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第61話「ガトランティス新鋭戦艦の桁、間違ってるだろ!なんだこの数は!?」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第61話「ガトランティス新鋭戦艦の桁、間違ってるだろ!なんだこの数は!?」となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――第十一番惑星。

 濃緑色の大地と白色の氷海・浮雲が人工太陽の輝きに照らされている第十一番惑星を尻目に、虚空を裂き、何重にも重なった青白い三角形が回転する波動の回転軸―――ワープゲートから、全体が暗緑色に塗装された艦影が出現する。

 ”それ”は、第八浮遊大陸戦での戦いにおいて、連合艦隊の前に初めて姿を現したガトランティス軍の新鋭戦艦―――カラクルム級戦闘艦が、太陽系最果ての星であるこの第十一番惑星へと姿を現した。

 カラクルム級は波動防壁のような防御兵装を搭載していないものの、高い戦闘力を秘めた宇宙戦艦である。

 「ナ、ナンダコノ数ハー!?」

 改アクラメータ級〈アラレス〉の艦橋のキャプテンシートに座る、コマンダーは両手で頭を抱える。

 コマンダーが驚愕し頭を抱えたのは、その数だ。十や二十、百隻という断じて生易しい数ではなかった。一度のワープ―――ガトランティスが言うところの空間跳躍で現れる数は、最低でも千隻。 

 数分もするうちに、その総数は万単位へと膨れ上がっていく。そのさまを例えるならば、まるで群れで活動する魚であった。
 
 その群れの中に、唯一異なる様相の艦の姿があった。艦形こそ周囲と同じカラクルム級のそれであるが、塗装は全く異なっていた。白と灰色で複雑に塗り分けられており、よく目立っている。

 この艦こそが、今もワープアウトするガトランティス艦の旗艦であるのは明白だ。コマンダーが、そう断じた時だった。

 「敵艦隊、本艦隊ヘト攻撃ヲ開始!」

 数百隻のカラクルム級からの一斉掃射を受け、シールドを展開していたAC721重量級ミサイル駆逐艦は限界となり、シールドを消失する。

 砲撃は止むことなく、全てのAC721重量級ミサイル駆逐艦は爆沈に追い込まれてしまう。爆沈させた数百隻のカラクルム級は、次の狙いを〈アラレス〉へと定めた時だった。

 「直チ二現宙域カラ離脱!ブリリアンス駐地球大使館へ撤退ワープセヨ!」

 「ア〜、第十一番惑星へワープアウトシタ〈ヤマト〉ハドウスルノデ?生存者ガ乗ッテマスガ…?」

 「オ前ハ破壊サレタイノカ?!」

 数百隻のカラクルム級の砲火が〈アラレス〉へ届こうとした刹那、〈アラレス〉はワープし現宙域を離脱した。




 ―――第八機動艦隊旗艦、カラクルム級〈メーザー〉。

 「……コズモダート、戦士ガトランティスらしく死ねたか」

 旗艦の艦橋に仁王立ちとなり窓から太陽系最果ての惑星を眺めながら、帝星ガトランティス・第八機動艦隊を率いる提督―――メーザーという名の男は無表情で、前衛艦隊を率いていた部下の名を口にした。
 ロングコートを纏っている彼の容貌は、知的な印象を与える細めの顔立ちと鋭い視線を持っており、やや波打つ様な髪形が特徴的だ。

 「紛い物の恒星を、頼みとする星か」

 そう口にしたメーザーに、オペレーターは返答する。

 「特殊な楕円軌道のため黄道面から大きく外れておりますが、紛い物の恒星が生物の活動を保証しています」

 そうか、と頷く彼に、オペレーターはコンソールへと向き直った。その直後、索敵手は報告する。

 「メーザー提督。地球の戦艦―――〈ヤマト〉と思われる、エネルギー反応を探知いたしました。いかがいたしますか?」

 メーザーは、索敵手へ視線を向けた。

 「……捨て置け。大帝の断は決まっている」

 「はっ」

 索敵手は、オペレーターと同じくコンソールへと向き直った。索敵手を一瞥したメーザーは、思考する。〈ヤマト〉へ艦隊の一部を割き撃滅する手もあるが、彼は大帝より命令された任務を優先させることにした。星ごと消えて無くなる存在に、構う必要は無いのだから…。

 「ありがたくも、《レギオネル・カノーネ》の使用が許可された。準備を急げ、大帝のご命令は絶対である」

 メーザーは第八機動艦隊の全艦に伝えると、改めて第十一惑星を眺めた。

 「最果ての星を照らす紛い物の太陽、…見納めだな」

 カラクルム級のワープアウトは、未だ終わることは無かった。


 

 ―――ブリリアンス駐地球大使館・会議室。

 ブリリアンス大使館に存在する内の一つ―――その会議室には、2人の女性と生体アンドロイドがいた。

 1人は、ギルド長スヴェート。ギルド長は実際にいる訳ではなく、ホログラム姿となってこの部屋にいるのだ。
 1人は、ブリリアンス大使―――ラウラこと2号。
 そして最後は、機器操作を担当する生体アンドロイド。
 
 彼女らは、ステルス型の偵察フリゲートより送られる映像通信を観ている最中である。

 「現在までに出現する敵艦の総数、一万五千隻を突破。全て、ガトランティス新鋭戦艦と認められます」

 漆黒のコスチュームを着用している、生体アンドロイドの報告が響く。レーダーなどで得られた情報が、この会議室へとリレーされているのだ。

 「……問題は、敵が何を目的としているかだな」

 「……だな」

 第十一惑星に出現した敵艦隊の展開を、ギルド長と2号は凝視する。新たに出現した敵艦群が、第十一番惑星に攻撃を仕掛けてくる様子は無かった。
 あの戦力の展開から察するに、どうやら〈ヤマト〉を脅威としていないようだ。
 
 「……それにしても、艦同士の間が詰まった隊形だな」

 「そうだな。何かあれば衝突事故を起こしそうなくらいに、だ」

 立体表図に隣接して表示されたウィンドウに映された、偵察フリゲートから超望遠撮影された敵艦隊の姿を眺めている2人の女性はそう呟いた瞬間。

 生体アンドロイドは、口を開く。

 「解析、完了しました」

 ガトランティス艦隊の出現ワープアウト・展開予測が分かりやすく図形化され、一同の目前に映し出される。それは、巨大な細長い円筒形とそれを囲むリングを形成していたものだった。

 「これは、いったい…?」

 「同感だ、なんだこれは…?」

 疑問の色を強く浮かべるギルド長と2号に、生体アンドロイドは説明する。

 「この円筒は巨大な加速装置であると思われ、艦隊で形成されている最中であります。ガトランティス新鋭戦艦―――カラクルム級戦闘艦のみで構成される”第八機動艦隊”が集結しつつある空間は、第十一番惑星の周囲を廻る人工太陽の軌道と重なっています。円筒の完成予想時刻は、10:10」

 「なるほど…ん?」

 「ほぉ〜…うん?」

 理解した瞬間、聞き捨てならないこと聞いたギルド長と2号。今、なんと言った。ガトランティス新鋭戦艦がカラクルム級と呼ばれるのは分かったが、それじゃない。

 「250万隻?…いやいや、そんな馬鹿な」

 「ま、全くだ」

 ギルド長と2号はそんな訳ないと笑い、一度深呼吸をして息を整えた後、生体アンドロイドへ問うた。

 「250万隻なんていう結果、間違いなんじゃないのか?」

 「そうだ、不具合ではないのか?」

 大使館の設備は最新であるし、映像を送ってくれているフリゲート艦を含め艦艇のメンテナンスは怠っていない。その他色々。そうだというのに、まさかの不具合か。納得する。設計自体、何年も前であるし。そう、不具合に違いない。250万隻という数なんて、あり得ないのだ。

 な〜、と微笑みを向けるギルド長と2号。2人の女性に対し、生体アンドロイドは可愛らしく首を傾げた。

 「いえ、正常ですよ」

 なるほど、どうやら不具合は無かったようだ………いやいやいや!

 「ガトランティス新鋭戦艦の桁、間違ってるだろ!なんだこの数は!?」

 「ガトランティスは蛮族で、艦隊戦力はガミラスを下回る筈! 3年間でいったい何が起きた!? 馬鹿みたいに課金でもしたのか!?」

 それだけではない、聞き捨てならないことはもう一つ。―――艦隊の番号だ、第◯のほうの。

 「第八って何だ、あんな馬鹿みたいな規模の艦隊がまだあると!?」

 「一つの艦隊に250万隻。ガトランティス軍の艦隊戦力が10あると仮定した場合……2500万隻ッ!?」

 「そんな理不尽みたいな戦力がまだいるだと?堪ったもんじゃない!こんなもん、チートだチート!運営はいないのかっ、訴えてやる!!」

 とても信じがたいギルド長スヴェートと2号は、揃って頭を抱えていた。敵の上層部は単純に250万隻―――第八機動艦隊での地球攻略を命じ、それに基づいてを集結・隊列整備点としているだけなのか、あるいは太陽系侵攻・地球攻略に用いる特別な理由があるのか。

 頭を抱える2人の女性を見つつ、生体アンドロイドは説明を続ける。

 「完成次第、軌道上の人工太陽が接触と同時に暴走、半径約2万キロ圏内の物体は消滅します」

 映されたシミュレーション映像が変動し、人工太陽を示す球体が巨大な円筒形を構成する敵艦隊に重なった。

 「敵艦隊が形作るこの円筒形は、一種の加速器として作用すると思われます。人工太陽を暴走させ巨大なエネルギーへと変換、ごく小規模な超新星爆発というべき事象を引き起こします」

 説明と同時に、第十一惑星と敵艦隊を飲み込むシミュレーション画像が展開された。だが、それでは終わらないとばかりに、別の計算データとシミュレーション画像が追加される。

 「仮にこのエネルギーが"砲撃"として、この巨大な円筒、もとい"砲身"から発射されるのだとしたら―――」

 円筒形に展開した敵艦隊の一方―――太陽系の中心部へ向けられた方向へ、放たれたエネルギーを示す線が伸びていく。
 それは、遠く太陽系内惑星圏を回る惑星の軌道と重なった。そこに付けられていた名称は第三惑星、即ち…。

 「―――地球であります」

 「嘘だぁ…」

 「そんなバナナ…」

 呆然としたように口に出すギルド長と2号。言葉を発することができなかった。目を見張る、衝撃的なシミュレート結果であるからだ。
 第十一番惑星沖に出現した総数250万という敵の巨大艦隊は、地球を攻略どころか完全破壊―――いや消滅せんとしているのだ。

 駐留艦隊と波動砲艦隊を送っても、勝つ可能性は低い。アルポ銀河から援軍を送ろうにも…。こうなれば、あの艦に託すしかない。

 「〈ヤマト〉に託すとしよう」

 「だな。なんだかんだいって、〈ヤマト〉だったら問題解決する未来しか見えない」

 地球の命運を宇宙戦艦ヤマトへ託し、ギルド長と2号は祈るのだった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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