おぢばにおかえり
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第八十三話 回廊ひのきしんその三十八
「今回のひのきしんはね」
「この人がどんな人か知る為のものでもありますね」
「そうでもあるから」
「この人をよく見ることですね」
「そうしてね」
「人には色々な一面がありますね」
「えっ・・・・・・」
新一君の今の言葉にです。
私は驚いてです、思わず聞き返しました。
「新一君がそう言うなんて」
「驚きました?」
「だって新一君全肯定か全否定しかないから」
隙か普通なら前者、嫌いなら後者です。
「そうしたこと言うなんて」
「いや、わかってるつもりですよ」
「新一君でもなのね」
「僕が嫌いなのは悪い面しかない人なんで」
「悪い面しか見ないのよね」
もうこのことはよくわかっています。
「つまりは」
「そうですかね」
「そうよ、どうせそんな人っていいところないって言うんでしょ」
「はい、全く」
「だから誰でもね」
「いい面あります?」
「蜘蛛の糸だってそうでしょ」
「芥川のですか」
新一君はすぐに答えてきました。
「あの童話ですよね」
「知ってるのね」
「読んだことありますから」
「私もよ、あの犍陀多だってね」
大泥棒で凄く悪い人でもです。
「一度だけいいことしたでしょ」
「蜘蛛を助けていますね」
「そうしたこともあるし」
「どんな酷い奴でもですか」
「少しはね」
例えそうであってもです。
「いいところはあるわよ」
「そうしたものですか」
「というか人間ならね」
それならです。
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