リュカ伝の外伝
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新たなる表現方法の一般公開
(グランバニア城:2階・PONY本社)
リューナSIDE
「いらっしゃおませ。今日もご購入を宜しくお願い致します」
今日も最大太客であるルディーさんが開店一番乗りでお店に来店。
今日の様な日曜日で学校が休みであろうが、小物でも何かあれば即買いする。
それに友好関係も広くて、仲良くなると直ぐにその人物を連れてきて、ご自身が追っかけているプリ・ピーのファンになる様に誘う為のMP+CC購入を勧めてくれる。
今日もプリ・ピー勧誘の餌食になる人物と一緒に来店だわ。
何時もの事だとルディーさんのお連れの方に視線を向けると、そこにはマルティン・ゴライヤー先生の姿が……
「うぉ!」
この店で働くアルバイト……『ニセス・サイモン』君から驚き声が聞こえてくる。
仕方の無い事ではある。
だけども良い事ではないわよね。(お客様を見て驚くなんて)
「ニセス君……」
「あ、失礼しました!」
彼も理解したらしく慌てて頭を下げて謝罪する。
だが当人は変わらず笑顔のままで、一緒のルディーさんも苦笑いでこそあれ気にしてる様子も見受けられない。
お二人とも容姿こそ大きく違いはあるけど、何時も柔和で優しさを醸し出している人物だ。
だからこそ初見で驚いて呻き声を上げてしまうのが悔しい。
先程のバイト君……ニセス君も良い子(私よりも2歳年上)なので直ぐに私と同じ気持ちになるだろう。
「お二人がご一緒に来店なさるなんて珍しいですね。お知り合いだったんですか?」
「うん。僕がね色々と良くしてもらっててね……」
そう言われて恥ずかしそうに頭を掻くゴライヤー先生。
私等は現在彼の事を“先生”と呼んでいるが、彼は私より4歳年上で、昨年度魔技高校卒業している。なので1年前までは“先輩”と呼んでいた。
あまりにも優秀なので、私も起ち上げたばかりの弱小企業ではあるが、我がPONYに勧誘したくらいなのだが、当人から『愛しき女性と一緒に働きたいから俺は魔技高校で働くよ』と断られました。
好きな人が居るのなら仕方がない……そう思ったんですけど、その対象人物が何処にも見当たらないんですよ。
四六時中監視してる訳では無いですから、何処かで仲良くしてるんだと思うんですけど……
あのゴライヤー先生の彼女……気にならないと言えば嘘になりますわよねぇ!
あ、もしかしたら彼女じゃなくて彼氏なのかも?
う~ん……だとしても見受けられないからなぁ。
ゴライヤー先生の周りにはあまり人が集まらないから、男女どちらでも居れば目立つんだけども?
も、もしかしたら……人間ですら無いって事かしら?
何らかの魔道研究に使用する機器に惚れていて、その子と別れたくないから、魔技高校に残る選択をしたのかもしれないわね。
それが解れば、それを買って(もしくは譲渡してもらって)我が社に引き込めないかしら?
ルディーさんから何か聞き出せれば良いんですけど……
それ程広くない店内だから、ルディーさんとゴライヤー先生の噛み合ってない会話が聞こえてくる。
何時もの如くルディーさんはプリ・ピーの素晴らしさを切々と説明しているのに対し、ゴライヤー先生は目の前のMPやCCの性能等を気にしている。
だが互いに気にする事無く楽しそうにしているので、部外者が会話に入り込みにくい。
これが彼の話術なのかもしれないわね。
現状でゴライヤー先生のヘッドハンティングは急務じゃ無いから、今は優良顧客として接しましょう。
(グランバニア王都:東中央地区:ラッセル邸)
午後からのシフトが入っているアルバイトの『ナナフェン・バトゥウ』と交代して、私の今日の仕事は一旦終了。
時間的に昼食なので帰宅して彼氏と一緒に摂ろうと……
私はまだ学生の身分で本来なら魔技高校の近くにある学生用のマンションに住んでいるのだが、この度目出度くお付き合いをしていた男性と婚約が決まり、正式な結婚こそまだなものの同棲をする事となった為、彼氏と共に同棲出来る部屋に探し引っ越し。
彼氏もまだ学生(高等学校4年生)ではあるが、既に宮廷画家としてグランバニア城に勤めているのだが、この国の王様の強い要望で絵(絵画等の芸術作品)の新たなる表現方法を世間に浸透させる計画の『漫画家』と言う聞き慣れない仕事も、この新居にて行っている。
簡単に言えば、全ての職場へ行くのに便利な立地で、防犯対策が十分な物件である事!
なので時折ではあるのだが、彼氏の同僚(上司や後輩も)達と我が家にて食事をする事も……
今日も国内大手新聞社の詠唱新聞社から2人が来ていた。
先程も言ったが私の彼氏は王様の指示で世の中に“漫画”と呼ばれる事になる新たな芸術(絵画等を含めた娯楽の一種)を新聞社を使って広めているからだ。
つまりは打ち合わせを兼ねたランチをしに来てるって事だ。
因みに時折だが王様もランチをしに来る事もある。
そういう時は大体仕事が忙しい時である。
ほぼ避難所と化しているわ(笑)
この国には年に1回しか発行しない様な地方新聞社を含めると、70社程が現在も活動状態にある。
その内の発行部数(及び総売上など)が上位10社が王都に本社を構え営業している。
そんな大きな舞台で私の彼氏は新たなる表現方法の漫画(エンタメ)を展開させている。
芸術に関し私は本当に疎いから彼氏が如何様な活躍をしているのか、いまいちは理解してない部分があるのだが、彼女として凄く誇らしい!
やっている事はそれ程難しい事では無いと常々彼氏から言われている……
簡単に説明すると……作品タイトル『学ぼうぜプ~オン君!』となっており、全くと言ってくらい作品が連想出来ない。
プ~オンと呼ばれてるキャラが主役の作品で、このキャラは見るからに頭が悪そう(実際に悪い)のだが、そんな彼が色々な事を学んでいくストーリー仕立てになっている絵画の連続掲載作品だ。
今回の作品は“四コマ漫画”と呼ばれる部類に入る。
“コマ”とは1コマが1枚の絵で、基本的に4枚の絵で一つの作品として発表する形式なのが“四コマ漫画”である。
そんな作品を彼氏は王様から任されて、『詠唱新聞社』・『竜神新聞社』・『常々情報社』・『最新情報伝達クラブ』の4社に掲載を依頼している。
4社とも内容は同じではある。月曜日・水曜日・金曜日の週3回掲載だ。
新聞に……しかも国内トップ10に入る新聞に掲載するのだから、内容は当然その日に起きた事件や事故などが含まれる……ワケでも無く!
絵を1枚(この場合は一コマか?)描くのに時間がかかる。
それを四コマも描かせるのは、結構過酷な要望だと思われる。
だから基本的には起こった事故や事件は後日のストーリーに組み込むのだが、今日はそれの打ち合わせを兼ねたランチだったのだろう。
王様曰く、
『こうやって新聞を通して発表する事で、“世の中の事”や“識字率”だったり、何より“漫画”とかの事も認識してもらえる。大人のみならず、子供にだって有益なはずだよ』
といって、何時もの王様の如く4社の新聞の隅に掲載をさせている。
私の彼氏も本年度で卒業。
既に宮廷画家として仕事はしているのだが、更に彼氏には新たな役職が用意されている。(勿論、問題などを起こして留年もしくは退学させられなければ(笑))
彼氏……ラッセルは来年度から芸高校芸術部の絵画専攻で新設される『エンターテインメント絵画学』通称『漫画家部』の講師になる事が確定している。
正直言って私には何が何やら……?
でもラッセルは漫画家と呼ばれる職業の目処が立っている王様から直接“漫画”に関してレクチャーを受けており、後進の道標になるべく日夜努力をしているのだ。
そんな男性が私の夫になる……格好良過ぎじゃない!?
後日の事になるのだけれど……そんな格好の良過ぎる男性の家族に私はご挨拶をしなければならない。それは当然の事だろう。
既にラッセルは私の両親に挨拶を済ませたのだ。
私も夫となる人物のご両親に挨拶をするべきだし、まだ一度もお会いした事無いから直接会って挨拶したい気持ちでいっぱいだ……ったのだが、今更だけど不安が出てきたわ。
私は今まで“自分は完璧である!”と、かなりの自信過剰気味で生きてきた。
また、そのくらい自信過剰じゃ無いと圧し潰されそうな環境であったと自己弁護させてもらう。
でもラッセルの努力する姿を見て、私もまだまだである事を痛感!
そんな程度の女が『お父さん、お母さん。俺はこの女性と結婚します』と私を目の前に連れて行ったら、如何な反応をするのか……?
不安過ぎてお腹が痛くなってきたわ。
なのでラッセルには新聞社という先客も居たから、私はリューノの働く“アマン・デ・リュムール”へと出かける事に……そこでランチを食べる事にしましたわ。
リューナSIDE END
後書き
名前のモチーフ
「ニセス・サイモン」→『二束三文』
「ナナフェン・バトゥウ」→『七転八倒』
多分今回限りキャラw
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