| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

隠し部屋

<ラダトーム>

バコタのレミラーマを使用した探索も既に1時間以上を経過し、ラダトーム城を半分家捜しした事になる頃…
一行は城の台所へと場を移してきた。

台所に限った事ではないのだが、闇の国アレフガルドでは松明の明かりのみが頼りであり、室内の隅々まで照らし切れていないのが現状。
この場所も例外なく、広々した空間だが人々が最も使用する範囲に明かりが集中しており、そことは反対の壁際は薄暗い空間になっている。
「きっと薄暗くて探しにくい、こう言った壁際にアイテムが隠されてるんですよ!レミラーマがあれば探し出せますわ…きっと」
リュカ以外の皆に、見つけられない不安が広がってきた為、情報を仕入れた責任のあるマリーが、努めて明るい声で見つかる事をアピールし薄暗い壁際に躍り出る。

その瞬間だった!
バコタが台所に置いてある料理用のナイフを手に取り、リュカ達から少しだけ離れたマリーを抱き上げ、ナイフを首筋に当てて人質にしたのだ!
「おっと…動くなよ。いい加減キサマ等に顎で扱き使われるのは飽きてきたぜ!この娘の命が惜しかったら、オレの首輪を外しな!そうしたら娘は離してやるし、太陽の石も探してやるよ…へっへっへっ、お偉いさん方を怒らしちまったから、アイテムを見つけないと立場がないんだろ?もうオレを殺せねーよなぁ?」
バコタは幼い少女(マリー)を抱き抱え、勝ち誇った顔でリュカに指示を出す…

その状態に一同は驚き、そして動く事が出来なくなる。
しかしリュカだけは動じておらず、バコタの方へ一歩踏みだし睨み付ける。
「お、おい!!?う、動くなって言ったろ!!つ、つ、次動いたら…「お前を殺すぞ!」
声の裏返ったバコタの脅し文句を遮り、強烈な怒気を含んだリュカの怒号が響き渡る。

「俺の娘に傷一つでも付けてみろ…その空っぽな頭を握り潰してやるぞ!」
人質を取り優位な立場にあるハズのバコタだが、リュカの怒りに一際怯んでいる…
「お、おい…オレを殺せるのか…?こ、殺したら…レ、レミラーマが使えず…ア、アイテムを探せないだろ…?そ、そ、それでもいいのかよ!こ、この首輪を外せば、手伝ってやるって言ってんだぜ!?」
「もう憶えた!お前に何度も見せてもらったから、レミラーマを憶えた!だからさっさとマリーを離し、ナイフを捨てろ!さもないと殺すぞ…」
呆気にとられる仲間達を余所に、お世辞にもハッタリとしか思えないリュカの言葉が木霊する。

「はぁ?憶えたぁ!?盗賊のみが憶えられるレミラーマを、テメーが憶えたって?あはははは、とんだハッタリ野郎だな!どうやらこの首輪もハッタリなんだろう…その確信が持てなかったから脅えてたけど…もうアイテム探しを手伝ってやる必要はなさそうだなぁ!!わははははは!」
ビアンカの顔から血の気が引いて行く…
ティミーは体を震わせ妹の身を案ずる…

誰もがリュカのハッタリに、全ての終焉を感じ始めたその時…
「レミラーマ!」
リュカの翳した左手から、アイテムを探知する魔法の輝きが発せられる…そして、その光はこの室内の薄暗い壁に向かい集まっていった!
そう…誰が見ても変哲のない壁を、レミラーマの魔法が光り示しているのだ!

「ほう………どうやらお前ではなく、俺が先に太陽の石を見つけ出した様だ…コレでお前は用済み…生かしておく価値は無くなった!………もうお前が持っている延命理由は1つ………俺の娘を無傷で解放する事…それだけだ!」
リュカの一言はハッタリではなかった。
レミラーマを憶え、隠し部屋を発見する事が出来た…切っ掛けはバコタでも、功績はリュカの物。
今リュカがその気になれば、マリーを救いバコタを殺す事など容易なはず。
「コレが最後だ…俺の、娘を、さっさと、離せ!」
リュカは更に一歩踏みだし、一言ずつハッキリと発しバコタを威圧する。

バコタの体は震えていた…
リュカから発せられる怒気だけではない。
全てにおいて恐怖が押し寄せてきたのだ。
メガンテの首輪がハッタリであろうと思っていたが、確信に至れず脅えていた…しかしリュカがハッタリを言うのを見て、彼の言葉全てがハッタリだと確信する事が出来た。
だがリュカはハッタリなど言って居らず、此処に来て全てが真実だと思い知らされたのだ!

バコタは力無くナイフを落とすと、同時にマリーを抱く腕から力を抜いた。
解放されたマリーを見たウルフは、凄まじい跳躍と共にバコタの顔面へ右の拳をめり込ませ、彼を3メートル程吹き飛ばす!
「マ、マリー!!大丈夫か!?け、怪我は無い?大丈夫なの?」
そしてマリーを抱き締め泣きながら無事を確認する。
そんなウルフの胸に抱き付き、泣きながら「大丈夫…うん、大丈夫だよ」と頷くマリー。

バコタは死を覚悟していた…
リュカに…いや、リュカ等に殺されるだろうと。
そんな彼の傍らに立ち、冷たい目で見下ろしながら、手でアルル等に先程レミラーマが光った場所を探す様に指示するリュカ。
程なく壁の模様だと思っていたのが隠し扉だと判明し、最後の鍵で開け進入するアルル達。

「な、なぁ旦那…許してやってくれないか?コイツもアンタが相手だったから、あんな事をしちまったんだ…アンタは強すぎるから…」
リュカに近付きバコタの助命を乞うのは元兄貴分のカンダタ…
そのカンダタをリュカは強烈な目で睨み付け言い放つ…
「お前がしっかり押さえ付けておけ!ちょっとでも暴れたら、お前事バギクロスで細切れにするぞ!」
そう言ってバコタとカンダタの側から離れ、まだ青ざめる妻へ近付き、抱き寄せて娘の身を危険に晒した事を詫びるリュカ。
娘の危機に、心が張り裂ける思いをしたビアンカは、リュカの胸に顔を埋め泣き崩れる。

無事太陽の石を見つけ出したアルルが、一緒に一部始終を見ていた彼氏(ティミー)に小声で告げる。
「常にあの状態をキープしていたら、私はティミーにではなくリュカさんに惚れていたわね!お父さんに感謝しなさいよ(笑)」
激しく苦笑いのティミー…
妹の元へ近付き、ウルフと共に無事を確認するのだった。



さて…
無事に太陽の石を手に入れたアルル一行は、バコタを警備隊詰め所の牢屋へと連れ戻す…
独房に放り込み、鍵をかけて立ち去ろうとする一向に、バコタは慌てて縋り付く。
「お、おい…く、首輪を外してくれよ!む、無傷で娘を返したろ!?こ、殺さないって約束したじゃんか!コ、コレ取ってよ!」
泣き叫びながらリュカに縋り付くバコタ…
だがリュカは冷たい目のまま見下ろし言い放った…
「言ったろ…1度でも逆らったら、その首輪は外さないと…お前の言ってるのは、(マリー)を無傷で解放したら、あの場は殺さないと言う意味だ。ソレを外す事とは、別の事だ…諦めろ」
そう言って泣き叫ぶバコタに見向きもせず、リュカは牢獄を後にする。


警備隊詰め所を出た所で、不安に思ったティミーが父へ真実を尋ねた。
「と、父さん…あの首輪はハッタリですよね?光の玉から300メートル離れても、爆発しませんよね?ぼ、僕はそう思ったから、話を合わせて彼を欺いたのですが………」
「此処から宿屋まで、少なく見ても1キロはある。明日になったら牢屋へ赴いてみろ。真偽が確認出来るよ」
リュカはそう言って冷たく笑うだけ…
不安に駆られたティミー・アルル・カンダタ・モニカは、その場から動けなくなる。

リュカが大分離れたのを見計らい慌ててバコタの居る牢獄へ…
そこで彼等が見た物は………



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧