DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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幸せのカタチ
<ラダトーム>
「お腹の子は、その彼との子だよね?」
リュカの何気ない(リュカ個人の感覚)台詞に、先程まではにかんだ表情で恥ずかしがっていたローリア姫は、両目を見開き驚き固まる。しかも否定をせずに驚くだけなので、周囲の者には肯定との意志が伝わってしまう…
また、照れくさそうにしてたラルス1世も、嫌悪を含んだ驚きの表情でローリア姫を見つめ、言葉を失っている。思考の海を彷徨っている様だ。
本日幾度めかの静寂が辺りを包み込む…
重苦しい静寂を打ち破ったのは、思考の海から舞い戻ってきたラルス1世だった!
「ロ、ロ-リア!!あ、あ、相手は誰だ!?一体何処の馬の骨なんだ!?」
極度に狼狽えているラルス1世は、ローリア姫の両腕を掴むと、力任せに彼女を揺すりお腹の子供の父親を聞き出そうとする。
「い、痛いです、お父様!や、止めてください…」
父の混乱に脅えるローリア姫…
泣きながら腕を放す様に訴えるが、リュカの唱えていないメダパニの効果が大きすぎて、掴む両手の力を緩められないでいる。
それどころか半狂乱になりながらローリア姫を揺すり続け、「相手は誰だ!?」と叫び続けている。
(ドカ!)
「落ち着けオッサン!」
誰も止められない半狂乱の国王を、唯一止める事が出来たのは、この混乱を呼び込んだ張本人のリュカだった…
ラルス1世の尻を蹴飛ばし、脅え泣くローリア姫を抱き寄せ庇い言い放つ。
「相手が誰とか…どんな人物とか…そんな事どうでもいいだろ!今大事なのは、お姫さんに子供が出来、オッサンがお爺ちゃんになると言う事実だ!目出度い事だぞ…新しい命が誕生するなんて事は」
「いいわけねーだろ!ワシの孫なんだぞ…このラダトームを継ぐ跡取りなんだぞ!父親が何処ぞの愚か者だったりしたら、一大事ではないか!」
もう誰もリュカの言葉遣いを注意しない…もう誰もリュカの行動を気に留めない…
国王に対し『オッサン』と言おうが、尻に蹴りを入れようが、そんな事に構っている余裕など消え失せている。
ラルス1世も、世継ぎになる者の事で頭がいっぱいなのだ!
「おいおい…さっき何処ぞの男に娘と結婚しろと言った人物とは思えない台詞だな!何を基準に跡取りを選んでいるんだキサマは!?」
リュカの声に不機嫌な色が混ざり始める…
「お、お前は素晴らしい見識を持っている男だから、ワシの後を継ぐのに相応しいと思ったのだ!だ、だがローリアのお腹の子の父親の事は知らん…諸手で喜べるワケ無いだろ!」
「つまりキサマの娘は、人格に信用がおけないという事だな!?」
蹴られた時に尻餅を付いたままの状態で話を続けるラルス1世を、見下ろす形で冷たく言い放つリュカ…
「な、何だと!?許さんぞ…ローリアは清楚で可憐で心優しい娘だ。常に正しい判断を行える人格の持ち主だ!取り消せ…今すぐ取り消さねば、極刑に処すぞ!」
リュカの無礼極まりない発言に、流石の国王も怒り心頭で、勢い良く立ち上がり金切り声で騒ぎ出す。
「ふざけんな…取り消すのはキサマの方だ!僕はお姫さんの人格を疑ってなどいない…お姫さんが認めた相手に疑問を持ち、半狂乱で喚いているキサマこそが、彼女の人格や判断力を軽視いているんだ!」
「そ、それは………」
リュカの真っ直ぐ(っぽい)言葉に、思わずたじろぐラルス1世。
「それに僕はキサマが嫌いだ!娘の結婚相手を勝手に決める様な親…そんな奴は大嫌いなんだよ!………無理矢理結婚相手を押し付けて、実はもうお腹に子供が居ますって知るや発狂する親…最悪だね!」
「し、しかし…リュカよ、お前の見識は素晴らしい物がある。その様な人物はそうは居まい…娘と結婚させて取り込もうとするのは、至極当然であろう」
父としてではない…一国の王としての考え方に、心底嫌悪するリュカ。
あからさまに顔を歪め、国王を見下す様に話し続ける。
「随分と評価して貰ってるが、お前等に僕の何が分かってるんだ?」
「…………」
言葉を詰まらせるラルス1世…
「僕は…妻の他にも愛人が沢山居る!それに伴って子供も沢山居る!しかも表の世界じゃどっかの女王様を孕ませて、責任取って無いからね!(笑)………ローリアちゃんを妊娠させた男と何処が違うと言うのだ?それなのにお姫さんが選んだ男ではなく、僕の方が夫には相応しいと決めつけるのか!?」
「そ、それは…し、しかしリュカの事を何も知らなかったんだ…仕方ない事だろう!」
「ローリアちゃんが選んだ男の事など、僕以上に知らないだろうが!それなのに全否定してたじゃないか!」
「……………」
「…王様。今はともかく、新しい命の誕生を喜ぼうよ…可愛い娘さんが、きっと可愛い孫を生んでくれるんだからさ…『父親が誰か』とかは、どうでもいいじゃないか!」
先程までの嫌悪を含んだ口調から一転…
優しい声と笑顔でラルス1世とローリア姫の肩を抱き、今ある喜びを満喫する様に勧めるリュカ。
その豹変ぶりが気になったアルルが、思わず口を挟んだ。
「…もしかして父親ってリュカさんですか?」
その一言に周囲がざわめき出す。
ラルス1世などは喜びの表情になっている。
「バカ言うな!出会ったのは昨日が初めてだぞ………種撒く時間などあるものか!例え僕が種を撒いたとしても、昨日の今日で芽が出る訳ないだろ!」
ラルス1世の期待を断ち切るリュカの言葉にラングストンが…
「流石はその道の達人…一言一言に説得力がありますねぇ…きっとお姫様のお相手にも、説得力の篭もった台詞が言えるのでしょうね!…リュカ殿と同等に…」
「僕と同等?フッフッフッ…残念ながら僕の方が子供は多い!愛人の数も圧勝してるだろう…」
思わず自慢げになるリュカ…
ラングストンに対し胸を張って威張っている。
「………リュカよ…おヌシは、ローリアの相手を知っているのか?」
そう…相手が誰なのか分かっていなければ、自分と比較して自慢は出来ない…
だがリュカは得意げに自慢した!ある意味、自慢できる様な事ではないのだが、愛人と子供の多さを自慢した!
「………あ、しまった!(汗)」
流石に青ざめるリュカ…
ローリア姫の為に、この場は有耶無耶で終わらせようと画策したのに、ラングストンのくだらない罠に引っかかり、周囲の者に大ヒントを与えてしまった。
してやったりと笑顔のラングストン…
渋い顔で睨むリュカ…
暫くの間、皆が互いを観察し状況を見定めている。
そこへ大声で叫んだのはアルルの母…アメリアだった!
「ああ、そうか!!だからお姫様はアルルの事を意識してたのね!」
名を呼ばれた本人も…察しの悪いティミーも…大臣や側近等も…アメリアの言葉が理解できず、怪訝そうな顔で首を傾げる。
だがマリーやウルフなど、血の巡りが良い連中には答えを言ったのと同じだった。
そしてラルス1世にとっても…
「ま、まさか…お、お前の愛した男とは………オ、オルテガ…なのか?」
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