現実世界は理不尽に満ちている!
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第28話
前書き
ネオ・代表05−1です。第28話となります。
どうぞ、ご覧ください。
―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉。
キャプテンシートに座る白髪オッドアイの女性―――スヴェートは、ゆったりとした動きで足を組み替えた時、報告を耳にした。
「5分後に、連合艦隊は敵ガトランティス艦隊を射程圏内に収める予定です。SC002型量子偵察機の新たな報告によりますと、合同航空隊は間もなく敵艦載機編隊と会敵するとのことです」
スヴェートが座るキャプテンシートの左後ろには、黒髪赤眼の女性―――艦長代理が控えるように立っていた。
「そうか」
スヴェートは顔を動かさないまま告げ、ガトランティスの主力艦隊を見つめた。連合艦隊が撃滅する敵をだ。敵主力艦隊を見つめながら、彼女は艦長代理に問うた。
「勝てると思うか?」
平然と聞いてくるその質問に、艦長代理は直ぐ答えた。
「保証は出来ません」
「当然だな」
スヴェートは、小さい笑みを浮かべながら目を閉じた。分かっていた返答だったが、聞かずにはいられなかった。宇宙戦艦ヤマトやバーガー含むガミラス人からすれば、ガトランティスは未知の相手ではないのかもしれない。
しかし、我々ブリリアンス・ギルドにとっては未知の勢力だ。勝てるかどうか、それは断言は出来ない。
スヴェートは目を開けた。ならば負けない為に、最善を尽くすしかない。メインスクリーンに視線を戻し、ゆったりとした動きで脚を組み替えた時だった。
「〈ヤマト〉左舷前方に、重力変動ヲ感知」
その報告に、スヴェートは身構える。
「敵艦ノワープアウト反応デハアリマセン」
身構えていたスヴェートだったが、その報告に首を傾げた。ワープではない?ではこの重力変動はいったい…。
OOMパイロット・バトルドロイドは続けて報告しようとした瞬間、事態は次のフェーズへと移行した。
空間の一部がユラリと歪んだかと思うと、白熱化した巨大な炎の柱が出現。出現したそれの目の前を航行していたAC721重量級支援駆逐艦Ⅱ型は、そこから現れた巨大な光に飲み込まれるようにして爆破していった。突如として現れたエネルギー流の塊は、AC721重量級支援駆逐艦3隻以上の幅を持つ程に巨大だった。
1隻のAC721重量級支援駆逐艦Ⅱ型を飲み込んだエネルギー流は、スクリューして走る小型の火山弾のような火炎を周囲に伴う。
「ふぁ!?」
「…!?」
驚きのあまり、スヴェートはキャプテン・シートから勢いよく立ち上がる。艦長代理も驚いており、目を見開いていた。
竜のように長く続くエネルギーは衰えることなくそのまま進み、1隻のガミラス巡洋艦―――【ケルカピア級】の上を走った。直撃こそは間逃れたものの、そのエネルギーは通常のビーム兵装より遥かに高い熱を帯びているらしく、近くを航行していただけでにも関わらず【ケルカピア級】の上部構造物が発火し始めていた。
スクリューしていた小型の火山弾が、【ケルカピア級】の胴体中央部に命中する。かなりの質量を持っていたのか、命中した【ケルカピア級】は「く」の字に曲がった直後に跡形も無く消し飛ぶ。
更に、だ。
エネルギー流の横を航行していた2隻のブリリアンス艦―――ボレアス級TEミサイル駆逐艦Ⅱ型とAC721重量級支援駆逐艦Ⅱ型も、同じ目にあった。
突如として現れたエネルギー流は連合艦隊を突き抜けて、惑星シャンブロウに着弾した。
「全艦、シールドを展開。本艦はブリリアンス・フィールドを展開せよ」
突如として現れたエネルギー流に対し、落ち着きを取り戻したスヴェートは即座に対応する姿勢を見せるた。
「いったい、どこから攻撃を。電探、発砲位置を特定しろ」
電探担当のオペレーターは、レーダーの記録をレコーダーで遡って確認していく。
「ア〜、敵ノ弾道ヲ解析出来マセン。突然ト空間に出現シタトシカ」
「突然と、か」
スヴェートは考える。アウトレンジ攻撃が可能な兵器を保有しているのは分かっていたつもりだが、まさかこれ程だったとは予想外だった。この攻撃はおそらく敵旗艦からの…いや、断定的に敵旗艦からだろう。
先の攻撃はおそらく直線的で、ワープの一種だと考えるべきだ。敵旗艦の砲撃開始時点からエネルギー流の出現ポイントまで直線で結ばれたのだろう。
「予想外でしたね」
そう短く呟いた艦長代理だったが、彼女も同じ事を考えていたようだ。付け加えるならば、何故予兆はおろか高熱源反応すら観測出来なかったのか、強く疑問だった。
「前方、射程圏外に艦影ヲ確認。敵ガトランティス艦隊デス」
レーダースクリーンに反応が現れるや、メインスクリーンには最大望遠で映し出された敵主力艦隊。それを見つめるスヴェートは、敵旗艦を見つけた。
「敵旗艦ヨリ高エネルギー反応ヲ確認」
「全艦、シールドを最大出力。本艦のブリリアンス・フィールドもだ」
スヴェートは睨みつける。見せてみろ、と言わんばかりの目つきだ。
敵旗艦の双胴艦首からはリング状のウェーブが生まれ、その下部には恒星を彷彿させるように輝くエネルギーがあった。輝きを重ねたそのエネルギーは遂に発射……された筈なのだが、向かってくる気配が無い。
「不発、か?」
「そう願いたいものですね」
スヴェートは顔を艦長代理に向けつつ、スクリーンを観ていた時だ。
「〈ヤマト〉上方に、重力変動ヲ感知」
次の瞬間、空間の一画に時空の波紋が生まれた。波紋が中心に集中したかと思えば、その歪みから先程見た巨大なエネルギーが飛び出した。
「不発ならどんなによかったことか…」
「この目で観なければ、ワープするエネルギー流を我々は信じなかったことでしょう」
巨大なエネルギー流は、〈ヤマト〉の上を航行するアクラメータ級に命中する。
「アクラメータ級のシールドが破られた!?」
「量産型機関を内奥に宿しているアクラメータ級ですが、それでも次世代型の筈です。ですが、どうやらあの兵器の前には紙シールドのようです」
「紙シールド…」
「悲しいことに、これが現実です」
このアクラメータ級はシールドを展開していたのにも関わらず、紙のようにあっさりと突破され、エネルギー流は装甲を貫通し内部を食い破っていった。
アクラメータ級の正面には大穴が形成され、側面には火ぶくれのような爆発跡が内部から出現し、艦後部へと伸びていく。真っ赤な爆発跡が次々と艦尾まで達するとエンジンノズルが吹き飛び、そこから残存エネルギーが飛び出した。
次の瞬間、アクラメータ級は爆発を引き起こしながら轟沈した。
「…oh」
スヴェートは口元を引き攣らした。ヤバい、ヤバ過ぎる。一方的だ。回避しようにも、あの兵器の前には回避しようがない。あの兵器の前には、シールドは紙だ紙。オリジナル機関が作り出すブリリアンス・フィールドであれば耐えられる”かも”だが、自信を持てない。どうしろと…。
スヴェートが頭を悩ませていた時、〈ヤマト〉から通信が入っている事が報告される。デフォルトであるクールな顔つきとなった彼女は口を開いた。
「通信回線を開け」
〈ヤマト〉であれば、何か打開案があるかもしれない。スヴェートが通信回線を承諾したのは、その為だった。一番は、地球だから断る訳ないさ的な面が強かった。
ノイズが走るや、1人の男がメインスクリーンに映し出された。古代だ。彼は簡易宇宙服の役割も持つ軍服の上に、ジャケットを羽織っていた。
『こちら〈ヤマト〉。敵の攻撃予測データを送る。全艦リンクして、攻撃に対処されたし』
古代が言うには、だ。攻撃予測データなるものは73%の確率でアウトレンジ攻撃を予測可能で、それを頼りに回避するとのことだ。とはいえ残りの27%という確率で、例の兵器で直撃されてしまう。
「感謝する」
古代が消え、通信が切れるのを見届けたスヴェート。
攻撃予測データにより回避出来る確率が、七割もあるのだ。スヴェートからすれば、それで充分だった。彼女は〈ヤマト〉が解析した攻撃予測データを、全艦にリンクするよう指示を出したのだった。
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
ページ上へ戻る