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第32話「私が何をしたというんだ!」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第32話「私が何をしたというんだ!」となります。
どうぞ、ご覧ください。
 

 
 ―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉。

 「ふふっ、無駄だ。その程度の火力で我が艦〈スラクル〉を倒せると思うなよ。我が艦〈スラクル〉は無敵なり!」

 「あ、いや、ギルド長閣下それは…」

 死亡フラグでは、と艦長代理が続けて言葉を紡ごうとした瞬間、報告が入る。

 「重力変動ヲ感知。方位〇〇〇、我ガ艦ノ正面デス」

 「……」

 その報告を耳にした艦長代理は、ギルド長スヴェートの言葉が死亡フラグであった事に改めて気づいた。スヴェートも気づいたのだろう。自分が死亡フラグを建築していたことに。

 「……」

 「……」

 まるで時が止まったかのように、静まり返る2人の女性。やがてスヴェートは、あらん限りの声量で叫んだ。

 「しまったァァァアアアー!?!?」

 叫ぶスヴェートに代わり、艦長代理は命じる。私も貴女のように叫びたい、と心の中で思いながら。

 「ブリリアンス・フィールド、正面に集中展開!」

 直後、空間の一画に時空の波紋が生まれた。

 「狼狽えるな!アクラメータ級改のフィールドならば!」

 「狼狽えている貴女に言われたくはないですね」

 波紋が中心に集中した刹那、その歪みから火焔直撃砲のエネルギーが飛び出す。

 「私が何をしたというんだ!」

 「……」

 飛び出した火焔直撃砲はアクラメータ級改〈スラクル〉に命中しフィールドを突破……することはなかった。轟音と共にフィールドに命中した火焔直撃砲はそのフィールドを突破することなく、周辺にそのエネルギーを舞い散らせた。

 「ふ、ふふっ、フィールドの前には無力!」

 「涙を拭きましょうか、ギルド長閣下」

 アクラメータ級改〈スラクル〉が火焔直撃砲を受け止めたという事実は、ガトランティス艦隊に驚天動地の動揺を与えたに違いない。

 「本艦ノフィールド、消失」

 その報告に、艦長代理は顔を顰めた。涙をハンカチで拭き取り、冷静を取り戻したスヴェートも顔を顰めた。耳が痛い報告だからだ。フィールドが消失したということは、ガトランティスの攻撃を対ビームコーティングされた装甲で受け止めなければならない。

 好機と見たのか、ガトランティス艦隊旗艦〈メガルーダ〉は〈スラクル〉へ五連装主砲を向ける。狙いを定めたのだ。敵旗艦〈メガルーダ〉は直掩部隊と共に、射程圏内に入る為に前進。

 しかし好機と見たのは、敵旗艦〈メガルーダ〉だけではない。

 「〈ヤマト〉、敵旗艦に発砲」

 〈ヤマト〉だ。〈ヤマト〉の第一主砲から発射された青白い三本のエネルギーは螺旋を描きながら、敵旗艦〈メガルーダ〉の左舷艦首に命中させることに成功。だが、艦首から煙を吐くものの重度のダメージを与えることは出来なかった。

 砲撃を受けてなおピンピンしている敵旗艦〈メガルーダ〉に、艦長代理とスヴェートは一筋縄ではいかないと感じた。

 しかし、敵旗艦〈メガルーダ〉左舷艦首への着弾だが、実は予想外の損害を与えることに成功していたのだ。

 ―――ガトランティス艦隊旗艦〈メガルーダ〉。

 「転送投擲機、破損。使用不能です!」

 予想外の被害に、ダガームは憤った。

 「お、おのれぇ…!」

 火焔直撃砲を優位に立たせる為の転送投擲機が使用不能となったのだ。二基一組で使ってこそ、安定した空間転移でアウトレンジ攻撃が出来る火焔直撃砲だが、これではそれが出来ない。

 「何故、前に出てしまった…!」

 戦局を見渡すよう本隊後方に位置していた〈メガルーダ〉は、前進してしまったのが仇となった。〈ヤマト〉からすれば、それは好機だった。〈メガルーダ〉は、フィールドを消失したブリリアンス艦隊旗艦〈スラクル〉を五連装主砲でトドメを刺すべく前のめりになったのが駄目だった。その場で火焔直撃砲で撃滅する選択肢を選択すれば、どんなによかったか。

 だが、後悔しても遅い。

 「前衛艦隊、全滅!」

 優位に立っていたのは、自分らの筈だ。それが何故…。不利に傾きつつある戦況に、ダガームは憤りを止めることは出来なかった。

 「火焔直撃砲を耐える……あの楔型戦艦は化け物か!」

 〈ヤマト〉もだ。〈ヤマト〉のみでガミラス帝国を打ち破った実力は、嘘ではなかったのだ。睨みつけていたダガームだったが、報告が入る。

 「だ、大都督!パラカス機動部隊の被害甚大!」
 
 「何だと!?艦載機編隊はどうしたのだ?!」

 「敵艦載機との戦闘で八割以上が喪失しました!もはや、直掩機だけです!」

 「何たることだ…!!」

 連合艦隊の艦載機編隊の前に、パラカス機動部隊の艦載機隊は直掩機を除き全て撃墜された。

 〈ヤマト〉とガミラス航空隊だけであれば、対処は出来たかもしれない。だがそれは、かの勢力―――ブリリアンスさえいなければ、だ。ブリリアンスは、150機ものヴァルチャー級と呼ばれるドロイドファイターを投入した。ブリリアンスを含めた合同航空隊の機数は、合計で約250。

 パラカス機動部隊はヴァルチャー級によるミサイル攻撃を受けた他、神風特攻された。それによりパラカス隊所属の艦艇は次々と被弾、落伍しては爆炎に包まれるという惨状。パラカス機動部隊旗艦の空母〈キスカ〉は、中破状態の被害を受けていた。

 「かくなるうえは……」

 となれば、取る方法は1つしかない。

 「本艦の艦首を星に向けよ!星の中枢をこの手で占拠するのだ!」

 ダガームは、〈メガルーダ〉単独による星の制圧を決断した。
 占拠すれば、静謐の星は大帝のものとなる。そう考えたのだが、この命令が混乱を生むことになるとは、冷静さを欠いたダガームは気づかなかった。

 「し、しかし、味方の艦隊はどうなさるのです!」

 臨時副長となった男が驚愕する。艦隊はどうするのか。まさか、置き去りにする訳ではあるまい。それに、だ。旗艦自ら静謐の星の中枢を占拠するならば、指揮系統はどうなる…。

 「本艦が占拠するまで、その場に踏み留まればよい!」

 「何ですと!?」

 臨時副長は絶句した。
 なにせ旗艦がその場を離れるのは、指揮権も放り投げてしまったのであるから当然だ。ましてや、明確な次席指揮官を任命していない。これは、このガトランティス艦隊にとって致命的だ。

 「機関、最大!星の中枢を占拠する!」

 そんなことは知ったことではない。旗艦〈メガルーダ〉は全速を以って、戦場から離脱する。目指すは、シャンブロウだ。

 旗艦を失ったガトランティス本隊の残存艦艇は、半ば棒立ちになったのだった。

 ―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉。

 「敵旗艦、離脱シテ行キマス。コース、惑星ヘノ降下軌道」

 スヴェートは戦況を見渡す。戦況は、連合艦隊が優勢だ。〈ヤマト〉の被害は依然と無い。ブリリアンス艦隊は半数の艦を失い、本艦を含め10隻。ガミラス艦隊は14隻の内の5隻を失い、残りは9隻となった。

 しかし、だ。

 無傷の艦は〈ヤマト〉を含め2隻と少なく、大なり小なり損傷を受けていた。本艦〈スラクル〉だけは無傷のままだが、無傷なのは今だけだ。火焔直撃砲により、フィールドを消失したのだ。このまま無傷である保証は当然ながら無い。

 「敵旗艦を取り逃がしたのは、痛恨のミスだったな」

 敵旗艦〈メガルーダ〉は戦場を離脱し、全速で以ってシャンブロウへと向かった。これを追いかけようにも、ブリリアンス艦隊では追いつくのが難しい。

 その時だ。B1バトルドロイドから報告がやってくる。

 「〈ヤマト〉ヨリ入電デス」

 報告を受けたスヴェートは、そのB1バトルドロイドに振り向いた。

 「メインスクリーンに出せ」

 「ラジャー、ラジャー」

 報告したB1バトルドロイドはコンソールを操作し、通信を受けいれた。スヴェートは、メインスクリーンへと顔を向ける。

 ノイズが走るや、1人の男がメインスクリーンに映し出された。古代だ。彼は簡易宇宙服の役割も持つ軍服の上に、ジャケットを羽織っていた。

 古代は口を開く。内容が語られる。
 惑星表面で座礁し身動き取れないガミラス空母〈ランベア〉を救助する為、〈ヤマト〉は戦場から離れる。

 『―――同時に、我々は敵旗艦を追撃する。戦場に関してだが、ガミラス艦隊と共に敵艦隊を対処していただきたい」

 古代を見つめていたスヴェートは、気高い笑みを浮かべながら口を開いた。

 「任せろ」

 古代は頷いた。感謝する、と。
 そして、古代が消えた。通信が切れたのだ。

 〈ヤマト〉は急速反転し、敵旗艦を追撃する。〈ヤマト〉を見送ると、スヴェートは艦隊に下令した。

 「〈ヤマト〉に指一本、触れさせるな。全艦、ここで食い止めろ!」 
 

 
後書き
現時点までの被害:ガトランティス艦隊グタバ方面軍。

・【ククルカン級襲撃型駆逐艦】12隻撃沈。
・【ラスコー級突撃型巡洋艦】8隻撃沈。
前衛艦隊、全滅。

・【ククルカン級襲撃型駆逐艦】3隻撃沈。
・【ラスコー級突撃型巡洋艦】1隻撃沈、大破1隻。
・【ナスカ級打撃型航宙母艦】3隻撃沈、中破2隻。
パラカス機動部隊、壊滅。残り3隻。

・【ククルカン級襲撃型駆逐艦】1隻撃沈。中破3隻。
・【ラスコー級突撃型巡洋艦】2隻撃沈、中破2隻。
・【メダルーサ級殲滅型戦艦】、〈ヤマト〉により転送投擲機を破損された。小破?
本隊、37隻の内の3隻が撃沈。

『まとめ』
ガトランティス艦隊グタバ方面軍67隻の内の30隻が撃沈された。

ーーー

さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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