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神々の塔

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第七十三話 狼の遠吠えその九

「思わんわ」
「ほなどう思うのかしら」
「有り難いってな」  
 その様にというのだ。
「思うわ」
「そうなのね」
「僕はな」
「そうね、起きた世界の中南米やとね」 
 アレンカールは祖国のあるその地域のことから話した、中南米は起きた世界もこの世界も独特な自然環境であるのだ。
「狼はあまりね」
「縁がないな」
「アンデスにタテガミオオカミはいるけれど」
 それでもというのだ。
「あまりね」
「基本寒冷地の生きものやしな」
「そうよね」
「それでやな」
「中南米にはあまり縁がないけれど」
 こう前置きして話すのだった。
「怖いとはね」
「聞いてたな」
「日本に留学して」
 そうしてというのだ。
「成長する中で狼の実情を聞いて」
「それでやな」
「怖くなくなったわ」
 そうなったというのだ。
「ほんまね」
「そうやな」
「狼はええ生きものやで」
 綾乃ははっきりと言った。
「うちはそう思うわ」
「農業から見てな」
「そやから絶滅したらな」
「あかんな」
「こっちの世界やと」
「野生の狼はおって欲しいな」
「日本でも」
 自分達の国でもというのだ。
「いて欲しいわ」
「ニホンオオカミな」
「こっちの世界やと日本中におるし」
 蝦夷にも棲息している、エゾオオカミでありニホンオオカミの亜種であることはこの世界でも同じである。
「それで蝦夷でも」
「狼はおって欲しいな」
「おらへんと」
「ほんま獣害が増えるからな」
「おって欲しいわ」
「環境を守らへんとな」
 芥川は切実な顔と声で話した。
「生態系も」
「さもないと自分達に返ってきて」
「酷いことになるわ」
「そやね」
「結局人も自然の一部で」
「文明もやね」
「自然の中にあるわ」
 そうだというのだ。
「結局はな」
「対立するもんやないね」
「自然と文明はな」
「むしろ」
 綾乃は考える顔で言った。
「自然の一部やね」
「人がそうでな」
「文明も」
「文明は人が生み出したもんやからな」
「そうなるね」
「若しもな」
 芥川はさらに言った。 
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