DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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二度ある事は三度も四度もある
<ラダトーム>
宿屋の大食堂で遅めの夕食を取るリュカ達…
そこに別行動でバコタの身を案じた4人が合流する。
「お帰り…悪いけどお腹空いちゃったから先に食べてるよ。ティミー達の分も頼んであるから、遠慮無く食べてよ」
何時もの緊張感のない声がティミー達を包み込む。
疲れ切った表情のティミーは、席に着くなり大型犬用の首輪をリュカの目の前に置き、溜息混じりで話し出す。
「ったく…ハッタリならハッタリだと、あの場で教えてくれても良いじゃないですか!」
そう…バコタの首輪は爆発しなかった。
ティミーが最初に思った通り、リュカのハッタリだったのだ。
「(ニヤリ)アイツ…どうだった?」
「…首輪が爆発しないと確認すると、凄い勢いで外し床に叩き付けてました。悔しそうでしたよ…」
息子の報告に大満足のリュカ。
人質にされた娘も、力一杯ガッツポーズする。(因みに彼氏の喜びようも凄かった)
「しかし…アイツを騙すのなら、俺達にも全容を教えてくれても良かったんじゃねーの?何で俺達にまで秘密にしたんだよ!」
作戦を知らされなかったカンダタが、リュカに対し不満を告げる…
「ダメだね!特にお前には事前に知らせられない…」
「な、何でだよ!俺が裏切るとでも思ったのか!?」
リュカの一言にムキになるカンダタ。
「そうじゃない…僕はお前の事を信用している。だがお前は嘘が下手だ!事前に知らせていたら、お前は奴を見る度にニヤケてただろう…話では、お前と奴は以前仲間だったそうじゃないか。お前の性格から、昔の仲間が不遇な目に遭っているのに、ニヤケて居る事は不自然なんだ。お前が一際奴を気遣っているからこそ、奴はあの首輪をハッタリだとは断言出来なかったんだ。お前の事を信用してない訳では無いが、今回はその長所が仇となる事例だったんだよ…」
「な、なるほど…でも、ティミーには知らせて、俺達には知らせてくれないのはズルイなぁ…」
リュカの説明に納得するも、ティミーだけを特別扱いした事に不平を言う…
「それは僕にも計算違いだった。まさかあそこでティミーが気付き、僕に話を合わせてくるとは…お陰で時間短縮出来たよ!いや~…柔軟な思考が出来る様になったもんだ!愛する者が出来ると、人はこうも変わるものなんだねぇ…」
そう言って、水の注がれたグラスを手に持ち、ティミーに向けて軽く掲げるリュカ。
その行動に、アルルを抱き寄せてサムズアップで答えるティミー。
「あ、貴方本当にティミーなの?世界で一番リュカを理解してなかったクセに…」
ビアンカの一言が、皆の視線を変化の杖へ集めさせる。
口の周りをソースでベチャベチャにしたラーミアが、キョトンとした顔で座っている…首から変化の杖をぶら下げて。
さて日付も変わりアルル達は今日もラダトーム城に訪れる。
昨日は城内を引っかき回した為、その事へのお詫びと目的の『太陽の石』発見の報告だ。
尤もリュカは大臣等に嫌味を言う為だが…
「陛下…昨日はご迷惑をお掛けして申し訳ございませんでした。お陰をもちまして、無事『太陽の石』を見つける事が出来ました」
アルルがリーダーらしく恭しい態度で挨拶をすると…
「まぁ馬鹿な大臣共には、逐一嫌味を言われ続けたけどね!王様のお陰…って、全然役に立って無いけどね!大臣等を押さえ付ける事も出来てないんだからね!!」
アルルとティミーの胃痛が始まる。
「す、済まなかったなぁリュカ…ワシ等もこの城にそんな物があるとは知らなかったから…」
「王様…それは違うよ!僕は『太陽の石』の存在を知らなかった事には怒ってないんだ。『自分たちの知らない事は世の中に無い!』とばかりにふんぞり返っている輩に腹が立っているだけなんだ!更に言えば、そう言う奴等に限って安全な場所で何もせず、危険な場所へ赴き努力している者に対し、文句だけは言ってくる輩なんだ!文句を言う前に、お前が何とかしろって言いたいね!」
最早リュカに文句を言う者は居ない…
側近等の大半が、リュカの方を見る事さえ出来ない。
ラダトーム王は、苦々しい表情を繕えぬまま、何とか次の言葉を発する…
「…リュカ…おヌシは随分と良識を持っている様だ…どうだ、我が娘…ローリア姫と結婚し、この国を治める気はないか?」
「「「「へ、陛下!!」」」」
リュカの資質を見抜いた国王は、その能力を味方に付けるべく大胆な提案を彼に提示する。
先程まで顔を上げる事が出来なかった側近達だったが、これ程の重大発言に血相を変えて叫びだした!
大臣や軍人等が代わる代わる異論を唱える…いや、叫び発狂するが、王様は鋭い眼光を周囲に走らせ一喝!
「黙れ!ワシの決断に異を唱える者は許さん!リュカの様な者こそ、国を背負って立つ者に相応しいのだ!キサマらの様に、世界を救おうとする者の邪魔にしかならぬ事をする輩とは違うのだ!」
ラダトーム王…ラルス1世は玉座の前に立ち、怯む家臣を睨み続ける。
そして侍女にローリア姫を連れてこさせ、リュカの前へと誘い出た。
「どうじゃリュカよ…ワシが言うのもなんだが、なかなかの器量だろうて………おヌシの答えを聞きたいのぉ」
目の前に息子と同い年ぐらいの少女を連れてこられ、結婚し跡を継ぐかと問われるリュカ…
そして彼は言う…眉間にシワを寄せ、まるで愚か者と話すかの様な口調で…
「お前バカなの?」
と、一言。
静まりかえる謁見の間…
側近等には何が起きたのか理解出来ないのだ…
ここで…このタイミングで…これ程の不敬罪を犯す者など居る訳無いのだ。
そして、それは国王も同じ。
「な…何と言ったのだ?」
リュカの言った言葉の意味が理解出来ない…
「はぁ~………バカなのか………分かった、説明してやるから黙って聞け!」
リュカは大きく溜息を吐き、頭を横に何度も振り、優しい口調で語り出した。
「僕はお姫さんとは結婚しない!理由は3つある…」
そう言うと右手を国王の目の前に翳し、人差し指・中指・薬指を見せつける。
「先ず、僕は既に結婚している。この絶世の美女が奥さんだ!」
左手でビアンカを抱き寄せ自慢げに見せつける。
「もう子供も居るし、別れる気は無い!それが1つ目の理由だ。次の理由は………僕は王様になりたくない!王様とか、町長とか、人の上に立つと自由が無くなる。僕には権力や富よりも、自由に生きる事こそが重要なんだ!」
唖然とするラルス1世…誰もが求める富と権力を、価値のない物と言い捨てるリュカに、言葉が出ないのだ。
「3つ目の理由は………僕は他人の女に興味がない!」
リュカはラルフ1世の目の前で立ててた指を解除し、そのままローリア姫の頭へ移動させる。
そして優しく頭を撫でて、笑顔で姫に問いかける…
「好きな男が居るんでしょ?」
謁見の間に呼ばれてから、終始戸惑っていたローリアは、リュカの優しい問い掛けに頬を染めて頷いた。
ラルス1世は更なる驚きを見せる。
まだ子供だと思っていた娘に好いた男が居ると言う事実に…驚きながらも、嬉しく思う父親な一面を見せている。
だが、この驚きはまだ序の口であった…
リュカの更なる台詞が、この場を怒濤の混乱へと引きずり込んで行く!
「お腹の子は、その彼との子だよね?」
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