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彼は いつから私の彼氏?

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8-8

 駅では、私は翔琉と偶然出会った振りをしていた。そこまでする必要も無いのだが、だんだんと翔琉と逢うのも内緒みたいになってしまっていたから。

 紺と白の縦ストライブのサロペットスカートにスニーカーで、お母さんは仕事で出て行った後に、お兄ちゃんが部屋に居る間に家を出てきた。別に、隠れる必要も無いのだが、いろいろと聞かれるのが嫌だったし、不必要なウソをつくかも知れないからだ。

「水澄のそーいう恰好見るの 久し振りやなー」

「そーやったかなーぁ 可愛いんで惚れ直した?」

「うん 可愛い ドキドキするよ」

「うそヤン いつやったかなー 女の子とフードコートのとこで イチャイチャしとったやん?」

「えぇー ・・・ あぁー サッカー部の後輩で、たまたま会ったんだよ しつこくセブンパークに行こうって誘われとった でも 行ってへんでー 断ってた」

「ふ~ん でも にやにやしとったヤン 可愛い子やろーぉ?」

「そんなことないよ! 水澄に比べたら 階段の上と下やー」

「あっ そう あんまりしつこぉー聞くと 翔琉に嫌われるから やめとこぉーっと」

 公園に着いたけど、まだ 開園時間には早すぎたので、木陰のベンチに腰掛けると

「なぁ 達樹さんと智子って 何か 知ってる? 付き合ぉてるんか?」

「うー それは無いと思うけど・・・ちょいちょい 智子 ウチに来てるみたい 何か お兄ちゃんに勉強 教えてもらうんやってー」

「ふ~ん それだけ?」

「私 帰りも遅いやろー よー知らんねん 気になるんか?」

「いや 練習の時でもな 達樹さんはこんな具合に走ってたんやでー とか 最近 時々、口に出すからなー 俺とちごぉーて十蔵が・・・ あいつ はっきりとは言わへんねんけど 智子のこと好きなんやろーな 時々 遊びに行くの誘ってるみたいなんやけど・・・気してるんやと思う」 

「はぁ はぁはー 十蔵なぁー 智子は諦めって ゆうときー 智子の理想は高いでー」

 と、私は誤魔化していたけど、本当に私は、あの後 智子がお兄ちゃんに対してどう 動いているのか知らないのだ。お兄ちゃんからも智子という言葉が出て来るのも聞いたことが無かった。

 まもなく開園して、学生証を見せて入ると

「へぇー 中学生までは無料なんか すっげぇー」

「そんなんに驚いとったらあかんでー 中はもっと すごいからー」

「わぁおー なんやー このでっかいのん  マンモスって こんなやったんかー」

「マンモスちゃうでー ナウマンゾウやー」

 その後、私はこの前覚えたこととか、一真さんに教わったことを説明してて

「いい? ナウマンゾウは日本とか中国大陸辺りに居たの マンモスは北米、ヨーロッパの北のほうに居て、氷河期で毛も長いし何百年も昔 ナウマンゾウはもっと後なのよ 間違えて覚えることの無いようにしようネ 今度は・・・」

「こんどは・・・ あぁー 石田三成か?」

「そう あん時 4年生の遠足で長浜城に行ったでしょ 天守閣の下の広場でお弁当食べていたら 世話好きのオッサンが、長浜の話をし出して、その近くの村の出身の佐吉というのが居て、賢くて優秀だったから出世したのだ それが石田三成なんじゃ なんてね だから、私達 長浜城主は石田三成なんだと覚えてしまったのよねー ふたりで間違ったから、河道屋先生に勘ぐられてしまってー」

「そーだったね・・・でも・・・水澄 遠足に行ったのは 彦根城だよ」 

「へっ そーだった? わぁーあ 恥ずかしいぃーー」

 その後も、博物館内を見てまわって、翔琉も感動していて、お昼はカフェテラスで、私はパンケーキ、翔琉はカツサンドを頼んでシェアして食べていたのだ。

「水澄 明日から 練習か?」

「うん お盆は3日間お休みだけど、その前の3日間は強化練習でね 朝から4時まで そして、お盆明けも練習で、22日から長野で大会」

「さすがに 全国大会に行く学校は、厳しいのぉー」

「あのね これは部員以外は極秘なんだけどね 春合宿の時は 練習でミスしたり、気合が入って無かったりすると 体育館の端から端まで うさぎ跳びなの それも(私は ドシでノロマなうさぎです)って、飛ぶ度に言わされるのよー 今の2年以上は皆 一度は、やらされたことあるのよ」 

「えぇー それって イジメっていうか パワハラとか・・・」

「そう 恥ずかしくってね 脚もガクガクで辛いしー 途中で泣き出す子も居るわー でもね それで、精神的にも強くなるの やらされた人は皆が言っているわ 自分の殻から抜けた気がするって でも これは、極秘なのよ! 私も、最初 恥ずかしいし自分がボロボロになったわ でも、それからヤケクソみたいになって頑張ろうと思ったの」

「へぇー 恐ろしいなぁー どこかの宗教みたいだな でも それなりの努力があるんだー 全国制覇の栄光が待ってるんだー 俺は、練習あるから応援に行けないけど 水澄 頑張れよなー 6年の2学期 水澄は頑張ってトップになったやんかー 太子女学園にもあっという間に合格してた お前には底知れない力があるんやー 俺も 逢うの我慢してたんだからー その分な」

「わかってる こんな私でも 想っててくれて ありがとう やっぱり 翔琉やなー」

 その後、植物園も見て周っていて、大きな植物の陰になった時、辺りに他人が居ないのを二人ともわかっていたので、どちらからともなく抱き合って、唇を求めていたのだ。そして

「水澄が欲しい 全てを欲しい」

「・・・うん・・・ あのね 長野の帰り 試合終わったら、もう 1泊するってお母さんには言うから・・・どこかで・・・でも、帰ってきたら夜だよ 多分」この時、翔琉の言葉で私は覚悟したのだ。

「わかった つもりしておく」

「ねぇ だけど 頂点に立てたらだよ ダメだったら 来年までお預けね」

 私は、携帯のことを翔琉に打ち明けて番号を交換して別れてきたのだ。少し、頭の中で 翔琉のものになることがよぎっていた。だから、もし言われたら、素直に翔琉に応えるつもりだったのだ。

 その夜、お父さんがお祝いだとステーキのヒレ肉を買ってきてくれた。昨日はお父さんも帰りが遅かったのだけど、今日はお母さんも少し早い目に帰ってきてくれて、皆で食卓を囲んだのだ。私達が舌鼓を打つや否や

「水澄 よく やった おめでとう さすが僕と民子の娘だ」

「ありがとう お父さん 春に買ってくれたシューズ 効いているかもね」

「何言ってるんだ 水澄の努力の結果だろう あのシューズのお陰だったら 皆が優勝だよ 長野の決勝に是非とも応援に行くからな!」

「えぇーぇ いいよー 決勝まで残れるかどうかわからんしー」

「そんなことないだろう 会社の連中も応援部隊で行くと言ってくれたんだ 3人だけど 若手の新入社員と女子2人な」

「そんなー」

 私は、来るのは別に良いのだけど・・・帰りが一緒だと まずいと瞬間 心配していた。

「達樹達は来れないらしいから、スマホで実況配信してやるからな」と、お父さんはお酒も進んで浮かれていたのだ。

 
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