おぢばにおかえり
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第八十三話 回廊ひのきしんその三十九
「誰だって少し位はいいところあるでしょ」
「じゃあ人間でなくなっていたらどうでしょうか」
「いや、人間じゃないって」
「人間って心が人間かどうかですよね」
新一君は私に言ってきました。
「それじゃあ心が人間でなくなっていたら」
「人間じゃなくて」
「もうそんな奴はいいところあります?」
「人間じゃないって何よ」
そう言われてもどうもピンときませんでした、それで新一君にどうにもという顔で言葉を返しました。
「一体」
「仏教で言うと餓鬼とかですかね」
「ああ、あれね」
餓鬼は私も知っていて頷けました。
「痩せていてお腹だけ出た」
「心が餓鬼になっていたらどうでしょうか」
「餓鬼にいいところは」
言われてみるとです。
「かなりね」
「ないですね」
「そういう存在よね」
仏教のことはよく知らないですがそう思います。
「浅ましくて卑しくて」
「そんな奴がなるもので」
「ずっとそうなのよね」
「それで今餓えと渇きに苦しんでるんです」
「人間じゃないでしょ」
「ですから生きながら」
そのうえでというのです。
「餓鬼になってる奴はどうでしょうか」
「新一君は嫌いだと人間扱いしないことはわかったわ」
今の発言からです。
「だからとことん嫌えるのね」
「まあそうですが」
「肯定しないのっ。人間扱いしないって何なのよ」
「心が人間なら人間ですよね」
「じゃあ心が人間じゃないとなのね」
「人間でないですから」
だからだというのです。
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