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第25話後半「白銀の守護者」

 
前書き
ネオ・代表05−1です。第25話「白銀の守護者」となります。
前半・後半と分けてお送りします。スヴェートSIDE(一人称視点もある)がメインです。どうぞ、ご覧ください。 

 
 「…ん?」

 スヴェートは違和感を覚え、目を開けた。津波に飲み込まれ、遺憾ながらそのまま死ぬと確信していた。それがどうだ、何故エントランスに立っているんだ?私だけがエントランスに居る訳ではない。周囲には古代、新見、沢村、桐生、バーガー、メルヒも居る。確かに飲み込まれた筈なのだが、全員がエントランスに戻っていた。

 魔法が解けるかのように服装がそれぞれの軍服へと戻り、装備も元通りとなっていた。

 「〈コウノトリ〉との通信が回復しました!」

 相原とバーレンがエントランスに走り込んで来た直後、2人も軍服と装備が元通りとなった。元通りとなっていることに、驚きの声を上げる相原とバーレン。

 「スヴェート、お前…」

 バーガーがコチラに顔を向け、驚きの色を隠せずにいた。彼の視線の先は、スヴェートの肌だった。

 「ガミラス人じゃ、ないのか」

 その視線を受けたスヴェートは淡々とした口調で告げた。

 「ガミラス人とは一言も言っていない。肌を見れば分かるだろう。まぁ、何故か蒼い肌だと認識されていたようだが」

 バーガー含めた一同は、スヴェートが自分達とは違う第三勢力であると認識した瞬間だった。
 
 彼女はちょっとだけ寂しかった。古代達に「君も地球人なのか?!」ともしも問われた際、カッコいいセリフを言いたかったのだ。なんか第三勢力と認識されているようだが、これはこれで嬉しい。いつか「実は地球人なのだよ」と明かしたいものだ。

 …まぁ、実際に第三勢力のようなものなのだが。

 そう考えていた時だった。彼女は気づく。エントランスが本来の姿を取り戻しつつあることを。彼女だけではない、この場に集う全員がその変化に気づいた。

 「なんじゃ、あれは…!?」

 バーレンが驚きの声を上げる。エントランスが本来の姿へと戻ったことではない。本来の姿へと戻ったエントランスの一角を見つめた為だった。

 メルヒはバーレンが見つめていた”何か”へ駆け寄った。”何か”は人で、複数存在し、誰もが倒れていた。倒れている彼らは、ヘルメットを被り軍服を着用していた。

 「コ、コイツラっ、ガトランティスです…っ!」

 ガトランティス?

 スヴェートは首を傾げた。初めて知る勢力だ。何故か古代達とバーガー達はガトランティスとやらへ、警戒心の中に敵意を向けているようだが、ガトランティスとは敵対関係にあるのだろうか。…それにしても、だ。…コイツラ、死んでやがる!それも白骨化!地獄の様相を呈している光景に、声高に叫びたい気持ちでいっぱいだ!

 「君がやったのか?」
 「お前がやったのか?」

 被った、言葉が被った。スヴェートはそう思っていたが、彼女のその言葉には「私も殺すのか!」が含まれていた。殺すなよ殺すなよ、内心でビビリつつも祈るスヴェート。

 問われた黒幕女は、返答する。

 「この星の力を利用しようと乗り込んできた者達。私から誘ったのではない。それに、私が殺した者は1人もいない」

 「こんなにもッ、白骨化したガトランティス兵がいるじゃねぇか!」

 メルヒが叫ぶ。
 黒幕女は冷ややかに続ける。

 「外界との連絡を閉じただけ。たったそれだけで彼らは疑心に駆られ、そして殺しあった」

 「あ、当たり前だろう!こんな所に閉じ込められたら、誰だって―――」

 続けようとしたメルヒを、黒幕女は遮った。

 「貴方達が魔女と呼ぶジレルの民なら、お互いの心が分かり合えるから、こんな事にはならない」

 「ジ、ジレルだと…!?」

 身を引く古代達とバーガー達。
 身を引きそうになったスヴェート。まさか、黒幕女は…。

 黒幕女は、姿を変えた。いや、元の姿に戻ったが正しいだろう。薄い灰色の肌をし、床に届きそうな程の長い白銀の髪、エルフのような耳、服はマーメイドスタイルの黒基調のドレスとなった。顔を含め、体表にはジレル人の特徴である模様が確認出来る。聡明な印象を与える彼女は告げた。
 
 「我が名はレーレライ・レール。この星は我らジレルの聖地。我が始祖アケ―リアスが造りし、天の船シャンブロウ」

 「やはり、ジレル人」

 白銀の守護者と呼ぶべきか。…いや待て、レーレライは何と言った。シャンブロウだと?…やったぞ、探していたシャンブロウが遂に発見!スヴェートは歓喜した。無論、彼女は内心にて歓喜した。

 スヴェートが歓喜している中、バーガーがレーレライを睨みつけた。

 「手の込んだ真似をしやがって。ネレディを何処にやりやがった。無事だろうな!」

 バーガーの言う通り、ネレディアは何処に。初めからいなかったりしてな。歓喜の中から帰ってきたスヴェートは疑問に思った。

 レーレライの瞳が更に輝く。

 「元より、此処にはいない」

 「なんだと?」

 「この世界の外に居る。彼女は最初からこのホテルには来ていなかった。あの紫の船から連れ出したのは、あなた達3人だけ」

 レーレライの言葉を聞いたバーガーは安堵の息を吐いた。ネレディが無事でよかった。そんな中、古代は口を開いた。

 「記憶を操作した。以前、ヤマトに仕掛けた精神攻撃のように」

 形は違えど、古代達は経験者だったのか。…ジレル人か、機嫌を損ねないよう気をつけねば。スヴェートは決意を固めた。

 レーレライは静かに首を横に降った。こ、心を読まれた!?スヴェートは戦慄した。

 「それはガミラスに帰依し、人を害する為に能力を使用した者達の所業。我らではない」

 「じゃあ、あなた方は…?」新見が問う。

 「故郷滅亡に際し、一握りの者は巡礼の為この地にあって滅びを免れた」

 なるほど、スヴェートは簡単に纏めた。
 滅亡された種族とされたジレル人は滅亡しておらず、長い年月の間この次元の狭間で隠れていた。惑星そのものを通常空間から亜空間へと収納する事で、通常空間から隔離していた。

 そういった事が可能な代物を、私は知っている。
 WOSを長年プレイしている最上位プレイヤーでさえ、重課金しなければ手に入らない代物―――最上位に位置する伝説級の【空間遮蔽装置】と同類なのだろうか?

 なんであれ、だ。…アケ―リアス凄い。スヴェートは畏敬の念を抱いた。ロマンだよなと思いながら。

 「なるほど〜」

 そういえば先程から桐生は何をしているのだろうか。柱や周囲に書かれた文字―――碑文を呼んでいるようだが、それは簡単に読めるものなのだろうか。もしや桐生、言語学者の卵だったりするのか?スヴェートはそう思った。…何故か翻訳機を無しに聞こえるし文字が分かる。…私は転移より異常だ!

 「そんなまさか……貴女は読めるのですか!?」

 レーレライは驚いた。長く暮らしていた私でさえ預かり知らぬ、といった顔をしている。桐生凄いなぁ、とスヴェートは思った。翻訳機も無しに言葉を理解出来たり読めたり、70代であるのに美女のままな私は異常者である。

 レーレライに、桐生はキョトンっとした顔で応えた。

 「古代アケ―リアス語ですよね。ガミラスから貰ったデータに入っていました。翻訳機を作成する時に全て覚えましたから、大体の事は分かります」
 
 桐生は答えながら周囲を見回した。何か探しているらしい。やがて探していたものであろう、透明なコンソールパネルの前に立つ。六角形のそれは、静かな光を放っていた。

 「これかぁ」

 桐生は手をかざす。手をかざすや、パネルに古代アケ―リアス語の複雑な記号が表示された。操作していく桐生。すると、コンソールの一部がすぅぅと下へ下がった。何か別の動力が起動し、機械音は次第に高まっていく。フロアに存在した白骨化ガトランティス兵は瞬時に消え失せ、キラキラと光る粒子に包まれ始まる。

 綺麗だ、とスヴェートは感動した。
 中心に立つ桐生も包まれたが、まぁ大丈夫だろう。取り憑かれたかのように喋る桐生。…大丈夫な、筈だ。

 「銀河に播かれた種……数多の種族、この地に集いて7日後、心を1つと成せ」

 この現象にレーレライは驚愕し、そして絶句していた。
 大丈夫だぞ、レーレライ。お前だけではない。それにしても、銀河に播かれた種とは、いったい…?スヴェートは疑問に思った。

 コンソールは光り輝き、桐生の周りに光りの輪が1つ広がった。巫女の語り手のように、桐生は続ける。

 「輝く光輪に入りて、手を携えよ。同じアケ―リアスの遺伝子を持つ、銀河の同胞よ。さすれば封印は解かれん―――星巡る方舟」
 
 壁や床が光り輝き、魔法陣のようなものが床に出現し、3つの輪が出現する。

 スヴェートは戸惑いながらも解析した。
 え、何、銀河の同胞?どいうことだ。つまり人類を含む全ての種族は、1つの種族―――アケ―リアスからということか?…えぇ、マジかよ。どうりで、クロインは人間と同じだったのか。実験しちゃったけど、宇宙人だしまぁイイか。

 スヴェートが戸惑っているのを知らず、古代とバーガーは頷き合っていた。2人の男は、3つの内2つの輪に入った。

 古代がレーレライに手を差し伸べた。紳士か。

 「君も」

 レーレライの顔に、数本の髪が垂れた。

 「安息の地を捨て旅立つなど、…我らには出来ない」

 そんなレーレライを、古代は彼女の手を暖かく包み込んだ。紳士だ。

 「希望を捨てず、明日を信じよう。滅びを待つ今日より、一歩を踏み出した明日がいい」

 バーガーは頷いた。穏やかな笑みを浮かべたと同時、少し照れくさそうに手を差し出した。

 「…我らの明日、か」

 2人の手を掴んだレーレライは、残り1つの輪に入った。彼女の手は、震えていた。人と手を繋ぐのが初めてなのだろう。彼女の顔は、微笑みの色だった。

 「我が名は、レーレライ・レール。残り少ないジレルの民。我らのことを、覚えておいて欲しい」

 テレパシーではなく、音で言葉を発したレーレライ。一筋の涙が、彼女の頬を伝った。
 桐生は柔らかな笑顔で3人を見つめた後、上を向いた。

 「星巡る方舟……永き眠りより、目覚めん」

 瞬間、3人の足元から光が溢れ出し、祝福するように周囲を回り始める。やがて、光は3人だけでなく全員を包み、心地良い鐘の音が響き渡る。

 「我らの起源……時は巡る……旅立ち……種の保存……再生……誕生……ヒトの形……」

 言い終えた瞬間、光は周囲へ一気に拡散していった。途端に力を失い気絶した桐生が床へ倒れる前に、沢村が支えた。

 この光景、幻想的だな。スヴェートは感嘆の息を漏らす。 
 周囲に散った光は、上空で二重螺旋となり竜のように空へと上がる。光は高く大きく広がり、爆発するように輝いた。

 あ、ヤバい。スヴェートは眩しさのあまり、目を閉じたと同時に、腕で閉じた目を守った。

 「…ん、これは……」

 再び目を開いた時、周囲にあったもの全てが黄昏のように消えていた。エントランスも骸骨もetc…。戦艦大和の甲板上に立っているようだ。全員が居ると思いきや、レーレライの姿だけがなかった。まぁ、レーレライは大丈夫だろう。

 目の前にはジャングルが広がっていたが、来た時と同じ平和のジャングルではなかった。各所が燃え広がり、木々は炎に飲み込まれる。大地は剥がれ、隆起し崩れていく。防空指揮所で観た爆発炎が飛来し、戦艦大和の近辺に着弾した。

 「何が起こっている、攻撃なのか?」

 「そうだ」

 これが攻撃だと?スヴェートは古代に振り向く。

 「ヤマトを襲った時と同じ攻撃だ」

 会話に、バーガーが割って入った。

 「ガトランティスめ、星を破壊するつもりか!」
 
 ガトランティス、か。何者かは知らないが、シャンブロウを破壊せんとするとは。スヴェートは、鋭い目つきでその様子を見つめる。

 「同じ答えに辿り着いた、と捉えてもいいんだよな?」

 「同じ答えだ」古代は頷いた。

 「蛮族を叩き潰してやるぜ!」バーガーはニヤリっと笑みを浮かべた。

 惑星シャンブロウに対して、無差別な暴力を振るうガトランティスに対する想いが1つとなった瞬間であった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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