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第15話「此処は、何処だ…?」

 
前書き
 ネオ・代表O5−1です。第15話「此処は、何処だ…?」になります。
 どうぞ、ご覧ください。
 

 
 「スヴェート様。ワープアウト、完了シマシタ」

 「此処は、何処だ…?」

 ブリリアンス艦隊旗艦アクラメイター級改〈スラクル〉艦橋では、白髮のオッドアイが特徴的な女性―――ブリリアンス・ギルド長スヴェートが、困惑の色を隠せず唖然としていた。

 「これは、いったい…?」

 スヴェートは思わず艦長席から立ち上がり、棒立ちとなる。
 艦橋から見渡す外の景色は、異質だ。艦隊はワープを敢行し、その後はいつも通り通常空間にワープアウトした筈。それが何故…。
 少なくとも私が居る場所は、その通常空間でないことは確かな…筈だ。現状は全く以って分からない。

 で、あれば、やるべき事は一つ。
 現状確認をしなければならない。スヴェートは、青色塗装のOOMコマンダー・バトルドロイドに尋ねる。

 「尋ねt…自分から動いたか、WSOではないからそりゃそうか」

 しかし、尋ねるのは不要のようだ。
 何故ならば、たった今、青色塗装のOOMコマンダー・バトルドロイドから報告がやって来たからだ。スヴェートは聞く姿勢を取った。

 「報告シマス。現在ノ位置、特定ガ出来マセン」

 「特定が出来ない?どういうことだ?」

 スヴェートは目を見開いた。
 
 報告によると、点在する筈の星々その一切が観測出来ないとのことで、この空間は本当に何もない、まさに虚無とも言うべき灰色の空間であるという。
 
 「(確かに。だが完全に虚無という訳ではないようだ。明るいし、先程からも肉眼で視認が出来るからな)」

 スヴェートは索敵士を担当するOOMパイロット・バトルドロイドに、艦隊は無事かどうかを尋ねた。

 「他艦艇は全て健在か?」
 
 「ハイ。ブリリアンス艦隊、1隻モ欠ケテイマセン、全艦健在デス」

 「…そうか」

 スヴェートは、艦隊と逸れなかった事に安堵した。
 とはいえ、現状のところ、帰れるかどうかは定かではない為、まだまだ不安は無いといえば嘘になるが…。
 
 「ワープによる事故か?…機関部に異常はあるか?」

 機関部に異常はないか、スヴェートは別のOOMパイロット・バトルドロイドに尋ねた。

 「機関部に異常ハ認メラレマセン」

 尋ねられたOOMパイロット・バトルドロイドは、スヴェートに返答した。

 機関部に異常は無い。
 それは旗艦を含めた全艦隊にも、それといった異常は無いと報告された。

 とはいえ、だ。
 
 この訳の分からない空間に、いつまでも居座り続ける訳にはいかない。
 スヴェートはこの空間から脱出するべきだと判断し、再度のワープを命じた。
 
 「駄目デス、ワープ出来マセン!」

 「何故!?」

 しかし、何故かワープは出来ないでいた。

 「外部ヨリ干渉、舵ガ言ウ事ヲ利キマセン!制御不能デス!」

 「本当に何故だ!?」

 ワープが出来ないどころか、操舵が受けつけないでいた。

 それだけではない。機関出力も勝手に行われ、乗組員の操作を一切受けつけることなく、航行を始めたのである。

 「駄目デス、機関モ制御ヲ受ケツケマセン!大変ダー!?」

 「勝手に、動くとはな…」

 ブリリアンス艦隊旗艦アクラメータ級改〈スラクル〉だけではない。
 全ての艦艇が制御不能となっていたことに、スヴェートは驚愕せざるを得なかった。

 ブリリアンス艦隊は同じ方向へ艦首を向けると、整然と前進を続けていく。
 それはまるで、何かに吸い寄せられているかのようであり、スヴェートは何故か魔女の話を思い返してしまった。

 ―――魔女の美しい唄声が船乗りを誘い、その魂を貪り食う。
 これは、そのまま再現したかのような展開ではないのか?
 これは、この空間は、もしや魔女が住まう…?

 「マジか…」

 唖然としてしまうのも、仕方がないのかもしれない。
 つくづく運に見放されたのではないだろうか。勝手に動く艦艇に成す術もなく、スヴェートは眺めることしか出来ないでいた。
 いつまで続くのかと思われたが、10分が経とうとした時に新たな変化が現れた。

 「レーダーに感……天体デス!」

 「天体……?」
 
 索敵士が観測した天体の数は、一つの天体のみ。艦隊はその天体に向かっているようで、やがて肉眼でも見える距離にまで差し迫った。

 そこで捉えたのは薄鈍色に輝く惑星で、コマのように真っ直ぐと自転していた。
 北極と南極と思われる場所から強烈なピンクの光を上下に放ち、北半球、赤道、南半球にそれぞれ人ずつ細いピンクのリングを持つ。特に赤道上のリングは巨大で、地球であれば月軌道まで有りそうな大きさを有していた。

 こんな姿の星は見た事が無い、異様な雰囲気にスヴェートは圧倒されていた。

 「…目的地か?」

 スヴェートはこの隔絶された空間の中で、孤立するように存在する惑星に警戒心を抱いた。あの惑星には近づかない方が良いのではと、頭に強く訴えているのだ。

 しかし、だ。
 近づかず離れることなど出来ない。艦艇は、コントロール下から離れているのだから。

 やがてブリリアンス艦隊は、その薄鈍色の惑星の軌道上に着くや降下を開始した。
 何かに引っ張られるようにして、あるいは導かれるようにして、惑星の大気圏内へと突入する。明るかった景色から一変し、暗くなる。

 「全艦隊、惑星表面の調査を開始」

 『ラジャー、ラジャー』

 レーダーや通信系統は無事。
 スヴェートは、惑星表面の調査を艦隊に通達した。この惑星の正体を探る為に。

 「惑星ノ表面ヲ確認、現在ノ高度ハ4200m」

 「惑星、地表面ハ液体デ構成サレテイル模様」

 少しして、前方に巨大な物体が幾つも捉えられた。

 「スヴェート様、前方に浮遊スル物体ヲレーダーガ探知!」

 「……漆黒の十字架、か?それも一つではないな」

 浮遊物体は一つだけではなく、あちらこちらに存在していた。
 まるで巨大な墓標ようで、不気味さを放っていた。

 発見された物体の至近距離に接近するブリリアンス艦隊は、一つの浮遊物体の真横に付けるために減速を開始し、やがてピタリと寄せて完全に停止した。

 停止したと同時に、読めとばかりにサーチライトが漆黒の十字架を照らす。
 
 「ふむふむ、なるほど、地球の古代文字に似ているような文字がズラッと壁面にあると、…全く分からん」

 一拍置いたスヴェートは続ける。

 「どうやら、此処が終着駅らしい。しかし…」

 何者による外部からシステム乗っ取りだ。
 導かれたこの惑星に何があるというのか。いったい、何を目的としてここまで連れて来たのか、スヴェートには検討もつかないし、理解も出来ない。

 「航行システム以外は無事で、通信やレーダー類は今も問題なく機能」

 だがそれは、この空間限定ということ。
 つまり、艦隊は孤立しているということになる。本当、笑いたくなる程に運がない。

 スヴェートはメインモニターを注視する。
 停泊中の位置よりも下方では、稲光がチラホラと見え、何らかの液体で構成されている惑星表面があるぐらいで、それ以上のことは分からず、後は自力で調べるほかないように思われた。

 「仕方ない。直接、調べるとしよう。私自らな」
 
 今回ばかりは、自ら行くしかない。
 何者かは知らないが私を誘ったのだ、こうなれば出会うしかない。腹を括れ!…冒険したいからという気持ちがあるのは、内緒だ。

 「シャトルの準備だ」

 スヴェートは声高に言う。
 しかし、その言葉は自身に向けてでは無い。

 『ラジャ、ラジャー』

 「了解」
 
 自分の後ろで控えているBXコマンド・バトルドロイド数体と【1人の人間】に向けて、スヴェートは言ったのだ。
 
 十数分後、準備させていおいたシャトルにスヴェート達が乗り込んだ。
 彼女達を乗せたシャトルはハンガーベイから出て、下方にある惑星表面へ安全第一をモットーに降下を開始したのだった。 
 

 
後書き
さてさていかがだったでしょうか。至らないところもあるかと思いますが、温かい目で観ていただけると嬉しいです。ご意見、ご感想お待ちしております。次回もお楽しみに!  
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