ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第23話:変わるトップウ
前書き
巡り合うは【再誕した伝説】
戦いの息吹はすぐそばまで迫っていた。
突如クウガ達の前に現れた一人の男・本郷猛。
彼は目の前に立つマスクドマンに向かっていくと、挨拶代わりの右フックを放った。
マスクドマンは本郷の拳を片手ではじき、お返しと言わんばかりの裏拳を繰り出す。
だが、本郷は眼前に迫ったそれを片手で受け止めると、力強く握り、そのまま引っ張る。
「―――ハァァ!!」
「ヌッ!?」
マスクドマンの腕を掴み、思いっきり投げ飛ばす本郷。
一瞬、マスクドマンの姿が本郷の手から消えたかと思えば、次の瞬間、叩きつけられる凄まじい轟音と共に叩きつけられる光景が広がった。
表面が砕かれたコンクリートの壁にマスクドマンはめり込んでおり、その姿見たライオトルーパー達は唖然とする。
「ま、マスクドマン様が……!?」
「嘘だろ、何なんだアイツ!?」
ネオライダーの頭目であるマスクドマンが突如現れた男によって圧倒されている光景にライオトルーパーは目を見開いて驚いていた。
それはクウガ達も同じだった……変身した相手にも素手だけで推していたマスクドマン、その彼と渡り合う本郷に一同は凄みを感じた。
動けなくなったマスクドマンを一度見て、本郷は背を向けて次の相手であるライオトルーパー達の方へ向かおうとする。
だが、本郷の背後から凛とした声がかかってきた。
「なるほどな。その膂力、その力強さ……お前、人間じゃないな」
「……ッッ!!」
背後から聞こえてきた本郷が振り向くと、そこにはコンクリートから抜け出したマスクドマンの姿があった。
自分の身体が埋まっているコンクリ部分を力を入れて壊した破片の跡が足元に広がっていた。
解放された片腕はだらりとと下がっており、それがあまりにも凄まじい力によって肩の関節が外れた事を本郷は察し、それでも平然と立つ彼に驚いていた。
「そんな、手加減したとはいえ投げ飛ばされて平然と立ち上がるなんて……」
「私の腕を外しておいて、あれで手加減か。相手を思うその詰めの甘さが弱点だが、それでも余りある力の持ち主だな」
「……」
関節が外れた肩の痛みなど気にせず語るマスクドマンと、静かに睨みつける本郷。
二人が対峙する空間に緊張した空気が張り詰める……そんな中、二人の間へと割って入る人物がいた。
「マスクドマン様! ここは俺が相手になってやるぜ!!」
本郷の前に立ちふさがったのは多羅場蟹夫が変身した仮面ライダー・シザース。
彼はベルトのカードデッキから一枚のアドベントカードを引き抜くと、それをハサミがついた手甲型召喚機・シザースバイザーに装填した。
【STRIKE-VENT】
「俺がマスクドマン様を守るんだ! おっりゃああああああ!!」
シザースの片腕に装着された蟹のハサミの武器・シザースピンチを構えると、そのまま本郷目掛けて突撃を仕掛ける。
振りかざされようとするシザースピンチが本郷の首を狙う。
クウガは息を飲み、助けに入ろうと駆け出す……だがその前に、本郷の身体が動いた。
「―――ハァッ!!」
その瞬間、一陣の風が本郷の姿を変えた。
否、本郷猛は『変身』したのだ……クウガ達と同じ、仮面の戦士に。
深緑色の二つのラインが入った黒を基調としたライダースーツ、深緑色のブーツとグローブ。
頭部全体を追うのは飛蝗を模した仮面、二つの赤い複眼、腰部には赤い風車が内蔵された白いベルト・タイフーン。
改造人間"ホッパー"、またの名を『仮面ライダー1号』。
本郷猛が姿を変えた1号は自分に迫っていたシザースピンチをつかみ取ると、握る力を込める。
するとベキベキと鈍い音を鳴らしながらシザースペンチの鋏部分が歪み、ついにはバキリと音を立てて粉砕された。
契約しているミラーモンスター・ボルキャンサーと同様の硬度と鋭さを秘めたシザースピンチがこうも容易く壊されるとは思ってもみなかったシザースは動揺していた。
「そ、そんな!? オレの武器がぁ!?」
「トリャァァ!!」
「なにぃ!? ぐああああああああ!!」
自慢の武器の一つであるシザースピンチを使い物にならなくされて戸惑うシザーズへ、1号が放った鉄拳が直撃。
そのまま殴り飛ばされたシザースは1回転しながら歌舞鬼とサガを取り囲むライオトルーパー達へと激突、そのままなだれ込む形で倒れてしまう。
先程まで戦っていた歌舞鬼とサガはシザースを殴り飛ばした1号の方へ視線を向けた。
「おい、アイツ強ぇぞ」
「そうだなぇ。あのパワー、俺達よりも凄そうだねぇ」
「見たところ、門矢や小野寺のヤツと違って人間離れした力技が得意みてぇだが」
歌舞鬼――黒鋼は1号の戦いぶりを見て、彼の特徴を冷静に分析をしていた。
他の仮面ライダーに変身できるディケイドや、超変身によるフォームチェンジで臨機応変に対応できるクウガとは異なり、1号はその身に宿る常人離れした身体能力で相手を迎え撃っている。
これまで出会ってきたライダーとは一線を画す仮面ライダーの登場に歌舞鬼は胸の奥で僅かばかりの好奇心を持たざるおえなかった。
その一方、1号はクウガの元へ駆け寄ると、彼に声をかける。
身体をマスクドマンへ向けて身構えて、ネオライダー達から守るつもりだ。
「大丈夫か?」
「あ、ああ……貴方は一体?」
「本郷猛、わけあってこの世界に迷い込んだ知り合いを追ってやってきたんだ」
「知り合い? この世界? それってもしかして」
1号の語った経緯を聞いて、クウガは"件の羽根を持った仮面ライダー"に思い当たる。
まさか知り合いなのか? それを追求しようとした矢先、1号とクウガへ風を切る音が聞こえてくる。
二人は咄嗟に避けて振り返ると、エネルギー刃が飛来し、近くのコンクリートの壁に大きな切り傷を残した。
飛んできた方向を見ると、そこに立っていたのは2体のオルタナティブ……大方、ネオライダーの新しい刺客であろう二人のオルタナティブはマスクドマンを守るように立ち、武器であるダガーを構えた。
「マスクドマン様、ここはお下がりください」
「そんな怪我を負われていたら士気が下がります」
「必要ないと言いたいが、士気が下がるのは捨てておけん。任せた」
ダラリと下がった片腕を掴み、力任せにハメて戻したマスクドマンはクウガ達の前から一旦退く。
それと同時にオルタナティブ達はクウガと1号へと襲い掛かった。
クウガと1号は互いに見合わせると、無言で頷き、襲い掛かってくるオルタナティブ達を迎え撃った。
~~~~~
クウガ達と1号が出会った同じ頃。
子供達の伝手によって仮面ライダーである男・一文字隼人と出会った士達。
負っていた怪我をある程度まで処置すると、士は本題を切り出した。
「一文字隼人、お前に聞きたいことがある」
「なんだよ。答えられない質問は答えないぞ」
「数日前、お前はネオライダーと交戦したか? 俺達はコイツを探している」
一文字にそう言いながら、士は例の羽根を持ったライダーの写真を撮り出す。
その写真を見て、一文字は少しの間見つめると、眉をへの字にして答えた。
「ああ、それは俺だぜ。こいつらが難癖付けられたところを見ていられなくて助けたら、相手が白いのとステンドグラスみたいなのに化け物姿になってな」
「オルフェノクとファンガイアか……」
「ま、こう見えても俺、歴戦錬磨だからな。何らく倒せたんだけどな……その後、ネオライダーって名乗る奴らに目をつけられたが」
「同じだな。で、同一人物なら話が早い。お前、羽根のようなもの持ってないか?」
士の口にした『羽根』という単語を聞いて、眉を顰める。
子供達の相手をしていた小狼もサクラも気になって視線を向けた、
サクラの記憶の羽根を求めてやってきた3人の視線を一文字は受ける中、フッと不敵な笑みを向けて言い放った。
「ああそうだぜ。俺がお目当ての物を持ってるぜ」
「「ッ!」」
「本当ですか!?」
「ッ、なんだよ……そんなに欲しいのかよ?」
一文字の放った意外な言葉に目を見開いて驚く士と小狼。
そして羽根の持ち主であるサクラは身を乗り出さん勢いで驚きの声を上げた。
3人の反応に戸惑いながらも、一文字は困ったような表情を浮かべて羽根の話題に移ろうとした。
だが、それを割って入るかのようにイラついた声が建物の中に響いた。
「俺も欲しいものがあるんだよなぁ。ディケイド、お前達の首がな」
一同に聞こえた瞬間、扉を蹴り破って入ってきたのは、鬼頭尚樹とゴーストイマジンの二人。
彼ら二人の登場に叫んだのは、幽汽として変身した時に圧倒されていた小狼だった。
「お前達は!?」
「また会ったなぁ、ガキ。何をしているから分からんが、お前達もいるなら濡れ手に粟ってヤツだ」
『まずはテメェだ、その後で一網打尽にしてやるぜぇ!!』
ゴーストイマジンが大剣を振り回して走り出した。
向かっている先は……一文字隼人。
狙いを先に察した小狼は、ゴーストイマジンの前へと躍り出て、蹴りで応戦し始める。
「一文字さんが狙いか!?」
『ああ! なんでもソイツは他のネオライダーを蹴散らしたっていう不届き者らしくてな、討ち取れば俺達の手柄になるってもんだ!』
「……ッ! させるか!」
ゴーストイマジンの振り下ろす大剣を回し蹴りで弾くと、小狼はゴーストイマジンの胴体を蹴り飛ばす。
意外な反撃に地面へと転がりながらゴーストイマジンは怒りを露にしながら舌打ちをうつ。
小狼が阻んだおかげでサクラが子供達と一文字を逃げる隙ができ、同時に士が尚樹の方へ向かい、こちらでも彼へと交戦を始めた。
「ハァッ!!」
「あっぶなっ!? てんめぇ、何しやがる!?」
「お互いに変身していないからって、何もしないと高を括ると痛い目見るぞ。覚えておけ」
「クソがぁ! 生意気なこと言ってんじゃねえぞ!!」
蹴りや拳を主体に放つ士に対し、応戦しようとする尚樹。
だが、生身での戦いが慣れていないせいか、それとも生身での戦闘が得意じゃないのか、尚樹の振りかざした拳は空を切り、逆に士の格闘術によって圧倒されていた。
そして士の繰り出した足刀蹴りが尚樹の腹部へとめり込み、そのまま蹴り飛ばされてしまう。
「ぐはっ!?」
「どうした? その程度か?」
「くっそぉ……舐めやがって! ゴースト!!」
『たっく、どいつもこいつも!』
地面を転がっていたゴーストイマジンの元へ腹部を抑えながら尚樹はユウキベルトを構え、腰部に装着。
それを見て士と小狼もそれぞれのディケイドライバーとカードデッキを構えた。
「変身!」
「「変身!」」
【KAMEN RIDE…DECADE!】
士、小狼、尚樹、三人の掛け声と共にその姿を変えていく。
士が変身するのは、仮面ライダーディケイド。
小狼が変身するのは、仮面ライダーナイト。
尚樹がゴーストイマジンと共に変身するのは仮面ライダー幽汽。
三人のライダーは変身を終えてそれぞれの武器を構えると、ディケイドとナイトは幽汽へと飛びかかっていった。
一方、ディケイドとナイトが幽汽と戦っている頃。
子供達三人と共に逃げるサクラと一文字は建物の近くにあった公園へとたどり着いた。
だが、サクラと一文字は視界に入った存在に気付き、足を止める。
そこにいたのは、複数のライオトルーパーを連れた二体の怪人。
サボテンの特性を備えたオルフェノク・カクタスオルフェノクと、カニを彷彿させるシークラスのファンガイア・クラブファンガイア。
二体もの怪人に俊彦、義男、満里奈は恐怖に顔を染めていた。
「か、怪人!?」
「なんで、なんでここにいるんだよ!」
「うぅぅ……!」
怯える俊彦と義男、泣き出し始める満里奈。
三人をどうにか守ろうと、サクラは自分自身が戦える事ができないとわかっていてもネオライダー相手にしっかりと見据えていた。
士さんは、小狼君は今もたたっている中、私一人が諦めるわけにはいかない。
―――そんなサクラの表情を見て、フッと笑ったのは一文字だった。
一文字はサクラの前に手を差し出すと、不敵な笑みを見せて口を開いた。
「子供達を頼んだぜ」
「一文字さん……?」
「さぁてと、手当と腹ごしらえは済んだ。多少は戦えるようになってるからな」
そう言いながら、サクラ達を背に、一文字は一歩を踏み出した。
一人悠然と向かってくる一文字の姿を見て、まず動いたのはカクタスオルフェノクとクラブファンガイア。
カクタスオルフェノクは素手、クラブファンガイアは両腕の鋏で一文字を攻撃しようと仕掛けてくる。
だが、そこで一文字は空高く飛んでジャンプし、二体の怪人の攻撃を避けた。
怪人達の背後に降り立ち、振り向いたカクタスオルフェノクとクラブファンガイアは降り立った一文字の『変身』した姿を見て驚いた。
モスグリーンの二つのラインが入った黒を基調としたライダースーツ、モスグリーンのブーツとグローブ。
頭部全体を追うのは飛蝗を模した仮面、二つの赤い複眼、腰部には赤い風車が内蔵された白いベルト・タイフーン。
改造人間"ホッパー"、またの名を『仮面ライダー2号』。
かつて死の淵を彷徨い、命尽きようとしたもう一人の仮面ライダーは自分を助けた若き命を守るため、再び戦いに挑むのであった。
ページ上へ戻る