DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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メガンテの首輪
<ラダトーム>
「お、おい…いいのかよ…こんな物付けたままじゃ…オ、オレは協力しないぜ…は、外せよ!コレ外したら手伝ってやるからよ!!」
言葉では強気なのだが、顔面蒼白で泣きそうにながら怒鳴り散らすバコタ…
「何か勘違いしてないか?お前に命令を出す権利はない!お前に出来る事は、僕達に協力して『太陽の石』を探すか………死ぬかだ!…ソレを付けたままじゃ協力しないと言うのなら…そのまま死ね!」
誰もが言葉を失うリュカの冷たい台詞…
バコタは脅えながら文句を言おうとするが、リュカは踵を返し牢屋の鍵を閉め、立ち去ろうとする。
「お、おい!!ど、何処に行くんだよ!?」
「協力しない奴に構っている程、僕等は暇じゃないんだ!『太陽の石』を探しに、再度ラダトーム城へ赴く…じゃぁな!」
「ちょ、ちょ、ちょっと、待って…待ってよ!」
バコタは少しでもリュカに近付こうと鉄格子に体を押し付けて、出て行こうとするリュカを呼び止める。
「ラダトーム城って…此処から2キロは離れてるぞ!コ、コレが爆発しちゃうじゃねーかよ!どっか行くんなら、コレを外せよ!爆発しちゃうよ(泣)」
声を裏返しながら自分の首を何度も指さし、首輪の解除を要求する。
「さっきも言ったが、協力し『太陽の石』を探すのに尽力すれば、ソレを外してやる…お前に残されている道は、協力して生き残るか、協力せず死ぬかだ!」
リュカはバコタに背を向けたまま、無慈悲な選択肢を提示する。
「と、父さん…先程からあまりにも非人道的すぎです!…どうか彼から首輪を外して、今回の事はなかった事にしましょう…『メガンテの首輪』は酷すぎます!父さんだって、あの奴隷商人が『メガンテの首輪』を付けた奴隷を連れてきた時は、怒り心頭だったじゃないですか!あんな人間のクズになり果てるのは止めてください…」
ついに耐えられなくなったティミーがリュカを止めにはいる。
しかしティミーに向き直り、冷たい瞳のまま言い放つ…
「奴はビアンカとヤらせろと言ったんだ!僕の愛する妻と………お前は我慢出来るのか!?アルルとヤらせろと言われても…そのシーンを想像してしまっても!?」
リュカの強烈な怒りがティミーを直撃し何も言えなくする…
しかし、それ以上に彼を黙らせているのは、父に言われた通りアルルに置き換えて想像した為だろう。
「…ぐっ!た、確かに…そんな想像をしてしまっては…」
拳を握り締め、強烈な怒気を放ちながらバコタを睨み付けるリュカとティミー。
「な、な、何だよ!オレは言っただけだろ…想像したお前等が悪いんだろ!!」
「……………」
ティミーはバコタを睨み…そして目を閉じて天を仰ぐ。
暫くして目を見開くと、先程のリュカと同じ冷たい瞳で言い切った。
「こんな奴、放っておきましょう!世界を救おうとする我々に協力するでもなく…自らの欲望のみに生きる男など…生かしておく価値はない!」
まさかティミーまでもが無慈悲な発言をするとは!?
リュカと共に踵を返すと、牢獄から立ち去り始めた。
パーティー内の両極が意見を一致させたのだ…
最早誰が説得しても覆る事はないだろう…それが分かるアルル達は、2人の後に続き立ち去り出した。
「待って!!わ、悪かった…オ、オレが悪かったって!協力する…全面的に協力しちゃう!だ、だから…お願い助けて…し、死にたくない…オレ、まだ死にたくないんだ!」
顔中を涙と鼻水で濡らしながら、バコタは協力という命乞いをする。
その言葉を聞いたリュカとティミーは、腕を後ろ手に組んだ恰好でバコタの居る牢屋の前に仁王立ち、今一度確認をする…
「僕達に協力するのか?…言っておくが1度でも逆らったら、例えお前の功績で『太陽の石』を入手出来ても、その首輪は外さないぞ…ちゃんと理解しているのか?」
2人の威圧感の前に、バコタは為す術など何もない…
ただひたすら命乞いをする事しか残されて無かった。
その瞬間リュカとティミーは後ろに回した手で、背中越しに他の仲間に合図する。
このバコタ(アホ)を従わせた!と、サムズアップで合図する。
そして皆が気が付いた。
『メガンテの首輪』がリュカのハッタリである事に!
命惜しさという首輪と、恐怖心という鎖がリュカの本当の狙いである事に!
リュカもティミーも表情を崩さず、再度最後の鍵で牢屋の鍵を開けると、顎で外に出る様に指示を出し、足早にラダトーム城へと『太陽の石』を探しに歩き出す。
そしてバコタも光の球を持つリュカから離れない様に、脅えながらついて行くのだ。
流石のビアンカも、今回のリュカを読み切れなかった様で、息子が読み取った事に敬服すると共に、夫を一番に理解出来なかった事へジェラシーを感じている。
目が合うと、怒りの篭もった瞳で頬を膨らませる母に、些かの愛らしさを感じるティミー。
そして、そんな母子の行動を見て、思わず嫉妬するアルルが…
ベソかきバコタを伴い、再度ラダトーム城に赴く一行。
大型犬用の首輪をし半ベソ男は人々の注目を浴び、奇異な目で見られる…
そんな中、早速レミラーマを使用し太陽の石を探すアルル達。
入口エントランスから開始し、各部屋へ移動して行く。
使用中の謁見の間も国王の私室も…更には姫様の部屋までも遠慮することなく探し回るリュカ等…
姫様は苦笑いで許してくれたのだが、流石に大臣等から苦情申し立てが…
「あ゛?うるせ~な…こっちは世界を救う為に、色々苦労をしてるんだ!敵の襲ってこない城で、ふんぞり返って偉そうにしている事しか出来ない輩は黙ってろ!…それとも、お前等自らが大魔王の所へ行き、討伐してくると言うのなら、こんな無礼な事は止めて大人しくしてますが…どうしますか?」
とリュカに言われ、引き下がらざるを得ないのだ。
中には、引き下がる時に…
「キサマらが世界を救えるとは限らぬだろう…」
と、悔し紛れな捨て台詞を吐く者も居たのだが…
「何だとコラ!お前は世界を救う為に旅立とうともしないクセに、行動を起こしている僕等にインネン付けるのか?上等だ…じゃぁお前が大魔王を倒しに行け!お前がこの国でどんな役職に就いているのかは知らんが、お前の代わりなぞ幾らでも居るんだ!だが世界を救う勇者の代わりは多くない!お前と僕等…どっちが重要だと思う?」
等と言われ、より酷い目にある者も…
これで太陽の石を見つけられなかったら、彼等は間違いなく不敬罪で投獄されるだろう…
ティミー・アルルだけでなく、ビアンカさえも胃痛を起こし始めたのである…
無事見つかると良いね!
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