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ドリトル先生と奇麗な薔薇達

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第十幕その七

「信者さん達にとても質素なものを食べさせて」
「ああ、自分はね」
「贅沢三昧だね」
「よくあるお話だね」
「そうした宗教団体だと」
「うん、お肉もメロンも食べて」
 そうであってというのです。
「蓄財もして愛人さんも何人もいて」
「何が浄土なのかな」
「腐敗しきってるじゃない」
「そんなこと一目瞭然だよね」
「誰でもわかるよ」
「その誰でもわかることがわからないでね」
 そうであってというのです。
「そんなことを言った人もいるんだよ」
「日本の知識人には」
「物凄いね」
「それで知識人?」
「有り得ないわ」
「しかも只の知識人じゃなくて」
 そう呼ばれる人でなくというのです。
「戦後最大の思想家と言われた人だよ」
「そんなことで?」
「子供でもわかることがわかっていなくて」
「それでなんだ」
「そう呼ばれていたんだ」
「そうだよ、吉本隆明というけれど」 
 その人の名前のお話もしました。
「僕は全く評価していないよ」
「そうだよね」
「どう見てもおかしいからね」
「というかそんな人が戦後最大の思想家って」
「戦後の日本って酷いね」
「知識人の世界は」
「そのことを来日して実感しているよ」
 先生はどうかというお顔で言いました。
「いや、本当にね」
「そうだよね」
「そんなことだとね」
「そんな人が戦後最大の思想家なんて」
「有り得ないから」
「他の国ではね。最初は何書いているかわからない文章書いていて」
 そうであってというのです。
「とある大学教授の研究室が学生運動で荒らされて」
「昭和四十年代の」
「あの運動滅茶苦茶だったからね」
「それでだよね」
「研究室も荒らされたんだね」
「それでその時色々集めた資料や文献も荒らされて」 
 そうなってというのです。
「教授さんは落胆しつつその資料や文献を拾い集めたけれど」
「ショックだっただろうね」
「時間とお金もかけたのだろうし」
「先生もそうしてるしね」
「貴重な本とかね」
「けれどこの人はね」 
 吉本隆明はといいますと。
「何で落ち込んでるんだとか言ったんだ」
「えっ、普通に落ち込むよ」
「自分の研究室荒らされたんだよ」
「苦労して集めた資料や文献も」
「思い入れあるのに」
「しかも研究室荒らされた時に暴力も受けたよ」
 学生運動の活動家達からです。
「散々引き摺り回されたね」
「酷いね」
「まさに暴力だね」
「余計に落胆するよね」
「そんなことあったら」
「けれどその人は自分は図書館に並んで本を借りてるとかね」
 その様にというのです。 
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