神々の塔
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第七十三話 狼の遠吠えその十
「そこを勘違いしたら」
「間違えて」
「大変なことになるわ」
「獣害もそうで」
「他のこともな」
「農業全体がそうで」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「政もな」
「それ全体がやね」
「間違えてな」
「大変なことになるね」
「全部自然の一部や」
「自然の中にあるね」
「そこを勘違いしたら」
そうしたらというのだ。
「ほんまな」
「とんでもないことになるから」
「僕等はな」
「間違えん様にしような」
「そうしてこな」
「塔を出ても」
こうした話をした、狼達はもう彼等のところに来なかった。そうして先に先にと進んでいってであった。
神霊達が待っている階に来た、そこにいたのは。
カエサルであった、カエサルは自ら笑って言った。
「わしが禿げの女ったらしだ」
「ご自身で言われます?」
「こうしたことは自分から言うことだ」
芥川に笑って返した。
「これがわしが神霊になってからわかったことだ」
「そうなんですか」
「うむ、わしはこの通りだ」
その広い額を右での人差し指で指示しつつ話した。
「禿げだ」
「前からきましたね」
「人の年齢だと四十代からな」
その頃からというのだ。
「髪の毛がだ」
「そうなってきたんですか」
「後退いていきな」
「そうなっていますか」
「神霊の力で増毛も出来るが」
そうであるがというのだ。
「それもどうかと思ってな」
「されてへんですか」
「うむ、このままだ」
「髪の毛を維持して」
「神霊の職を務めておる」
そうしているというのだ。
「この頭でな」
「そうですか」
「左様、それに髪の毛がどうでもな」
「関係ないですか」
「わしの資質にな、しかも神霊となってももてておるからな」
カエサルは女好きであったが決して女性に強引に迫る男ではなかった、借金をしてプレゼントをするのが彼のやり方だった。
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