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第69話「惑星の崩壊と運命を共にしてください」

 
前書き
代表05−1です。第70話となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 この日、白銀のエターナルストーム級が”門”の前にて静止していた。その理由は、これから行われる―――テストの為である。
 白銀のエタナール級はブリリアンス艦では最大級の大きさを誇る戦艦であり、ブリリアンスの頂点に君臨する女ギルド長―――スヴェート・ブリリアンスの座乗艦でもあった。

 その艦の名は、〈スヴェートⅠ世〉である。

 〈スヴェートⅠ世〉の周囲には、漆黒の楔型戦闘艦20隻。その正体は改アクラメータ級戦闘航宙艦で、中央に位置する〈スヴェートⅠ世〉の護衛する任に就いている。

 そう。
 中央の戦艦には、護衛すべき人物が乗っているのだ。

 「システム衛星トリンク開始、間モナク《天の川銀河》方面ノ亜空間ゲートガ開キマス」

 「…フッ」

 〈スヴェートⅠ世〉艦橋の司令部中央では、ブリリアンスの頂点に君臨するおb―――うら若き美女がキャプテン・シートに身を預け、ガラス製のグラスに注いだ美酒を口に含む。

 「亜空間ゲート、か」

 それを優雅に持ちながら、おb―――うら若き美女スヴェートは亜空間ゲートについて追憶した。

 亜空間ゲート。

 超空間ネットワークを応用した亜空間回廊(ワームホール)への出入り口となる施設。これを使用すると、通常のワープよりも遥かに長距離を跳躍できる。
 ゲートを使用するためには、跳躍する物体にゲートコントロールシステムを搭載し、システム衛星とリンクする必要がある。

 ゲート間を繋ぐ亜空間回廊の中は、レーダー類が一切機能しないため、コントロールシステムの誘導に従って航行することになる。また、回廊内では通常のビーム兵器は霧散してしまい効果を得られないが、実体弾による攻撃は有効である。

 ガミラスから「ゲシュタムの門」と呼称されるゲートは、宇宙中に点在しているのだ。

 「その亜空間ゲートは今、目の前に存在する」

 ―――まぁ、目の前の亜空間ゲートは違うがな。
 そう呟いたスヴェートは、一口ほど美酒を口に含んだ。

 そう、目の前の亜空間ゲート。
 実はブリリアンスによって設計されたブリリアンス製の亜空間ゲートで、先日建造が完了したばかりの代物なのだ。
 スヴェートが此処にいるのは、「ちゃんと機能するか」のテストをする為である。

 ふと、彼女は思う。
 そういえばブリリアンス製の亜空間ゲート、アケーリアスの亜空間ゲートと似ているなと。

 見た目だけではないのだ。
 思えば、内部もそうだった。「初、アケーリアスの亜空間ゲートを探検!」の時、ブリリアンス製の亜空間ゲートと似ていた。

 何か関連があるのかと、今でも思う。

 まぁ、別に害がある訳ではない。気にすることはないだろう。
 当時はそう決めていたのだが…。

 「……破壊しちゃったんだよなぁ」

 チラッと視線を”それ”に見やる。
 ”それ”はブリリアンスの亜空間ゲートの隣にあって、”それ”は―――ブリリアンスによって破壊されたアケーリアスの亜空間ゲートであった。

 そう。
 凄い最近に自分が破壊命令をうっかり出した結果、命令通り破壊されてしまった―――アケーリアス製亜空間ゲートの成れの果てなのだ。

 「そうですね、貴女は破壊しましたもんね」

 自分と同じく乗艦している我が娘―――スラクルが、微笑みを向けて来ている。
 声音は全く違うが。

 「……」
 
 ……いや正直、悪気は無かったというか。
 ……ただその、あれだな、うん、純粋に子供心だったというか。
 ……アケーリアスが造り出した亜空間ゲート、破壊出来るかなぁと口走っただけというか。

 「安心してください。私は何も気にしてません。……ふざけるなよこのアホが馬鹿ですよねそうですよね無能ギルド長あげく娘を放置育成し気分で育てる駄目母親」

 ………はい。
 我が娘スラクルに、こってり叱られました。
 
 ………あれ、おかしいな。
 急に涙が、溢れ出てるなぁ。止まらないなぁ……ドウシテダ。
 
 「宰相閣下、ゲート開門シマス」

 「ふぅ、…ん?…結構、突入を開始してください」

 「ワタシハギルド長ナノ二」

 「あ?」

 辛い。ガラスの心が砕かれた。
 自暴自棄となったスヴェートが美酒を飲む中、艦隊はゲートに突入した。

 ………
 ……
 …

 こうして、テストは見事成功を収めた。

 ゲート内はアケーリアス製亜空間ゲートと同じく、雷や竜巻、そして吹き荒れる風が常に発生。

 ブリリアンス製亜空間ゲートを抜けた瞬間、視界いっぱいに映る光に目が眩む。
 その視界に映るのは、宙一杯に溢れんばかりの星の輝きであった。

 背後にはブリリアンス製亜空間ゲート。
 そして、正面には天の川銀河が存在する。

 艦橋の面々からは声が上がり、各々が決して小さくない喜びを上げる。

 「申し訳ありません。言い過ぎました。お許しください」

 「本当二、ヒッグ!!嫌ッテナイノカー!!ヒッグ!!」

 「はい。………鼻血でそう」

 そんな中、母娘は仲直りをしていた。抱擁を熱くしていたその時だった。

 『ラウラだ3号だ!助けてくれ!私は今、訳あって《シュトラバーゼ》にいるんだがな、今まさに〈ヤマト〉から波動砲が放たれようとしている!とにかく助けてくれ!?』

 投影スクリーンに映る3号が、助けを求めてきたのだ。
 ギルド長の娘であるスラクルは舌打ちすると、通信を切るよう指令した。

 『おいこら、オリジナル1号と熱く抱擁しているスラクル!”分身体”とはいえ私だぞ、スヴェートだぞ!見捨てるとは何事か?!』

 「ヒッグ!!ドウシタンダー!!ヒッグ!!」

 迷惑電話のようです、と母を慰める娘スラクル。そんな彼女は微笑みから一変し、無表情で投影スクリーンに映る3号へ言い放つ、

 「―――惑星の崩壊と運命を共にしてください、3号」

 母には優しく聖女のような声音であったが、3号には冷たくゾッとする声音だった。

 『…え何、急に態度が冷たいんだが。私が知るスラクルはどこに??』

 目をパチパチさせ、困惑する3号。
 それが、最期の通信となった。

 『は、波動砲ッ!?!?……』

 スラクルは強い目線でバトルドロイドに、既にノイズで支配されている通信を切らせた。

 「個体名:3号、マタノ名ヲ―――ラウラ。生命反応、途絶」

 「ヒッグ!!何カッ、アッタノカ?ヒッグ!!」

 一瞬にして無表情を消したスラクルは、聖女のような穏やかで優しい色を向けた。

 「貴女が気にするまでもありませんよ。ただ、迷惑電話を処理しただけですから」

 スラクルは母の涙をハンカチで拭くと、再び抱擁を交わした。

 「さぁ、帰りましょう。―――我が家に」

 〈スヴェートⅠ世〉と護衛艦隊が帰路につく最中、母スヴェートの背中をよしよしと撫でる娘スラクルの口元は、半月を描くかのように弧に歪み―――喜悦に満ちていた。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 ―――同時刻。
 伝説の惑星―――《テレザート》が座する星系外の空間にて。

 漆黒と紅いマーキングが施された―――全長1100m級の戦艦が、漆黒塗装が施された多数の楔型の戦闘艦を従えて行進していた。
 彼らもまた、〈ヤマト〉と同じく《テレザート》に進路を執っているのだ。
 
 この漆黒艦隊を率いる人物は、長い黒髪と黄金に輝く瞳を持つ美女である。
 鈍い光沢を放つ漆黒の鎧を身に付け、靡かせる真紅のマントには二丁の大釜を交差させている。

 その戦艦の玉座に身を預けている彼女は、左手で持っていた人造人間の頭を放り投げた。ライトセーバーで切断していないからか、首からはドクドクと血が流れていた。

 喜悦の色を浮かべるダークネス卿の双眼の瞳孔は、猫のような縦長であった。

 彼女は瞑目する。
 
 「待っていろ、女神テレサ。この私が、貴様の星を包囲しているガトランティスを殲滅してやるからな」

 その心眼には敵旗艦に乗り込んだ自分が、狼狽えて喚く敵兵を駆逐する姿が映し出されていた…。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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