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ポケットモンスター対RPG

作者:モッチー7
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第15話:悪徳勇者とモンスター

いよいよ星空の勇者マドノが率いる勇者一行の自分勝手で迷惑な経験値稼ぎが度を越え始めたので、それを止めに牛乗りオーガが居る洞窟に向かうグートミューティヒ。
「ここよ」
「ここか?」
目の前の洞窟を指差すアムを視て嫌な予感がするグートミューティヒ。
「待って。今は入らない方が良いかも」
それに対し、いつもの勇ましさが無い事に悪戯心が刺激されるアム。
「あれれぇー?今更怖気付いたのぉー?」
そう言いながら洞窟に入ろうとするアムだったが、
「助けてくれぇー!」
「あー。逃げ出したオーガにぶつかって踏まれるとでも?」
しかし、アムの目の前にいるオーガに訪れた末路は、アムの予想のを大幅に超えていた。
「ライナロック!」
「だあちいぃーーーーー!」
火の最上級魔法であるライナロックを喰らい、アムの目の前で焼死するオーガ。
「あっつ!?」
それに巻き込まれて火傷するアム。
「何々!?あんな狭い洞窟であんな派手な黒魔法を使うか!?」
だが、グートミューティヒの嫌な予感はそれだけではなかった。
「アム……まだ行かない方が良い」
「……は?」
アムがグートミューティヒの方を振り向いたその時、アムの目の前にいたオーガが何者かに引っ張られて洞窟の中に引き摺り戻された。
「あーーーーー!助けてくれぇーーーーー!」
洞窟の奥で行われていると思われる惨劇に、アムは呆然となった。
「……こんな事だったら……逃げるオーガ達に踏み潰された方がマシだった……」
1度その惨劇を観たグートミューティヒは、残念そうに首を横に振る。
「あいつらに……そんな余裕を与える優しさは無いよ」
その時、再び謎の声がグートミューティヒの耳に入る。
「自分を取り戻せ」
「!?」
「自分を取り戻すのだ」
「誰だ!?」
謎の声はアムには聞こえず、グートミューティヒが何故後ろを振り返ったのかが理解出来なかった。
「あの山賊擬きの時から、何かおかしいぞ?」

マドノが入ったと思われる洞窟を探索するグートミューティヒだが……
「……何……これ……」
アムが驚くのも無理は無い。
正に蹂躙だった。
この洞窟に居たオーガ達の惨殺死体しかなかったからだ。
「これがマドノ達の現実だよ。出遭ったモンスター全てを敵とみなし、問答無用で攻撃し、自分の経験値に変える。モンスターには逃げる事すら許されない」
これでは、どっちがモンスターか解らない。
グートミューティヒは他のオーガとは違う死体を発見する。
「ん?これは?」
その死体に触れようとした時、アムがグートミューティヒを突き飛ばしてその死体を抱きかかえた。
「退け!観るな!」
それは、オーガの子供だった。
「くっそ!魔王め……私達モンスターは人間共より優秀な生物じゃなかったのかよぉーーーーー!」
グートミューティヒはアムの背中に背を向け、ただひたすら、アムの気が済むのを気長に待った。
(アムの奴……泣いてる?)
グートミューティヒのモンスターボールを握る手が無意識に力が入る。
(ただ戦うだけでは……何も変わらない。もう誰も殺さなくて良いと言う保証を生み出せる何かがないと……何かが)
だが……
悪意に満ちた経験値稼ぎは、グートミューティヒにアムの気が済むのを気長に待つ事を許さなかった。
「ほう。もう貴様を追い抜いていたのか?」
「星空の勇者……マドノ!」
グートミューティヒの前に現れたマドノ一行は、満足気に満面の笑みを浮かべていた。まるでやり切ったかの様に。
足下に広がる惨劇とは真逆の笑顔に、マドノ一行が堕ちる所まで堕ちた事を悟るグートミューティヒ。
「全て倒したのか?この洞窟に居たオーガを全て?」
一方、マドノはグートミューティヒの質問の真意が解らず、わざとらしく首を傾げる。
「なに寝惚けた事を言ってんだ?こいつらを皆殺しにして良いに決まってるだろ」
モンスターの老若男女、性格個性、殺意臆病の区別をはっきりする意思は全く無く、出遭ったモンスターは全て殺して自分の経験値にする事しか考えていないマドノの台詞に、オーガの赤ん坊の惨殺死体を抱きしめる手が無意識に力が入るアム。
「寝惚けてんのは……お前の方だろ……」
対して、マドノはグートミューティヒが未だにモンスターの中にも人間と共存出来ると勘違いしていると勘違いして、わざとらしく悪態を吐いた。
「お前まさか……人間のクセにモンスターに味方してるのか?これ、致命的な裏切りだぞ!?なあ皆!」
そして、ポケモンと人間の共生共存を夢見るグートミューティヒを嘲笑うかの様にマドノ一行が大声で高笑いした。

アムはマドノに質問した。
「お前らにとって、モンスターは何だ?」
マドノは呆れながら答えた。
「モンスターは何者だだと?お前は馬鹿か!?」
マドノはアムへの興味を失い、そんな事よりグートミューティヒの事である大事な事を思い出した。
「そんな事より……」
「なんだ?」
「功を焦ってダンジョンを占拠しているボスモンスターを倒しまくってモンスター出現率を激減させている大馬鹿がいるらしいが、そこの女装小僧、何か知ってるか?」
それに対し、グートミューティヒは皮肉たっぷりに答えた。
「だにぃ?散々遅刻を繰り返したくせに、今更手柄や名声が惜しくなったか?遅参勇者様」
「ちげえよバカ」
今度は本当に驚くグートミューティヒ。
「なに!?」
「馬鹿みたいにボスモンスターを倒しまくったせいでモンスターの出現率が激減したって言ったろ?つまり、この俺達の経験値稼ぎの足を引っ張ってる人類最大の裏切り者がいるって言ってんだよ」
グートミューティヒは不安そうに頭を抱えた。
「つまり……そう言う事か?」
「どう言う……事だ?」
「つまり、マドノにとって出遭ったモンスターはただの経験値でしかないと言う事か?」
グートミューティヒが言ったマドノ達への質問に……アムは激怒した!
「舐めるな小童が!お前ら全員、この私の胃袋の中に放り込んでくれるわあぁーーーーー!」
怒りに任せて擬態を解くアムを視て、不敵な笑みを浮かべるマドノ。
「お前、ツノクジラが占拠していたダンジョンから逃げたダークマーメイドか?少し遅れたが、お前も倒して俺達のレベル上げの足しにしてやる」
アム程ではないが、マドノが行ったと思われる悪行を思い浮かべてムッとするグートミューティヒ。
「マドノ……この僕が出会った被害者達は、みんなお前の経験値稼ぎを待つ余裕が無い人達ばかりだった。お前らはそいつらの悲鳴を聴いた事はあるか?」
そんな怒りを込めたグートミューティヒの質問に、経験値より手柄や名声を惜しむマシカルはドキッとするが、それ以外の3人は鼻で笑った。
「アホかお前?俺は魔王と戦う定めを背負った星空の勇者だぞ。それが経験値稼ぎをサボってどうすんだ?えー!」
グートミューティヒもアムもマドノ率いる勇者一行を敵と認識した。
「テメェの様な雑魚しか戦わない雑魚が魔王を倒すだと?貴様こそ寝言は寝てから言え!」
「マドノ、モンスターを経験値としか見ていないお前に教えてやる……ポケモンと仲良くなる事がどれだけ得かをな!」 
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