ドリトル先生と奇麗な薔薇達
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第七幕その五
「何があってもね」
「言わないことだね」
「絶対に」
「何があっても」
「そうだよ、言うとね」
そうすればといいますと。
「出した言葉は消せないからね」
「そうそう、一旦出したらね」
「もう消せないよ」
「絶対にね」
「そうだからね、ご本人に言うのも駄目だけれど」
それと共にというのです。
「陰口でもね」
「言わないことだね」
「陰口もその人の耳に入るからね」
「言葉って流れるからね」
「風に乗ってね」
「そうなるからね」
だからだというのです。
「本当にね」
「失恋は言わない」
「そして怨まれない」
「そうしないと駄目ね」
「絶対に」
「そうだよ、そしてあらためて言うけれど」
こう前置きして言う先生でした。
「恋愛は怖いよ」
「失恋は痛いから」
「それもとんでもなく」
「だからだね」
「そのことはよく認識することだね」
「そうだよ、恋の様に甘いというけれど」
それでもというのです。
「このうえなく辛い絶望もあるからね」
「そうしたことも覚えておいて」
「そうしてだね」
「恋愛について考えないと駄目だね」
「そうだよ、しかし僕はもてなくて」
先生は考えるお顔になってこうも言いました。
「恋愛の経験がないけれど」
「失恋の経験もない」
「だからだね」
「そのこともいいんだね」
「うん、本当にね」
実際にというのです。
「失恋なんて絶対に嫌だよ」
「とんでもなく痛くて辛い」
「そうしたものだからだね」
「経験しなくてよかった」
「そうなんだね」
「その痛さ辛さは本人じゃないとわからないだろうけれど」
実際に経験してです。
「けれどね」
「それでもだよね」
「見てもわかるよね」
「ある程度にしても」
「それでもね」
「うん、わかるからね」
見て聞いて読んでいてというのです。
「経験しなくてよかったって」
「思ってるね」
「先生としては」
「そうよね」
「そうだよ、経験は最高の学問の一つでも」
そうであってもというのです。
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