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第26話
前書き
ネオ・代表05−1です。第26話となります。
どうぞ、ご覧ください。
ガトランティスの攻撃を受けている惑星シャンブロウは、崩壊しつつあった。周囲に着弾した爆発炎―――エネルギー流によって、世界が変容していく。
スヴェートを含む者達が居た内部空間にも攻撃は達し、ジャングルだった場所が水のような液体へと変化し、世界樹は地鳴りと共に迫り上がっていく。あちらこちらで発生している巨大な水柱が、内部の物を流す。
この歪められた空間で何が起きているのか、把握することは難しい。分かっているのは、シャンブロウが巨大な宇宙船で、古代アケ―リアスによって造られたということ。そして、滅亡したとされたジレル人は実は滅亡しておらず、シャンブロウに隠れていた。
この崩れゆく世界が、どのように成り立っているのかは分からない。オーバーテクノロジー、と納得したほうが頭が痛くならずに済むとスヴェートは思う。実際、オーバーテクノロジーなのは間違いではないだろうから。
遂に戦艦大和内部のホテルから脱出することが出来た。後はシャトルに乗り、艦隊に戻る。スヴェートは、後部甲板に着陸していたシャトルに乗り込んだ。古代達・バーガー達は、同じく後部甲板に着陸していたそれぞれの内火艇に乗り込んだ。先に飛び立ったのはスヴェートで、次は地球の内火艇、最後にガミラスの内火艇だ。
ガトランティスの攻撃によって開けられた穴を抜け、惑星表面を目指す。
「ふぅ」
息を吐いたスヴェートは、コックピットから周囲を見渡した。周囲には、ナイアガラの滝のように豪快に水が落ち、戦艦大和を含む全てが水流に飲み込まれていた。
「…アケーリアス、か」
スヴェートは目を閉じた。
惑星表面に到達し灰色の空間へと出たシャトルは、誘導管制に従い艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉のハンガーに着艦した。
―――ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉
「スヴェート様ノ帰還ヲ確認」
「そうか」
仁王立ちする黒髪赤眼の女性―――地球人と同じ肌を持つ艦長代理はスヴェートが無事に戻って来たことに安堵し、胸を撫でおろした。艦長代理は命令を下す。
「全艦隊、発進準備」
「ラジャー、ラジャー」
各艦が発進準備に取り掛かる。あれ程までに制御下から外れていたというのに遂先程、惑星表面に異変が生じるや、外部からの制御が無くなった。いったい何が起きているのか分からないが、制御が戻り、スヴェートが帰還したのだ。理由は何であれ、喜ばしいことだ。
ふと、ブラストドアが開かれる音が聞こえた。艦長代理は振り向く。
「シャンブロウから戻った」
ブラストドアが完全に開かれるや、艦橋に入るスヴェート。彼女は艦長代理のもとに向かった。
「シャ、シャンブロウ?」
聞き捨てならない事を聞いた艦長代理は、スヴェートの言葉を反復してしまう。今なんと言った。シャンブロウだと?
「あぁ、シャンブロウ」
なるほど、シャンブロウか。…いやいや、納得出来ないのですが。?がいっぱいの艦長代理に、スヴェートは語る。
降下した惑星はシャンブロウであり、アケーリアスにより造られた巨大な船。我々を誘ったのは、滅亡された種族とされたジレル人。ジレル人は滅亡しておらず、長い年月の間この次元の狭間で隠れていた。惑星そのものを通常空間から亜空間へと収納する事で、通常空間から隔離。
内容は以上だった。
「なるほど、理解しました。しかしアケーリアスですか、聞いたことがない。アケーリアスとはいったい?」
「創造主」
「なるほど、創造主ですか……創造主?」
「創造主」
「……」
艦長代理は目が点となった。創造主とはいったい。ギルド長、毎度のことながら言葉不足なのですが。そう思いながら困惑する彼女に、フッと笑みを浮かべた。
「創造主だ!」
笑みを浮かべた直後、キレた。何故か知らないがギルド長がキレた。
「全知的生命体の創造主!地球人類を含む全ての種族の根源は、1つの種族―――アケーリアス!創造主アケーリアスから地球人類は生まれたんだ!衝撃的だった!アケーリアス凄い!!」
はぁはぁ、と荒くなった息を整えるスヴェート。怒っている、といった負の感情ではない。寧ろ逆の感情だった。艦長代理には分かる。
「…なるほど」
つまり、あれだろう。
同じアケーリアスの遺伝子を持つ知的生命体。ギルド長スヴェート含む地球人も例外ではなく1つの種族―――アケーリアスから誕生した、…ということだろう。
ギルド長が言いたいのは、これで合っている筈だ。アケーリアスに関しては、シャンブロウに来るまで彼女も私と同様に分からなかった。それが、ジレル人によって分かった。
「すまない、取り乱した」
「それほどの事なのでしょうから、無理ないです」
だから大丈夫ですよ、ディスコミニュケーションで少し情緒不安定な貴女には慣れてますから。とは口に出さない艦長代理。スヴェートは自覚していないのだ。自分がディスコミニュケーションで少し情緒不安定なのを。情緒不安定度はそこまで高くはない…筈だ。
ふと、艦長代理は思い出した事があった為、スヴェートに問うた。
「ギルド長閣下、遅かったですね。半日が経ちましたが、何か不測の事態でもありましたか。ジレル人とアケーリアスの時点で、不測の事態ではありますが」
スヴェートは首を傾げた。
「戦艦大和の内部にあるホテルに閉じ込められてな。それにしても半日?一周間ではないのか?」
「一週間?」
「そう、一週間」
「……なんと」
艦長代理は驚いた。戦艦大和があるのも驚いたし、その内部にホテルがあったのも驚いた。だが一番は、時間だ。いったい、どいうことなのだろうか。考えてみるが、答えが出ない。分からないが、事実としてギルド長スヴェートは一週間、閉じ込められた。
「シャンブロウは、アケーリアスに造られた惑星。何ら不思議ではないのだろう。竜宮城で過ごした浦島太郎みたいなものだ」
「不思議なものですね」
何であれ、流れていた時間が違うと艦長代理は理解した。
「シャンブロウでの出来事は後で詳しく話す。それより、現在の状況は?」
スヴェートは問うた。真面目な表情で。
艦長代理は姿勢を正し、スクリーンを起動した。スクリーンに展開されている情報を観つつ、艦長代理は報告する。
「未確認勢力の艦隊が、惑星軌道上に包囲網を敷いてます。陣形などは不明。現在は未知の兵器によるアウトレンジ攻撃を行っており、通常兵器ではないのは間違いありません。発射位置は判明しておりません」
最後に、艦載機を持っているか不明、と付け加えた。彼女はスヴェートの瞳を見つめる。スヴェートは真剣な目つきで観ていた。
「ガトランティスだ」
「ガトランティス?」
ガトランティスとはいったい、と思っていた艦長代理だったが、未確認勢力の正体がガトランティスであるとスヴェートより告げられた。未確認勢力がガトランティス、後で情報を訂正しなくては。
艦長代理は改めて我が艦隊戦力を確認する。
20隻からなる艦隊で、重粒子砲とシールドを標準装備。護送艦をAC721重量級両用突撃艦Ⅱ型に搭載。その内の〈スラクル〉を含むアクラメータ級には、ドロイド・スターファイターを多数搭載している。艦が損傷した場合でも、ガーディアン級支援駆逐艦により補修。
戦隊規模の艦隊ではあるが、それでも戦力として充分。
しかし、だ。
敵ガトランティス艦隊は3倍以上もの戦力を有し、更にはアウトレンジ攻撃が可能な艦を有するのだ。包囲を突破するのは難しい。
ワープで逃げたとしても、ワープの痕跡を辿って追いかけてくるのも考えられるだろう。
ふむ、と思考を続けようとした時、スヴェートから声を掛けられた。思考を呼んでいたかのように、スヴェートは口を開いた。
「勝算はある」
「勝算がある、ですか」
スヴェートの顔は、思いつきで言った訳ではないようだ。彼女は、オッドアイの瞳を輝かせながら続ける。
「このシャンブロウには、2つの勢力が存在する。彼らと共闘すれば、生き残る可能性は高いだろう」
「2つの勢力を信じれと?」
「大丈夫だ、問題ない」
スヴェートはニヤリっとした笑みを浮かべた。
艦長代理は肩を竦めた。今に始まった訳ではないからだ。
「発進準備、完了シマシタ」
OOMパイロット・バトルドロイドが艦長代理に報告した。
「発進準備、整いました」
それを聞いた艦長代理は復唱した。
「そうか。では、ガトランティスを叩き潰すとしよう。全艦隊、発進せよ」
スヴェートの命令でブリリアンス艦隊のエンジンが動き出し、量産型機関から放たれる赤い粒子とオリジナル機関から放たれる蒼い粒子を放ちながら、現宙域を離れていく。
少ししてスヴェートは全艦隊に向けての放送を入れ、マイクを手にする。〈スラクル〉の操舵士、索敵士を除くドロイドはスヴェートの後ろに整列し、言葉を待つ。一呼吸を置いてから、スヴェートは全艦へ向けて言葉を発した。
「旗艦〈スラクル〉より、全ドロイドへ。ガトランティスを叩き潰し、無事に本星へ帰還する」
そこで一呼吸を置き、力強く伝えた。
「我に続け!」
『ラジャー、ラジャー!』
整列していたドロイドは、己の仕事に戻った。
「さぁ、ガトランティスを撃滅しよう」
艦窓に歩み寄ったスヴェートは仁王立ちし、獰猛な笑みは浮かべた。
「そうですね」
その様子を控えるように見ていた艦長代理は、微笑んだ。
後書き
スヴェート「地球(古代達)とガミラス(バーガー達)について言っていなかったが、後でいいか」
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さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!
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