彼は いつから私の彼氏?
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第9章
9-1
「気を引き締めていくぞ 全国制覇だぞ」と言うコーチの言葉で第2ステップの練習が始まった。そして、見たことのない男の人が側に立って居た。
「卓球留学で台湾の大学生だ 練習相手にな 強烈で速い球に慣れるためにな」
どこから連れてきたんだろうと思っていると、花梨の相手に付けていた。どこまで、この人達は花梨をイジるんだろうと感じていた。だけど、花梨は黙々と相手をしていたのだ。
相手は男子で大学生なのだ。撃ち抜かれるようなフォアハンドにカウンターにも花梨は黙々と向かっていて、喰らいつこうとしていた。おそらく、彼女の負けん気の強さがそうさせているのだろう。
練習では、香がコーチから集中的にしごかれていた。いくらか普段より動きが悪いようにも見えていて
「香 動くの一瞬遅れているぞー 何 考えているんだ! 身体で反応しろ!」と、滅茶苦茶なことを浴びせられていた。香は必死にやろうとしてるのだけど、やっぱり、瞬間遅れているみたい。
「ダメだ 香 何迷ってるんだ! また ドジノロうさぎ やるかぁー? ・・・しばらく、花梨の動き見てろ」と、コーチは香に言い残して、今度は私達ペァの練習を見に来ていた。私は、幾らか緊張していたのか、若葉が
「水澄 気にしたらダメ! 集中して!」と、引き戻してくれていたのだ。
そんな調子で強化練習も最終日を迎えていたのだけど、花梨はその台湾の人とも対等に渡り合える程度にはなっていたのだ。
今年のお盆は福井の海の話も無く、お兄ちゃんも家でだらだらしていて、私と涼しくなった夕方にジョギングに付き合う程度だった。15日には、無理やり智子がやって来て、一緒にジョギングに付き合ってきて、おまけにシャワーまで浴びて、晩ご飯まで居座っていたのだ。なんだかんだと、ジョギングの時からお兄ちゃんの側に寄り添っていて既成事実をつくろうとしているみたいなのだ。だけど、私は無視するようにしていて、午前中にも自分なりにトレーニングを続けていて全中のことに集中するようにしていた。それに、去年の全中の時の秋元蓮花の試合の録画を繰り返し見ていて、イメージトレーニングをしていた。私だって、勝つつもりなんだからー。
翔琉からはラインが入っていた。(25日の夜 大津でホテル取った 琵琶湖も窓から見えると思うよ ダブルな) 私は、見た時、しばらくスマホを見たまま、動けなかった。ダブル・・・寝る時 横に翔琉が居るの・・・当たり前のことなんだけど、実感できなくて、ぼぉーッとしていた。私は・・・どういう姿 ? ? ? どんな顔をしてるんだろうか・・・ だからさー 今の私は、こういうこと考えたくないのよー 翔琉に 携帯のこと、話したのは失敗だったと 後悔していた。あの時、久しぶりに唇を合わせて、甘~い感覚に流されてしまった・・・。それでも、その夜は、自然と疼いてきているあの部分に手を添えて押さえたまま寝てしまったのだ。
16日はお父さんもお母さんもお休みで、今晩は寿司でも喰いに行こうかとお父さんが言い出して
「くら寿司か」
「お父さん 飲むでしょ 車で無いのならね ちよっと遠いよー」と、私が言うと
「まぁ 長次郎にしとこうよー ちょっと高めだけどなー ネタがいい あそこなら何とか歩いていけるだろう?」と、お兄ちゃんが
「お盆で きっと 混んでるよー 早い目に行ってさー そこそこでティクアウトにしようよー 私 先に行って 順番取っておく ねぇ お兄ちゃん?」
「何でぇー 俺まで巻き込むなよー」
「ふ~ん・・・ あなたの可愛い妹を独りで行かせるの? どんな人が居るかわからないとこに独りでポツンと並ばせるの?」
「わかったよー 親父 あなたの娘は最近 脅迫することを覚えたよーですよ」
結局、私とお兄ちゃんは自転車で先に行くことになって、お父さん達は後から歩いて来ることになった。でも4時頃だったせいか、案外空いていて、私達の順番がきた時には、お父さん達はお店に着いて無くて、先に私達は席に着いて、しょうがなくて注文を始めていたのだ。お兄ちゃんは真っ先に串揚げを、私はつぶ貝とイカを注文して
「あのな 水澄 揚げ物っていうのは 手間かかるだろう? 時間稼ぎにはいいだろう?」
はぁー お兄ちゃんはしようもないとこでも考えてるんだぁー。でも、私が2皿目を食べ終わった時に、お父さん達がやって来て、まず ビールを注文していたのだ。
「うぅー うまい! 久し振りに汗をかいたからなー ビールがうまい さぁ 食べようか」と、言いつつ アジの造りを頼んでいた。
「水澄 調子はどうだ?」
「うん 順調 頑張るよー 皆 そーなんだろうけど・・・ 私は 違うの お父さんとお母さんの娘だから 特別なの 絶対に取る 頂点」
「うっ また 点数 稼ごうとしてんのかー」と、お兄ちゃんはメニューを見つめながら他人事みたいな言い方だった。
「いゃ いい その言葉だけでもな なぁ 民子 こんな良い娘を生んで、育ててくれて ありがとうな」と、お父さんは心底言っているみたいだった。
「あなたが水澄のこと とっても可愛がっていて下さるからよ」と、いつも私のことになると表情が硬くなるお母さんのことが最近 気になっていた。
そして、食べるのはそこそこにして、ティクアウトにして、又、家に帰って食べることにしていた。お兄ちゃんと私は自転車で帰って、お父さん達は仲良く、もしかしたら、手を繋ぎながら、散歩がてらで帰ってきていた。
でも、私は誓っていた。両親に喜んでもらう為にも、絶対に勝つ!。生んで育ててくれた恩返しなんだ。
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