金木犀の許嫁
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第三十八話 狭い道を歩いてその五
「最後に流れ着く」
「それでほっとするんだね」
「そんな作風でね」
「出て来る人達もいい加減な人多いんだね」
「本当に柳吉さんみたいな」
そうしたというのだ。
「いい加減でだらしない、けれど憎めない」
「そんな人達だね」
「そうなの、だから読んでもね」
「読後感いいんだね」
「読んでいる方もほっとするのよ」
「最後は落ち着くから」
「人間皆しっかりした人か」
夜空は言った。
「そうかっていうとね」
「夜空さんはしっかりしてるよ」
「私?全然よ」
佐京の今の言葉に笑って返した。
「とてもよ」
「しっかりしていないんだ」
「ええ」
自分で言うのだった。
「全くね」
「そうかな」
「自分ではそう思ってるわ。お姉ちゃんと違って」
それでというのだ。
「全くね」
「しっかりしていないんだ」
「そうよ」
佐京に笑って話した。
「それこそね」
「そうは見えないけれど」
「佐京君はそう思ってもね」
「自分ではなんだ」
「まだまだってね」
その様にというのだ。
「思ってるわ」
「そうなんだ」
「よくぎりぎりまで寝てるし何かとずぼらするし」
「それでなんだ」
「とてもね」
それこそというのだ。
「私はね」
「いい加減なんだ」
「そうよ、他の人がどう思ってもね」
それでもというのだ。
「本当にね」
「いい加減なんだ」
「自分に甘くてね」
こうも言うのだった。
「ずぼらで流されやすくて」
「しっかりしていないんだ」
「そうなのよ」
「だから織田作さんの作品を読んで」
「登場人物に感情移入もするの」
そうだというのだ。
「だから尚更ね」
「読んで感じるものがあるんだ」
「そうなの、自分と似ているって」
その様にというのだ。
「思ってね」
「好きなんだね」
「そうなのよ」
「夜空さんが自分ではそう思ってるなんて」
二杯目の善哉を食べながらだ、佐京は言った。夜空も善哉は二杯目に入っているが食べる勢いは佐京の方がいい。
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