リュカ伝の外伝
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気が付けば……
(グランバニア王都:中央地区・中央地区体育館)
ピパンSIDE
俺は普段から手を抜いたりはした事など無い。
性格の問題だと思うが、相手に失礼があっては拙いと思い、手を抜く等は絶対にしない。
だが今日(今回の大会中)は、対戦相手を殺してしまうのではないかと思われるくらいに気合いが入っていた……と、顧問のラビル先生が驚いていた。
勿論その理由も解ったし、その上で先生も俺をからかうのだ。
そう、その理由とは……
「お疲れピパン君♥ さっきの試合も格好よかったよ」
……って、ワケである(恥照)
うん。
俺の試合を彼女が見ていてくれて、終わる度に感想をくれるのである!
負けられない……そんな醜態を見られるワケにいかない!
お陰を持ちまして俺個人は個人戦で優勝。
団体戦でも軽快に勝ち進めて優勝。
気が付けば終わっていると言う状況……
本来なら近くの飲食店等で今日の祝賀会と称して軽く飲み食いをするのだが、大会途中で紹介してしまった(せざるを得ない状況)俺の彼女の存在により、後日に開催という運びとなる。
申し訳ない気持ちも存在するけど、心底デイジーさんとだけ一緒に居たいという気持ちの方が大きい。
同日開催だったフェンシング部も既に終わっており、こちらも団体戦で優勝したとの事だ。
しかも誰が言いに行ったのか解らないのだが、大会中にフェンシング部の部長であるギャンルの耳にも情報が入り、ワザワザ見に来て『や、やっぱりあの時の……』と、苦笑いしてたよ。
デイジーさんもギャンルとは既に面識があったから、あの強面を見ても今度はパニックにはならなかった。
根は本当に良い奴だからね……彼は。
場所が部活動の大会会場で、皆の意識が殆ど試合に向いている状況での出会い等だったからなのか、デイジーさんは思っていた程人見知りを発揮せず、俺やルディーさん……そして大半は俺の母の後ろに隠れがちに皆と会話が出来ていたと思われる。
今日だけでも結構な人数と友達になれたのではないだろうか?
俺と付き合う事で良い方へとデイジーさんの人生が向かう様になれば理想的だね。
そういうワケで、個人戦+団体戦共に功労者である俺を労いの意味を込めて後片付け免除にしてもらえ、デイジーさん+母さんと共に、ルディーさんの魔道車で帰路に付いている。
大会中は父さんとも顔を合わせたけど、大臣として忙しいから最後まで家族揃っての行動にはならなかった。
だけど個人戦で優勝した時には、コッソリと近付いて『おめでとう』と頭を撫でてくれたのは凄く嬉しかった!
(グランバニア王都:GEOビル)
既に空には太陽が月と選手交代を済ませてある。
可能であるのなら今日は大会で大活躍をした息子の為に、家族揃って普段は金銭的な理由で行かない様なちょっとだけ高級店でお祝いとかをするのだろうけど、今回に限ってはデイジーさんと一緒の時間を優先させてもらう。
魔法でデイジーを帰す役目のリュカ様もそれは承知してくれてて……
「サラボナには上手く言ってあるから、今晩は飯(夕飯 → デザート → 夜食)を食べてから帰るんでも良いんじゃね?」
と言ってくれた。
大人の根回しというヤツだろうか?
素直に頂戴します。
でもルディーさんは……
「勝手な事を……言い訳に苦労するのは僕なのになぁ」
と呟く。
「言い訳って……デボラの我が儘を押し黙って訊くだけだろ? 放っておけば良いんだよ!」
とリュカ様にしか出来ない対応を伝授。
この二人を見ていると、互いの能力(ルディーさんからは当然)を認め合っている師弟関係が見えてくる。
あのウルフ閣下も自ら『リュカさんの弟子は俺!』と勝手に宣って居るけど、リュカ様とルディーさんとの関係の方が俺は良いと思う。
でも心なしか、最近(特に今日)はルディーさんのリュカ様への接し方がぎこちない。
デイジーさんの事でデボラさんを相手取って色々と根回し(?)をしているからかな?
そんな事を考えていると準備が整ったらしく、2階の練習スタジオへ来るようにと声がかかった。
準備……と言われても“何のこっちゃ?”って感じだろう。
何とこれえからプリ・ピーがここの2階で特別に演奏を行ってくれると言うのだ!
勿論これはリュカ様からの提案であり、俺が自身の彼女に趣味として話題に出したMGの事から、デイジーさんの知ってる最新の音楽(マリピエ)の話題に移り、『最近ではプリ・ピーの方が活動的である』とデイジーさんに言った事がプロデューサーに知られていて今回メンバーを集めてくれたそうだ。
かなり急な招集だったから全員は集まらないと俺もリュカ様も思っていたが、数時間前にお願いしたにも関わらず全員が集まってくれたのだ!
驚くべき事ではあるのだが、もう一つ驚かされたのは集まった人数がプリ・ピーメンバーより多い事だ(笑)
何の事だ?
とお思いの方も居るだろう。
なんと驚く事にメンバーの一人キャロラインさんには彼氏が居て(正直それにも驚いた)、今日(もう夕方)はデートをしてたそうだ。
なので今回の件で自宅へご訪問(リュカ様とアイリーンさんが……)したところ、偶然お二人に声をかける事が出来たのだ。
当然だが今回の急な呼びかけに必要なのはキャロラインさんだけ。
最初は彼女も断ったそうだけど一緒に居た彼氏の方が演奏する様に勧めたみたいです。
理由として『陛下のお願い(彼氏さんはリュカ様がプーサン社長である事をご存じだそうです)を無碍には出来ない』って事と『俺(彼氏さん)も彼女の演奏を見た事ないから、今回参加させてもらって観てみたい』との希望込みでの理由でした。
俺には訊くまでもなく断る理由も権利も意思も無いので当然ですが、リュカ様もOKだったので、“プリ・ピーメンバー6人”+“キャロラインさんの彼氏1人”と言う事で、合計7人が集まりました。
でも彼氏なのに自分の彼女の演奏を観た事ないって如何言う事なのか不思議に思っていたら、現在アルバイト(プリ・ピー活動以外)が同じな為プリ・ピー活動でアルバイトを休むと同僚の自分(彼氏さん)は休むワケにいかなくなる為、練習の姿しか見せられてないと。
そんなヴートさんも芸高校に通う4年生だ。
アイリーンさんとも同じ本年度で卒業予定。
トランペットを専攻しているらしく、今回プリ・ピーの演奏を聴ける事を喜んでいた。
今回の演奏会はワザワザ遠い街から来てくれたデイジーさんの為に開催されるから、当然の如くデイジーさんを中心に各々席に着く。
デイジーさんの彼氏である俺はありがたい事に、その隣に座る事が出来最高な状況でプリ・ピーを堪能出来た。
「デイジー如何だったかな? これが今現在で最新のポップスミュージックだよ」
「凄く良かったです! 春から勉強するのに参考になります。ありがとうございましたリュカ様!」
3曲だけだが間近でプリ・ピーの音楽に触れて、少し興奮しているデイジーさん。
「“参考に”? デイジーさんは芸高校に入学したそうですけど、お兄さんと同じで絵画とかの分野ではないのかしら?」
そうか……『芸高校入学』しか言ってなかったから、皆さんはお兄さんと同じ画家を目指してると思っちゃってるのか。
「あ、いいえ……私は音楽の方で入学しまして、声楽科で勉強するつもりです」
「へー……このタイミングでの入学だから、てっきり芸高校側も力を注いでるMGかMBなのかと勝手に思ってたよ」
ヴートさんの感想にプリ・ピーの皆さんから同じ反応が返ってきた。
『声楽』となれば人前で歌う事が必要になるけど、極度の人見知りな彼女には結構な難関として聳えてしまうだろう……
誰もがそう考えるけど、彼女の意思は固まっており、これから少しずつ成長していくつもりなのだ。
それは家族であるルディーさんも知っていて、俺にも教えてくれた。
でもここまで決意を固くしている、いや固く出来ている所以がマリピエのマリーが原因ってのが凄く不安にさせてくるんだ。
一応あれでも俺より1歳年上だし……秘密だけどもリュカ様の娘だし……
俺個人はあまり関わりを持ってないけど、正直言うと良い印象は持ってない。
デイジーさんが言うには、初めてサラボナで演奏してくれた時に一緒に歌ってくれて“見た目”と“歌唱力”を褒めてくれた事が切っ掛けだと……
“見た目”は何時ものお母さんの趣味な服装であろう。
“歌唱力”は多分その場のノリで『上手い』って言ってただけだろうと思う。
アイツにその辺を判断出来る能力が備わっているとは思えないからね。
アイツに言われるまでもなく、デイジーさんは頑張るのは誰もが疑わない事だから、問題は無いだろう。
問題なのはやっぱり人見知りなのが大きいよね。
なるべく俺が心の支えになれると良いのだけど……
多分ここに来てプリ・ピーの皆さんに色々教わるのが一番なんだと思う。
俺も一緒にMGを教えてもらえるだろうしね。
ピパンSIDE END
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