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金木犀の許嫁

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第四十七話 須磨の海その二

「そのつもりだから」
「自信があって」
「一緒にプールに行けるよ」
「そうなのね」
「ただ」
 こうもだ、佐京は言った。
「水泳部じゃないから」
「専門の人には負けるの」
「それはね」
「流石にそうなのね」
「忍者は結構器用貧乏だから」
 こうも言うのだった。
「逃げて隠れる以外は」
「そうなの」
「剣術もそうで手裏剣も」
 こちらもというのだ。
「専門じゃないから」
「専門は逃げて隠れる」
「そちらで」
 忍者はというのだ。
「剣術も手裏剣術もやってるけれど」
「専門じゃないのね」
「水泳、昔で言う水連もね」
「やっぱり専門じゃなくて」
「結構器用貧乏なんだ、けれど」
 それでもというのだ。
「専門はは忍術だよ」
「そうなのね」
「その他のことは専門じゃなくても」
「忍術は専門ね」
「そしてその忍術は戦うものじゃないんだ、だから忍者は喧嘩もしないんだ」
 そうだというのだ。
「むしろそうしたものを避ける」
「そうしたものね」
「そうだよ、あとね」
「あと?」
「俺も昔の漫画に出て来るみたいな忍術使いたかったよ」 
 佐京は微笑んでこうも言った。
「実はね」
「ああ、妖術みたいな忍術ね」
「変身したり蝦蟇操ったりね」
「お空を雲に乗って飛んだり」
「仙人か妖術使いみたいな術をね」 
 昭和三十年代の忍者漫画では普通にあった、二人の先祖の猿飛佐助もまさにその題名の杉浦茂の漫画でそうした術を使っている。
「使えたらってね」
「思ってたの」
「現実でなくてもね」
 そのことがわかっていてもというのだ。
「そうでなくてもムササビの術とか水蜘蛛の術とか」
「そうした術を使って」
「そうしてね」
 そのうえでというのだ。
「お空飛んだりお水の上を歩いたり」
「ハットリ君ね」
「壁を歩いたりね」
「そうしたことは出来なくっても」
「出来たらってね」
 その様にというのだ。
「思っていたんだ」
「そうだったのね」
「夢があるからね」
「そうね、けれど泳げたら」
 夜空はあまり運動が得意でないのでこう言った。
「それでね」
「いいんだ」
「そう思うわ、私泳げても遅いから」
「そうなんだ」
「距離もあまり長く泳げないし」
 それでというのだ。
「佐京君自信あるなら」
「うん、結構速いと思うよ」
 その距離はというのだ。 
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