おぢばにおかえり
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第八十三話 回廊ひのきしんその三十四
「まさにね」
「だからこそですね」
「大切にして」
「愛情を注ぐことですね、それはです」
新一君は真顔で言いました。
「あの叔父もで」
「お祖母さんもよね」
「はい、どちらも自分だけで」
そうした人達でというのです。
「生きものを大事になんて」
「しないのね」
「全く」
「それ言ってたわね」
「そうですよね」
「ええ」
新一君のお話の中で聞いたことがあります、兎に角嫌いな相手だとこれでもかと悪いところを言い募るので。
「そうだったわね」
「この二人は生きものに愛情を注ぐとかはないです」
「自分だけなのね」
「ちょっと家事とかしたら文句言いますから」
「それだけで?」
「二人共。凄く不満そうに」
こう言うのでした。
「犬や猫のご飯あげることもです」
「それ位もなの」
「遊びたいだけ、怠けたいだけなんで」
「じゃあひのきしんも」
「する筈ないですよね」
「そうよね」
「だからおみちに触れても」
そうしてもというのです。
「何があってもです」
「変わらないのね」
「言うなら人間の底をぶち抜いて」
とても新一君らしい全否定の言葉でした。
「仏教で言う餓鬼になった」
「そんな人達なの」
「僕はそう思います」
「言い過ぎじゃないかしら」
「そうですかね」
「新一君ってそれがあるから」
嫌いな相手をとことん嫌って言うことがです。
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