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第60話「思い知ったか、ガトランティス!」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第61話となります。
どうぞ、ご覧ください。
 

 
 第十一番惑星に襲来したガトランティス艦隊は約70隻で編成されており、艦隊は第十一番惑星の軌道上に静止していた。
 そのガトランティス艦隊の構成内容は、5隻のナスカ級打撃型航宙母艦を主軸とし、多数のラスコー級突撃型巡洋艦とククルカン級襲撃型駆逐艦で構成されている。

 攻撃機〈デスバテーター〉による空襲を仕掛け都市を破壊し尽くした後、白兵戦部隊と自律兵器―――〈ニードルスレイブ〉を投入し掃討戦に移行した。民間人へも、だ。

 戦闘員と非戦闘員の区別もなく見境なく攻撃させるというのは、「降伏」という概念を知らないガトランティスにとっては普通。さして、珍しいものでもないのだ。

 「こうふく…こうふく…」

 ”前衛艦隊”を率いる指揮官―――コズモダートは目を瞑り、旗艦ナスカ級〈コズモダート〉の艦橋で「降伏」の概念について追憶していた。今でも、理解することが出来ない。土方竜と呼ばれる敵の指揮官へ訊き返したのは、「降伏」という意味が分からないから。その概念は、未知なるものだから。

 ―――降伏はものでは無く行為を示し、敗北を認め戦いを終わらせることだ。

 あの時、敵の指揮官―――土方竜はそう言った。そして、自分はこう応えたのだ。

 ―――ならば死ね、戦って死ね。さすれば、この星に安寧が訪れる。

 どちらかが勝利し、どちらかが死ぬ。戦いを終わらせたいのなら、それが普通だ。敵の指揮官へそう告げた自分は爆撃続行を命じ、その後は掃討戦へ移行させた。
 
 「コズモダート様」

 「……」

 目を閉じていたコズモダートは目を開け、報告を耳にする。

 「重力干渉波を確認、ワープアウトの可能性あり」

 「…第八機動艦隊の到着には早すぎるな」

 コズモダートは腕を組み、訝しむ。この到着、予定通りではない。であれば、答えは一つ―――敵だ。

 「位置は?」

 問うたコズモダートに対し、オペレーターの男は返答する。

 「惑星重力圏内の為、特定不能です」

 惑星表面へのワープか、確かにそれならば特定することは不能なのも頷ける。組んでいた腕を解くと、コズモダートは命令を下す。

 「捜索範囲を地上にまで広めろ、急げ!」

 「はっ!…旗艦より達する―――」

 艦隊は軌道上で静止し、多くの〈デスパテーター〉は爆装のためナスカ級に帰投している。地上の捜索範囲は狭い今、急ぎ捜索範囲を広げる必要があるのだ。

 「コズモダート様。第十一番惑星宙域に重力干渉波を確認しました。味方ではありません」

 後続か、しかし何故宙域に…。疑問に思うコズモダートに、オペレーターは重力干渉波の正体を告げる。

 「―――ブリリアンス艦隊です」

 コズモダートがスクリーンに視線をやった瞬間、ブリリアンス艦隊は現れた。5隻からなる艦隊で、その内の4隻はガトランティスの新鋭戦艦とシルエットが似ている艦艇―――AC721重量級ミサイル駆逐艦。中央に佇む楔型の旗艦は、改アクラメーター級戦闘航宙艦。

 ガトランティスの新鋭戦艦が全長520mに対し、武装が少ないAC721重量級ミサイル駆逐艦は全長560mと40mも大きい。全長750mある旗艦の改アクラメータ級は四連装レーザ砲ーx12とレーザ砲ーx24、そしてミサイルランチャーx4の武装を持つ。

 AC721重量級ミサイル駆逐艦に武装もっと装備できるだろ、というツッコミをしてはいけない。

 「ブリリアンス艦隊…」

 腕を組んだコズモダートは思う。地球にブリリアンス軍の駐留艦隊が存在するのは想定していたが、まさか火焔直撃砲を防いだ艦艇がいるとは想定外だ。

 「……」

 だが、それがどうした。ガトランティスに、「撤退」の文字は存在しない。例え我ら前衛艦隊が敗北しようと、予定通り到着する”本隊”の前には…。

 「マルス小艦隊は引き続き、惑星重力圏内で発生したワープアウトポイントへ急行。我が前衛艦隊は、これよりブリリアンス艦隊を撃滅する!」

 コズモダートは、静かに冷笑の色を浮かべた。




 ―――ブリリアンス艦隊旗艦、改アクラメータ級〈アラレス〉。

 AC721重量級ミサイル駆逐艦4隻を率いる〈アラレス〉は、命令を下す。

 「全艦に伝達。陣形ヲ警戒態勢から攻撃態勢ヘト変更。ヴァルチャー級スターファイター、ハイエナ級ボマー、直チに発艦セヨ」

 OOMコマンダー・バトルドロイド―――通称コマンダーの命令を受け、〈アラレス〉のハンガーベイよりヴァルチャー級スターファイターとハイエナ級ボマーが次々と発艦する。

 ヴァルチャー級の任務は先行し、敵編隊を撃破と共にハイエナ級を護衛。
 ハイエナ級の任務はナスカ級を全て沈め、その後は可能な限りガトランティス艦を沈めることにある。

 150機ものドロイドファイターが編隊を組み、コズモダート率いるガトランティス前衛艦隊へ向かう。敵艦隊は〈デスパテーター〉計120機を発艦させ、迎撃せんとする。

 しかし、〈デスパテーター〉は攻撃機。戦闘機―――まして無人機であるヴァルチャー級の前には叶わない。生きたパイロットを必要としない自律式のドロイドファイターは、有人機よりも遥かに速い反応速度でドッグファイトやアクロバット飛行が可能なのだから。

 また1機また1機と数を減らす〈デスパテーター〉は、30機を下回った。対するブリリアンスの編隊被害は100とヴァルチャー級50機を失うが、止まることは無い。

 道が開けると、爆撃機ハイエナ級の仕事―――ナスカ級への爆撃が始まろうとしていた。
 
 強力な爆弾が搭載出来るよう設計された自律式のドロイドファイターである―――ハイエナ級ボマーは、ヴァルチャー級を元に開発された重装甲の爆撃機だ。
 船体中央には2つの頭部ユニットが位置し、このうち右側のユニットには中央処理装置が収められ、赤色に輝くフォトレセプターが備わっている。
 
 対空砲火を浴びせるナスカ級へ、ハイエナ級は肉薄すると牙を向いた。射程に入り、照準が定まったのだ。爆弾を投下し魚雷が発射されると、ナスカ級へ次々と命中していく。
 それに留まらず、一部のヴァルチャー級はナスカ級の推進機関に回り込むとミサイルを発射した。

 そして、ナスカ級は連鎖爆発を引き起こすと、轟沈していった。

 「全ナスカ級、撃沈ヲ確認」

 全てのナスカ級を沈めた編隊は帰投することなく爆撃を続行する中、コマンダーは艦隊を動かす。

 「全艦、前進」

 その場から一步も動かなかった〈アラレス〉率いる艦隊は、主砲の射程圏内に入るため前進を開始した。やがて射程圏内に入ると、主砲発射の命令が下される。

 「撃チカタ始メ!」

 瞬間、ブリリアンス艦から連装レーザー砲が斉射され、次々と対艦ミサイルが発射された。ガトランティス艦からも砲撃がなされるが、どこか砲火の命中度が先程より落ちていた。それに、隊形が乱れているようだ。

 「敵旗艦ヲ沈メタノカナ」

 であれば、コマンダーとしてはアルポ銀河まで向かいところだが、2号より与えれた「蹴散らせ」と命じられている。
 ならば、このまま殲滅しよう。捕虜なんぞ要らん、ガトランティス人は死ぬべしである。

 「ギルド長に褒メテモラウンダ」

 ワクワクしているコマンダーのもとに、オペレーターのB1バトルドロイドより報告が入る。

 「敵艦、全テ撃沈。味方艦隊ノ被害、アリマセン」

 その報告に何回も頷くコマンダーが、喜びの舞をしようとした時だった。B1バトルドロイドより、報告が上がる。

 「前方にワープアウトスル模様デス、艦艇数ハ6隻」

 「目標、通常空間二ワープアウト」

 キャプテン・シートから立ち上がり、スクリーンに視線をやったその刹那、”それ”は現れた。大地と白色の氷海・浮雲が人工太陽の輝きに照らされている―――第十一惑星を尻目に、虚空を裂き何重にも重なった青白い三角形が回転する波動の回転軸から、全体が暗緑色に塗装された物体が出現する。

 十字のシルエットを特徴づけるのは、艦の左右に延びる翼状の突起部。それは、潜水艦の安定翼のようにも見えた。
 一対の安定翼らしきものを備えている他、艦底部にはT字の構造物4つが一列に並ぶ。
 甲板には聳え立つ独特な艦橋があり、固定の艦橋砲塔を三層からなる三連装が重なっていた。

 ”それ”は第八浮遊大陸戦での戦いにおいて、連合艦隊の前に初めて姿を現した―――ガトランティス軍の新鋭戦艦だった。
 そして、ガトランティスではこう呼ばれている。―――カラクルム級戦闘艦、と。

 6隻のカラクルム級は第十一惑星へ艦首を向けており、垂直となり整列せんとしていた。あ、嫌な予感、そう思うやコマンダーは瞬時に命令を下す。

 「ドロイドファイター編隊、全力攻撃開始!全艦隊、ワープシテ敵艦隊へ接近セヨ!」

 命令は即座に行き渡った。ドロイドファイター編隊は艦橋と推進ノズルを集中的に攻撃する中、既存のガトランティス艦艇ほど損害を与えれずにいたものの、少なからず損傷を与えることには成功した。
 そんな中、艦隊はカラクルム級艦隊の横っ腹にワープアウトすると、近距離にて全力射撃が開始された。艦隊は念入りに1隻ずつ集中砲火を浴びせ、轟沈させていく。

 〈アラレス〉率いる艦隊は、最後の1隻となったカラクルム級を木っ端微塵に粉砕してみせた。それを観たコマンダーは、喜びの舞をする。

 「ヤッター!」

 だがこの時、巨大な質量が同惑星にワープで向かっていることを示す、尋常ならざる空間の歪みを検知していたのだった…。



 ———ブリリアンス駐地球大使館。

 「思い知ったか、ガトランティス!」

 観戦していた2号は、喜びの舞をしていた。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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