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第31話「ふふっ、無駄だ」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第31話「ふふっ、無駄だ」となります。
どうぞ、ご覧ください。
 

 
 ―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改型〈スラクル〉。

 「敵主力艦隊、増速」

 「射程圏内に間モナク入ル」

 索敵士を務めるB1バトルドロイドが、本艦隊を率いるギルド長スヴェートへ報告した。

 「砲撃用意。目標、敵主力艦隊」

 報告を聞いたスヴェートは落ち着いた声音で命じた後、敵主力艦隊を見つめる。

 20隻で構成されるガトランティス前衛艦隊は、増速しつつも左右に展開している。37隻で構成されているガトランティス本隊も増速真っ最中。

 増速しているガトランティス本隊の中には、双胴型戦艦こと艦隊旗艦〈メガルーダ〉がガトランティス巡洋艦2隻で構成される直掩部隊と共に本隊の後方で戦局を見渡す配置となっている。

 「…ふぅ」

 スヴェートは息を吐いた。
 こちらが出来ることは限りなく限定されており、複雑な艦隊運用は望めない。この連合艦隊に出来ることは、この陣形を維持したままの砲撃か、陣形を更に広げて敵艦隊中央にピンポイントで砲撃を加えるかだろう。

 中央突破も考えられるが、流石に中央突破は無理だ。シールドを標準装備するブリリアンスとはいえ、今の陣形配置の場合、中央突破は駄目だろう。ましてや、連合艦隊でガトランティスを迎え撃つのだ。中央突破は絶対に駄目。

 「…敵艦隊、射程圏内に入リマス!」

 メインスクリーンに表示される戦術マップに、味方を示す青色マーカーと敵を示す赤色マーカーが互いに近づきつつあった。射程距離に入った瞬間だ。

 「〈ヤマト〉砲撃!」

 「一番槍か」

 「〈ヤマト〉の主砲の威力はどれ程なのか、気になりますね」

 「全くだ」

 我先にと〈ヤマト〉が砲撃を行った。48cmという三連装の大口径砲から青白い3本のエネルギービームが、ガトランティス前衛艦隊に突き進んでいく。やがてその青白い3本のエネルギービームはガトランティス巡洋艦に命中し、轟沈に追いやった。
 
 「おぉっ!」

 「見事ですね」

 スヴェートと艦長代理は驚愕し、思わず歓声を上げてしまった。流石は母なる地球。主砲威力は一線級だ。〈ヤマト〉に遅れまいと、スヴェートは全艦に命令を下す。

 「全艦、砲撃開始!仕返ししてやる、受け取れガトランティス!」

 「ラジャー、ラジャー」

 アクラメイター級改〈スラクル〉、アクラメータ級、ボレアス級TEミサイル駆逐艦Ⅱ型、AC721重量級支援駆逐艦Ⅱ型、AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型。その全てのブリリアンス艦の砲塔が一斉に前方の敵艦隊へと指向される。

 量産型機関を搭載する艦の砲塔内に赤いビームが煌めく。それはオリジナル機関を搭載するアクラメータ級改〈スラクル〉も同じで、砲塔内を蒼いビームが煌めく。

 ブリリアンス各艦の砲口が煌めいた直後、ビームが迸る。ブリリアンス艦は重粒子砲を斉射したのだ。

 重粒子砲を装備していないガーディアン級Ⅱ型はミサイルを発射。ボレアス級Ⅱ型は重粒子砲を斉射しつつ、ガーディアン級に続き対艦ミサイルを発射し、敵前衛艦隊へと向かっていく。

 ガミラス艦隊も同様に攻撃を行っている。無砲身砲塔から赤色のビームを斉射し、魚雷と対艦ミサイルを次々と発射している。

 「敵主力艦隊、発砲」

 敵主力艦隊も〈ヤマト〉が初撃でガトランティス巡洋艦1隻を沈めた時点で、全ての砲門を開いて砲撃を開始。輪胴砲塔によるビームの連射とガトランティス独特の魚雷兵器を次々と放ち、連合艦隊を殲滅しようとしている。

 「敵弾、来マス!」

 交差するビームと対艦ミサイル、そして魚雷は、双方の艦隊へと襲い掛かった。

 ガトランティスは輪胴砲塔による濃密な弾幕を張り、連合艦隊の対艦ミサイル・魚雷を次々と撃ち落していき、被害を抑えようと躍起になっている。

 それは連合艦隊も同様であり、敵から放たれたミサイルと魚雷を自艦に命中しない為に、対空防御を行っていた。ガトランティスの魚雷は量子で出来ているようだが、迎撃出来ない程ではなかった。
 
 連合艦隊は対空防御をしつつ、ガトランティス艦隊に損害を与えることが出来た。その損害について、スヴェートは戦況を見つつ報告を受けた。

 「ガトランティス駆逐艦3隻、ガトランティス巡洋艦4隻ガ撃沈。ソノ他、多数ノ敵艦に小破ト中破ヲ与エマシタ」

 続けて、連合艦隊の被害も報告された。

 「ガミラス駆逐艦1隻ガ撃沈。小破状態ノガミラス巡洋艦ガ1隻、中破状態ノガミラス巡洋艦ガ1隻、小破状態ノガミラス重巡洋艦ガ1隻。我が軍ノ被害ハ小破2隻デ、撃沈ハ0。以上デス」

 無論、敵に与える損害も味方の被害も、これで終わりという訳ではない。ここは戦場。敵に与える損害と味方の被害が発生した場合、そういった更新は必ずある。

 「手を緩めるな、砲撃を継続」

 スヴェートはガミラス艦隊を一瞥する。

 ガミラス艦隊は針路を変えることなく、各艦の判断で回避運動を行いつつガトランティス艦を攻撃。

 一方でスヴェート率いるブリリアンス艦隊は回避行動をしていない。何故ならシールドを展開しているからだ。敵からの攻撃をシールドで受け止め、回避運動せず直進したまま砲撃を行っている。それでいえば〈ヤマト〉も同じであり、今も〈ヤマト〉はガトランティス艦に有効打を与えていた。

 一瞥していたスヴェートは、率直な疑問を頭に浮かべた。

 「何故、ガミラスはシールドを保有していないのだろうか」

 星々の海を航行する文明にとって、シールドはなくてはならないテクノロジーだ。宇宙船にとって他文明からの攻撃を防御するだけでなく、宇宙ゴミや流星塵、高エネルギーを帯びた放射線など、宇宙での日常的な自然現象から身も守る為にも必要な装備となる。

 それが何故、シールドを装備してないのか。率直ではあるが、スヴェートは疑問だった。対ビームコーティングを施している可能性は高いが、施されていたとしても、スヴェートからするとシールドを装備したほうがよろしいのではと思える。

 「ガミラス駆逐艦1隻、撃沈」

 だってほら、輪胴砲塔から放たれた輝く緑色のビームがガミラス駆逐艦の左舷を容易く撃ち抜いたのだ。…撃沈されてしまった。

 そういえばガトランティスもシールドを装備していないようだ。

 シールドを標準装備してない勢力、記憶しておこう。

 「それにしてもアクラメータ級は……はぁ」

 ガミラスとガトランティスがシールドを装備してない件について片付いたスヴェートは、アクラメータ級を見るや溜息を吐いた。

 彼女がアクラメータ級を見て溜息を吐いた理由は、だ。

 アクラメータ級はそれほどの精度を持っておらず、ガトランティス艦にあまり命中しない。砲塔の向きを変えるにも、他戦闘艦と比較すると一番に時間が掛かるのだ。

 その問題を解決したのが、スヴェートが座乗するアクラメータ級改。精度も問題なく、砲塔の向きを変える時間は短縮され、攻撃の面で頼りになった。

 「まぁアクラメータ級は改型ほどではないが、防御だけは頼りになる」

 敵旗艦の前には紙も同然だが、と付け加えたスヴェート。彼女が敵主力ことガトランティス艦隊を再び見ようとした時、B1バトルドロイドから報告が上がる。

 「重力変動ヲ感知。方位〇〇〇、連合艦隊ノ左翼に来マス」

 スヴェートは敵旗艦を見つめた。敵旗艦の双胴艦首からはリング状のウェーブが生まれ、その下部には恒星を彷彿させるように輝くエネルギーがあった。輝きを重ねたそのエネルギーは遂に発射され、作り出したウェーブの内にスッと消えた。

 重力変動を感知した左翼部隊は、回避行動に移行する。ゲルバデス級〈ニルバレス〉率いる部隊とアクラメータ級率いる部隊だ。

 次の瞬間、空間の一画に時空の波紋が生まれた。波紋が中心に集中したかと思えば、その歪みから火焔直撃砲の巨大なエネルギー流が飛び出した。

 ゲルバデス級〈ニルバレス〉部隊は何とか回避出来たが、残念ながらアクラメータ級は命中してしまう。

 「アクラメータ級が!」

 展開していたシールドは紙のようにあっさりと突破され、エネルギー流は装甲を貫通し内部を食い破っていった。アクラメータ級は大穴を形成し、側面には火ぶくれのような爆発跡が内部から出現し、艦後部へと伸びていく。真っ赤な爆発跡が次々と艦尾まで達するとエンジンノズルが吹き飛び、そこから残存エネルギーが飛び出した。

 次の瞬間、アクラメータ級は爆発を引き起こしながら爆沈。爆沈したアクラメータ級からボレアス級Ⅱ型1隻とAC721重量級一般Ⅱ型1隻は離れようとするが、叶うことはなかった。その2隻は巻き込まれたからだ。

 「本艦を除いて、アクラメータ級は全滅か」

 淡々とした口調で言うスヴェートだが、胸中は叫びたい気持ちでいっぱいだった。本艦を除くアクラメータ級が全滅だと!間違いない、敵旗艦はブリリアンスから潰すつもりだ。私に近寄るなー!

 「ボレアス級Ⅱ型〈ボルコス〉、シールド消失シ中破。AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型〈スラス〉、シールド消失シ中破」
 
 被害報告が続く。

 「AC721重量級一般Ⅱ型〈マルタ〉、敵ノ量子魚雷にヨリ中破カラ大破―――イエ、撃沈」

 ガトランティス駆逐艦が放った量子魚雷が、〈マルタ〉左舷に被弾。戦列から落伍しつつも砲戦しようとするが、機関部に異常をきたしていたのか、撃沈してしまう。

 ブリリアンス艦隊の被害は増える一方で、〈スラクル〉を除くブリリアンス艦の多数が小破以上となり、シールドが消失し砲戦するブリリアンス艦は4隻となった。

 「本艦を前に出せ。敵の砲火をこちらに引きつける!ブリリアンス・フィールド全力展開!本艦は防御に徹する!僚艦は撃ちまくれ!…こんなところで死んでたまるか!こっちはベッドで死ぬという夢があるんだ!」

 「えぇ…後半いらない…ギルド長閣下、どんな夢なんです……」

 「この艦はオリジナル機関を内奥に宿しているんだ。安全だ、安全なんだ!」

 「……」

 犠牲を抑えるべく、スヴェートはアクラメータ級改〈スラクル〉を前進させるよう命じた。

 アクラメイター級を戦闘航宙艦として改装された本級は内奥にオリジナル機関―――ブリリアンス・ドライブを宿している。アクラメイター級アサルトシップよりも強固な装甲を持ち、シールドの上位版であるフィールドは量産型機関から作り出されるシールドよりも高出力にして強固。

 敵旗艦による攻撃は1回であれば防御することが出来る…筈、と踏んだからスヴェートは本艦を前進させたのだ。砲火が〈スラクル〉に集中する中、彼女はドヤ顔した。
 
 「ふふっ、無駄だ。その程度の火力で我が艦〈スラクル〉を倒せると思うなよ。我が艦〈スラクル〉は無敵なり!」

 「あ、いや、ギルド長閣下それは―――」



 ―――ガトランティス艦隊旗艦〈メガルーダ〉。

 「大都督、未確認艦隊の敵旗艦と思われる楔型戦艦が突出します」

 「…ほう」

 大都督ダガームは不敵な笑みを浮かべながら、その楔型戦艦を見つめる。同型の2隻の楔型戦艦は火焔直撃砲に耐えることは出来なかったが、お前はどうだ。不敵な笑みを強めたダガームは、友軍の砲火をフィールドで受け続けている未確認―――ブリリアンス艦隊旗艦〈スラクル〉に、火焔直撃砲の狙いを定めるよう命令を下したのだった。 
 

 
後書き
現時点までの連合艦隊の被害(火焔直撃砲を含む):ガミラス&ブリリアンス
『ガミラス』
・【クリピテラ級航宙駆逐艦】2隻撃沈。
・【ケルカピア級航宙巡洋艦】1隻撃沈、小破2隻、中破1隻。
・【デストリア級重巡洋艦】1隻小破。
・【ゲルバデス級航宙戦闘空母】1隻小破。
ガミラス艦隊、14隻の内の3隻が撃沈された。

『ブリリアンス』
・AC721重量級支援駆逐艦Ⅱ型4隻撃沈。
・AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型1隻中破。
・ボレアス級TEミサイル駆逐艦Ⅱ型2隻撃沈、中破1隻。
・アクラメータ級アサルトシップ2隻撃沈
・その他、アクラメータ級改を除く小破多数。
ブリリアンス艦隊、20隻の内の9隻が撃沈された。シールド持っているのに、不思議である。

Qギルド長閣下、宇宙戦艦ヤマトは被害ないんですか?
A知ってて質問するな、宇宙戦艦ヤマトに被害は無い。 
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