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金木犀の許嫁

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第二十七話 実家に着いてその十二

「六人全員七十過ぎなんてな」
「昔はなかったの」
「もうな」 
 そうしたことになればというのだ。
「奇跡だったんだ」
「そうだったの」
「だから大人になる人はかなり健康だったんだ」
「健康じゃないと生きられなかったのね」
「丈夫じゃないとな」
 さもないと、というのだ。
「とてもな」
「生きられなかったの」
「それだけ昔は医学が発達していなくてなんだ」
 そうしてというのだ。
「子供はよく死んだんだ」
「はしかで」
「他の病気でもな」
「ちょっとしたことでとか?」
「ああ、本当にな」 
 父は夜空に実際にと話した。
「はしかもそうだし風邪をひいてもな」
「すぐに死んだのね」
「戦前までな」
「そうだったのね」
「子沢山といっても」
 子はかすがいと言われ宝でもというのだ。
「簡単にだったんだ」
「死んで」
「六人いて六人皆お年寄り生きられるなんてな」
 それこそというのだ。
「滅多にな」
「なかったのね」
「若しその人達が七十過ぎまで生きられたら」
 夜空にさらに話した。
「凄かったのね」
「大正生まれの人達がな」
「そうなのね」
「戦争もあったしな」
 秀樹はこちらの話もした。
「尚更だな」
「第二次世界大戦ね」
「戦争に行った人もいるし」
 男の人でというのだ。
「空襲もあったな」
「そうね」
「沖縄は戦場になっただろ」
 あまりにも激しい戦いで鉄の嵐とまで呼ばれた、その激しさと犠牲の多さから連合国側は本土攻撃を真剣に躊躇したという説がある。
「そんな中で皆七十過ぎなんてな」
「そうはなかったのね」
「総帥さんのお家のな」
 ここで父は夜空に話した。
「天理教の教会の信者さんでおられたな」
「そうした人達が」
「六人兄弟でな」
「大正生まれで」
「皆さん七十過ぎまでな」
「生きておられたの」
「ああ、何でもない様でな」 
 その実はというのだ。
「当時を考えるとな」
「凄いことね」
「古い家だとお地蔵さんがあるんだ」
 父はこのことも話した。
「墓石の横にな」
「それは子供の頃死んだ人達のお墓ね」
「ああ、そうしたこともあったんだ」
「それなら」
「昔はな」
「子供が皆育つなんてことは」
「なかったんだ」
 そうだったというのだ。 
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