ポケットモンスター対RPG
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第14話:ダンジョンとは?
グートミューティヒは内心呆れた。
「また?」
アムも呆れた。
「あいつもツイてないわね?」
グートミューティヒは、呆れつつも薬剤の青年の見舞いに往った。
「大丈夫ですか?」
「あんたは確か……」
グートミューティヒは予想を大幅に超える重傷を観て、即治療魔法を使用するが、
「彼には既にリザーブを掛けました」
医者の言葉に耳を疑うグートミューティヒ
「上級治療魔法を使ってこれか……そこまでアンチドーテを嫌うか?あの大蛸」
だが、青年の答えは違った。
「違う!」
予想外の答えに軽く混乱するアム。
「……違う?」
「あいつらは、星空の勇者の皮を被った悪魔だ!」
更に混乱するアム。
「なん!?……何でモンスターが天敵である星空の勇者をやんなきゃいけないのよ!」
アムのこの言葉に対し、グートミューティヒは何故か違和感を感じた。
「モンスターが星空の勇者になっちゃダメ……本当にそうか?」
「……はい?」
その時、青年が叫んだ。
「あいつらはモンスターより質が悪いわ!」
そんな青年の叫びで正気に戻ったグートミューティヒは、何故か青年に対して深々と頭を下げた。
「ごめんなさい!」
これには、青年も医師もアムも困惑した。
「……何でアンタが謝る?」
「そうよ。寧ろ感謝される側でしょ!」
「と言うか、君達は誰かね?」
だが、グートミューティヒは青年の今回の怪我に思い当たる節があるのだ。
「いや……俺のせいなんだ……俺が……勇者マドノが例の草原に到着する前にあの大蛸を倒しちゃったから……」
「いやいや。本当に意味が解らない」
「それに、俺がお人好しを気取ってダンジョンを支配するボスモンスターを片っ端から倒しちゃったから―――」
流石にその言い方はムカつくアム。
「おーい、遠回しに自慢ですかーい」
一方の医師の答えは違った。
「ダンジョンを支配するモンスターを倒しただと!?寧ろ良い事ではないか!なのになぜ謝る!?顔を上げたまえ!」
しかし、グートミューティヒは申し訳なさそうに首を横に振る。
「いいえ。それは魔王軍を忌み嫌う者達の考えであって、僕達人間の総意と言う訳ではありません」
医師は軽く混乱した。
「君がボスモンスターを倒してダンジョンを奪還したんだろ?寧ろ胸を張るべきだろ」
でも、グートミューティヒは頭を上げる気は無かった。
「確かに、魔王軍を忌み嫌う人達にとってダンジョンは、魔王軍に奪われた拠点にすぎません。ですが、モンスターを倒して経験値を稼ごうとする人達にとってダンジョンは、経験値がたっぷり入った宝箱なんです。でも、僕はその事を忘れてお人好しを騙って行く先々でボスモンスターを倒した結果、ダンジョンからモンスターが消えてしまい、経験値を稼ぐ為のモンスター討伐を邪魔してしまったんです」
グートミューティヒから聴いた経験値稼ぎを名目とした雑魚狩りの実態に、アムも医師も完全に呆れた。
「何それ?わた、んんー!モンスターは人間の餌かい?!」
「……なんて自分勝手な……魔王軍のせいで生活が困窮したり命を失った者達の事を考えた事が無いのか!?その者達は!」
それを聴いた青年が怒鳴った。
「なら……なおの事アンタは謝るな!」
「え?」
「それって、勇者のレベルが上がるのを待てない人間がいるって事だろ?待たされる側の立場になって言ってくれ!」
それに対し、グートミューティヒはだんまりするしかなかった。
グートミューティヒとアムが向かうは、山賊の頭領に化けたサイクロプスのメスに苦しめられたあの国。
「急にわしに逢いたいとの事だが、いったい何が遭った?」
「無礼を承知で申し上げます。もう1度だけ僕のワガママに付き合って頂きたい」
「と言うと?」
アムが勇者マドノが率いる勇者一行の悪行を色々な演技を交えて説明した。
「何と……では、彼らにとって我が国を苦しめるモンスターや山賊は、今後手に入れる予定の経験値としか見ていないと言うのか?」
「そこで、無理を承知で申し上げます。星空の勇者の居場所をお教え願いたい」
「彼らと戦うと言うのか?」
「マドノ達が行っている経験値稼ぎを名目とした雑魚狩りは常軌を逸しています。アレを野放しにすれば、いずれ必ずポケモンを死滅させます」
マドノの乱暴さに顔をしかめる王様。
「それに、奴らに叩きのめされた薬草狩りの青年については、僕にも責任の一端があります」
「何故じゃ?」
「僕がお人好しを気取って行く先々でボスモンスターを倒した事で、ダンジョンからモンスターが激減して経験値稼ぎの場を奪う形になってしまいました」
「つまり、モンスターからダンジョンを奪取したと言う事じゃろ?良い事じゃないのか?」
「ですが、モンスターが激減すれば経験値稼ぎを目的とした雑魚狩りが困難になってしまいます。僕がそこまで考えて魔王軍と戦っていれば……」
王様は呆れ果てた。
「なんじゃそれは!?ますます何の為に戦っておるのかが解らん」
そして、近くにいた衛兵が王様の代わりに質問した。
「して、もしグートミューティヒ殿がその勇者の面汚しであるマドノを倒したとして、その後の魔王軍はどうする心算で?」
グートミューティヒは真剣な顔をしながら決意をもって答えた。
「マドノを倒してしまった罪は、僕が魔王と戦う事で晴らします!」
「君がかね?」
「僕は元々、ポケモンの待遇改善と僕達ポケモントレーナーの地位向上の為に魔王軍と戦う事を誓って旅をしています!だからこそ、私利私欲の為にポケモンを虐殺する者を許す訳にはいかないのです!」
相変わらずなグートミューティヒのお人好しな性格に、マドノの悪行とは別の意味で呆れる王様。
「無欲よ。まっこと無欲よのう」
その時、衛兵がグートミューティヒの質問に答えた。
「そのマドノ共なら、牛乗りオーガの討伐に向かいましたぞ」
その言葉にアムが反応した。
「牛乗りオーガですって?」
「知ってるのか?」
「常にグレートバイソンに乗っている突然変異オーガよ。住んでる場所も知ってるわ」
だが、グートミューティヒが気になるのは、なぜその事をすんなり教えてくれるのかである。
「白状しますと、そのマドノの言動には我々もムカついていましたので」
「……会った事あるの?」
「ええ。奴らは最初グートミューティヒ殿がこの国に招いたモンスター研究家達を魔王軍の手下と勘違いして攻撃しました」
「そうでしたか」
「その後、我々が仲裁に入りましたが、経験値稼ぎの為なら遅参もやむなしな態度でしたので、我々は彼らと口論になってしまいました」
「……そ……そうでしたか……」
衛兵達の証言を頼りに、アムの案内で牛乗りオーガが巣食う洞窟に向かうグートミューティヒ。
「良いのかい?僕をそこに案内して」
「良いのよ良いのよ(涙)。どうせ私は裏切り者だしね(涙)」
全然大丈夫じゃないアムの案内で牛乗りオーガの許へ向かう中、ホワイトクロウ討伐の際にグートミューティヒを魔王軍の手下と勘違いした男と再遭してしまった。
「あーーーーー!あいつはーーーーー!」
アムは自分が警戒されていると勘違いした。
「おや?この私が怖いの?」
だが、男の指は明らかにグートミューティヒの方を向いていた。
「しかも引き連れているモンスターがバージョンアップしてるーーーーー!」
その言葉に愕然とするアム。
「私じゃないんかい……」
しかし、1人の商人がグートミューティヒを悪者扱いする男を殴った。
「何やってんだお前?そこのお嬢ちゃんは、例の鉱山を奪還してくれた私の恩人だぞ」
そう。
その商人はブラックリッチに宝石採掘用鉱山を奪われたあの商人だった。
「でもでも!あいつはモンスターを召喚して」
「召喚?何の事だ?」
これ以上嘘を言うのは無理だと判断したグートミューティヒは、
「こう言う事ですよ……」
観念したかの様に複数のモンスターボールを投げ、ポワルンやムウマ、そしてフシギソウが出た。
「ほらほらほらぁー!」
だが、商人は騒ぐ男性をまた殴った。
「お前はまた見た目に騙されるのか?人を見る目が無いから、大金を取り逃がすんだよ」
「え?ポケモンを観ても驚かないの?」
それでも男は騒ぐが、商人は完全に無視してグートミューティヒに話しかける。
「そう言う私も古い人間かもしれませんな?そこのお嬢ちゃんとは違ってモンスターの有効活用までは考えていなかった」
予想外の展開にキョトンとするグートミューティヒ。
「はい?」
「私達は今まで、モンスターをただの邪魔者としか扱っていなかった。だがモンスターもまた生き物、モンスターをペットにすると言う考えがまったく浮かばなかった方が変だったのかもしれないな」
これを機にモンスターとの共存を考え始めた商人の言葉に、グートミューティヒは何故か報われた気がした。
「改めてありがとうだよ。お嬢ちゃんのお陰で、新しい未来が見えた気がするよ」
その言葉通り、この商人はポケモンを使った新たな事業を立ち上げて大成功を収めたのだ。
そう……
グートミューティヒがやってきた事は無駄ではなかったのだ。その事を知ったグートミューティヒは、嬉しさのあまり泣き出してしまった。
が、そんな事はどうでもいいアムは、勇者マドノの足取りに関する大事な質問をした。
「そんな事より、勇者マドノがその鉱山に来なかった?経験値稼ぎの為の雑魚狩りに」
「勇者マドノが来たかって?いやー、まるで重役の様な大遅刻をした役立たずしか来てませんけどねぇー」
一見する否定に聞こえるが、アムは勇者マドノがその鉱山を訪れた事を確信した。
(大遅刻をした役立たず……ねぇ。面白い事言うじゃないこのおっさん)
牛乗りオーガLv34
推奨レベル:22
グレートバイソンを乗りこなす突然変異オーガ。
因みに、勇者マドノの予想推奨レベルは33。
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