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第30話

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第30話となります。
どうぞ、ご覧ください。
 

 
 ───ガトランティス艦隊旗艦〈メガルーダ〉。

 ガトランティス艦隊グタバ遠征軍大都督ゴラン・ダガームは連合艦隊を殲滅する為に、本艦に装備されている新兵器───火焔直撃砲を使用した。

 火焔直撃砲とは、艦首前端の転送投擲機よりエネルギー転送波を放出し、リング状の転送フィールドを形成したのちに射撃を行うことで、任意の座標へ大型ビームを誘導する新兵器。

 つまり、だ。

 新兵器の火焔直撃砲は、相手の射程距離圏外から一方的な攻撃を加える事が可能なのだ。火焔直撃砲の前には回避することすら出来ない……その筈だった。

 「何故だ…っ、何故当たらぬ?!」

 旗艦〈メガルーダ〉の艦橋で、憤るダガームは苛立たしげに大剣を床に突き立てた。1発目と2発目は命中した。だが、それ以降はどうだ。3発目以降からは掠めるどころか、外れることが殆どだった。

 大都督ダガームは、その事に憤っている。連合艦隊は距離を縮めて来ており、火焔直撃砲のアドバンテージが失われつつあるからだ。

 ダガームは知らないが、連合艦隊が火焔直撃砲を回避出来ているのは、宇宙戦艦ヤマトが火焔直撃砲の攻撃予測データを完成させ、連合艦隊に共有されたからだ。

 「大都督!」

 「何だ…!」

 苛立ちを一切隠さないダガームに、オペレーターは驚愕の色を浮かばせながら報告する。

 「静謐の星に、新たな変化が!」
 
 「何…?」

 静謐の星───シャンブロウの表面が崩壊途中であるのは、ダガームは知っている。しかし、新たな変化が起きている事に気づき、彼はシャンブロウに釘付けとなった。
 
 惑星表面が崩れ去ったかと思うと、その中からまるで鳥籠のような骨組みを有する本体が現れた。シャンブロウの周囲は先程まで無かった縦長の巨大構造物が幾つも現れると、灰色の空間に浮かぶ惑星シャンブロウの周囲を大きく取り囲んだ。

 「大都督」

 予想外の展開に呆然としていたダガームだったが、声を掛けられたことでハッと我に変える。声の主は、副長ボドム・メイスだ。

 「丞相閣下より至急電であります」

 「チッ、あの小娘か」

 何故このタイミングで──不満を漏らしたダガームだったが、渋々といった感じで床に内蔵されているホログラム装置の前に立つ。彼は気づかない。一歩後ろで控えている副長メイスが、小さいながらも笑みの色を浮かべている事に。

 「……」
 
 大帝の意向を無視し、ダガームが暴走している旨をサーベラー丞相に報告したメイス。彼はダガームを貶め自分の評価を上げ、グタバ遠征軍大都督の座を狙っていたのだ。

 「…チッ」

 ダガームは、二度目となる舌打ちをした。口を利くのも嫌な相手だが、サーベラーは雲の上に立つ上官であることに間違いない。立体映像だとしても、だ。

 彼の眼前で揺らぎと蒼い陽炎が生まれ、その中心にサーベラーがホログラムで現れた。
 
 「これはこれは丞相閣下。緊急とはいかなる御用件でありましょうか?」

 サーベラーは表情を変えることなく、黒の扇子を突き出しながら冷たい声音で問う。

 「その報───かの星を発見せしは誠か?」

 それを聞いたダガームは告げ口されたのだと知り、一歩後ろで控えているメイスを一瞥した。ただの一瞥ではない、睨みつけての一瞥だ。当の本人メイスは知らん顔をしている。

 「御意」

 メイスに詳細を報告されている以上、ここで誤魔化すことは出来ない。そう悟ったダガームは、恭しく頭を下げるしかなかった。

 「発見には大変な苦労を致しましたが」

 単なる偶然ではあったが、ダガームは戦果を大きくみせるよう声高に言った。

 「即刻、攻撃を中止せよ」

 冷たい声音で命令するサーベラーに、ダガームは頷かなかった。彼は戦っての勝利に拘る為、彼女の命令に納得していないからだ。

 「これは異なことを丞相閣下。(それがし)は後少しで、テロンの戦艦を手に入れるところ。折角の機会をみすみす───」

 「愚か者!」

 首を横に小さく振りながら話すダガームを、サーベラーは一蹴した。彼女はダガームに突き出していた扇子を、惑星シャンブロウに突き出して続ける。

 「テロンの戦艦、ガミロンの艦隊、未確認勢力の艦隊との無意味な戦いをするでない。大帝に献上する星を傷つけて何とするか?!」

 サーベラーが言っている事は正論であり、ダガームに反論する余地は無い。しかし、それでも彼は納得しなかった。

 「しかしですな、丞相閣下。敵に会えば戦って勝利する、それが戦士の本腰というもの」

 ダガームは右手で拳を作り、誇らかな表情を浮かべた。戦わずにして何とする。戦って勝利し、その後にシャンブロウを献上する。ダガームにとって、それが正論なのだ。そんな彼に対し、サーベラーは顎をしゃくって鼻で笑う。

 「所詮は賊の頭目か」

 「…は?」

 ダガームは小刻みに震える。彼を嘲笑うサーベラーは、口元を扇子で隠す仕草をしながら続ける。

 「だから私は、こんな奴を使うのは反対したのだ。馬鹿には無理だ、とな。大帝の気まぐれで貴様をグタバ遠征軍大都督に任命したが、これでは火焔直撃砲も宝の持ち腐れ。科学奴隷に作らせた火焔直撃砲を持つ器ではなかったか」

 「…ッ!」

 口元を扇子で隠す仕草をしている時点で、ダガームの癪に障っていた。小刻みに震えながらも我慢していたが、遂に堪忍袋の緒が切れた彼は吠える。

 「黙れー!!」

 ダガームは大剣を高く上げるや、ホログラムを投影する装置に勢いよく振り下ろした。サーベラーの姿は消え、投影する装置から小さな煙が上がる。

 「ヒッ…!?お、お許しを!…あ」

 ダガームの怒りは収まらない。大剣を握り直すや、狼狽するメイスの首を切り落とした。メイスは痛みを発することなく、最期は床へと落ちていく目で自分の身体を見た。

 「…メイスめ、余計な事を」

 邪魔なものを始末し、もはや彼を制止する者はない。艦橋にいる兵士達は、怯えながらも己の仕事に従事し続けた。

 「大都督、間もなく前衛艦隊が砲撃可能距離に入ります!」

 「30秒後、我が本隊も砲撃可能距離に入ります」

 オペレーターの声に、ダガームは視線を戦場へと戻す。最早サーベラーはどうでもよい。連合艦隊を叩き潰し、静謐の星を大帝に献上するのだ。

 ダガーム自身、この任務に失敗すれば処断されるのは理解し、丞相サーベラーを喜ばすだけに終わることも理解していた。だからこそ、この任務は成功させねばならない。偉大なる大帝陛下と、己の威信にかけて。

 目前に迫る敵を屠ることに専念し、ダガームは艦隊決戦に挑む。

 「パラカス隊を合流させ、敵連合艦隊の側面から仕掛けさせよ。前衛艦隊は左右に展開しつつ攻撃。我ら本隊は正面より〈ヤマッテ〉とガミロンの青虫共、そして未確認艦隊の首を取る!」

 ダガームは大剣を正面に差し出すように構えるや、声高に言い放つ。

 「討ち取れぇい、功名を挙げよ!」

 『ヴァラアアアアアアー!!』

 連合艦隊とガトランティス艦隊との決戦の火蓋が、遂に落とされたのだった。 
 

 
後書き
現状公開可能な情報:スヴェート

名前:スヴェート・ブリリアンス
性別:女性
役職:ブリリアンス・ギルド長
住居:アルポ銀河のサニー星系第三惑星「ブリリアンス星(旧名:地球瓜二つ惑星)」
性質:中立
種族:不明
レベル:100

概要
 VRMMO《world of stars》のプレイヤーにしてヘビーユーザーであり、ギルド長を務める。ブリリアンス・ギルドに属するプレイヤー数は定かではないが、1名居たことは確かだ。黒髪赤眼の女性―――艦長代理がアクラメータ級改型〈スラクル〉に座乗しているが、彼女はブリリアンス・ギルドのプレイヤーではない。又その他ギルド勢力のプレイヤーでもなく、NPCでもない。黒髪赤眼の女性こと艦長代理は、異星人でないのは確か。

 リアルでは職に就いていないスヴェートは、自由を謳歌している。リアルでの生活だが、どうやらお金には困っていないらしい。スヴェートの容姿は《world of stars》のアバターと同じ黒髪赤眼の容姿をしている。名前も同様。

 《world of stars》の種族は不明で、本人は覚えていない。人間種だったか人造人間だったか、定かではない。ただ《world of stars》から現実世界に転移した日、自分の容姿を確認したスヴェートは「人間種か人造人間のどちらかなぁ」程度で、自身の種族に関しては気にしていない。*人造人間は人類種に含まれる。

 転移後から数十年が経過し70代となったスヴェートは老化…することはなく、何故か白髪オッドアイへと変わったのみ。容姿は20代前半のままだ。不老を設定していない筈なのに何故自分は老化していないのか、本人は不思議でしょうがなく「私は異常だ!」と声高に叫んでいるが、実のところ彼女は「反応に困るなぁ」程度でしかない。

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さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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