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第27話「連合艦隊って響がイイよな」

 
前書き
ネオ・代表O5−1です。第27話「連合艦隊って響がイイよな」となります。
どうぞ、ご覧ください。 

 
 ―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉。

 スヴェートは全艦隊に戦闘配置を下令すると共に、艦載機とAC721重量級両用艦に搭載されている護送艦の発艦準備を命じた。

 「ラジャー、ラジャー。全艦戦闘配置」

 「艦載機、ナラビに護送艦ノ発艦準備。繰り返す―――」

 ブリリアンス艦隊には、現代のような形状をする空母は存在しない。しかし、現代のようなであって、存在しない訳ではないのだ。スヴェートが率いる本艦隊に空母は存在しないが、空母としても使用可能な艦種が存在する。

 その艦種こそが、アクラメータ級である。

 アクラメータ級のハンガーベイには艦載機―――ヴァルチャー級ドロイドスターファイターが主に搭載されており、その数は50機。

 ヴァルチャー級は有機生命体―――生きたパイロットを必要としない自律式のドロイドファイターで、遥かに速い反応速度でドッグファイトやアクロバット飛行が可能なスターファイターだ。有人機と違い、シールドを装備していない。

 ヴァルチャー級の設計思想は、数で敵を圧倒する群集兵器としての役割をプログラムされている。数こそ正義、シールドを装備する必要はない。当時のスヴェートはそのように語った。

 ヴァルチャー級の他、SC002型量子偵察機とミストラル戦闘攻撃機を搭載しており、その数は合計10機。

 SC002型量子偵察機の役割は味方艦のレーダー範囲外へ探索網を広げ、敵の早期発見を実現することだ。現在このSC002型量子偵察機は出撃し、索敵活動を開始している。搭載機数は7機。

 ミストラル戦闘攻撃機は2門の速射砲を装備しており、優れた機体性能と合わさって高い空戦能力を有している。搭載機数は3機。

 改型の〈スラクル〉を含め、合計で180機をハンガーベイに搭載している。

 空母仕様ともなればヴァルチャー級150機を搭載可能だが、本艦隊のアクラメータ級には1隻につき60機が搭載。その理由としては、惑星の発見と探索を視野に入れていた関係だった。
 
 敵に艦載機を有しているのか、現時点では分からない。ただ少なくとも、一方的に負けることはないだろう。艦載機の他に、スヴェートが率いるブリリアンス艦隊は護送艦―――サイレントアサシン-装甲型護送艦を有する。

 サイレントアサシンは3門の軽速射砲と4組の加速化高速エンジンを装備し、目標へ効果的に攻撃を与える。シールドは装備していないが、小型火力攻撃に対抗する強化装甲と対ビームコーティングを装備している。AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型の下部に位置する護送艦付加ドックに搭載しており、護送艦2隻が搭載されている。AC721重量級両用突撃艦Ⅱ型は4隻、つまり護送艦は合計8隻が搭載されているのだ。

 そして、艦隊に伝えなければならない大事なことが一つあったのを、スヴェートは忘れてはいなかった。

 「これは重要事項だ。我が艦隊は地球の宇宙戦艦ヤマトとガミラス艦隊、2つの勢力と共闘し、敵ガトランティス艦隊を撃滅する。ヤマトとガミラス艦隊への攻撃は固く禁じる。絶対にするな」

 間違ってヤマトを攻撃してしまっては、積み上げてきた信頼が無に帰してしまう。それは避けたいところだ。ガミラスも含む。

 「艦隊、大気圏ヲ上昇」

 艦隊はシャンブロウの厚い雲に覆われた大気圏内から上昇し、薄鈍色に染まる空間に飛び出した。

 「艦影ヲ確認。未確認デス」

 艦隊の左舷側に、1隻の戦艦が既に浮上していた。間違いない。あれは紛れもない地球の―――宇宙戦艦ヤマトの姿だ。

 「共闘する勢力の1つであり、我が母なる地球の艦だ。敵ではない」

 「ラジャー、ラジャー」

 未確認なのは当然だ。宇宙戦艦ヤマトはブリリアンスのデータベースに存在しない。宇宙戦艦ヤマトは、全長333mの艦体に大口径の三連装48cm砲塔を装備。艦首には薄いオレンジ色の蓋があり、まるで決戦兵器を封じているかのようだ。

 宇宙戦艦ヤマトを見つめていたスヴェートは、感嘆の息を漏らした。
 
 「宇宙戦艦ヤマトノ左舷側に、未確認艦隊ヲ確認。データベースに該当アリマセン」

 「もしや、あの未確認艦隊はガミラスでしょうか?」

 黒髪赤眼の女性―――艦長代理は、未確認艦隊―――ガミラス艦隊を指差しながらスヴェートに問うた。ガミラス艦隊はヤマトと同じく既に浮上していたようで、ヤマトと並ぶようにして艦隊を組んでいた。

 問われた彼女は艦長代理に答える…ことはなかった。

 「おぉ、ガミラス帝国の艦隊」

 スヴェートは、凄い凄い、と瞳をキラキラさせていた。夢中のようだ。

 「…ギルド長」

 艦長代理は人差し指と親指で眉間を抑えた。この人はもう…。

 「聞いたな。ガミラス艦隊も敵ではない」

 「ラジャー、ラジャー」

 スヴェートがガミラスと呼んだ艦の外見は、濃緑色が基調となっている。主砲らしきものに穴が開いていていることから、無砲身であることが分かる。側面から翼のフィンのようなものがある他、艦首に据えられた黄色い開口部の目玉二つあるのが特徴的で、ガミラスの艦は深海魚を想起させた。

 小中大も同じ形状と濃緑色、そして無砲身で統一されているということは、一般的なガミラス艦なのだろう。小が160m、中が240m、大が270m。ブリリアンスではフリゲートと識別されるが地球基準では、小が駆逐艦、中が巡洋艦、大が重巡洋艦もしくは巡洋戦艦となるだろう。

 そのガミラス艦隊の内の2隻は一般的なガミラス艦よりも大型で、また艦色と形状が異なっていた。全長が390mで幅が67mあるそれは、双胴型のような形状であり、空母と戦艦の間に位置しているような艦種だ。戦闘空母と呼称されるであろうガミラス戦闘空母は2隻とも艦色が異なっており、片方は深緑一色、もう片方は赤を基本色としつつ白と黒の迷彩柄を入れていた。

 おそらく、赤を基本色としつつ白と黒の迷彩柄を入れたガミラス戦闘空母が、ガミラス艦隊の旗艦なのだろう。

 地球の宇宙戦艦ヤマトもそうだが、ガミラス艦隊は敵ではない。反応で分かる。

 「ふふっ、強大な敵に対し3つの勢力が共闘する…連合艦隊の誕生だな。なんと熱い展開、素晴らしい」

 「……」

 青筋を立てそうになる艦長代理。スヴェートは、ガミラス艦隊に夢中過ぎて気づいていない。
 状況を分かっているのだろうか、ギルド長は。貴女がそれだから、私が一緒に居るんですよ。信じられるだろうか。このディスコミュニケーションなギルド長は、こんなでもブリリアンス・ギルドの長なのだ。

 ふぅ、と息を整えた艦長代理は、微笑みの色を浮かべせながら大きな声音でスヴェートに問うた。

 「ギルド長閣下」

 ん?、とスヴェートは艦長代理に振り向く。気づいてよかった。

 「そのガミラス艦隊の内に、貴女が信頼関係を築くことが出来た者はおりますか?」

 スヴェートは一周間、ホテルで生活していた。であれば異星人とはいえ、ある程度の信頼関係を築くことは出来た筈だ。異星人―――ガミラス人だけではない。地球軍の者達とも、信頼関係を築くことが出来た筈。

 2つの勢力と共闘するのだ。ヤマトとガミラス艦隊旗艦に連絡を取る必要がある。

 「ガミラス人のフォムト・バーガーと地球人の古代進」

 「ガミラス人のフォムト・バーガーと地球人の古代進ですね。ではギルド長閣下、直ぐ連絡を。これから共闘するのですから」

 「勿論だ」

 頷いたスヴェートは連絡を取る為、機器を操作した。私って艦長代理に命令される立場だったか、と首を傾げながら。
 
 「艦長代理、SC002型量子偵察機ヨリデータ来マシタ」

 艦長代理はスヴェートより離れ、報告して来たOOMパイロット・バトルドロイドの元へ向かった。彼女はモニターを見つめる。この空間に展開しているガトランティスの艦艇と、艦隊の配置をモニターに映し出されていた。

 「データベースに該当が無いのは、当然ですね」

 モニターに地球基準で識別されるであろう駆逐艦、空母、巡洋艦、戦艦が映し出されている。

 駆逐艦は多くの砲台―――輪胴砲塔を有し、白と緑が基調の艦艇。緑の下部と白い上部によって構成されているような構造だ。全長は190m。

 空母は前後左右に昆虫の複眼を思わせるオレンジの部分が不気味に光る。上部甲板中央に直線の滑走路を持っていることから空母であるのは一目で分かるが、空母の割に重武装。重武装空母とも呼べるだろう。全長は334m。

 巡洋艦は空母部分を巡洋艦にしたような艦で、鋭く尖った頭部が上下に並ぶのが特徴だ。ガトランティス艦隊の中核を担っているのだろう。全長は240m。

 戦艦は双胴型のシルエットが特徴で、艦体の三分の一はあろうかという巨大な有砲身の五連装砲台を前甲板に配置している。全長は505m。
 この戦艦が1隻のみということは、旗艦であるのは間違いない。同時に決戦兵器を装備しているのも、この旗艦に違いない。

 ガトランティス艦隊の配置を確認しようとした時、報告を耳にする。
 
 「全機、発艦準備完了。全サイレントアサシン護送艦ノ発進準備ガ完了」

 その報告を帰いた艦長代理は、命令を下した。

 「全機、全サイレントアサシン護送艦、発艦せよ」

 「ラジャー、ラジャー」

 命令が下されたヴァルチャー級とサイレントアサシンは、母艦から次々と発艦していく。飛び立った艦載機は編隊を組み始めた。

 発艦を完了する間に艦長代理は、ガトランティス艦隊の全容を確認する。

 ガトランティス艦隊はシャンブロウを三方向から取り囲んで包囲網を縮めつつある。絶対に逃がさない構えだ。情報では本隊と思しき艦隊37隻、空母を含む機動艦隊10隻、巡洋艦・駆逐艦で構成されている前衛艦隊20隻。数でいえば、連合艦隊よりガトランティス側が上だ。

 艦長代理はガトランティスの配置図を見つめ、敵の意図に改めて気がついた。数では優位なのだが、ガトランティスは作り出した包囲網により、その戦力を分散させていた。

 事実、ガトランティスは、艦隊を3つに分散していた。前方に前衛艦隊。前衛艦隊の後方に本隊。そして、かなり距離を離した右翼後方には機動艦隊。となれば、だ。連合艦隊の全戦力を以って敵本隊に集中すれば、各個撃破が可能となり、勝機は見えてくる。

 しかし、旗艦が居ない艦隊に戦力を集中してしまえば、戦力の浪費…下手すれば後背を討たれる可能性だって考えられる。

 したがって、全ての航空隊と護送艦は右舷の機動艦隊に当てるべきだと、艦長代理は思う。ガトランティスの航空戦力がどのくらいかは判明していないが、これらの航空戦力であれば勝てる見込みはあるだろう。

 更に、だ。

 アクラメータ級から航空戦力を次々と発艦させている最中、ガミラス戦闘空母と宇宙戦艦ヤマトから次々と艦載機を発艦し、編隊を組む。

 ブリリアンス・地球・ガミラスからなる合同航空隊。発艦した艦載機の数は複数。敗北の可能性は低くなった。

 「艦長代理」

 方針を決めた艦長代理はそれを提案しようとした時、ギルド長スヴェートから声を掛けられた。通信が終わったようだ。

 「ギルド長閣下、提案があります。―――」

 艦長代理は己が考えた方針を提案した。右翼より近づく機動艦隊を合同航空隊で以って迎撃し、連合艦隊は前衛艦隊と本隊を叩く。自分が考えていたその内容は、通信でも交わされたことだろう。

 でなければ、だ。

 「うむ、通信と同じだ」

 ギルド長スヴェートは即答なんてしない。そして、合同航空隊はそのまま機動艦隊へと向かうことはない。

 「ではギルド長閣下、指揮を」

 「フっ、任せろ」

 艦隊の指揮を再び執るスヴェートは通信で交わした内容を艦隊に共有させ、命令を下した。

 「全艦、戦闘隊形」

 「はっ」

 「ラジャー、ラジャー」

 戦闘隊形へと移行していく艦隊を観た艦長代理は思う。

 「(なるほど、この陣形であれば艦隊に支障はないですね)」

 高度な連携が望めないからこそ、出来る陣形だ。当然ながら〈ヤマト〉とガミラス艦隊との連携が未経験で、合同訓練なんてしたことがなかった。

 それを考慮した結果、〈ヤマト〉を中央に据え置き、〈ヤマト〉の上にアクラメータ級1隻、左舷にアクラメータ級1隻と【ゲルバデス級航宙戦闘空母】〈ニルバレス〉、右舷にアクラメータ級改〈スラクル〉と【ゲルバデス級航宙戦闘空母】〈ミランガル〉が並び、その外側に向けてブリリアンス艦とガミラス艦が進む。スヴェートが通信で交わした打ち合わせ通りだ。

 「5分後、敵艦隊ト交戦予定」

 史上初、地球・ガミラス・ブリリアンスの共闘が今、始まろうとしていた。


 ―――ガトランティス艦隊旗艦【メダルーサ級】〈メガルーダ〉。

 「ガミロンの艦隊を確認!ヤマッテも確認しました!」

 「大都督、敵艦隊の内に未確認艦隊を確認!」

 「グハハッ!ヤマッテを見つけたり!」

 スクリーンには連合艦隊を映し出されていた。「ガミロン」「ヤマッテ」と発しているが、正しくはガミラス艦隊とヤマトのことである。「ガミロン」「ヤマッテ」と発してしまうのは、自国の言葉に合わせようとした結果だった。

 ダガームは酒をラッパのみしながら、獰猛な笑みを浮かべていた。遂にヤマトを見つけた。未確認の勢力が居るようだが、知ったことではない。だが折角だ。未確認の勢力にも、【新兵器】の前には無力であることを知らしめてやる。

 ニヤリっと笑ったダガームは酒を床へ投げ捨て、声高に言い放った。

 「【火焔直撃砲】、発射準備!」

 艦橋に並んだ太鼓が打ち鳴らされ、発射に向けて次第にテンポは速くなっていく。

 「回せー!」

 号令を受けて艦体下部のロックが次々と外され、新兵器―――【火焔直撃砲】の本体である巨大な筒がガコンと下ろされる。艦橋では鉄仮面を被った男達が発射準備を為に、忙しく動き回っていた。オペレーターの1人が、コンソールから出ている大きなレバーを下ろす。

 スクリーンには着弾点がX点で表示され、各艦に共有された。

 「薬室内、圧力上昇!」

 「相対着弾座標を入力!」

 オペレーター達が大きな声を上げる。

 「エネルギーダンバー、起動!」
 
 瞬間、双胴となっている艦体の艦首部分が光り始め、【火焔直撃砲】の付近にあるユニットが回転を開始。エネルギーが充填されていく【火焔直撃砲】からは、キュィィンー!という音が高鳴っていた。

 「照準を合わせー!」

 艦橋に響くオペレーターの声に、3人の男が反応してダイヤルを回す。ほんの少しの挙動で次々と変化する複雑な数値を、3人の男が合わせていく。

 双胴艦首に搭載されている装置から、リング状のウェーブが生み出される。波は次第に速くなり、音は急激に高音へと変化していった。

 「【火焔直撃砲】、発射準備よし!」

 オペレーターから発射準備完了が報告される。目をカッと開いたダガームは声高に言い放った。

 「【火焔直撃砲】、発射ァー!」

 発射指示を下されたと共に、砲撃担当オペレーターは発射機のトリガーを引く。フロントロック式のような撃鉄が後方から前に進み、火花が散った。

 【火焔直撃砲】の前には恒星を彷彿させるように燃える丸い輝きが生まれ、その輝きは…ウェーブの中でスッと消えていった。
 
 まるで不発のように見えるかもしれない。…違う、不発ではない。

 「グハハッ!」

 不発であるなら、大都督を含む者達は狼狽える筈だ。それがないということは、成功したのだ。そして、不発と思われた【火焔直撃砲】は……連合艦隊の前へと”跳躍”した。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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