星河の覇皇
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第八十七部第三章 港の整備その五十七
「とてもだ」
「出来ない」
「そう言われますか」
「そうなのですか」
「私は戦場に立ったことはない」
それも一度もである。
「実はな」
「左様ですね」
「これまでそうでしたね」
「軍に入られたことはないので」
「それで、ですね」
「そうだ、だからだ」
それ故にというのだ。
「正直彼等の様なことは出来ない」
「戦場に立つ」
「そのうえで政務にあたる」
「閣下は政務だけだと」
「そう言われますか」
「そうだ、政務を行うことは出来てもだ」
それでもというのだ。
「軍務は出来ない、そして軍事のこともな」
「わからない」
「よくそう言われていますね」
「そちらのことは」
「知識はあるつもりだ」
こちらはというのだ。
「まだな」
「左様ですか」
「知識はですか」
「そちらはですか」
「おありですか」
「兵器等のそれはな、しかし」
それでもというのだ。
「軍を率いることは出来ない」
「それが閣下ですか」
「軍務についてはですか」
「どうにも出来ませんか」
「それで今言われますか」
「国家戦略はわかるが」
それでもというのだ。
「軍を率いることは出来ない、だからどちらが勝つか」
「オムダーマンかティムールか」
「どちらが勝つか」
「このことはですか」
「今の流れではオムダーマン有利だが」
それはわかるがというのだ。
「しかしはっきりしたことはな」
「言えない」
「そうなのですか」
「閣下は」
「どうもな、私も軍の指揮権は持っている」
エウロパ首相としてだ、エウロパ軍の最高司令官は国家元首である総統であり首相は副司令官になるのだ。
「だが私が直接率いることは出来ない」
「では軍務については」
「どうしてもですね」
「モンサルヴァート閣下とですか」
「総統閣下だ」
ギルフォード、彼だというのだ。
「やはり軍務の経験とだ」
「生粋の武官である」
「このことは大きいですね」
「事実そうですね」
「そうだ、だが指揮権があるなら」
それならというのだ。
「それならな」
「はい、それでは」
「それならですね」
「必要ならば指揮を執る」
「そうされますね」
「そうしなければならない、総統になればだ」
軍の総司令官であるこの立場になればというのだ。
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