速デルザーの改造魔人を倒したそうだ」
「デルザーの?どいつですか?」
「ヘビ女らしいぞ」
「ヘビ女ですか。それはやりましたね」
彼はヘビ女には苦戦させられてきたのだ。
「嫌らしい奴でしたよ。マントを使ったり催眠術を使ったり」
「彼もルミちゃんを人質にとられたりして苦戦したそうだけれどね」
「あいつのやりそうなことですね。いや、まだ奴にしては正攻法ですよ」
「そうだな。しかしそれも彼は打ち破った」
結城はそう言うと伝え聞いたシアトルでのゼクロスの戦いぶりを城に話した。
「何か忍者みたいですね」
聞き終えた彼の最初の言葉はそれであった。
「ああ、俺もそう思った」
結城もそれに同意した。
「分身に煙幕に手裏剣だからな。実際に隠密行動も得意だし」
「そういえばそうしたライダーって今までいませんでしたね」
「ああ。何だかんだ言って皆派手だからな」
「俺は地味ですけれどね」
「何言ってるんだ、君が一番派手だよ、普段のその服も」
そう言って城のSの字が入ったシャツや薔薇の刺繍が入ったジーンズを指差した。
「そうですかねえ。俺はもっと目立つ格好をしたいんですけれど」
「それ以上目立ってどうするんだ」
二人はそんな会話をしながら西へと向かっていた。
オーストラリア中央部。ここは荒地となっている。アボリジニー達にとっては聖地と言われる場所も多い。
その中の岩山の一つ。そこに今バダンの者達がいた。
「異常はないな」
戦闘員が同僚に対して問うた。
「ああ、今のところは」
問われた戦闘員が答えた。
「そうか。じゃあ交代だ」
「よし」
彼等はそう言うと敬礼し合い歩哨を代わった。
警戒はかなり厳重である。それをモニターから見る男は満足そうに笑った。
「フッフッフ、皆気合が入っておるな」
鬼火司令であった。彼はそれを見て満足気である。
「機嫌がいいようね」
そこに妖怪王女がやって来た。
「当然だ。ここまで厳重な守りはそうそうないぞ」
「そうかしら。そんなこと言っていつもライダー達に遅れをとっているのは何処の誰かしら」
「・・・・・・それはお互い様じゃろうが」
彼は急に顔を不機嫌にさせて言った。
「だが今回はそれは許されんぞ」
「・・・・・・わかっているわ」
妖怪王女は頷いた。その表情にはいつもの笑みはない。
「二人の仇をとる為にな。必ずやあの男を倒さなければならん」
「ええ」
二人はそう言うとモニターのスイッチをVTRに変えた。
そこにはライダーマンが映っていた。今までの戦いの映像である。
「やはり戦闘力自体は大したことはないな」
鬼火司令はデストロンとの戦いを見て言った。
「そうね、それは今も変わらないみたい」
妖怪王女も言った。確かに怪人には分が悪いようである。
「これでよく今まで勝てたものだ。アタッチメントのせいか」
「そうね、おそらくこれがなければとっくの昔に倒されていたわ」
彼等はそう分析した。
「それでは戦い方は決まったな」
「ええ、まずはアタッチメントを潰しましょう。私達が出るのはそれから」
「うむ」
こうして二人は映像を切った。そしてその場をあとにした。
城と結城は相変わらずオーストラリアの真ん中を進んでいた。今は休息をとる為通り掛かった小さな村に入ろうと
していた。
「しかしこんなに大きいのに人はあまりいませんね、オーストラリアって」
二人はバイクを止め村の中に入っていた。城がヘルメットを置きバイクから降りて結城に言った。
「ああ、アメリカとはかなり違うな」
結城もそれに同意した。彼は今までアメリカにいただけありその比較がよくできた。
「同じ英語の国でも事情もかなり違っているしな、どちらかというとこの国はのんびりしている」
「そうですね。ここに来るまでよくのどかに羊と一緒に寝ている人を見ましたよ」
オーストラリアは農業も盛んである。特に牧畜は有名である。羊はオーストラリアの人々にとって切っても切れないものである。
「この村もそうみたいだな。周りに牧場が多い」
「ええ。何か俺達ここ何日か人より羊の方をよく見てますよ」
「そう言うと何だかモンゴルみたいだな」
「ははは、敬介さんと場所が変わったみたいですね」
「おお、そういえばそうだな。けれどモンゴルというにはここは暑過ぎるな」
「荒野も多いですし」
「おいおい、それはもうちょっと先の方だぞ」
二人はそうした話をしながら村の中を進んだ。そして一つの小さなレストランに入った。木で造られた何処か西部劇に出て来るようなレストランである。
「いらっしゃい」
中には白い口髭を生やした体格のいい男がいた。ジーンズにウエスタンハットを身に着けている。
「お、アジアから来たのかい」
彼は二人の顔を見て言った。
「ええ」
二人は頷いた。どうも悪感情はないようでそれは安心した。
「日本人かい、それとも中国人かい?」
「日本人ですけれど」
結城が答えた。それを聞いて男は少し考える顔をした。
「そうか、日本人か」
彼は少し残念そうな顔をした。
「どうかしたんですか?」
城が彼に問うた。
「いや、うちはレストランなんだがな」
「ええ、それはわかります」
変な話をする、結城はそう思った。
「肉料理は羊のものしかないぜ、何しろそれだけには困らないから」
どうやら羊料理のレストランのようだ。
「あ、そうなんですか」
「それでいいかい?羊が駄目ってのなら悪いが他の店をあたってくれ」
「構いませんよ、別に」
城が答えた。
「俺達は羊も大好きですから」
「へえ、そりゃ珍しいね」
男はそれを聞いてふと目を広げた。
「日本人ってのはあまり羊は好きじゃないから。匂いが駄目だそうだが」
「まあ独特の匂いですね」
結城はそれを聞いて言った。肉食文化が入って日が浅いせいか日本人は羊に馴染みが薄い。そして匂いが駄目だという人が多い。思えば残念なことである。
「わしにとっちゃあ魚の匂いのほうが駄目なんだが。まあ人の好みってやつがあるからな」
「俺はあの匂いがたまらないんですけれどね。じゃあ早速いただけますか?」
「おお、ちょっと待ってな」
彼はそう言うと店の奥に入った。そしてサラダの山を持って来た。
「まずはこれでも食って腹を落ち着かせてくれ」
「はい」
レタスと豆、そしてトマトのサラダである。キーウィも入っている。
それを食べていると男はカウンターのところで肉を焼いていた。その音と香りが二人の席の方にまでやってくる。
「いい匂いですね」
「ああ、焼きあがるのが楽しみだ」
やがて肉が運ばれてきた。マトンのステーキだ。かなり分厚い。
「お待ちどうさん、腹一杯食ってくれ」
男は二人の前にそのステーキを置いた。二人は早速ナイフを入れて口に含んだ。
「お、美味いや」
まず城が言った。
「本当だ、柔らかいし。かなり上等の肉だな」
結城も同じだった。二人はソースもかけずに塩と胡椒の味付けもままその肉を味わっている。
「美味いだろう、何せこの村の羊だからな」
男はニンマリと笑って言った。どうやら美味しいと言われたのが余程嬉しいらしい。
「この村の羊は特別でな、毛もたっぷりととれるし肉も最高なんだ。何しろいつも賞をとっている位だからな」
「羊毛もですか」
「そうだ、他のとこの羊の毛と比べても全然違うぜ」
彼は益々機嫌をよくした。
「わしも今までオーストラリア中を歩き回ってきたがここの羊に勝ってるのは見たことがない。それ程ここの羊は素晴らしいのさ」
かなり羊に思いいれがあるようだ。彼の機嫌はさらによくなっていく。
「今日は気分もいい。どんどん焼いてやるよ」
「えっ、本当ですか!?」
「ああ、オーストラリアの男ってのは気前がいいんだ、それをたっぷりと教えてやるよ」
そう言うとカウンターに戻った。
「ビールもたんまりあるぜ。良かったら飲んでくれ」
「はい!」
こうして二人は羊とビールを心ゆくまで堪能した。そして店を後にした。
「お金も安かったですね」
「そうだな、あれだけ食べてあの程度ですむとは思わなかったよ」
二人はビールで赤くなった顔を向け合いながら話した。息もビール臭い。
「オーストラリアってのは食べ物は安いと聞いていたけれどこれ程とは思いませんでしたね」
「ああ、何か得した気分だ。ところで今バイクの乗るのはまずいな」
「ええ。流石に」
城も苦笑した。
「少し酔いを醒ましに行くか」
「了解」
こうして二人は牧場に向かった。
牧場では羊達がのどかに草を食べていた。二人はその中を歩いている。
「たまにはこうしたところを歩くのもいいですね」
「うん、戦いばかりでは疲れてしまうしな」
二人は気分よく草原を歩いている。
「戦いが終わったらこうしたところでのどかに暮らすのもいいですね」
「そうだな、これまでのことを全部忘れて」
二人はまだ来ぬ平和を夢見ていた。その為には勝たなくてはならない、それもよくわかっていた。
そしてその場に腰を下ろした。そこへ何者かが襲い掛かって来た。
「ムッ!」
二人は咄嗟に左右に跳んだ。敵は下から来た。
「フェフェフェフェフェフェ」
ショッカーの蟻酸怪人アリキメデスであった。怪人は地中から襲い掛かって来たのだ。
「こんなところにまで来るとはな」
二人は既に変身を終えていた。そして地中から這い出て来た怪人と対峙した。
「俺もいるぞ!」
そこに上から声がした。
「ウワッ!」
二人に向けてミサイルが放たれた。二人は慌てて跳びそれをかわした。
「上からもかっ!」
デストロンツバサ一族の木霊ムササビであった。怪人は上空を舞っている。
見れば戦闘員達もやって来た。そして二人を取り囲んだ。
「木霊ムササビは俺が!」
ストロンガーは急降下してきた木霊ムササビを掴んで地に引き摺り落とした。
「わかった、ではアリキメデスは俺がやる!」
ライダーマンはそれを受けてアリキメデスへ向かった。その前を戦闘員達が立ちはだかる。
「行くぞっ!」
ライダーマンはアタッチメントを装填した。パワーアームである。
それで戦闘員達を切り裂いていく。そして彼等を退け怪人の前に来た。
「来たか」
怪人はそれを見ると頭を前に突き出した。そして触覚から赤い液体を出した。
「ムッ!」
それはライダーマンに向けて放たれた。だがライダーマンはそれを斜め前に跳びかわした。
着地と同時にアリキメデスに向けて跳ぶ。そして跳びながらアタッチメントを換装した。
「アリは硬い甲殻に守られている」
彼はアリの身体のことを考えながらアタッチメントを換えていた。
「ならばこれが有効だっ!」
そう言うと分銅を取り付けた。
「スウィングアーーームッ!」
打撃用のアームである。そしてそれで怪人の頭部を打ち付けた。
「ギャッ!」
怪人は思わず叫び声をあげた。どうやらライダーマンの分析は正しかったようだ。
ライダーマンはそのまま攻撃を続ける。最初の攻撃で怯んだ怪人はそのまま打たれるがままだった。
最後の一撃が頭を打った。怪人はこれで倒れた。
ライダーマンは後ろへ飛び退いた。怪人は爆死して果てた。
その時ストロンガーは木霊ムササビと死闘を繰り広げていた。
怪人が再びミサイルを放ってきた。ストロンガーはそれに対し両手を身体の前に突き出した。
「磁力扇風機っ!」
そしてそれでミサイルを巻き込む。ミサイルはあえなく爆発した。
「アアアア」
怪人はそれを見て驚愕の色を浮かべた。だがすぐに気を取り戻し襲い掛かった。
だが接近戦ならストロンガーの方が分がある。彼は怪人に攻撃を加えダメージを与えた。
「トォッ!」
そして空中に投げた。怪人はそれに対し必死でバランスを取ろうとする。
しかしストロンガーの方が動きが速かった。彼は空中に跳んでいた。
「スクリューーーーキィーーーーーック!」
身体を回転させて蹴りを放った。空中でそれを受けた怪人は遠くまで吹き飛ばされ爆発四散した。
「やはりここにいたか」
ストロンガーは着地して怪人の爆炎を見上げながら呟いた。
「ああ。予想通りだな」
ライダーマンがそこにやって来た。既に戦闘員達も皆地に伏している。
「このオーストラリアで何を企んでいるかは知らんが」
ライダーマンは強い口調で言った。
「俺達がいる限り好きにはさせないっ!」
ストロンガーも同じく強い声で言った。そして二人の戦士は牧場をあとにした。
場所は変わる。イギリス、ロンドンである。
この霧の都にはロンドン塔というものがある。かってはここで多くの者が首を刎ねられている。
その血生臭い塔に今二人の男がいた。
「そうか、あの二人がここに向かっているか」
ブラック将軍である。彼は塔の断頭台を見ながら傍らにいる男の話を聞いていた。
「うむ、先程俺の手の者が確認した。カレーで合流しこちらへ来る船に乗り込んだそうだ」
傍らにいる男はゾル大佐である。かってショッカー、ゲルショッカーにおいてその悪名を欲しいままにした伝説的な魔人達である。
「カレーか。ならばこのロンドンに来るのもすぐだな」
「既に俺の手の者には全て警戒態勢をとらせている。貴様もすぐにそうした方がいい」
「それはわかっている。すぐにそうさせてもらおう」
彼はそう言うと側に控える戦闘員の方を振り向いた。
「話は聞いたな。すぐにこのロンドンにいる者全員に伝えよ」
「ハッ」
戦闘員は敬礼した。そしてその場からすぐに立ち去った。
「これでいいな」
彼はゾル大佐の方を向き直って問うた。
「ああ、流石だ」
大佐はそれを見て素直に賛辞を送った。
「だがそれだけでは足りぬな」
「というと?」
「奴等が我々のこの地での作戦を勘付いているならば」
大佐は言葉を続けた。
「我々も直接出向かなければなるまい」
「我々がか」
将軍はそれを聞いて呟いた。
「面白いではないか。ようやく積年の宿根を晴らす時が来たのだ」
「積年の宿根か、確かにな」
大佐はそれを聞き呟いた。
「あの時の恨み、忘れられるものではないな」
ここで彼はかって仮面ライダー二号と戦い敗れたことを思い出した。
「一度は偉大なる首領の御力で甦らせて頂いたが」
「だがそれもほんの僅かのことであった」
ブラック将軍もそれは同じであった。彼等はデストロンの時に一度甦っている。だがあえなく倒れたのである。
「貴様とて覚えていよう。あの屈辱を」
大佐は言葉こそ通常であったがその声は激昂していた。
「当然だ。それを晴らせるとなれば迷うことはない」
将軍もそれは同じであった。
「待っておれ、ライダー達よ」
そして眼下のロンドンの市街を見下ろした。
「この霧の都を貴様等の墓場にしてくれる」
そう言うとその場から立ち去った。そしてあとには霧だけが残った。
結城と城は荒野をバイクで進んでいた。何時しか牧場もなくなりそこは無人の荒野となっていた。
「オーストラリアってのもバラエティにとんだ国ですね」
城が結城の隣にきて言った。
「その言葉はちよっと違うと思うがな」
結城は彼の言葉に少し首を傾げた。
「しかし様々な地形があるというのは事実だな」
「はい、海はあるし大草原はあるしこうした荒野はあるし。見ていて飽きませんね」
「確かに。ここまで進んで風景に飽きたことはないな」
彼は頷きながら言った。
「アメリカも色んな場所があるがこの国もそうだな。面白い国だ」
「そうですね。けれど毒蛇が多いのは困りものですが」
「それは何処にでもいるだろう。御前さんがこの前いた東南アジアでも結構いるだろうに」
「そりゃそうですけれど」
東南アジアは確かに毒蛇の種類が豊富である。だがオーストラリアもかなりの多さである。意外にもあまり知られていないがこの地域は毒蛇が多いのである。有袋類だけがオーストラリアではないのである。
「こんなに多ければバダンの奴等に利用されそうで嫌ですね」
「まあ連中は毒も得意だからな。それで何度やられたか」
これもショッカーからである。バダンも毒を使うことを得意としている。
「ムッ!?」
その時であった。急に二人の前を数枚のカードが取り囲んだ。
「これはっ!?」
「シャドウか!?」
だがそれはゼネラルシャドウではなかった。その証拠にトランプのカードではなかった。黒い普通のカードであった。
それでも敵のものであることに変わりはなかった。そこから戦闘員達が姿を現わしたのである。
「クソッ、待ち伏せかっ!」
二人はバイクで彼等を振り切ろうとする。だがそれに対しロープをかけてきた。
「ウオッ!」
ロープは二人を絡めた。そしてそれで動きを封じようとする。
しかし二人の力がそれに勝った。二人は上に跳ぶとそのロープを渾身の力で引き千切った。
「今度はこちらの番だっ!」
二人は変身していた。そしてそのまま戦闘員達へ急降下した。
戦闘員達を拳で次々と倒していく。そこへ怪人達が姿をあらわした。
「イーーーーーッ!」
ゴッド悪人軍団の一人アリカポネである。だが彼だけではなかった。
「ギュルギュルギュル!」
「キーーーーーーーッ!」
ブラックサタンの地中怪人奇械人アリジゴクとジンドグマの鍵爪怪人キーマンジョーもいた。ストロンガーが彼等の前に出た。
「ライダーマン、この連中の相手は俺がっ!」
ストロンガーは迷うことなくその三体の怪人に向かった。
「済まない!」
ライダーマンは既に戦闘員達に取り囲まれていた。彼はそれを見て怪人達に向かったのだ。
「エレクトロサンダーーーーーーッ!」
ストロンガーは早速攻撃を仕掛けた。まずは奇械人アリジゴクがそれを受けた。
「ギュルーーーーーーーッ!」
怪人は断末魔の叫びをあげるとその場に爆死した。だがストロンガーは息をつく暇もなく残る二体の怪人の相手をはじめた。
ストロンガーは怪人達と戦っていた。ライダーマンはそれに対して戦闘員達を相手にしている。
「イィーーーーーーーッ!」
怪人達は奇声を発し襲い掛かる。ライダーマンはそれを一人一人確実に仕留めていく。
そこに新手が来た。ネオショッカーの化石怪人ザンヨウジョーである。
「やはり怪人も!」
「ジュラーーーーーーーッ!」
怪人は答えるかわりに奇声を発し襲い掛かって来た。ライダーマンは戦闘員達を全て退けると怪人に向かって行った。
アタッチメントを装填する。ネットアームだ。
「喰らえっ!」
そしてネットを発射する。怪人はその中に捉われてしまった。
だがすぐにそれを引き千切り中から出て来た。だがライダーマンはそれより前に既に間合いを詰めていた。
アタッチメントを再び換える。今度はドリルアームだ。
「これでどうだっ!」
そしてそれで突きを入れる。ドリルが怪人の胸を刺し貫いた。
「ジュラッ!」
怪人は苦悶の声をあげる。ライダーマンはその声を聞き勝利を確信した。
だがそれは誤りであった。怪人はまだ最後の力が残っていたのだ。
ザンヨウジョーは爆発する直前に口から化石ガスを吐いた。それはライダーマンの右腕を狙っていた。
「ムッ!」
ライダーマンは不覚をとった。右腕にそのガスを受けてしまったのだ。
右腕に痛みがはしる。だがそれでも爆発をさけ後ろに跳び退いた。
「ライダーマンッ!」
ストロンガーが心配し声をかけようとする。だがそこに怪人達が襲い掛かる。
「クッ!」
ストロンガーは止むを得ず後ろを振り向く。そして攻撃を放った。
「電パァーーーーンチッ!」
それでアリカポネを退けた。続けて上に跳んだ。
「トォッ!」
そして空中で一回転した。
「ストロンガー電キィーーーーーーーック!」
そして蹴りを放った。キーマンジョーはその直撃を受け吹き飛んだ。
二体の怪人はそれで爆死した。ストロンガーはそれを見届けることはせずライダーマンの方へ駆け寄った。
「大丈夫ですかっ!?」
そして右腕を押さえ蹲る彼を気遣った。
「ああ、何とか」
彼の身体は無事であった。だが肝心のアタッチメントが損傷していた。
「これはまずいですね」
「・・・・・・ああ」
それはライダーマン自身が最もよくわかっていることであった。彼の戦力はこのアタッチメントがほぼ全てなのだから。
「とりあえずは修理する必要がある」
彼は化石化した腕を見ながら言った。
「だが数日はかかるな」
「数日、ですか」
ストロンガーはそれを聞いて表情を暗くさせた。その数日が命取りになるかも知れないからだ。
「上手くいったな」
それをモニターから見る者達がいた。
「これでライダーマンは翼をもがれたも同様だ」
それは鬼火司令であった。
「あとはストロンガーを引き離せばいいだけ。本当に楽ね」
妖怪王女もいた。彼等はモニターに映るライダーマン達を見て笑っていた。
「奴等はここへ向かっているのだな」
「ええ」
妖怪王女は答えた。
「ならば問題はない。ここへ来たところを倒すとしよう」
「そうね、まずはストロンガーを引き離さないと」
「何か策はあるか」
「それは任せて」
妖怪王女はそう言うと笑った。
「こうしたことは得意だから」
「そうか、ならば期待しておるぞ」
鬼火司令はそれを聞いて顔を崩した。
「それでは行くとするか」
「ええ。ライダーマンの首を獲りに」
二人は顔を向けて頷き合うとその場をあとにした。そして戦場へ向かった。
結城と城はそのままオーストラリアの奥深くを進んでいた。そしてある岩山を見つけた。
「どう思います?」
城はその岩山を指差して結城に尋ねた。
「そうだな」
結城もその岩山を見た。一見普通の岩山だが何処か妙な雰囲気だ。
「調べてみよう。何かあるかも知れない」
「わかりました」
二人は頷き合うとバイクを降りた。そしてその岩山を登った。
そして表面を調べ回った。やがて戦闘員を発見した。
「やはり」
咄嗟に物陰に隠れる。そしてその戦闘員の動きを見張った。
戦闘員は穴の中へ入って行く。どうやらそこが入口らしい。
「行きましょう」
「ああ」
二人はその穴の中に入った。そこは薄暗い洞窟だった。
「気をつけていこう」
「はい」
二人は前後左右を警戒しつつ進んで行く。城はその時ふと尋ねた。
「右腕の様子はどうですか」
「あまり思わしくはないな」
結城は深刻な声で答えた。
「普通に動かすことはできるがアタッチメントとなると無理だ。装填できるまでにはまだかかる」
「そうですか。じゃあ今回は俺が奴等を叩きますよ」
「いや、その必要はない」
結城はその申し出に対し首を横に振った。
「俺も戦わせてもらうよ」
「しかしその腕じゃあ・・・・・・」
「大丈夫さ、俺の武器はこの右腕だけじゃない」
彼は微笑んで言った。
「それを見せてあげるよ」
「そうですか・・・・・・」
だが城は不安であった。強化されたとはいえライダーマンの戦闘力は他のライダー達と比べると見劣りする。そしてアタッチメントがなくてはそれはさらに落ちるのだ。
二人はそのまま進んだ。そして道を曲がった時だった。
「ムッ!」
突如落とし穴が開いた。結城はその中に落ちた。
「結城さんっ!」
城は驚いて手を差し伸べようとする。だが間に合わなかった。彼はそのまま奈落へと落ちて行った。
どれだけ落ちたであろうか。結城は足で受け身をとり着地した。そして周りを見回す。
「ここは・・・・・・」
そこは巨大な空洞の一室であった。見たところ何もない。
「てっきり罠でも仕掛けてあると思ったが」
やはり何もなかった。彼はすぐに道を見つけた。そしてそこを進んでいく。やけに曲がりくねり長い道であった。
どれだけ歩いただろうか。やがて前に光が見えてきた。
結城はそちらへ向かった。するとそこから外に出ることが出来た。
「ここは・・・・・・」
そこは何度かテレビや本で見たことのある場所であった。オーストラリアで最も名の知られた場所の一つである。
先住民であるアボリジニー達の聖地でもある。巨大な岩石のテーブルである。結城は今その上にいたのだ。
「まさかこんな場所に出るとはな」
結城は周りを眺めながら思わず呟いた。
「噂には聞いていたが凄い場所だ。見渡す限り赤い絨毯だ」
「そう、確かに赤い絨毯だな」
そこで何者かの声がした。
「・・・・・・やはり来たか」
結城はその声に対し振り向いた。そこには二人の敵がいた。
「今は岩の絨毯だが」
一人は鬼火司令である。
「もうすぐ貴方の赤い血で染まることになるのよ」
もう一人は妖怪王女である。二人は既に勝ち誇った笑みを浮かべている。
「それは俺を倒すという意味だな」
「当然」
二人は同時に言った。
「幽霊博士と魔女参謀の仇をとる為にも」
「貴方のアタッチメントをいただくわ」
二人は左右に散りそれぞれ身構えた。
「そうか、その為に俺を落とし穴に落としここまで来させたのだな」
結城は全てを察した。
「そうだ、仮面ライダーストロンガーと引き離す為にな」
「貴方一人を倒す為に」
二人に抜かりはなかった。そしてライダーマンを左右から取り囲んだ。
「では見せよう、我等の真の姿を」
「とくと御覧あれ」
そう言うと鬼火司令は左手から炎を出しそれを地面に打ち付けた。妖怪王女はその仮面を取った。
炎が彼の全身を包む。やがてそれが消えた時顔が髑髏になり右腕は大砲になっていた。胸も赤く変形し背にも大砲があった。
妖怪王女のスカートが伸びた。足全体を覆い服が厚くなる。そしてその髪が伸びた。
「それが貴様等の正体か」
結城はそれを見て言った。
「そうだ、これがわしの真の姿、オニビビンバだ」
「同じくサタンドール」
二人はそれぞれ名乗った。
「さあ結城丈二、いやライダーマンよ」
オニビビンバは結城に対して言った。
「貴方も変身するがいいわ。そうでなくては面白くとも何ともないわ」
サタンドールが続けた。そして間合いを離す。
「そうか、ならば」
結城はそれを聞いて身構えた。
「見せてやろう、ライダーマンの力を!」
そう言うと変身に入った。
トォーーーーーーーーッ!
両手を大きく上に掲げる。するとそこにヘルメットが現われた。
それを下に持っていく。身体が黒いバトルボディに覆われ手袋とブーツが銀になる胸も赤く変わった。その腹は白と緑である。
ライダーーーーーマンッ!
そしてそれを被る。両手を胸のところでクロスさせ拳を打ちつけ合う。
ベルトの四つの風車が回転した。そしてそこから光を放つ。
「行くぞっ!」
そして変身を終えた。そこには四人目のライダー、ライダーマンがいた。
「フフフ、変身したな」
オニビビンバとサタンドールはその姿を見て顔を動かして笑った。
「そうじゃないと面白くないわ。早速相手をしてあげる」
まずサタンドールが姿を消した。そしてライダーマンの後ろに姿をあらわした。
「ムッ!」
ライダーマンは咄嗟に気配を感じ後ろを振り向いた。そして振り向きざまに攻撃を仕掛ける。
「無駄よ」
しかしそこにサタンドールはいなかった。彼女は前に移動しそこからライダーマンに手刀を放った。
「グワッ」
ライダーマンは怯んだ。だがすぐに態勢を立て直し反撃に移る。
しかしそこにサタンドールはいなかった。オニビビンバの側に移っていた。
「今度はわしの番じゃっ!」
オニビビンバはそう叫ぶと身体を前屈みにさせた。そして背中の大砲をライダーマンに向けて来た。
「ヌッ!」
ライダーマンは咄嗟に左に走った。それを砲撃が追いかけて来る。
「速いな」
ライダーマンは思った。だが彼も負けてはいられない。すぐに間合いを狭めようとした。
だがそうはいかなかった。
「それはさせないわ」
サタンドールの目が光った。不意にライダーマンの動きが止まった。
「何、どうしたことだっ!」
動けない。何やら得体の知れない力で動きを封じられたようだ。
「オニビビンバ、今よ!」
サタンドールはそれを見てオニビビンバに対して言った。
「うむ!」
オニビビンバは頷くとその手に大鎌を出した。そしてそれをライダーマンに投げ付けた。
大鎌は凄まじい唸り声をあげライダーマンに襲い掛かる。それは彼の首筋を狙っていた。
「クッ、このままでは・・・・・・」78
かわそうにもかわせない。動くことができないのだから。
「おそらく・・・・・・」
原因はわかっていた。サタンドールの術によるものだろう。おそらくその名が示すように妖しげな術に長けているのだ。
そう考えている間にも鎌は近付いて来る。もう少しでライダーマンの首が切断される、その時だった。
不意に鎌が吹き飛んだ。そして地面に叩き落とされそこで回転する。
「誰だっ!」
オニビビンバとサタンドールはそれを見て辺りを見回した。そこで口笛が聞こえてきた。
「口笛っ!?まさか」
彼等も口笛のことは聞いていた。咄嗟にあの男のことが脳裏に浮かんだ。
「ハッハッハッハッハッハ、どうやらジンドグマも俺のことはご存知だったようだな」
そこで声の主が姿を現わした。
「おのれ、城茂・・・・・・」
「先程のは貴様の仕業か」
「如何にも。俺のこの力を使ったのさ」
そう言って両手を見せる。既に手袋を脱いでいた。
「電撃は何も感電させたりするだけじゃない。こうして衝撃を送ることもできるんだ」
「クッ・・・・・・」
「残念だったな。俺にはビデオシグナルというものがある」
過去のその場の映像を映し出すものである。これにより索敵も可能だ。
「それで貴様等がここにいることを掴んだのだ。これで形勢逆転だな」
「クッ・・・・・・」
彼等は歯軋りした。だが今更どうにもなるものではない。
「ではいくぞ、このストロンガーの力見せてやる!」
彼はそう言うと変身に入った。
変身
右腕を肩の高さで横に垂直にする。そして左腕は肘を直角に折り右腕と水平にする。
そしてそれをゆっくりと右から左へ旋回させる。それと共に身体が黒くなり胸が厚く赤いものになる。白い手袋とブーツがあらわれる。
スト・・・・・・ロンガーーーーーーーッ!
両腕が左斜め上にきたところで両手を合わせる。そこに雷が宿る。
右腕を引いた。雷は宿ったままである。
顔の右半分は緑の眼を持つ黒い仮面に覆われる。中央には角がある。そして左半分も。
胸にSの文字が浮かぶ。そこで電撃が全身を覆った。
「天が呼ぶ 地が呼ぶ 人が呼ぶ 悪を倒せと俺を呼ぶ
聞け、悪人共。 俺は正義の戦士
仮面ライダーストロンガーーーーーッ!」
名乗りが終わった。彼は雷を全身に包んだまま叫んだ。
「ぬうう、変身しおったか」
二人はそれを見て舌打ちした。
「トォッ!」
ストロンガーはエレクトロサンダーを放った。だがそれは怪人達に向けて放ったのではなかった。
それはライダーマンを撃った。そして彼の身を捉えていた呪縛を解いた。
「これは・・・・・・」
「金縛りは往々にして衝撃で解けるもの、精神的なものだから」
「そうか、だからか」
ライダーマンはストロンガーの話を聞き納得した。
「さあてと」
ストロンガーは二体の怪人の方へ顔を向けた。
「これで形勢が変わったな。どうする?何なら俺が二人共相手をしてもいいが」
「ぬうう、小癪な」
オニビビンバとサタンドールはストロンガーの言葉に顔を歪めさせた。
「待て」
だがここでライダーマンが言葉をかけた。
「これは俺の戦いだ。悪いが今回はそこで見ていてもらおう」
「しかしライダーマン、貴方は右腕が・・・・・・」
「心配無用だ、俺の武器はアタッチメントだけじゃない」
「しかし・・・・・・」
「ストロンガー、俺を信じてくれ」
ストロンガーはライダーマンの声を聞いた。そしてその仮面の下半分に現われている顔を見た。そこからは強い決意が感じられた。
「わかりました、ここは任せます」
彼はそう言うと後方へ跳んだ。
「ここで最後まで見せてもらいましょう、ライダーマンの戦いを」
「有り難う」
彼は礼を言った。そしてあらためてオニビビンバとサタンドールに顔を向けた。
「そういうことだ、貴様等の相手はこの俺だ」
「フン、その身体でか」
オニビビンバは彼の顔を見て嘲笑を浴びせた。
「笑わせてくれるわね。アタッチメントも使えなくてどう闘うつもりなの?」
サタンドールも同じであった。二人はジリジリと間合いを詰めてきた。
「それを今から見せてやる」
ライダーマンは二人に気圧されることなく言い放った。
「行くぞっ!」
そう叫ぶと前にダッシュした。そしてオニビビンバへ向けて突進する。
「フン、遅いな」
怪人はそれを余裕の顔で見ていた。やはり他のライダーに比べて動きが遅い。
右腕を上げた。そして炎を放とうとする。
しかしライダーマンは次の瞬間にはそこにいなかった。彼はオニビビンバの視界から消えていた。
「ムッ、何処だっ!」
「上よっ!」
咄嗟にサタンドールが彼をフォローして叫んだ。オニビビンバは慌てて上を見上げる。
やはりそこにいた。そしてそこから急降下してくる。
「そうはさせないわっ!」
サタンドールが跳んでいた。そしてライダーマンにその爪で襲い掛かる。
「甘いっ!」
だがライダーマンは跳んできた彼女に攻撃を浴びせた。蹴りがその肩に入った。
「クッ!」
サタンドールはその肩を押さえた。やはり空中戦では上を制しえいる方が有利であった。
ライダーマンはそのまま急降下を続ける。そして背中から砲撃を仕掛けようとするオニビビンバに浴びせ蹴りを加えた。
「グオオッ!」
それは後頭部を直撃した。オニビビンバは思わず前屈みになった。
ライダーマンは着地した。そして蹲るオニビビンバに向かった。
「そうはさせないわっ!」
だがその前にサタンドールが立ち塞がる。そしてその眼を光らせた。
「それはもう通用しないっ!」
その瞬間にライダーマンは己が左脚に手刀を入れた。それは深く突き刺さり鮮血が流れた。
「何と・・・・・・」
これにはさしもの怪人達も呆然とした。
「ライダーに一度見せた術は通用しない、それは知っている筈だ」
「ク・・・・・・」
「俺もライダーの一人、それを忘れてもらっては困るな」
「クッ・・・・・・」
そうであった。ライダーマンもまたライダーなのであった。その正義を愛しその為に全てをかける男なのであった。
「行くぞ、俺の真の力見せてやるっ!」
そう言うと今までにない速さで走りはじめた。そして怪人達を取り囲んだ。
「なっ!」
彼等は眼を疑った。何とライダーマンが増えたのだ。
「馬鹿な、ゼクロスと同じか!?」
「オニビビンバ、それは違うわ」
サタンドールがまず気付いた。
「素早い動きで分身しているように見えるだけ。本当は一人よ」
「成程、そうか。幻影だな」
「ええ」
オニビビンバもそれを聞いて納得した。
「落ち着いて見れば問題はないわ。そして疲れたところを叩けばいいだけ」
「そうだな、こうした動きが何時までも続けられる筈がない」
「それはどうかな?」
ライダーマンはオニビビンバの言葉に対して不敵に笑った。
「何もこれは分身が目的ではない」
「何っ、どういうことだ!?」
「それは・・・・・・」
彼は口元を歪めた。
「こういうことだっ!」
そして飛び上がった。急に竜巻が生じた。
「ウオッ!」
二人はその中に巻き込まれた。そして大きく吹き飛ばされる。
ライダーマンもその中にいた。だが彼はその竜巻の中を上手く泳いでいた。
「今だっ!」
そして風の力を使い二人に向かう。そして攻撃を放った。
「ライダーマンキィーーーーーック!」
まずはサタンドールを撃った。怪人はそのまま竜巻の外へ弾き出される。
続けてオニビビンバに向かう。さしもの彼も竜巻の中では思うように動けない。
だがライダーマンは違っていた。彼は風の動きを読んでいた。そしてそれに乗って動いていた。
「喰らえ」
そしてそこで身体をドリル状にした。
「ライダーマンドリルアターーーーーーーック!」
Ⅴ3のⅤ3ドリルアタックを模倣した技だった。彼はⅤ3と同じように身体をきりもみ回転させながら怪人に体当たりを敢行した。
それは怪人の胸を直撃した。オニビビンバもまた竜巻から落ちた。
竜巻は消えた。二体の怪人はその下に蹲っていた。
「グググ・・・・・・」
何とか立ち上がる。だが既に致命傷を受けていた。
怪人態から人間の姿に戻る。そして着地したライダーマンを見上げた。
「勝負あったな」
ライダーマンは立ち上がった彼等に対して言った。
「まだだ、これしきの傷で・・・・・・」
鬼火司令はまだ前に進もうとする。だがそれはできなかった。
「ク・・・・・・」
ガクリ、と膝をついた。それを妖怪王女が助け起こす。
「済まん・・・・・・」
礼を言う。だが妖怪王女もそれ以上は無理だった。
それでも二人はかろうじて立っていた。それは意地であった。
「まさか竜巻を起こしてその中で攻撃を仕掛けるとは・・・・・・」
「大した戦巧者ね」
「俺の武器はアタッチメントだけではないと言った筈だ」
ライダーマンはそれに対して言った。
「俺は確かに他のライダーに比べてパワーは劣る。だがパワーを使わずとも戦うことはできる」
「頭脳か」
「そうだ、ならば頭脳を使うしかない」
彼はかってその頭脳を買われてデストロンに入った。それだけあってその知力はライダー達の中でも群を抜いていた。あの本郷をすら上回るとさえ言われているのだ。
「それを忘れたのは迂闊だったな。戦いは力と技だけでするものじゃない。貴様達はそれを忘れていた」
「クッ、確かに・・・・・・」
その通りであった。彼等はライダーマンのパワーが他のライダー達に比べて見劣りしアタッチメントさえ封じてしまえばいいとたかをくくっていたのだ。それが命取りとなった。
「わし等の完敗だな、貴様の最大の武器を忘れておった」
「戦いはパワーだけでするものじゃない、そんなことを忘れていたなんて」
二人はガクリ、と膝をついた。
「だがな」
それでも立ち上がった。やはり彼等にも意地があった。
「我々に勝ったとしえもまだ戦いは終わりではない。それだけは忘れるな」
「そう、いずれ貴方達は我々の前に屈することになる。それだけは覚えてらっしゃい」
「貴様等、まだそんな減らず口を」
ライダーマンの横に来ていたストロンガーが前に出ようとする。しかしライダーマンはそれを制した。
「いい」
「しかし・・・・・・」
「これが最後だ、最後まで言わせてやれ」
「わかりました」
ストロンガーはライダーマンの言葉に引き下がった。
「わし等を倒したことは褒めてやろう。それだけはな」
「この妖怪王女を出し抜くとは。流石はライダーきっての頭脳派」
二人は残された時間が少ないと悟ったのかライダーマンに賛辞を与えた。
「それだけ言えばもうよい。我等は去るとしよう」
「バダンに栄光あれーーーーーっ!」
そう言うと二人はその場に倒れ伏した。そして爆死して果てた。
「・・・・・・これで終わりですね」
ストロンガーはその爆発を見届けてライダーマンに声をかけた。
「ああ、今までで最も苦労した戦いだった」
ライダーマンは答えた。そして二人はエアーズロックをあとにした。
オーストラリアの戦いは終わった。この地における指揮官鬼火司令と妖怪王女は戦死しオーストラリアのバダンは壊滅した。そしてジンドグマの四幹部は全滅した。
「・・・・・・そうか」
メガール将軍はそれを北欧の街で聞いた。
「惜しい者達だったが」
彼は変装し背広を着ている。どうやらこの地で何かを探っているようだ。
その街は明るい。時計台の時計を見ると真夜中であるにもかかわらず、だ。白夜であった。
「あの時は衝突もしたものだが」
彼はここでドグマの頃を思い出した。
その時ドグマはテラーマクロの下最高幹部である悪魔元帥を筆頭に彼とあの四人の幹部がいた。テラーマクロと悪魔元帥は宇宙より来た者であったが他の五人は違った。もとは皆人間であった。
だがそれでも対立があった。感情的なものであった。
生真面目な性質でありその暗く沈んだ経歴を持つ彼はやはり明るくはなれなかった。次第にテラーマクロに従うようになる。だが他の四人は違った。
四人は将軍程暗い生い立ちではなかった。そして元々の性質も明るいものであった。その為彼等とはうまくいかなかったのだ。彼等はよく悪魔元帥と共にあった。
「だがそれは大した問題ではなかった」
それでも互いに認め合っていた。分裂するなど考えもしなかったのだ。
だがテラーマクロと悪魔元帥は違った。その対立は日を追うごとに激しくなり遂には彼等は袂を分かった。これでドグマの分裂は決定的となった。
彼も悪魔元帥や四人の同志達に誘われた。しかし彼はテラーマクロに従った。
「ならばよい。そなたの好きにするがいい」
それを聞いた悪魔元帥は静かにそう言った。彼は将軍の能力を高く買っていた。だがそれと共にその暗く絶望に満ちた心も知っていた。
「だが忘れるな」
元帥はドグマを出て行く時に彼に対して言った。
「そなたの力を買っている者がいる。そしてその全てを知っている者もいるということをな」
それはスカウトの言葉だったのだろうか。だが将軍はドグマに残った。そしてテラーマクロと共に仮面ライダースーパー1と戦い散った。そして今甦りこの地にいる。
「私の生涯は絶望に満ちている」
彼は呟いた。
「だが一人ではない。そしてこれからも」
無意識にその首にあるペンダントを握った。
「スーパー1、貴様という敵もいる」
そして今度は仮面ライダースーパー1のことを脳裏に浮かべた。
「今度こそ貴様を倒す。そしてあの力を世界に示す」
彼はそう言うとその場をあとにした。
「この白夜も終わる」
ふと白い空を見上げた。
「永遠にな。あとは絶望が支配するだけだ」
そして何処かへ消えた。あとには影も残らなかった。
「まさか二人共倒すとは思いませんでしたよ」
シドニーである。オーストラリア第一の都市と言われる。面白い形をしたオペラハウスもある港町である。
「俺もライダーだ。必要とあれば戦うさ」
結城は城に対して答えた。
「竜巻を作ってその中で戦うとは。あれは何処から考え付いたんですか?」
「ああ、あれか」
結城はそれを聞かれ顔を向けた。
「ショッカライダーの話は知っているだろう?」
「ゲルショッカーが一号と二号をコピーして開発した六人のライダー達ですね」
その時ライダー達の活躍により劣勢に追い込まれていたゲルショッカーが発動した作戦である。これによりライダー達とアンチショッカー同盟を壊滅させるつもりだったのだ。
「かなり苦戦したと聞いていますけれど」
その通りであった。日本に集結したダブルライダーも流石に六人のライダーを前に苦戦した。彼等は自分達と同程度の力だけでなく怪人の能力も備えていたのだ。しかも怪人の援護もあった。
アンチショッカー同盟はゲルショッカーにより壊滅させられた。だがダブルライダーは屈しなかった。立花藤兵衛の特訓を受け一つの技をあみだしたのだ。
「それがライダー車輪だ」
結城は言った。
それは大掛かりな技であった。ダブルライダーはショッカーライダー達の周りを全力で走りそこに竜巻を作る。そして跳ぶ。それを追ったショッカーライダー達は竜巻に巻き込まれそこで互いに衝突して爆死した。そして彼等はその圧倒的な劣勢をものともせずショッカーライダーに勝利を収めたのだ。
「あれは見事な勝利だった。俺はそれを応用したんだ」
「そうだったんですか」
城はそれを聞いて大きく頷いた。
「そして奴等を竜巻に巻き込んだ。一か八かだったが上手くいったよ」
「結城さんもいざという時は思い切ったことをやるんですね。ちょっと意外ですよ」
「俺も勝つ為にはこの身をかけるさ。そうでもしなければバダンには勝てない」
「・・・・・・はい」
城にもそれはわかっていた。事実彼も何度も賭けを行なっている。
「そして俺は勝った。けれど少し代償が高くついたな」
「どうかしたんですか?」
「いや、右腕がね」
彼はそう言って自分の右腕を見せた。アタッチメントのある腕である。
「竜巻の衝撃でアタッチメントの調子が回復しない。やはり一人で竜巻を作るのは無理があったようだ」
「アタッチメントが・・・・・・」
「暫くの間戦列を離れる。日本に戻っておやっさん達と一緒にじっくりと直させてもらうよ」
「そうですか」
「すぐ戻る、安心してくれ」
結城はここで微笑んで城に対して言った。
「そしてその時また戦おう。バダンを倒す為にな」
「ええ、お願いしますよ」
城はそう言うと左腕を差し出した。彼の右腕を見てのことだ。
「バダンを倒すには結城さんの力が必要です。万全の調子にして戻って下さい」
「ああ、わかっている」
結城はそう言って左腕を出した。
「俺は必ず戻って来る」
「楽しみにしていますよ」
二人はそう言うと固く握り合った。
「じゃあまた会おう。戦場で」
「はい、頼りにしていますよ」
二人はそう言うとその場で別れた。城はシドニーに残った。この地に残っているかも知れないバダンの残党を掃討する為である。
結城は空港へ向かった。当然日本へ帰る為である。
「シンガポール経由東京行き」
アナウンスが響き渡っている。
「あれか」
結城はそのアナウンスが伝える方へ向かった。
そして彼は空港から姿を消した。やがて日本へ向かう便が空へ飛び立った。
知の戦士 完
2004・6・8
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