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第78話「彼は、まさか…」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第78話「彼は、まさか…」となります。
どうぞ、ご覧ください。  

 
 女神テレサに邂逅するため、宇宙戦艦ヤマトから4人の男が送り出される。古代艦長代理と、副長の真田、第七空間騎兵隊の隊長―――斎藤始、そしてガミラス大使館駐在武官―――クラウス・キーマン中尉が、地球連邦仕様の《ガミロイド》を護衛として連れて、聖地《テレザリアム》へ足を踏み入れた。

 ………
 ……
 …

 それは、突如として現れた。

 全長1100メートル級の漆黒の戦艦が、宇宙戦艦ヤマトの直上にワープアウトした。見たことの無い艦だったが、どこかアクラメータ級に似ており、その漆黒の戦艦はまるで姉のようだった。
 堂々とした威容を誇る漆黒の楔型戦艦は、一際目を引く存在だった。矢じり型の幅が広い船体、船首に向かって尖ったデザイン。艦尾から隆起した、ブリッジと思われる2つの上部構造物に設けられていた。

 〈ヤマト〉の直上にワープアウトした戦艦のその正体は、漆黒に染められたヴェネター級であった。

 「上方より、動力反応!数は1!」
 
 船務長―――森雪が、ドーム型のレーダーに現れた情報を読み上げる。そして、重力波反応パターンを照合した森雪は緊迫とした声音と報告した。

 「識別―――ブリリアンス」

 その言葉に、第一艦橋の面々が血相を変えた。正確には、混乱が勝っていた。司令部から「ブリリアンスより救援部隊が送られる」という報せはない。それは、ブリリアンスからも同様だ。
 伝達ミスなのか、それとも報せを忘れていただけなのか。報せ、を忘れるのは駄目な事だけれども。理由はなんであれ、何故ブリリアンスが此処―――テレザート星にいるのか皆目検討もつかなかった。

 そんな中、ヴェネター級から1機のシャトルが発艦する。シーシピード級輸送シャトルである。

 「コース、《テレザリアム》の島へ向かっています!」

 
 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 
 一方、その頃。
 彼らは、ダークネス卿との接触が起きていた。

 少し前まで真田副長と古代戦術長、キーマン中尉、そして空間騎兵隊の斎藤隊長は伝説の女神テレサと対面。

 ガトランティスの正体が古代文明によって、産み出された戦闘用人造人間である事。地球へ進路を取っていた白色彗星が実はガトランティスの母星であり、更には古代アケーリアス文明の遺産にして破壊装置である事。

 信じがたくも衝撃的な事実と共に、対抗策が授けられた。その対抗策というのは「未来が変わるから」の理由で抽象的な言い回しではあったが、彼らは理解した。
 宇宙戦艦ヤマトを中心とした”縁”とやらを。ガミラスやブリリアンスは地球と共に、―――ガトランティスと古代アケーリアス文明の遺産を倒すという事を。

 そう締め括った、その時だった。
 テレサが彼らの背後に、視線を投じたのは。

 古代達は振り返る。今し方、潜ってきた扉へと。
 
 足音が聞こえる。
 それはゆっくりながらも、近づいて来ていた。靴音が、次第に大きくなってきている。

 通路の奥の闇が形となる、人間。
 やがて、その姿の全貌が現れた。

 長い黒髪。
 黄金に輝く瞳を持ち、猫のような縦長。
 鈍い光沢を放つ漆黒の鎧を身に付け、靡かせる真紅のマントには二丁の大釜を交差させていた。

 美女である。
 しかし、彼女を見るだけで肌寒くなってしまうのは何故だろう。あれは、何者だ…? 喜悦の色を浮かべる彼女は、口元を歪めていた。

 「初めまして、テレサ。それに、〈ヤマト〉の諸君。会えた事、誠に光栄の至りだ」

 ………
 ……
 …

 視線を受けている、ダークネス卿は歓喜していた。遂に、テレサと邂逅出来た。伝説の存在にして高次元生命体、テレサ。

 「……」

 ダークネス卿はテレサより、〈ヤマト〉のメンバーを一瞥する。

 封印岩盤の破壊。

 これは、〈ヤマト〉なくして達成することが出来なかった事だ。一時的にとはいえ艦隊を引き上げたのも、自分達で成し遂げることが非常に困難だったから。
 しかし、〈ヤマト〉は成し遂げた。短い時間ながらも〈ヤマト〉は、《艦内工場》で生産した爆弾で《テレザート》を解放してみせた。

 自分の艦―――ヴェネター級《ダークネス》をヤマト直上に位置してしまったのは、心が痛い。しかしそれは、カッコよく登場する為には仕方なかったのだ。
 〈ヤマト〉には、後で謝罪しておこう。覚えていればだが。
 
 自分が率いていた艦隊は、テレザート星の衛星軌道上に展開してある。第十一番惑星の件のように250万隻の超大規模艦隊が来られれば敗北だが、ゴーランドが引き連れた規模の艦隊であれば負けることはない。
 それは、惑星シュトラバーゼに現れたガミラス解放軍も同様だ。

 そうだ。そのガミラスといえば、今いるではないか。ダークネス卿は、キーマン中尉を一瞥する。〈ヤマト〉のアドバイザーである彼もまた、〈ヤマト〉のクルーと同じくテレサのメッセンジャーを見たのだろう。
 メッセンジャーを受け取った〈ヤマト〉が反乱したのに対し、キーマン中尉の場合は正式な手続きで〈ヤマト〉に派遣された。
 
 その彼がいるとならば正規軍の艦隊も来ることだろうが、そういった情報は一切ない。来たとしてもテレザート星の土を踏ませないつもりではあったが、ガミラスは同盟国。
 
 ダークネス卿は爽やかな笑みを浮かべる中、内心で警戒する。

 そのガミラスはブリリアンスより戦力が下であるが、油断は出来ない。波動砲と同理論の「デスラー砲」なるものを独自で研究、特一等艦限定であれど搭載出来ている。
 それだけじゃなく、ガミラスには優秀な指揮官がいる。「宇宙の番犬」という異名を持つ、ドメル将軍の後継を筆頭とした優秀な指揮官がだ。

 ガミラスには、地球よりも基盤がある。
 デスラー体制が崩壊したとはいえ、その基盤は崩れることはない。もしもガミラスに「時間断層」が付与されたなら、ガミラス版の波動砲艦隊を作り上げることだって不可能ではない。

 地球が裏では警戒しているように、ブリリアンスもまたガミラスを警戒しているのだ。

 一瞥していたダークネス卿がテレサを見つめようとした、その時だった。テレサが彼女の背後を見つめると、言葉を紡ぐ。

 「彼もまた、”縁”で結ばれている一人」

 彼も、とは…。
 ダークネス卿は振り返る。先ほど薄っすらと聞こえた「彼女もその一人…」は、自分の事だろう。此処に集っているのは、”縁”によって結ばれた者達だ。地球、ガミラス関係なく。それと、ブリリアンス。

 ”縁”に呼ばれた者が、まだいるというのか。
 それはいったい、何者なのか。
 
 ダークネス卿だけではない。
 その場に集う誰もが、扉口にその視線を投げていた。

 足音が聞こえる。
 それはゆっくりながらも、近づいて来ている。靴音が、次第に大きくなってきている。

 通路の奥の闇が形となる、人間。
 やがて、その姿の全貌が現れた。

 瞬間、その場にいる誰もが驚愕の色を浮かべた。ただ一人、高次元生命体であるテレサだけは、見た通りです、と静かに口ずさむ。

 現れたのは、一人の男だ。赤い裏地の黒いマントを微風に靡かせ、整った金髪を有する青肌の貴人。ダークネス卿を筆頭としている者達が驚愕しているのは、男がただのガミラス人ではないからだ。
 いや、それは当然だ。しかし、それだけで驚愕している訳ではなかった。彼はあの時、死んだ筈だ。それが何故、五体満足な状態で生きている…。

 目を見開いている一同に、その男は不敵な笑みを浮かべる。

 「―――久しぶりだね、〈ヤマトの諸君〉」

 その男の正体は、アベルト・デスラー総統その人だった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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