インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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文化祭、開幕!
あの後、特に何もなく事態は進行した。まぁ、何かあったというのなら、それは本音が急遽同室になったということだろう。
「かざみん、これどう~?」
「似合ってるな」
「ホントに~?」
「ああ、似合ってる」
いや、ほかにもあるなら、それは楯無の乱入で機嫌が悪くなった一夏ラヴァーズが俺に八つ当たりすることだろう。まぁ、何の躊躇いもなく潰してあげたが。
「かざみんは着替えないの~?」
「俺みたいな人間に接客して欲しい女なんていないだろ。だから俺はパスだ」
そう言うと周りから否定の声が上がった。
「俺が怖いからって無理に否定しないでいいんだぞ?」
「誰もそう思ってないと思うわよ」
すると、鷹月が話に入ってきた。
「だって風宮君って優しいじゃない。しかも細かいところをよく気づくし」
「どこがだよ」
「それに、風宮君にもちゃんと仕事があるのよ。はい、これ」
そう言って執事服に着替えさせられ、看板を持たされた。
『1年1組『ご奉仕喫茶』織斑一夏が接客するよ♪』
俺を入れていない辺り、さすがというべきか。
その看板を持って俺は呼び掛けに回る。
「……んで、シヴァ。一般開放には早い気がするんだが?」
『ちょっとぐらいいいじゃない。それとも、正直なことを言う?』
「それもいいだろうけど、絶対に普通の女子に手を出すやついるだろ」
そう思うと憂鬱なんだよなぁ。
『まぁ、私たちの存在って少しゲテモノに近いものね』
「そうだよなぁ。まぁ、俺が精神的に幼かったから仕方がないと言えば仕方がないんだけど」
そうため息を吐きながら俺は看板を持って闊歩する。
校門前に行くと、そこには赤いバンダナをしている赤茶色の男がいた。
「ついに、ついに、ついにっ! 女の園、IS学園へと……来たぁぁぁあ!!」
かなり怪しい男だった。
虚先輩も見つけたらしく、声をかけに行く。
「そこのあなた」
「はい!?」
いきなり声をかけられたから驚いたのだろう。すぐに背筋を伸ばした。
「あなた、誰かの招待? 一応、チケットを確認させてもらっていいかしら」
「は、はいっ」
そして渡そうとしていると、別の手がそれを阻んだ。
「おー、この男、IS学園に入ろうとしているぜ」
それに始まる悪そうな男の行進。俺とシヴァはため息をついて一掃した。
■■■
「ただいまぁ」
俺は緊急の用事だと言うのでいそいで教室に戻ると、
「あ、風宮君! いそいで手を洗って接客して!」
「? 何でだ?」
「さっきかざみんが校門で大立ち回りをしていたのを目撃されたんだよ~」
あ、あれか……。
どうやらさっきの事を目撃されていたらしく、それで店に来たみたいだ。……まぁ、店の看板を武器にしていたら仕方ないだろうな。
そして女子に混じって接客を行う。
「食料調達に荷物運びか。案外忙しいんだな」
「かざみんよりおりむーの方が大変だったよ~」
「それもそうか」
あいつは接客もしているもんな……。しかもゲームも付き合わされているし。
そして現在は友達と合流するらしく、それも含めて俺が接待をさせられているのだ。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
何だろう。微妙に懐かしい気がするけど、俺はどこかの屋敷で働いていたのか?
(いや、ないない。俺がそんなことするわけないだろう………)
お屋敷で働くって、俺何者だよ。
『お嬢様、鞄をお持ちします。
今日はいい天気ですね、お嬢様』
想像しただけで吐き気がした。
「か、風宮君、大丈夫?」
「……ああ。ちょっとシミュレーションしたら最悪な感じだった」
そう答えるとふと気づく。一夏に関するクレームが激しいらしく、客たちは騒いでいた。
(……やりますか)
俺は厨房に入り、ケーキ作成などを手伝い始める。
「「「え………」」」
近くで見ていた女子生徒たちが唖然としていた。
「どこかおかしいところでもあったか?」
「い、いえ」
「何も。というかむしろ上出来……」
「そうか? なら続けるぞ」
そしてできたのは簡単なケーキにプリン。
「これは冷蔵庫とかに入れておけばなんとかなるだろう」
それだけやって俺は接客に戻る。
「あ、祐人」
「戻ったか一夏。早速5番テーブルに注文が入っている」
「ああ、わかった」
それだけ伝えて俺はサボろうとしたが、本音によって邪魔された。
「いや、俺も回りたいんだけど……」
「じゃあ、私と回ろう!」
「………」
「? どうしたの~?」
「いや、何か見られた気がしただけだ………」
そう言って俺はその場から離れる。
「え? ちょ、かざみん、待ってよ~」
後ろから追いかけてくる本音は、どこか小動物を思わせた。それを口に入れてあげると喜ぶ。
(簪さんもそうだが、俺にはこんな小動物に縁があるのか?)
本人は無自覚だけど、浴衣美人の部類に入るからなぁ。将来できる彼氏が羨ましい。
「ってか本音。お前はもうちょっと女としての自覚を持て」
もう持つことがくせになっているティッシュを出して口の周りを拭った。
(こいつの彼氏は彼氏―――というより保護者になるだろうな……)
そう思いながら俺は近くのゴミ箱にティッシュを入れるのだった。
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