| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

少年期悟飯の悩み

 
前書き
悟天が誕生する前ですね。 

 
悟林がセルゲームの激闘で死んでからしばらくして、悟空は畑仕事をしながら合間に修行を続けていた。

仕事と修行帰りの途中でチチが好んで食べる木の実を採取していく。

これなら最近辛そうなチチも食べられるだろう。

「チチぃ、帰ったぞ~」

「悟飯ちゃん、また超サイヤ人になって。おっ母は好きじゃねえ!」

悟空が土産を持って帰るとチチに叱られている何故か超サイヤ人に変身している悟飯の姿があった。

「どうしたんだチチ?それに悟飯も何で超サイヤ人に?これ、土産だ。おめえ最近辛そうだからよ。これなら食えるだろ?」

土産の木の実を渡すとチチは嬉しそうに受け取る。

「すまねえな悟空さ…悟飯ちゃん、悟空さだって超サイヤ人になってねえんだから今すぐそれ止めて欲しいだよ。腹の赤ちゃんにも悪影響だべ」

「…う、うん…でも…お姉ちゃんが死んで、未来の僕が帰ってから…色々考えることがあってね…」

セルゲームでのセルとの闘いで悟林は最大最強の一撃を放って死んだが、それでも悟林はあの時最強格の1人であった。

未来悟飯が歩んだ歴史は恐らく悟飯とは無関係になるだろうが、修行を怠けていた結果が未来世界の惨劇に繋がったのだからここで修行をしなくなって良いのか分からないのだ。

「そうか…おめえもこれからのことを考えてんだな…」

「うん…もし、僕がもっともっと強かったら…お姉ちゃんは死ななかったのかなって…」

あの時、セルとの闘いで変身した超サイヤ人2にもっと簡単になれさえすれば悟林は死なずに済んだのかもしれない。

そんな悟飯の様子に悟空は口を開いた。

「…なあ、悟飯。飯食ったら聞きてえことがあるんだけどよ。良いか?」

「え?うん…」

「チチ、辛えなら無理しなくて良いからな?オラ達は魚捕ってくっから」

「何言ってるだ。悟林ちゃんと悟飯ちゃんの頃よりずーっと楽だべ。」

チチは悟空の気遣いに笑みを返して食事の準備をし、悟空と悟飯はサイヤ人故の食欲で瞬く間にテーブルに並んでいた料理を平らげた。

「ぷはー、食った食った…さて、悟飯。おめえに聞きてえことがある」

「は、はい…」

「オラはな、おめえと未来の悟飯が精神と時の部屋での修行から帰ってきてからおめえ達の眠っていた力が解放され始めていたことに気付いてた。もし悟林以外にセルを倒せるとしたらおめえ達だって思うくれえにはな」

実際に潜在能力を発現した悟飯は同じ超サイヤ人2でありながら同条件の悟林とセルを上回る底力を発揮した。

もし、悟飯が戦士ならば悟空は迷うことなく悟飯を選んだかもしれない。

「悟飯、父さんに隠さねえで教えてくれ。もし、オラが悟林じゃなくておめえをセルとの闘いの切り札にしていたら…もし、悟林じゃなくておめえを選んだら…おめえはセルと闘ってセルを殺せるか?」

その問いに悟飯は目を見開き、チチが何か言おうとしたのを手で制すると悟空は悟飯の答えを待った。

「ぼ、僕は…出来るなら闘いたくない…どんな酷い奴だって殺したくない…た、例えセルみたいな奴でも…」

「そっか」

悟飯は本来なら闘う事は好まない平和主義者であり、 今まで闘ってきたのは必要に駆られたからに過ぎない。

サイヤ人との戦いから始まり、フリーザ軍やフリーザ、人造人間達やセルに至るまで圧倒的格上に勝つ為には、幼いながらも潜在能力がずば抜けた悟飯も闘わなければならなかった。

叶うならば幼少期からの夢である学者になる為に勉学に励んだり、自然の中で遊ぶ日々に戻りたいと思っている。

そう、サイヤ人が来る前の、姉が存命で家族4人で楽しく過ごしていた時のような。

「…ごめんなさい。僕、お姉ちゃんみたいにならなきゃいけないのに…甘ったれたこと言って…」

悟林は地球戦力以外にも悟空が不在の時は代わりに家を守ってくれていた。

何でも自分がナメック星に行っている最中に怪しげな鶴の帽子を被った老人と機械の体をした男の2人組が金を巻き上げようとしていたらしいが、悟林がその2人組をぶっ飛ばしたらしい。

パオズ山に生息している動物を狙う密猟者もぶっ飛ばしていたらしく、悟林は悟飯が知らない所で自分達が暮らす場所を守っていてくれたのに弟の自分は甘ったれたことを言っている。

「別に怒ってねえって、おめえが闘いが嫌いだって言ってくれて良かったぞ。おめえは悟林みてえに闘いを好きになる土台もねえしな」

改めて見れば悟飯の身長はまだ悟空の肩にも届いていない。

避けられない闘いばかりだったとはいえ、年齢もようやく精神と時の部屋での修行による経過も含めてようやく2桁になったところだ。

同じ年代の頃の悟空は祖父以外の人間に会ったことすらなかったと言うのに闘いが嫌いであるにも関わらず、ここまで頑張ってくれた息子にどうして文句など言えよう。

「なあ、悟飯。オラはおめえが嫌なことは無理強いはしねえ。だからおめえはおめえのやりてえようにやれ、学者さんになりてえならなりゃあいいし、鍛えてえなら納得するまでやりゃあいいさ。でもどうしても悩んじまうならピッコロのとこに行ってみろ。おめえと悟林の師匠なんだからよ」

悟空にとって亀仙人が最高の師匠であるように、悟林と悟飯にとってピッコロがそれなのだ。

ピッコロならきっと悟飯の悩みの助けになってくれるはずだ。

「…はい、明日ピッコロさんに相談してみます。ありがとうお父さん」

「おう」

悟飯はそう言うと自室に戻っていき、悟空は残りの茶を啜り、チチはあの世にいる娘に想いを馳せた。

「(悟林ちゃん、あの世に残ったのはきっとおめえなり考えたことなのかもしれねえ…でも、悟飯ちゃんにはまだ早えだよ)」

翌日、悟飯は神の神殿に向かうとピッコロがいた。

「ピッコロさん!」

「悟飯か、お前はまだ超サイヤ人でいるのか」

「は、はい…お姉ちゃんが死んだ時…僕がもっと強かったらお姉ちゃんは死ななくて済んだのかなって…だから一応修行のために超サイヤ人のままでいるんですけど…」

「悟飯、あれはどうしようもなかった。誰もセルの行動など読めはせん…だが安心したぞ」

「え?」

「あれだけ徹底的にセルの死体を破壊したからまずないとは思うが、万が一セルが復活したり、セル以上の強敵が現れた場合、闘えるのはお前だけだ。もし腑抜けているようなら渇を入れてやろうと思ったがな…」

「あはは…でも、修行しようにもどうすれば良いのか全然分からないです…あの超サイヤ人を超えた姿には全然なれないし…」

超サイヤ人2を極めようにも自分よりもセンスが上の悟空やベジータがなれず、唯一使いこなしていた悟林はあの世の住人だ。

正直悟飯にはどうすれば良いのか分からない。

「そうだな…超サイヤ人を更に徹底的に慣らす位しか俺には思い浮かばん。悟飯、お前は未来の悟飯との修行で限界まで力を高めている。悟空も悟林も精神と時の部屋をもう1年使わなかったのも例え1年籠ったくらいでは劇的な成長は望めんと思ったからだろう。お前はまず肉体より精神面を鍛えるべきだ」

「精神面?」

「ああ、孫もそうだが、悟林も闘いの時は冷静だった。フリーザとの闘いが分かりやすいだろう。あいつはフリーザに生半可な技が通用せんと理解した瞬間、気円斬や魔貫光殺砲と言った殺傷力の高い技を使った。お前はあいつと同じように状況に応じて闘えるか?」

「それは…」

正直悟飯の闘い方は上手いとは言えない。

格上と闘っても何も出来ずにやられることがある。

「悟飯、お前もセルとの闘いで自分に秘められた力を強く感じただろう。お前は感情が酷く昂った時にそれを解放する。だが、怒りによる力は大きな危険性を孕む。後先考えずに攻撃して危機に陥ることもあったはずだ」

特に幼年期時代が多く、ぶちギレた悟飯が怒りのままに攻撃してピンチになることがあった。

「そう、ですね…正直あの時は物凄い怒りがあったはずなのにお姉ちゃんが助けてくれたこともあったんだろうけど、不思議と冷静だった気がします。どうすればいいんでしょう?」

姉やトランクスを殺したセルへの怒りが強すぎて逆に冷静になってしまったのだろうが、もしセルとの闘いのような状態になれと言われたら無理だろう。

「ふむ、これは劇薬になるかもしれんがベジータと修行してみたらどうだ?」

「え?ベジータさんと?」

「そうだ。サイヤ人の力を知るにはサイヤ人と闘うのが一番手っ取り早いだろう…ベジータほど甘えに厳しい男もいない。自分にも他人にもな…そしてあいつは否定するかもしれないが、あいつも俺達とは違う視点で悟林を見てきた男だ」

ベジータはサイヤ人の視点で悟林を見てきた男だ。

ならば悟飯がどうやってサイヤ人の力と向き合うべきなのか何かヒントが得られるのではないかと思ったのだ。

「分かりました。ベジータさんと手合わせしてみます」

早速西の都に訪れ、ベジータのいる重力室に向かうとベジータはいた。

「何の用だ」

振り返ることもせずベジータは悟飯にここに来た理由を尋ねる。

「す、すみません。突然、あの…僕と手合わせしてくれませんか?お姉ちゃんが死んじゃったから、僕がお姉ちゃんの代わりに…そのためにどうすればいいか…」

「笑わせるな、貴様が悟林の代わりだと?未来でも変わらん根っからの甘ったれの貴様に悟林の代わりなど務まるか!来い!!貴様をぶちのめしてやる!!」

ベジータからして見れば未来でも根っこの甘さが変わらなかった未来悟飯を見ていることもあり、悟飯の無意識の自惚れを感じてぶちのめすことにした。

ベジータは即座に超サイヤ人に変身し、少しでも実力差を縮めるために筋肉を肥大化させるパワー寄りの変身をする。

「はあああっ!!」

悟飯も気を高めて構える。

超サイヤ人2に安定してなれはしないが、それでもパワー寄りの変身をしているベジータよりも上の気だ。

しかし、そこまで絶望的な力の差ではない。

ベジータの拳を受け止め、悟飯は蹴りを放つが肥大化した筋肉によって防御力が上がっているベジータはそれを両腕を交差させて受け止める。

「どうした!あいつのパワーはそんなもんじゃなかったぞ!本気を出せ!俺をぶっ倒すつもりでな!!」

悟林の攻撃には容赦がない。

どのような敵でも確実にぶっ倒すと言う気迫があった。

それはどんな敵でも変わらない。

しかし、悟飯の攻撃はどうだ?

確かに重いが、悟飯の拳には自分を倒すと言う気迫がない。

対する悟飯もベジータの熾烈な攻めを捌くので精一杯だ。

実力は悟飯の方が上を行っているはずなのに攻めあぐねている。

「くっ!うああああっ!!」

「ぐうっ!!だっ!!」

悟飯の拳がベジータの腹にめり込むが、何とか耐え抜いてがら空きの悟飯の腹に強烈な蹴りを叩き込む。

「ごふっ!?」

全力の一撃を叩き込んで勝利を確信して気が抜けた所に強烈な一撃を貰った悟飯は勢い良く吹き飛ぶ。

しかし、悟飯の起き上がって向かってくるその根性にベジータは悟林の面影を見る。

「(あいつの弟だけあって根性はありやがる…だがっ!)」

悟飯の闘い方は悟空とピッコロの型の融合した物。

同じ闘い方をする悟林と何度か手合わせしたベジータは悟林の闘い方を通じて悟飯の動きを読んでいた。

埒が明かないと思った悟飯は全力の一撃を叩き込もうと拳に気を集中させるが、ベジータに対しての攻撃への迷いと甘さが技を鈍らせ、ベジータは悟飯の拳をかわしつつカウンターで悟飯の顎を殴り飛ばす。

起き上がろうとする悟飯にベジータは溜め息を吐いて変身を解いた。

「ここまでだ」

「え?あ…はい…」

互いに拳を下ろしたことで手合わせは終わり、ベジータは悟飯を睨む。

「セルと闘った時のパワーはそんなもんじゃなかったはずだ。手を抜きやがって…」

「いえ、そんなことは…」

超サイヤ人2に安定して変身できないので、これが実質的に悟飯が理性的に引き出せる全力であるが、無意識の甘さがせっかくのパワーを鈍らせている。

「良いか!貴様も誇り高き戦闘民族サイヤ人の端くれなら、闘う以上はどんな奴が敵であろうとぶっ倒すことだけを考えて闘え!そんなことすら出来ん甘ったれの貴様に悟林の代わりが務まるか!自惚れやがって、くそったれが!!」

それだけ言うとベジータは重力室を後にし、残された悟飯は自分を見つめ直す。

「…うん、ベジータさんの言う通りだ。お姉ちゃんの代わりなんて自惚れてた。もっと自分を見つめ直さないと…お母さんは嫌がるかもしれないけど、もうしばらく超サイヤ人での修行を続けよう。お父さんと相談して超サイヤ人2になれるようにならないと」

怒りに身を任せるだけでは取り返しのつかないことが起きるかもしれない。

悟飯は自分に出来ること、やるべきことは何なのか自分を見つめ直していくのであった。

そして数年後、少年時代に自分を見つめ直し、弟も生まれたことで立派な青年となっていった。

「私は正義の味方!グレートサイヤマンだ!!」

「か、格好悪い…」

センスは悲惨な過去のせいでおかしくなってしまったが。 
 

 
後書き
本当にグレートサイヤマンは何だったのか 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧