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現実世界は理不尽に満ちている!

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第70話「え、3号が死んだ?何故??」「よしよし、いい子だ」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第70話となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――漆黒艦隊旗艦〈ダークネス〉。

 ブリリアンス・ギルドに属する漆黒艦隊は、伝説の惑星《テレザート》が存在する星系の外縁部へとワープアウトした。
 漆黒艦隊が、《テレザート》が座する星系へ到着した瞬間だ。
 
 外縁部にてワープアウトした理由として、だ。
 《テレザート》沖で展開している敵艦隊―――ガトランティスに探知されない為ではあるが、一番は情報収集を行う為だった。

 「報告しろ」

 そうして、情報収集が完了した。

 旗艦〈ダークネス〉艦橋と隣接している作戦会議室には4号―――ダークネス卿とスーパー戦術ドロイドがおり、テレザート進攻作戦の最終ブリーフィングが始まった。
 会議は【ブローブ・ドロイド】とステルス偵察フリゲートから、送信された情報を整理することから始まった。

 「《テレザート》ノ現状ガ、コチラデス」

 ホロテーブルに、惑星《テレザート》の姿が写し出された。
 しかし、だ。青く美しい水の星である筈の《テレザート》は、継ぎ接ぎの不格好な岩塊で星全体を囲んでいた。なんというビフォーアフター、業者にクレームを入れなくては。

 「《テレザート》ハ敵ガトランティスにヨッテ、他天体カラ運搬サレタ岩盤デ物理的に封印サレテイマス」

 説明を聞きながら、ホログラム画像の一点を見つめるダークネス卿。
 
 「シカシ、完全に封印サレテイル訳デハアリマセン」
 
 その通りだった。

 テレザート星に対する岩盤による包囲は完全ではなく、一角が丸く開き、手前にはここに嵌められるであろう岩盤が運搬作業中であった。

 例えると、だ。

 ジグソーパズルの完成まで残り少しという時に、該当するピースが無いから持って来て嵌めよう!―――である。

 したがって、だ。

 岩盤バージョンのジグソーパズルが完全完成していない為、その隙間からテレザート星の青い表面が垣間見えているのだ。綺麗。

 「この最後のピースが嵌められれば、《テレザート》の封印が完了するということか。…完成までの残り時間は?」

 「私ノ計算デハ、残リ5時間」

 スーパー戦術ドロイドは明確なタイムリミットを示すと、ダークネス卿が問うた。

 「間違いないだろうな?間違っていた場合、貴様を破壊するぞ」

 常に笑みを浮かべているダークネス卿から、鋭い眼光がスーパー戦術ドロイドを射抜いた。それに対し、微動だにしないスーパー戦術ドロイドは返答する。

 「私ノ計算に、間違イカナドアリエマセン」

 その言葉に満面の笑みで頷くダークネス卿。
 確かに、間違いなどあり得ない。コイツは、Tーシリーズ戦術ドロイドの上位互換なのだから。

 それにしても、だ。
 質問を質問で返さないコイツ、好感を持てる。流石だ。私が欲しい言葉を的確に言ってくれる。
 もしもB1バトルドロイドであれば、破壊していることだろう。

 「敵艦隊の配置は?」

 スーパー戦術ドロイドが頷くと共に、ガトランティス艦隊の配置がホロテーブルに展開された。

 岩盤によって封印されているテレザート星は簡略化された画像へ変わり、岩盤も同様に凹凸となった簡略化されたものとなった。
 最後の巨大岩盤が嵌められる箇所は《テレザート》を覗く穴となり、巨大岩盤はその手前にあった。

 「運搬作業中ノ最後ノ巨大岩盤ハ、テレザートノ公転軌道面に存在シマス。敵ノ守備艦隊ノ所在ハ、偵察フリゲートト【ブローブ・ドロイド】にヨッテ確認シマシタ」

 説明を進めるスーパー戦術ドロイドは、ホロテーブルに設えた装置を使用し画像を動かした。

 瞬間、ガトランティス艦隊を示すアイコンが浮かび上がる。最初に表示されたのは、運搬されている巨大岩盤の"外側"に位置するガトランティス艦隊だ。

 岩盤前面に展開しているガトランティス艦隊は、まるで門番さながらだった。

 「公転軌道面に沿ッテ展開中ノ敵艦隊ハ、全てミサイル戦艦デ構成サレテイマス。艦種ハ―――ゴストーク級ミサイル戦艦80隻」

 その言葉に続いて岩盤の"内側"―――内部空間に新たなガトランティス艦隊を表すアイコンが示された。

 「岩盤の後方―――開口部二ハ、テレザート星ヲ直接封鎖スル直掩艦隊ガ布陣シテイルモノト想定サレマス」

 アイコンと共に、"後衛"の敵艦隊の陣容が表示される。"後衛"を率いるメダルーサ級殲滅型戦艦1隻、ナスカ級空母13隻、ラスコー級巡洋艦30隻、ククルカン級駆逐艦60隻で構成されていた。

 それだけではありません、とスーパー戦術ドロイドは続ける。

 「岩盤ノ内壁ヤテレザート地表二モ、敵ノ陸上戦力ガ展開サレテイルモノト想定サレマス」

 既に配置された封印岩盤の内側―――テレザートに面する側や、惑星テレザート地表にもガトランティス艦隊の所在を示すアイコンが出現する。

 敵地上部隊の予想兵力は全く不明で、未確認の兵器を有している可能性もある。

 だが、それがどうした?
 敵は全て、殲滅する。この方針に、変更は無い。
 
 そもそも、だ。
 戦力は、漆黒艦隊のほうが上。あのガミラスですら標準装備し始めているゲシュタム・ウォール―――シールドを、ガトランティスは装甲に頼りきりで装備してない。

 「…フフッ、これは勝ったな」
 
 もう勝った気でいるダークネス卿に、スーパー戦術ドロイドが告げる。

 「二時間後、艦隊ハ《テレザート解放作戦》ヲ開始シマス」

 そうかそうか、と愉しげな笑みを送るダークネス卿。
 高笑いまでしだした彼女へ、それと、とスーパー戦術ドロイドは言葉を紡いだ。

 「宰相―――スラクル・ブリリアンス様ヨリ、通信ガ入ッテオリマス」

 瞬間、彼女は高笑いを止め、視線をスーパー戦術ドロイドへ投げた。

 「スラクルから?」

 いったい何用だろうかと考えるダークネス卿へ、スーパー戦術ドロイド―――カラー二将軍は気遣う。

 「デハ、私ハ艦橋二戻リマス」

 あぁ、と頷くダークネス卿。1人にしてくれ、が込められた頷き。
 それを瞬時に理解したカラー二将軍は踵を返し、この部屋と隣接している艦橋へと向かった。
 
 カラーニ将軍が入ったとほぼ同時、両開きのブラストドアがこの部屋と艦橋を区切った。

 「……」

 ダークネス卿がホロテーブルへ向き直ったと同時に、スラクルがホログラム姿となって現れる。

 「何用だ、スラクル」

 仁王立ちし笑みを浮かべるダークネス卿へ、常に微笑みを浮かべているスラクルが告げる。

 『残念なお知らせです』

 どこか沈んだ、悲しげに満ちた声音。一筋の涙まで流していた。
 何だ、どうしたんだ。いったい何があったんだ。珍しく人を心配しているダークネス卿。

 そんな彼女に、スラクルはポツポツと通信を入れた理由を述べた。

 「ラウラ―――3号が、お亡くなりになりました」

 「…は?」
 
 ダークネス卿は絶句せざる得なかった。
 え、アイツが?3号が死んだ?何故??

 『《シュトラバーゼ》で、ガトランティス兵によって射殺されたのです』

 スラクルは語る。
 〈ヤマト〉から定期便に乗り込む筈だった3号は、《蘇生体》と呼ばれるガトランティスの手の者によって拉致。地球の将兵が救助に駆けつけた時には、見るに耐えない姿となっていたという。
 3号は、既にこの世を去っている。
 
 『発見場所は、遺跡でした。何故ガトランティスがその場所へ拉致したのかは、今も判明しておりません。そして残念ながら、遺体は既にこの世には存在しません。《シュトラバーゼ》が突如として崩壊した為です。原因は不明』

 崩壊の原因はなんであれ、と彼女は言い放つ。

 『ガトランティスは、3号を…殺した!』

 拳を握りしめ、怒りに震えるスラクル。

 「……」

 それを、ダークネス卿はただ見つめていた。無表情となって。
 3号、か。アイツとの付き合いは短かった。”分身体”では唯一仕事を持たず、いつも自由人。ブラブラと旅行する、それがアイツの―――3号の行動原理だった。

 そんな奴が、死んだのか。

 しかし、私は思うのだ。それがどうした、と。
 いや正直、そこまで想い入れが深い訳ではない。そもそも3号が悪い。確定的に遺跡へ行きたかっただろうが、拉致された挙句の果て殺されてしまったのは、まぁなんだ、…願いが叶ってよかったなと褒めるべきか。

 つまりは、だ。
 自業自得、というやつだ。全く、溜息を吐きたいところだ。

 『予定通り、《テレザート開放作戦》の件よろしく頼みます。そしてガトランティス将兵は、1人も残らず殲滅してください。あの世にいる、3号の為に』

 「あぁ、やってやる。3号の為に」

 力強く頷いたダークネス卿。
 まぁ3号の為でなく、私が愉しむ為に殲滅するのだがな。悲鳴を聞くのが楽しみでしょうがない。

 『ブリリアンス・ギルド、万歳!』

 そんな彼女に満足したスラクルは敬礼すると、通信が終了した。

 「さて、予定通り殲滅するとするか」

 そういえば、とダークネス卿は今更ながらに思う。
 何故オリジナル1号ではなく、スラクルが通信したのかと。
 オリジナル1号。まさか悲しみに暮れて、酒を飲みまくっている訳ではあるまい。…いや、普通にあり得る。オリジナル1号だし。

 そう納得したダークネス卿はブラスト・ドアを開け、艦橋へと入っていった。




 ―――ブリリアンス駐地球大使館・執務室。

 「よしよし、いいぞ、いいぞ…!」

 一方その頃、サングラスを掛けた黒髪の美女―――リンガルこと2号は、絶賛トランプ・タワーを建築していた。無論、仕事が全て終わったからやっている。

 「上着をッ、ぬ、脱いでてよかった…!」
 
 執務机で行っている2号は、背広―――スーツの上着を脱いでいる。更にネクタイを緩めていることから、暑さ対策をしてトランプ・タワーを建築しているのだ。
 なお、エアコンは正常に稼働中。涼しい。

 建築状況だが、現在は五段目。つまり、頂点を建築中である。最後の二枚となるトランプをそれぞれの手で持ち、最後の仕上げに取りかかろうとしているのだ。

 「これで失敗したら、記念すべき10回目を更新してしまう。な、なんとしてでも完成を…!」

 うっかり力加減をミスったり。
 くしゃみをした結果、風圧で崩れてしまったり。

 しかし、それは過去の事。四段目まで出来上がり、現在は記念すべきラストを飾ろうとしている。今日この時、遂に完成が訪れるのだ。
 2号は歓喜の震えを殺し、慎重に慎重を重ね、最後の二枚がトランプ・タワーの最上階に乗った。

 「…よしよし、いい子だ」

 階下が倒れる気配は無い。素晴らしい。
 後は、この手を離せば出来上がり。睡眠時間を過ぎること5時間、既に夜中だ。眠すぎだが、エナドリ5本を飲んだおかげ様で、おかしいくらい頭はスッキリしている。目の隈はスッキリしていないが。

 「…フフ」

 口が吊り上がる。笑うな。息をするな、するとしても鼻でしろ。寸分たりとも、油断は禁物。
 唾を飲み込み、両手の指で四角い額縁を作りその瞬間を絵画にする。

 二枚のカードを突き合わせ三角を作りながら、そっと置く。
 2号は、唾を飲み込んだ。鼓動が高鳴り、頬から伝って落ちた一筋の汗が執務机へ落下する。

 「て、手を離す…」

 さぁさぁ、手を離そう。そして私は、ベッドへダイブして寝るんだ。午前3:00だし。

 「ど、どうだ…?」

 念のため一步下がり、よく視る2号。
 カードで出来た塔は崩れない。つまりは―――完成。

 「う、うおおおおおおおよっしゃああああ!!」

 雄叫びを挙げる2号。
 今この時をもって、全員の脳内ではユニコーンな曲のサビ部分の壮大な音楽が流れ始めた。祝福である。
 
 「これで、寝れる!」

 歓喜していたその時だった。ギルド長スヴェートより、通信がやって来た。

 「こんな時になんだ?」

 溜息を吐きつつ通信を受け入れると、ホログラム姿となったギルド長が泣いていた。

 『ァァアアアー!!』

 そう、泣いていたのである。

 「……」

 2号は絶句した。
 いったい、どうしたというのか。というか、もう寝かして欲しい。内容次第では怒ってやる。
 
 泣きが収まったのか、落ち着いた様子を見せるギルド長は告げる。

 『3号が死亡しました。…あ、涙が』

 「そうか、死んだか………はぁ!?!?」

 2号は、思わず驚愕した。
 え、死んだの。嘘でしょう??
 どうしてどうして、執務机へ「ドン!」と両手を置いた彼女は問おうとした時だった。

 『……』

 無言だった。ギルド長は、無言だった。
 あぁ〜あ、といった顔で執務机を見ていた。

 「どうした?」

 ギルド長が、”それ”へ視線を投げた。
 何故その顔をするのか、2号は不思議でしょうがなかった。”それ”へ視線を投げていた方向を視ると―――空気が一瞬で凍りついた。

 「……」

 その視線の先には、無慈悲に机の上に積み重なった”それ”―――トランプの山。

 『……』

 「……」

 静寂が支配する。
 やがて、それは破られる。そして…、

 「ふざけやがって!どうしてくれんだァァァアアア!!」

 『私は無実なのに!?お前自身がしたことなのに!?』

 2号は憤怒した。
 その後、「3号、この世からサヨナラ!」が語られたのだった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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