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金木犀の許嫁

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第二十七話 実家に着いてその十一

「二人欲しいと思って」
「二人生まれたのね」
「有り難いことにね」
 真昼に微笑んで話した。
「そうなのよ」
「そうなのね」
「子供はね」
 朝華は真昼にさらに話した。
「本当に授かりもので」
「授かるかどうかわからないのね」
「それも何時授かるかもね」
「わからないものね」
「そうよ、あと案外ね」
「案外?」
「人って増えないみたいね」
 こうも言うのだった。
「どうも」
「そうなの」
「そう、掛け算で増えるっていうけれど」
 食糧の増産が足し算であるのに対してだ、だから食糧危機が起こるし出産の調整もせねばならないというのだ。
「そうもね」
「増えないのね」
「授かりものだからね」
「だから今少子化になってるの」
「若し掛け算で増えるなら」
 その主張の通りにというのだ。
「結婚する人が減ってもね」
「人口増えるわね」
「そうなってるでしょ」
「そうよね」
 真昼も確かにと頷いた。
「言われてみれば」
「そうはなっていないでしょ」
「そう考えたら」
「そう、人口は実はね」
「掛け算で増えないのね」
「鼠でもね」
 この生きものもというのだ、鼠算から言っていることは明らかだった。
「そうはね」
「増えないの」
「病気や事故で死んで」
「天敵もいるから」
「そう、沢山生まれても」
「掛け算で増えるか」
「そうでもないのよ」
「そうなのね、そして人は」
 真昼は自分達のことをあらためて話した。
「子供は授かりもので」
「案外増えないのよ」
「そういうものなのね」
「昔は子供よく死んだしな」
 秀樹がこのことを言った。
「はしかでもなればな」
「それで死んだの」
「よくな。作家さんの生い立ち調べるとな」
 そうすればというのだ。
「ご兄弟やお子さんがよく亡くなってるぞ」
「それじゃあ」
 真昼は父の話を聞いてこの詩人の話をした。
「中原中也のお子さん達が亡くなったのも」
「あの人は男の子二人だっただろ」
「それでどちらの人も」
「幼い頃にな」 
 中原は二人を随分可愛がっていたという。
「亡くなっているな」
「そうだったわね」
「それはな」
 このことはというのだ。
「当時は普通だったんだ」
「赤ちゃんや子供はよく亡くなったから」
「戦前まではな」
「それが普通だったの」
「大正生まれで六人兄弟でな」
 そうであってというのだ。 
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