ツバサ -DECADE CHRoNiCLE《ディケイドクロニクル》-
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第22話:吹き荒れるタイフウ
前書き
ネオライダーが狙う中、小狼達が遭遇したのは仮面ライダーを慕う少年少女。
彼らの言う仮面ライダーというのは一体何者なのだろうか。
羽根を持つライダーは一体何者なんだろうか?
―――旅人は、大いなる大自然の戦士に遭遇する。
子供たちに連れられやってきた士、小狼、サクラ、モコナの四人。
辿り着いた場所は階段下に設けられた倉庫の入り口だった。
俊彦、義男、満里奈の三人は扉に近づき、取っ手を手にかけ思いっきり引っ張る。
「おーい!兄ちゃーんいるか!」
「お薬と食べ物、もってきたぞー!」
「無事なら返事してくださいねー!」
先に入っていく子供達に続いて、士達三人も中へ入る。
中には埃が舞い、使われなくなったガラクタが散乱されたまま放置されており、お世辞にもきれいな場所とは言えない。
そんな中、倉庫の奥の方から声が聞こえてきた。
「うるせぇよ、たっく……生きてるから安心しろ」
物陰からよろけながら出てきたのは、一人の男性。
薄汚れた白いスーツに、少し巻きあがった茶髪、整った顔立ち。
鋭い目つきは一同を見やるが、それに対して子供達は叫んだ。
「「仮面ライダーの兄ちゃん!」」
「大声出すんじゃねえ、怪我に響くだろうが」
キラキラと目を輝かせる子供たちに対してぶっきらぼうに返す男。
士達が男の姿を詳しく見てみると、確かに口元には血を拭い去った拭い去った痕があり、服の上から血が滲んでわかるほどの怪我を負っているのがわかる。
それを見たサクラが男に声をかける。
「あの、その怪我は……」
「あぁ、気にするなよ……で、誰だ? お前ら?」
「おれ達は探し物をしている最中でこの子達に会って同行させているものです」
男に尋ねられ小狼が素性とここまでの経緯を明かした。
自分より若い年の子に対して渋る態度を男が取っていると、士がふとした疑問を投げかける。
「お前、ただの人間じゃないな」
「ハッ、何だお前? わかる口か?」
「まあな……とりあえず手当だ。おい、救急箱を取ってくれ」
士に言われて麻里奈は持っていた救急箱を手渡す。
手に取るとサクラと共に男の手当を始める。
上着を脱がせ、素肌を晒せば血が黒く固まった真新しい傷がいくつもあった。
それを見て目を細め、士は消毒液や包帯で手当を行っていく。
「手当、上手いんですね」
「俺に苦手なものはない。写真を撮ること以外にはな」
「おいおい、それって自慢することかよ」
サクラへ向けて士は自慢げに返し、男はジト目でツッコミを返す。
その隣では小狼は手近にあった土台に用意して、その上に食べ物の入った袋を置き、中身を取り出していた。
そこで、男の物であろう手袋があることに気付く。
「……これって?」
小狼はふと手に取り、手袋を確かめる。
手にしてみると何かが詰まっている感覚があり、傾けてみると中から出てきたのは……黒い血だった。
時間が経てば血は赤黒く変色することもあるが、流れ落ちる血の色はどう見ても黒そのものだった。
一体どういうことか、そう思っている小狼の姿が目に入り、男が形相を変えて叫ぶ。
「馬鹿、見せていいもんじゃねえよ!」
男は小狼の手に持っていた手袋を無理やりひったくる。
いきなりの豹変ぶりに驚くサクラや子供達……その中で士だけが床に広がった小さな黒い血溜まりを見て、口を開いた。
「リジェクション……拒絶反応による影響か。この黒い血も身体から出てきたもんなんだろう」
「チッ……、こんなもの、刺激が強すぎるだろ?」
「なるほど、大体わかった。こいつらが仮面ライダーとは言っていたが、お前、改造人間のタイプだろ」
「……そうだよ、お前の言う改造人間ってやつだよ。どこぞの悪の組織に身体弄られて、逆らった挙句の果てに死の淵を彷徨ってる哀れな裏切り者さ」
士に対して横暴気味に答えながら、自嘲的な笑いを浮かべる。
やさぐれているような男の様子に子供達のうちの麻里奈が心配そうに見つめる。
「仮面ライダーのお兄ちゃん……」
「ほら、ここはあぶねぇから怪我したくなかったらさっさと……」
子供達に対してこの場所から去るように告げようとする男。
だがそれを遮るかのように、目の前に突き出されたのはコンビニのお握りだった。
男があっけにとられたような表情でしていると、小狼が話しかける。
「とりあえず、離れるにしても休むにしても、これを食べてからにしませんか?」
「……は?」
「その、お腹空かしてるんじゃないかと思いまして」
「お前、怖くないのか? 黒い血なんか流す人間の姿がいた化け物なんてのが目の前にいて」
眉を顰めながら男は小狼に訊ねる。
自分のような尋常ならざる力を持っていたら、誰しもが恐れる。
だがそれを覆すかのように小狼は男へ告げる。
「子供達を心配しているあなたをどうしても悪い人とは思えなくて……優しい人なんですよね、あなたは」
その言葉を聞いて、男の脳裏に浮かんだのは、とある人物の光景。
―――命は美しいと信じて、どこまでも愚直で真っ直ぐな男。
背丈も格好も全く違うのに、何処となくあの男とそっくりだと嫌でも実感する。
そのことに気付いた男は思わず吹き出して笑った。
「たっく、どこぞのお人よしを思い出させてくれるよ」
「えっ……?」
「なんでもない、こっちの話だ」
男は奪い取らんと勢いでお握りを掴むと、包装を破きながら食べ進める。
険悪な雰囲気からいい雰囲気に一転した事に子供達は安堵し、サクラはにこやかな笑みを浮かべる。
その後、手当を終えて食事に有り付く男へ小狼達は自己紹介を始める。
「そういえば、名前名乗っていませんでしたね。おれは小狼です。こっちが……」
「サクラです」
「門矢士だ。で、お前は一体何者だ?」
小狼達が自己紹介を終えた後、男は口内に入っていたものを飲み込み、ペットボトルのお茶を口にして整える。
そして一息つき、名乗り始めた。
「一文字隼人。俗にいう仮面ライダーってやつだよ」
その仮面ライダーの男―――『一文字隼人』はニヤリと口角を上げた。
―――――
士達が謎の男・一文字と遭遇した頃。
ユウスケ、夏海、黒鋼、ファイの四人は別の場所で羽根を持っているであろう仮面の戦士の行方を探していた。
四人が丁度高架下の道に差し掛かろうとしたときのことだった。
黒鋼が妙な気配を感じ取ったのは。
「………」
「あれ? どうしたの? 黒鋼さん」
「ユウスケ、そこのふにゃへりと一緒に光から離れるなよ」
そう言いながら黒鋼は一同の一歩前へ出て、腰にぶら下げていた待機状態のディスクアニマルに手をかけ、それを思いっきり近くの柱へ向けて思いっきり投げ飛ばす。
風の切る音をしながら飛んでいくディスアニマル……物陰へ迫ろうとした瞬間、振りかざされた何かによって弾き飛ばされてしまう。
戻ってきたディスクアニマルをつかみ取り、黒鋼は叫ぶ。
「出てこい、いるのはわかってんだ」
「―――なるほどな、その気配の探り方にその技、只者ではないな」
黒鋼の披露した忍者として身に着けた技を称賛しながら現れたのは、仮面をつけた一人の男。
稲妻模様が入った白い仮面を被ったその男は、一同を見据えながら名乗り始めた。
「自己紹介しよう、私はマスクドマン。ネオライダーの頭目をしているものだ」
「ネオライダーの頭目ですって!?」
「ありゃりゃ、つまりはお偉いさんが自らじきじきにやってきたってことか。こりゃ大変だ」
ネオライダー……それも今まで出会ってきたライダー達を纏め上げるトップが目の前に現れ、夏海は驚き、ファイはへらへらとした笑みをうかべながら目の前に立つ仮面の男・マスクドマンを見据える。
一方でマスクドマンは片手を上げると、それが合図かのように周囲から何人をもライオトルーパー達が出現する。
その数は20人近く……さらに彼らライオトルーパーの隊員達をかき分けて現れる人影があった。
「やいやいやい、貴様達が俺達ネオライダーに仇名すアベンジャーか!」
ライオトルーパー達の前へと名乗り出てきたのは、ふくよかな体系をした男。
今まで黒服と同じ恰好をしているが、頭部にはピンク色に染めたモヒカンが聳え立っており、丸々と太った顔にサングラスをかけている。
おおよそネオライダーの刺客であろう男……その男に視線を向けた黒鋼とファイは呆気にとられたような表情を浮かべた。
「あん? アイツは……」
「あれ?」
「ど、どうしたんですか? 黒鋼さん、ファイさん?」
二人の普段見せない様子に気づき、夏海が戸惑いながら訊ねた。
……それもそのはず、目の前にいる男は小狼達一行が初めて巡った『阪神協和国』をはじめ、時折さまざまな世界で顔を見せた男。
モヒカンの男はマジマジと見つめる黒鋼とファイに気づき、眉を顰める。
「なんだなんだ? この多良場 蟹夫に何か言いたいことでもあるのか!?」
モヒカンの男・蟹夫……もとい、『多羅場 蟹夫』は大声で叫びながら、黒鋼とファイを含めた四人へ指を指した。
二人はバツが悪そうな顔をしながらマスクドマンの方へ向き直った後、ユウスケが言葉をぶつける。
「俺達に何するつもりなんだ!?」
「無論、粛清だとも。混沌としたこの時代にネオライダーが秩序をもたらそうとしているのだ。その秩序を乱すお前達こそ、悪だ」
マスクドマンは仮面越しから見せる鋭く冷たい目を向けながら、手を上げて合図を送る。
同時にライオトルーパー達の手に持ったアクセレイガン ガンモードの銃口を向け、今にも引き金を引こうとした。
それを目にした瞬間、ユウスケ達は行動を移した。
「夏海ちゃん、掴まって!……変身!」
「きゃっ!?」
「サガーク、行くよ! 変身!」
『HENSHIN』
「ハッ!」
夏海を抱えてユウスケはクウガ・ドラゴンフォームへ変身し、頭上へと飛び上がった。
その瞬間、アクセレイガンから放たれる銃弾の嵐……それらを掻い潜って、変身した歌舞鬼とサガが出現。
二人は鬼棒術・烈火弾とジャコーダービュートをそれぞれ放ち、ライオトルーパーの何人かを蹴散らした。
倒れるライオトルーパー達を見て蟹夫は歌舞鬼とサガを睨みつけた。
「ちくしょう、出遅れてたまるか! 変身!」
蟹夫はカードデッキを取り出し、独特のポーズを取りながら腰に装着されたVバックルに装填する。
周囲に鏡像が出現し、蟹夫の身体に重なるとその姿をメタリックオレンジの装甲を見に纏った仮面の戦士へと姿を変えていく。
蟹を模した鏡の戦士・仮面ライダーシザースに変わると、腕に備え付けられたハサミ型の召喚機・シザースバイザーを構えて歌舞鬼とサガへ突撃してきた。
「オラオラオラァ! この俺様に倒されやがれってんだ!」
「チッ、コイツもライダーなのかよ!」
「ここまで来ると腐れ縁ってレベルだよね!」
襲い掛かってくるシザースの猛攻を何とか捌きながら対応していく歌舞鬼とサガ。
その一方で、ライオトルーパーの編隊を飛び越えてクウガと夏海は離れた所へ着地すると、夏海を物陰へ隠した。
「夏海ちゃんはここにいて」
「は、はい……!」
クウガはライオトルーパーへ向き直ると、近くにあった工事用のコーンバーをドラゴンロッドへ変えて、ライオトルーパーへ向かっていった。
ライオトルーパーはブレードモードに変形させたアクセレイガンで応戦を図る。
ドラゴンロッドの長いリーチによる殴打と、ドラゴンフォームによる素早い身のこなしにより翻弄していく。
だが、そこへライオトルーパー達の間を駆け巡り、クウガへ迫る存在がいた。
「シャッ!!」
「なっ!?」
嫌な気配を察知したクウガは寸での所でドラゴンロッドで防いだ。
だが、パキリと金属音が響いたと同時に手に持っていたドラゴンロッドが真っ二つになり、危機感を感じて大きく後方へ飛びのいた。
見れば、先程までいた場所にはマスクドマンの姿があった。
「ふむ、少し浅かったか」
「コイツ、変身してないのに……!?」
「せっかくだ、少しギアを上げていくか……!」
「くそっ、ならば超変身!」
クウガは真っ二つになったドラゴンロッドを投げ捨てると、青のドラゴンフォームから赤のマイティフォームへフォームチェンジ、使途空拳でマスクドマンと相対する。
ぶつかり合う拳と拳、蹴りと蹴り、二人が紡ぐ格闘戦がライオトルーパーを取り囲んで繰り広げられる。
だが拳を放つ中でクウガは疑問に思っていた。
ライダーにも怪人にもなっていない生身の人間がなぜこれほど張り合えているのか?
その考えが巡る中、拮抗していた二人の間に動きがあった。
「ハッ!」
「グッ!?」
マスクドマンが放った回し蹴りがクウガの胴体を捉えた。
軽く吹き飛ばされ、道路標識にぶち当たって拉げさせてしまう。
迫るマスクドマン……彼の放つ殺気に異様なものを感じったクウガは態勢を立て直そうとする。
物陰で戦いの様子を見守るしかない夏海も、シザースと相対する歌舞鬼とサガが行く末を見守る中、―――激しいバイク音が戦いの場に響き渡った。
―――ブォォォォン!
ライオトルーパーを蹴散らしながら現れたのは赤いラインがボディに入った白いバイク。
そのバイクはクウガとマスクドマンを割って入る形で止まると、運転手である男はマスクドマン目掛けて蹴りを放った。
その蹴りを腕を交差させて防ぐと、後方へ退いた。
突如現れた男はヘルメットを脱ぐと、黒髪と穏やかな顔立ちを露にする。
態勢を立て直したクウガは助けに入ったその男に訊ねた。
「あなたは一体……」
「―――俺は本郷猛……コイツらネオライダーに用がある者だ」
その男、―――『本郷猛』は愛機・サイクロン号から降りながらマスクドマンを見据え、構えをとった。
後書き
子供達が言う仮面ライダー……それは、とある世界からやってきた改造人間だった。
その名は一文字隼人。
ネオライダーに襲われたユウスケチーム、そこへ駆けつけたのは一人の青年。
その名は本郷猛。
そう、今回明かされたのは新たなるレジェンドライダー!
『仮面ライダー THE FIRST/NEXT』シリーズより本郷猛と一文字隼人です。
アンケート取った結果、ダブルライダーの登場になりました。
え、本家の方じゃない?そんなありきたりするものか←
そんでもってシザースの男こと蟹夫。
ツバサ及びツバサ・クロニクルでは度々登場している憎めないキャラですね。
苗字の"多良場"は名前だけでは違和感持つため、今作限定でつけました。
マスクドマン、トップやっているだけあってクウガと互角……カブトの乃木(ガタックを生身で倒したワーム)かな?
次回、今回は俺とお前でダブルライダーだ。
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