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ドリトル先生の長崎での出会い

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第一幕その六

「恥や外聞を知ることもね」
「大事だね」
「若しそうしたものが何もなくて」
「嘘を大声で吹聴する」
「そんな人はかえってね」
 それこそというのです。
「人気が出るかも知れないけれど」
「間違っているね」
「嘘を平気で吹聴する人を支持出来るかな」
 先生は真顔で言いました。
「果たして」
「普通は出来ないね」
「嘘を嘘と見抜けなくても」 
 それでもというのです。
「駄目だしね」
「そうだよね」
「嘘吐きは泥棒のはじまりとね」  
 先生は王子にこの言葉も出してお話しました。
「言うね」
「日本の言葉だね」
「平気で嘘を大声で言える人は」
「どんなものも盗むんだ」
「平気でね、そして平気でものを盗めるなら」
「そこからどんどん悪いことをするね」
「そうだよ、大抵嘘を言う時人は内心後ろめたさを感じていて」
 嘘を吐くことは悪いこと、このことを自覚してというのです。
「やや口ごもったり目が動くよ」
「そうなるね」
「良心があるからね」
「人にはね」
「だからそうなるけれど」
「どうしてもね」
「それは普通の人でね」
 そうであってというのです。
「正真正銘の悪人はね」
「嘘を吐いても大声で」
「しかも平気なお顔だよ」
「どんな嘘をどれだけ吐いても平気だね」
「もう息をする様に吐いてもね」
 嘘をというのです。
「本当にね」
「平気だね」
「そうした人は恥も外聞もなくて」
「どんな悪いことをしても平気だね」
「若し悪事がばれてもね」 
 そうなってもというのです。
「平気だよ」
「何とも思わないね」
「裁判にかけられて」
「有罪にならないと平気だね」
「なっても実刑を受けないならね」
 それならというのです。
「平気だよ」
「そうなんだね」
「そして人に何をしても何を言っても平気で」
「自分だけかな」
「そうだよ、自分さえよかったらね」
 先生はとても否定的に言いました。
「世界がどうなってもだよ」
「平気なんだね」
「大混乱に陥っても大戦争が起こっても」
「自分さえよかったらだね」
「自分の国がどうなってもだよ」
 それでもというのです。
「平気なんだよ」
「それが本物の嘘吐きだね」
「そして本物の悪人だよ」
「人はどうでもいいんだね」
「嘘を吐いて騙してもね」
「平気なんだね」
「そして羞恥心も思いやりもないよ」
 やはり否定的に言う先生でした。 
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