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第79話「アベルト・デスラー」
前書き
ネオ・代表O5−1です。第79話となります。
どうぞ、ご覧ください。
通路の奥の闇が形となる、人間。
やがて、その姿の全貌が現れた。
現れたのは、一人の男だ。赤い裏地の黒いマントを微風に靡かせ、整った金髪を有する青肌の貴人。ダークネス卿を筆頭としている者達が驚愕しているのは、男がただのガミラス人ではないからだ。
いや、それは当然だ。しかし、それだけで驚愕している訳ではなかった。彼はあの時、死んだ筈だ。それが何故、五体満足な状態で生きている…。
目を見開いている一同に、その男は不敵な笑みを浮かべる。
「―――久しぶりだね、〈ヤマトの諸君〉」
その男の正体は、アベルト・デスラー総統その人だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アベルト・デスラーという男について、語らねばなるまい。
先ず内乱時代にあったガミラス星そのものを統一したのは、紛れもないデスラー。
ガミラス帝国の前身であるガミラス公国時代に、公国統一を成し得たエーリク・ヴァム・デスラー大公が死亡したことにより内乱に突入。その長く続いたガミラス星の内乱時代を再び制したのが、デスラー一族の家系に生まれたアベルト・デスラーである。
彼は英雄として、ガミラス臣民達からは絶大な支持を寄せられた。彼はガミラスの統一後に、「イスカンダル主義」を掲げ、数多もの国家を支配していった。 そんな中、いや少年時代よりデスラーは、イスカンダルの女王―――スターシャへ恋心を持っていた。が、鈍感な彼女には届くことはなかった。片想いである。
デスラーはその片想いと共に、大マゼランと小マゼランを制覇。すると次は外の銀河系にも目を向けた。天の川銀河だ。彼女に振り向いて貰うために、軍を天の川銀河に投入したのである。
「―――久しぶりだね、〈ヤマト〉の諸君」
そんな彼は今こうして、目の前に立っている。古代達は、驚愕せずにはいられなかった。キーマン中尉でさえ、目を見開いている。
あの時、亜空間ゲート内で待ち伏せし、〈ヤマト〉と交戦の末にデスラーは死んだ筈。最新鋭艦にしてガミラス版波動砲―――デスラー砲、を装備する〈デウスーラII世〉は爆沈した筈なのに…。
アベルト・デスラーは、五体満足な状態で生きている。いったい、どういう…。驚愕していた、その時だった。
デスラーの背後に、異変が起きた。自分達とデスラーが通ってきた通路に、ぼんやりと影が現れた。一つ二つとドンドンと数が増え、此処に向かってきていた。駆ける足音が聞こえることから、兵士かガミロイドのどちらかであろうことが伺えた。
やがて、その全貌が露わとなる。現れたのは、ガミロイドだった。親衛隊塗装のそれはデスラーの周囲へ展開、防御態勢となり、その銃口をダークネス卿とキーマン中尉含む古代達に向けた。
しかし、通路から現れたのはガミロイドだけではなかった。通路に、ぼんやりと影が現れる。一つ2つとドンドンと数が増え、此処に向かってきていた。足音は聞こえなく、兵士とガミロイドではない。
やがて、その全貌が露わとなる。聖域に現れたのは、ガトランティスの自律兵器だった。飛行形態から戦闘形態へ変形し、聖域に侵入する。
その数は、20。ガミロイドより、半分ほど下の数である。
ダークネス卿と古代達は身構えるが、デスラーはそうしなかった。デスラーを守る、ガミロイドも同様だ。その銃口をガトランティスではなく、未だ彼らに向けている。
聖域に侵入してきた自律兵器―――ニードルスレイブは、ガミロイドと同じ行動をした。デスラーを守るよう、展開しているのだ。
その動きとニードルスレイブの色を見て、彼らは気づいた。―――ガミラス人が誇りにする、高貴なる青い肌と同じ色だった事に。
「……」
誰だったろう。息を飲んだのは。
誰だったろう。自分達の気持ちを代弁するかのように、誰かが呟いたのは。
―――ガトランティスと手を組んだのか。
あの時からそうだったのかもしれない。ガトランティスのミサイル戦艦にしか搭載されていない巨大ミサイルがワープし、〈ヤマト〉に攻撃を仕掛けたのも。古代アケーリアス文明の遺産の一つであろう円筒形構造物が存在する異空間で、余剰次元の爆縮―――デスラー砲を検知したのも。
全てが、そうだったのか。全てが、アベルト・デスラーによるものだったのか。ダークネス卿を除く面々は、そう思った時だった。
鉄仮面のキーマン中尉が、口を開いたのは。
「デスラー総統に伺いたい。貴方は、何の為に此処まで来られたのか?」
不敵な笑みから真顔へ一変させた、デスラー総統は射抜くような視線を向ける。
「貴様、誰か?」
それをものともしないキーマン中尉は、”偽りのない名”を告げた。
「我が名は―――ランハルト・デスラー」
ランハルト・デスラー。それが、キーマン中尉の本当の名前。何度目かわからない驚愕を、古代達は浮かべた。
しかし、名前を告げただけではない。そう、それで終わりではなかったのだ。言葉が紡がれる。そして、それを聞いた彼らは、絶句することになる。何故ならばそれは地球やブリリアンスは勿論、ガミラスですら限られた者しか知らない―――真実なのだから。
「デスラー総統に伺いたい。―――ガミラス星が滅ぶというのは、事実なのですか?」
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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