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第33話「決着と別れ」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第33話となります。「決着と別れ」となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉。
 
 「撃って撃って撃ちまくれ!」

 「全方位、一斉射撃」

 旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉の主砲である重粒子砲―――四連レーザー砲とも呼ばれる12の砲塔と24の副砲が、ガトランティス艦隊へ一斉射撃を開始した。

 「ガトランティス駆逐艦3隻、ガトランティス巡洋艦4隻ノ撃沈ヲ確認」

 「ガトランティス駆逐艦2隻大破、ガトランティス巡洋艦1隻大破」

 アクラメータ級改〈スラクル〉の前に、ガトランティス艦隊は足並みを崩してしまう。ガトランティス艦隊は何とか攻撃を仕掛けるが、シールドを展開するブリリアンス艦が盾となっている為、攻撃は届かないでいた。

 ガトランティス艦隊は足並みを崩している。”かの艦隊”からすれば、それは好機だった。

 「ガミラス艦隊、攻撃」

 好機と見たガミラス艦隊は主砲を斉射しつつ、対艦ミサイルと魚雷を撃ち尽くす勢いで次々と発射する。アクラメータ級改〈スラクル〉に集中し過ぎたせいか、ガミラス艦隊への対応が遅い。

 「ガミラス艦隊、戦果アリ」

 ガミラス艦隊はガトランティス艦7隻を撃沈させた他、4隻に中破以上の損害を与えた。撃沈されるいう被害はない。

 戦果報告が次々と入ってくる中、合同航空隊が現れた。パラカス機動部隊を撃滅し終えたのだ。合同航空隊が攻撃に加わった。

 「戦況は連合艦隊が優勢となりました。ギルド長閣下」

 最早、ガトランティスに勝ち目はない。キャプテン・シートに座るスヴェートは優雅に足を組み、口を開いた。

 「さらば、指揮官に捨てられた哀れな敵よ」

 気高い笑みを浮かべたスヴェート。壊滅に向かう敵を観る彼女は、どこか楽しげだった。

 ―――ガトランティス艦隊旗艦〈メガルーダ〉。

 「屠れぇ!」

 シャンブロウに降下コースであった〈メガルーダ〉は紫色のガミラス空母〈ランベア〉を発見し、五連装主砲で狙いを定め砲撃しようとした時だ。

 「後方〈ヤマッテ〉急速接近!」

 オペレーターの声にダガームは宇宙戦艦ヤマトを睨みつけるが、かの戦艦ヤマトに向ける瞳は少なくない恐怖があった。2隻のガトランティス巡洋艦―――ラスコー級からなる直掩部隊を戦場に置いてきてしまった為、〈メガルーダ〉で対処するしかない。

 「笑止!撃ち落としてくれる!」

 ダガームは腕を振るうと、後方甲板にある3つの輪胴砲塔が一斉に砲撃を開始。〈ヤマト〉はシールド―――正確にはフィールドを展開しておらず、装甲に着弾。しかし、である。その程度の攻撃で装甲を撃ち抜くことは出来ない。速度を落とすことなく迫る〈ヤマト〉に、艦橋要員は震えあがった。

 「(こうなれば…!)」

 ダガームは最後の手段に打って出る。

 「ひっ…」

 火焔直撃砲の発射機まで突進するダガームは、砲撃担当の男を押し除けた。

 「〈メガルーダ〉に死角なし!」

 砲撃担当の男を押し除けた彼は、本体下部にあるレバーを引く。火焔直撃砲の本体をパージさせたのだ。
 
 艦体下部にあった筒状の火焔直撃砲上部のバーニアが噴き、その反動で本体が下へと離れる。火焔直撃砲は〈メガルーダ〉から分離したが、幾つかのケーブルは繋がれたままだ。

 「抹殺ッ!」

 ダガームはレバーを引いた。火焔直撃砲の砲口ユニットが急速に回転しエネルギーが充填されたかと思えば、大きな炎が前方に向かって打ち出された。全てのケーブルを切断し、ロケットエンジンを作動させた宇宙船のように、火焔直撃砲の本体が縦方向に回転しながら〈ヤマト〉に迫る。

 巨大な棍棒に変わった火焔直撃砲の本体は、直撃すれば〈ヤマト〉はタダでは済まないだろう。

 「グハハハ!これは命中すること間違いなし!」

 避けれるものなら、避けてみろ。無理だろうがな。ダガームは、勝ち誇った表情を浮かべながら〈ヤマト〉を注視する。

 だが、だ。彼が浮かべているその表情は、直ぐ消えることになる。

 火焔直撃砲の本体の回転に合わせるようにしながら〈ヤマト〉はその艦体を右斜めに傾けつつも右側へ回避し、接触を艦体側面で受け流すという、神がかりな操艦技術で危機を脱したのだ。

 「なっ!よ、避けただと!?」

 避けることは不可能だと思われていた火焔直撃砲の本体を、〈ヤマト〉は回避してみせた。ダガームは、ギリギリっと歯を食いしばった。

 火焔直撃砲の本体を回避した〈ヤマト〉は速度を落とすことなく、〈メガルーダ〉の直ぐ後ろに位置した。瞬間、〈ヤマト〉艦首左舷から錨を引きながらアンカーが発射される。ロケットによって加速されたアンカー頭部は高速で飛翔すると、艦尾―――2つある後部ノズルの内の1つに命中すると同時に深く刺さる。

 その衝撃は大きく、後ろへと引っぱられ転倒するガトランティス将兵がいた程だった。男達から悲鳴が沸きあがる。

 「何事…!!」

 ダガームのその言葉は周囲に問うたものでもあり、自分自身に問うたものであった。

 〈ヤマト〉と〈メガルーダ〉は、まるで古代の剣闘士のようだった。互いが鎖で繋がれており、相手を倒すまで闘技場から離れることは許さない。しかも、だ。〈ヤマト〉は鎖を巻きとり始め、両艦の距離は次第に短くなっていく。

 「狼狽えるな!艦首大砲塔で〈ヤマッテ〉を屠れ!」

 射撃準備を行っていくガトランティス将兵。〈メガルーダ〉の前部甲板には、五連装大口径砲塔がある。いくら装甲が厚い〈ヤマト〉でも、この距離での砲撃を受けては無事で済む筈もない。

 五連装大口径砲塔の砲身が〈ヤマト〉を捉えようとした瞬間、〈ヤマト〉艦橋周囲に装備された複数のレーザー機銃が火を噴いた。

 豪雨のようにピンク色のレーザーが〈メガルーダ〉を襲い、艦首から艦尾まで蜂の巣のように次々と被弾する。1つ1つの攻撃に大した威力はないが、これ程となれば効果は絶大だった。艦内各所のケーブルが切断し、連絡が途絶、そしてモーターが稼働しないといった被害が次々と発生。

 「…っ」

 五連装主砲の仰角も、これ以上は上がらなくなってしまう。

 「負けぬ!〈メガルーダ〉は負けぬ!!」

 相応するように、五連装主砲から3本のビームが発射された。命中弾は1発のみ。その命中弾はカタパルトで、損害らしい損害を与えることは出来なかった。

 「〈ヤマッテ〉、正面!」

 〈ヤマト〉は正面に躍り出て、文字通り鼻を付き合わせた。〈ヤマト〉前部甲板にある2つの三連装主砲が、〈メガルーダ〉を捉えた。

 〈メガルーダ〉の五連装主砲も、〈ヤマト〉を捉えた。ダガームは命ずる。

 「粉砕!」

 〈メガルーダ〉の五連装主砲から2本のビームが発射される。〈メガルーダ〉から放たれた2本のビームは〈ヤマト〉に命中することはなかった。ダガームの抵抗はここまでだ。

 〈メガルーダ〉が砲撃した直後、〈ヤマト〉は第一主砲で砲撃。〈ヤマト〉の砲撃はビームではなかった。”それ”を、ほんの少しとはいえ視認したダガームは驚愕する。

 「ほ、砲弾だと!?」

 砲弾だ。砲弾という原始的な兵器を、ガトランティスは使用していない。その原始的な兵器を、〈ヤマト〉は使用している。ドン!という砲弾特有の発射音に続いて、装甲を貫通する「ドガ!」という音が艦内に響く。

 次の瞬間、装甲を貫通した〈ヤマト〉の砲弾―――三式弾が爆発する。爆発と衝撃が相次ぎ、やがて艦橋にまで及んだ。

 「栄光を!」

 ダガームは、艦橋諸共吹き飛び戦死した。彼が最期に見たのは、己が忠誠を誓う偉大なる【大帝】の姿だった。



 ―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉。

 〈ヤマト〉が敵旗艦を撃沈したという報が届いた時、戦いは既に終わった。敵の殆どは連合艦隊により倒したものの、3隻のガトランティス艦がワープする。撤退したのだ。

 「この空間ってワープ出来たのか?」

 スヴェートは疑問に思ったが、直ぐ解決した。ガトランティスがワープ出来たのは、位相空間から通常空間に戻っているからだ。少しして、シャンブロウは完全なる姿を取り戻した。

 スヴェートはキャプテン・シートから立ち上がり、艦窓に歩み寄った。彼女に続く艦長代理。

 目の前には巨大なイカのような巨大構造物があり、それは途轍もない大きさだった。リングを持つ惑星シャンブロウは、その一部となって内包されていた。ブリリアンス最大の戦艦エターナルストーム級指揮官型は全長2000mだが、この構造物の前では芥子粒程度の大きさだ。

 方舟シャンブロウは通常では考えられない程に超巨大な骨組みの籠状で、どことなく砂時計に近い。

 調査を行っていた星はシャンブロウの一部であり、その星を含め全てが人工物だったのだ。ジャングルも戦艦大和も、システムの1つとして存在していた。薄鈍色の宇宙は、形成されたボイド空間だったのだ。

 方舟シャンブロウの全貌が明らかになった今、スヴェートを唖然とさせる。方舟シャンブロウは古代アケーリアス文明によって造られたと、ジレルの巫女レーレライは言っていた。

 「古代アケーリアス文明の遺跡であり、ジレルの聖地にして、銀河の巡る星の方舟」

 そして、種の起源を播いた。

 この宇宙に存在する全てのヒューマノイドは、本当に古代アケーリアスによって創られたかは分からない。アケーリアスの遺伝子情報を持つヒューマノイドで、この宇宙は満たされている。シャンブロウのシステムが播かれた種の1つとして同胞と認識し作動したのならば、事実なのだろう。

 「ギルド長閣下、方舟シャンブロウが…」

 艦長代理に声を掛けられたスヴェートは、視線を動かさないまま応える。 

 「消えていくな。あれ程の質量を10秒もしないで遮蔽出来るとは、完全なるステルスというべきか」

 目を合わせた2人女性―――スヴェートと艦長代理は嘆息した。
 惑星数個分にも及ぶ方舟シャンブロウは透明化が完了するや、陽炎のように輝く光輪を背にワープした。星の海へと旅立ったのだ。

 「では、帰還するとしようか」

 「ですね」

 ブリリアンス艦隊はアルポ銀河に戻ろうとする。〈ヤマト〉とガミラス艦隊もお互いの母星へ戻ろうとする、その時だ。

 『さらば、さらば、わが友よ〜。―――』

 艦橋に、スヴェートと艦長代理にとって聞き覚えのある曲が流れる。

 「これは…」

 「〈ヤマト〉からですね。ドイツ民謡の曲の、確か…」

 「「別れ」」

 ドイツ民謡の曲―――『別れ』と呼ばれる曲が流れていた。

 「別れも悪くない。そうだろう、我が娘よ」

 娘と呼ばれた黒髪赤眼の女性―――艦長代理は、呆れたような顔つきをしつつ溜息を吐いた。
 
 「呼ぶにしても名前で呼んでください、ギルド長閣下。……まぁ、そうですね。また会えますよ」

 2人の女性は微笑み合いながら、そう思った。曲を聴きながら、〈スラクル〉は友軍のブリリアンス艦を伴いながら、アルポ銀河へ向けてノズルを噴かす。

 いつの日か、〈ヤマト〉と出会うことを想いながら……。

 「あぁしまった!地球の座標を貰うのを忘れてた!」
 
 「貰うって、約束すらしていないというのに。ですが、それには及びません。大丈夫ですよ。スノウ殿は地球の所在を知ってますから」

 「何だと!?でも、スノウはあの時、分からないと…」

 「思い出したようです」

 「歳かぁ〜」

 「貴女が言いますか…。スノウ殿の歳については、口ではなく内心に留めてください」

 帰還の途についている中、スヴェートは忘れていた事を思い出したのだった。 
 

 
後書き
シャンブロウ編、完結!
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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