ドリトル先生の長崎での出会い
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三幕その三
「蝶々さんのお家があるという設定だったんだ」
「ここからずっと海を観て」
「蝶々さんはご主人を待っていたんだね」
「ピンカートン中尉を」
「このピンカートン中尉という人はいい加減で」
先生は悲しいお顔でお話しました。
「蝶々さんは数多くいる現地の奥さんの一人で」
「日本を離れたら終わり」
「それだけだったね」
「あの人にとっては」
「それがとんでもなく悪い行いだったと蝶々さんのことを知って気付いたけれど」
そうであったけれどというのです。
「蝶々さんは自分が遊びだった、捨てられたことを知ってね」
「武士の娘さんらしくね」
「誇りを持って自害したね」
「そうしたね」
「お子さんを中尉と中尉の奥さんに渡してね」
中尉との間に生まれたそのお子さんをというのです。
「そうしたんだ」
「悲しい結末だね」
「本当にね」
「本気で愛してね」
「愛されていると思って」
「ずっと待っていたのに」
「親戚の人達から縁も切られたのに」
「孤独でもね」
それでもというのです。
「スズキさんという侍女の人とね」
「ずっと待っていて」
「今流れているこの歌も歌ったね」
「ある晴れた日に」
「蝶々夫人の代表曲だね」
「不滅の名曲だね」
先生もこの曲を聴きつつ言いました。
「本当に」
「全くだね」
「凄くいい曲だよ」
「蝶々さんの想いがある」
「最高の曲だね」
「プッチーニさんは多くの名作を残してね」
そうしてというのです。
「多くの名曲も作曲したけれど」
「この曲は特にだよね」
「素晴らしい曲よね」
「プッチーニさんは本当に名作、名曲が多いけれど」
「最高の曲の一つだね」
「私もそう思うよ、この曲を聴くと」
先生はしんみりとしたお顔になって言いました。
「しんみりとした気持ちになるよ」
「全くだね」
「蝶々さんのことを想って」
「どうしてもね」
「そうなるわね」
「そしてね」
それにというのでした。
「果たしてお子さんがどうなったか」
「そのことだね」
「中尉と奥さんに引き取られてね」
「お二人に育てられることになったけれど」
「どうなったのかしら」
「気になるね」
「中尉は自分の行いを凄く後悔して」
蝶々さんに対してしてしまったとても不誠実なことをです、先生は中尉のことも考えて言いますが糾弾はしませんでした。とても心優しい人なので。
ページ上へ戻る