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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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恋愛の作法「告白編」

(グランバニア城:中庭)
ルディーSIDE

「あぁ……! あの白饅頭な。知ってるよスノウに告白してたなぁ」
正直言って驚かない。
もしかしたらそうなんじゃ無いのかなぁとか少しは考えてたからね。

「でも……だとしたら何で放置してるんですか?」
「スノウが放置してるから……僕が介入しちゃ拙いでしょ?」
「ほ、放置の方が拙くないですか!? 暴走しちゃう……かも……?」
「そう? 一応スノウもエルフ族で戦うと強いよ」

「……た、確かに強いかもしれませんけども」
お前(ルディー)がスノウの事を心配してくれるのは嬉しいけど、誰が誰を好きになり、如何様(どのよう)に告白しようがそれは各個人の自由だ。勿論お前は知らないだろうから教えちゃうけど、“親友”の“幼馴染みである彼女”を“NTR(寝取る)”のは駄目だよ(笑)」

「ムカつく! はぁ~……勉強になりますねぇ!!」
言われると思ったよ!
「では今回は対象がビアンカ様で無くスノウ教授だったから放置した……と言う事ですよね?」

「ちょっと違うな」
「ほほぅ? どう違うのですか!」
対象によって対応を変えるって事ではないのですか!?

「僕もスノウの事は大好きだからね……あの白饅頭に心移りされない様にスノウとの仲を充実させる努力をしてるよ。具体的な内容は秘密だけどね(笑)」
「では僕は、リュカ様達の事を気にしないでマル君(マルティン)と友達付き合いを続けても大丈夫なんですね?」

「当たり前じゃないか! そんな事を気にするなんて……らしくないなぁ(笑) 仕事に利用すれば良いじゃんか」
「……『仕事』とは?」
突然のお言葉に聞き直してしまう……が、

「ん? 何でもないよ」
とだけ返された。
くっ……何処まで知られているのか解らないのが如何(どう)にも厄介だ!

「でも……これも見た目での判断になるんだけど、アイツ(白饅頭)って友達とか居なさそうだよなぁ。それとも情報収集に困らない程、アイツの周りには友達(ひと)()かりが出来てるの?」

「……お、仰る通りマル君(マルティン)は友達が居ませんよ。でも凄く良い奴なんですよ! 時折何を言ってるのか解らない話をしますけど、落ち着いて聞き直せば嫌な顔一つせずに何度でも話をしてくれるし、興味のない話だと告げれば怒らずに話題を変えてくれます」

「ふ~ん……純粋に友達付き合いしてるんだ」
「してますよ。そんなに不思議ですか!?」
長時間に及ぶ会話などは確かに疲れるけど、知識量は豊富で勉強になるんだよね。

アイツ(白饅頭)さスノウの授業を半年くらい受けてから好きになっていったらしいんだ」
「詳しいんですね?」
「本人がそう報告してからスノウに告白したからね」
「それって……その場に居たんですか?」

「あぁそう言う意味。うん、その場に居たね。って言うかアイツ(白饅頭)が色恋事でスノウと会う時は僕が同席する事になっている」
「はぁ~!? 何ですかそれは!!」

「簡単だよ。アイツ(白饅頭)……何言ってるのか解らないんだ。だから通訳も兼ねて僕も一緒に訊く事になった。だってスノウの又聞きだと要領を得ないんだもん! どうせ僕にも伝わってくる情報なんだから、順序が逆になっても問題なくない?」

「成る程……即ちマル君(マルティン)は好きな人への愛の告白をその愛人に言って伝えて貰ってるんですね?」
「う~ん……そうなるねぇ(笑)」

「笑えねーよ! だからマル君(マルティン)は『直接では問題あるから好きな人に想いを伝える良い方法を伝授してください』って僕にお願いしてきたのか。何で『直接』が駄目なのかは気になってたんだけどな……」

「ふ~ん……で、お前は如何(どん)なアドバイスを?」
「ストレートにラブレターですよ」
因みに初回のラブレターは今回のラブレター以上の超大作(数量的に)だった為、スノウ教授の手元までは届いてません。

「お前は中身を読んだんだろ? 如何(どん)な事が書かれてるんだよ!?」
「解らないんです!」
「あはははははっ! ……やっぱり!」
「予測は付きますか?」

「付くねぇ……」
「何故だか最初は“熱エネルギーの法則と魔法力学による特異点の差異”って事から内容に入って行くんです。仮にここから文学的な文章に変わったとしても、初っぱなに思考を壊されてるから、脳が切り替えられないんですよ!」

「はぁ~…… やれやれだな。まぁ友達付き合いを頑張ってくれよ。お前は人を見る目は確かみたいだから、その点は信用しているからね」
貴重な休憩時間を割いてくれたリュカ様は、そこまで言い終わるとご自身の執務室に戻っていきました。



(グランバニア王都:中央地区・マルティン邸)

「……と言うワケで僕の持ってるコネクション全開でスノウ教授とその愛人さんである陛下にお目にかかったけど、マル君(マルティン)の恋が成就する事はかなり薄いと思われる。余計な事をしてしまったと僕も思ってるけど……ゴメンね」

「別に構わないよ。俺は俺の気持ちを伝え続けるだけだからね。これからも……」
「……こ、これからもって、もうフラれたんじゃないの?」
(マルティン)には“フラれる”って概念が存在しないのか?

「だってスノウ教授が言ってたんだ。『今の私はリュー君を好きになってエルフ族からはぐれちゃった身。本来ならそんなに存在が確認出来ない人間界で暮らしてる隠れエルフ……私はリュー君のお陰で“隠れ”て無いけどね(笑) だからリュー君が居る限り心変わりは無いのよ。大丈夫……そんなエルフに惚れちゃって?』と……」

「もうマル君(マルティン)にチャンスは無いよって宣告されてる様にしか聞こえなかったけど?」
「そうかなぁ? 俺には『リュー君さんの次に好き』って聞こえたけど……?」

「し、思考回路がお花畑すぎて僕には付いていけないなぁ!」
「そんな事無いよ……ルディー君の考え方が固いだけだよぉ(笑)」
色んな人に僕は“思考が柔らかい”と言われる事はあったが、固いと言われたのは初めてだ。

「考えてもみてよ……」
何を考えれば良いのかな?
「スノウ教授はエルフ族」
言われるまでも無く解ってますけどぉ?

「エルフ族ってのは、俺等人間族よりも遙かに長寿だ」
そうだね……スノウさんだって現在何歳なのか……?
女性の年齢を推測するのは失礼だったかな?

「まず間違いなくスノウ教授はリュー君さんより長く生きる」
「うん。言葉に気をつけようね……この国だから許されてるけど、王様の死期を口に出すのは不敬罪になる国が殆どだからね。それは解っててよ……ね!」
怖ぁ……コイツ怖ぁ!

「……まぁ、兎も角! 誰にだって寿命が来るって事さ」
「その通りだけど、それと僕の思考が固いのと……因果関係が解らないんだけど?」
何が言いたいのか相変わらず解らない。

「だからね、スノウ教授が好きなリュー君さんが居なくなっても、長寿のスノウ教授は存在する。そうしたら次は俺の出番って事だろ!」
「……君は……エルフ族だったかな?」

「俺? いいや、人間だけど?」
「……君は……不老不死の研究をして、それを成功させたのかな?」
「そんな研究はしてないし、してない以上成功だってしてないけども?」
「じゃぁ……エルフ族所スノウさんより早く死ぬよね?」

「あぁ……エルフ族には敵わないな」
「……それは、人間族のリュカ様より長生き出来れば、その次の段階であるって事?」
「それ以外に無いだろう(笑) だって俺はまだ21歳になったばかり」
「まぁリュカ様は……何歳なんだろう? 僕の父さんと同年代なハズだけど?」

「スノウ教授には悪いけど、俺は彼女が愛した人の死を喜ぶつもりだ!」
「あぁぁぁ……拙い、まずい、マズい!!! その発言は拙いよマル君(マルティン)! 取り消して! 今すぐ取り消そう! 僕しか訊いてないけど、僕にも、この場に居ない色んな人に対しても取り消して、リュカ様のご長寿を願ってるって言おう! ね! さぁ!!」

「わ、解ったよぅ……俺はただ、リュー君さんが即日他界する事を望んではいないです! あくまでも、何らかの事情で俺よりも先に冥界へ旅立たれた場合のみ喜ぶって言ってしまっただけです! リュー君さんの死を期待してないし、望んでもいません」

怖ぁ……コイツ怖ぁ!
だから誰も友達にならなかったんだな。
今なら理解出来る。

でも僕は諦めないぞ。
友達になると決めたからには、そうそうの事でもない限り友達付き合いを止めはしない!
友達付き合いってのは損得勘定でするもんじゃ無いんだからね。

そうだ!
明日はマル君(マルティン)PONY(ポニー)に連れてって、MP(ミュージックプレイヤー)をプレゼントしてあげよう。

よく見るとマル君(マルティン)MP(ミュージックプレイヤー)を持ってないからね。
それと一緒にプリ・ピー(プリンセス・ピープル)CC(コンパクト・クリスタル)をプレゼントすれば、プリ・ピー(プリンセス・ピープル)の虜になってスノウさんを諦めてくれるかもしれないしね。

……まぁ諦めはしないか。

ルディーSIDE END



 
 

 
後書き
2024年7月2日投稿 
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